建設業界でも活用が進む「点群データ」は、無数の3次元座標点(X,Y,Z)から現場の形状を精密に記録したデータです。たとえばレーザースキャナやドローン測量で取得した点群には、各点の座標に加えRGBカラーや反射強度(インテンシティ)などの属性情報も含まれ、高精度に現場を再現できます。しかしそのデータ量は膨大で、現場一つ分で数千万点以上・数百MB~数GBにもなることも珍しくありません。本記事では、点群データの主なファイル形式とその違い、データ容量と圧縮のポイント、そしてクラウドでの保存・管理方法について、初心者にもわかりやすく基礎から解説します。また、オンプレミス(社内保管)とクラウドの使い分けや、点群データ運用の具体的フロー例も紹介します。
点群データの主なファイル形式と違い
点群データには様々なファイル形式(拡張子)があり、それぞれデータ構造や保持できる情報、用途に違いがあります。代表的な形式と特徴は次の通りです。
• LAS(LASer): 点群データ交換の業界標準とされるバイナリ形式です。米国ASPRSが仕様策定しており、航空レーザ測量や地上LiDAR問わず幅広く使われます。各点の座標値(X,Y,Z)だけでなく、強度(反射強度インテンシティ)、分類コード(地面・建物・植物など)や点IDといった豊富な属性情報を格納できます。LASファイルはバイナリ形式のためテキスト形式よりサイズが小さく読み込みも高速で、GISソフトや点群処理ソフトで広く対応されています。
• LAZ(LASzip): LASファイルを可逆圧縮した形式で、データ内容はLASと同等です。圧縮アルゴリズムによりファイルサイズを大幅に縮小でき、LASの約1/5~1/10程度のサイズになることもあります。例えば約1000万点の点群ではLASが150MB程度でも、LAZにすれば50MB前後まで縮められます。LASの全情報を保持しつつ効率的に保存・転送できるため、大規模データの共有に適しています(対応ソフトで解凍せず直接読み込み可)。
• PLY(Polygon File Format): 元々3Dモデル用のフォーマットですが、点群データの保存にも利用されます。バイナリ・テキスト両形式をサポートし、各点の座標や法線ベクトル、色情報などを記録可能です。特徴はポリゴンメッシュの面情報も含められる点で、点群から生成した3Dメッシュモデルの保存に使われることもあります。主に3DスキャンやCG分野で利用され、建設分野では点群+メッシュモデルを扱う場面で見られます。
• E57(ASTM E57): 3D点群データと付随情報のための国際標準フォーマットです。LAS同様バイナリ形式で効率的に格納でき、特徴として複数の点群スキャンやデジタル画像も一つのファイルに含められる点 があります。例えば地上レーザースキャナで取得した各位置ごとの点群と、その位置で撮影した360°写真を統合して保存できるため、色付き点群の生成や現場写真との対応付けに便利です。E57はメーカー間の中間フォーマットとして位置付けられ、各種点群処理ソフトやBIMソフトで広くサポートされています。
• テキスト形式(.txt, .csv, .xyz など): 座標値をカンマ区切りや空白区切りのテキストで列挙した形式です。各点のX,Y,Z座標のほか必要に応じて強度やRGB値を列に持たせることもできますが、フォーマットは統一されておらず扱うソフト間で列順を合わせる必要があります。人間が直接中身を確認しやすい反面、データ量が非常に大きくなりがちなのが欠点です。例えば1000万点の点群をCSVで保存すると約490MBにもなりましたが、LAS(二進法)では約150MBに収まっています。文字列として各数値や区切り記号を記録するため容量増大と読み書きの低速化を招き、あまり効率的ではありません。少点数のデータや簡易的な交換には使えますが、大規模点群では可能ならLAS/E57などバイナリ形式へ変換することが望ましいでしょう。
• PTS/PTX(スキャナベンダー形式): 点群計測機器メーカーが採用する独自形式です。PTSはLeica社などで使われるテキスト形式の点群ファイルで、各点の座標や強度値を空白区切りで列挙し、ファイル冒頭に点数等のヘッダ情報を含みます。PTXは複数スキャン位置の点群を含む特殊なテキスト形式で、各スキャンの行列状点群を連結保存できます。これらベンダー形式は計測機から直接出力されるケースがありますが、データ量が大きいため処理後はLAS/E57等に変換されることが多いです。またAutodesk RecapのRCP/RCSやFaroのFLSなど、各社専用形式も存在しますが、それらは該当ソフト以外では扱いづらいため、長期保管や他社共有時には中間フォーマット(LAS/E57等)にしておくのが無難です。
以上のように、点群ファイル形式によって互換性や保持情報が異なるため、用途に応じて使い分ける必要があります。例えば他社とデータ交換するなら標準的なLASやE57が適し、独自形式は避けるべきです。カラー情報が必要な場合はLAS(PDRF含む)やE57、PLYなら保持できますが、XYZでは別途色ファイルを用意する必要があります。また大規模プロジェクトでは、後述のように