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建設業のi-Constructionとは?点群による業務効率化の実例集

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AR Civil Engineering

i-Construction(アイ・コンストラクション)とは何か

i-Constructionとは、国土交通省が2016年に開始した建設現場の生産性向上プロジェクトです。測量から設計、施工、検査、維持管理に至る建設生産プロセス全体にICT(情報通信技術)を導入し、建設現場の生産性を飛躍的に向上させる取り組みを指します。背景には少子高齢化による建設業の人手不足や建設現場の「3K」(きつい・汚い・危険)といった労働環境の課題があります。政府はi-Construction推進によって2025年度までに現場生産性を2割向上させる目標を掲げており、ICT活用や規格の標準化、施工時期の平準化という3つの柱を軸に施策が進められています。


目的: i-Constructionの目的は、ICT活用による生産性向上と労働環境の改善です。具体的には、ICT導入で一人当たりの作業効率を上げて企業の経営環境を改善し、その成果を労働者の賃金アップや安全性の向上につなげることが狙いです。たとえば建設機械の自動制御や遠隔操作により危険な作業を減らし、安全で魅力ある現場づくりや働き方改革につなげることも重要な目的となっています。


適用対象: i-Constructionは土木工事を中心に建設業全般が対象です。道路やダム工事など土工分野で特に生産性向上が遅れていたことから、まずICT土工の全面導入が推進されました。しかし取り組みは測量・設計から施工、検査、維持管理まであらゆる工程に及ぶため、建設業に関わる大企業から中小企業、さらには発注者である行政機関まで業界全体が対象と言えます。建築分野でもBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)導入支援策が講じられるなど、建築・土木を問わずデジタル化が進められています。要するに、建設産業全体でICT・3次元データ活用を標準にしていく流れがi-Constructionなのです。


点群データの概要:定義と取得方法

点群データとは、空間内の多数の点(ポイント)で物体や地形の形状を表現した3次元データです。各点はそれぞれ位置座標(X,Y,Z)と色などの情報を持ち、点の集合体によって地形や構造物の形状を精密に再現できます。言い換えれば、現場の形状を無数の点で写し取った「デジタルな現場の丸ごとのコピー」とも表現されます。従来の図面や2次元測量では把握しきれない複雑な起伏や構造物の詳細も、点群ならありのまま三次元で記録可能です。


点群データは主に3次元レーザースキャナー(LiDAR)によって取得します。レーザー光を照射し、その反射を計測することで多数の点を空間座標として収集します。これにより従来の実地測量より短時間で大量の点を取得でき、かつ高精度なデータが得られます。取得手法としては、上空からドローンにレーザースキャナやカメラを搭載して行う航空測量(UAV)、地上に据え付けた固定式レーザースキャナ、自動車に機器を積んで走行しながら測定するMMS(モバイルマッピングシステム)などがあります。一般に広大な現場はドローン空撮、道路や市街地は地上据置型や車両搭載型など、現場の規模や状況に応じて使い分けられています。


また、レーザーだけでなく写真測量(フォトグラメトリ)によって点群を生成することも可能です。写真測量ではカメラで様々な角度から撮影した多数の画像をもとに、ソフトウェアで3D形状を再構築します。近年はコンピュータ性能やドローン・デジカメの普及により写真測量が手軽になり、写真からの点群生成も広く活用されています。例えばドローン空撮画像をSfM(Structure from Motion)技術で処理し、高精度な点群を得ることができます。このように点群データはレーザー計測と写真計測の双方で取得でき、ハイブリッドに活用されるケースもあります。


なお、取得したままの点群には樹木や車両など不要な点(ノイズ)が含まれるため、専用ソフトでのノイズ除去や点群同士の位置合わせといった後処理が必要です。さらに点群そのものは点の集合データのため、CAD図面として利用するにはメッシュデータやサーフェスへの変換が求められます。こうした処理を経て初めて、点群データは設計や施工管理で扱いやすい3Dモデルとして活用できるようになります。


i-Constructionにおける点群活用の目的

i-Constructionの取り組みの中で、点群データは各工程でさまざまな目的に活用されています。以下に主要な活用目的を挙げ、その概要を解説します。


測量(現況把握): 従来はトータルステーションやレベルで地道に測っていた現場測量も、ドローン空撮や地上LiDARで面的に一括測定する手法に変わりつつあります。点群を用いることで、地形を2次元の点や線ではなく高密度な3次元データとして取得可能となります。例えば山林の造成現場では、上空から短時間で地形全体の点群を得て、後から任意の場所の高さや距離を測れるため、測量作業が飛躍的に効率化します。点群測量によって得られた現況データは、後工程の設計や施工計画のベースモデルとしても活用されます。

設計・数量算出: 点群測量データを取り込むことで、土量計算や断面図作成が正確かつ迅速に行えます。従来は紙の図面や2次元の縦横断図から手計算していた土工量も、3次元点群と設計モデルを重ねれば瞬時に盛土・切土量を算出可能です。例えば縦断・横断図と併せて点群地形モデルを使えば、施工前後の地形差から搬出土量を自動計算できます。また図面化されていない既存構造物でも点群から3Dモデル化できるため、改修設計時に現況図面を起こす手間を省けます。こうした点群活用により、設計段階での数量積算や計画立案の精度向上時間短縮が実現します。

施工管理(出来形・進捗・品質管理): 点群データは施工中・施工後の出来形管理にも利用されます。出来形管理とは施工物が設計どおりの形状・寸法になっているか確認する工程で、従来は完了後に現場を測って検査していました。これをドローンやレーザースキャナで取得した点群と設計3Dデータを即座に重ね合わせて比較すれば、施工ミスや仕上がりのズレを早期に発見できます。実際に、ある大手ゼネコンではドローンで取得した点群をBIMモデルと比較し、施工ミスの早期発見と手戻り削減に成功しています。さらに施工途中でも定期的に点群測量を行えば、進捗管理にも役立ちます。毎日の工事進捗を点群で可視化し、設計モデルとの差分から掘削・盛土が計画通り進んでいるか一目で確認できる事例もあります。点群による進捗モニタリングは、現場巡回に替わるリモート管理にも応用可能で、遠隔地から工事の出来高を把握する手段として期待されています。

品質・安全管理: 点群は人が立ち入りにくい場所の情報も取得できるため、安全性の確保に貢献します。例えば法面(のりめん)工事では、ドローン点群で施工後の斜面形状を細部までチェックでき、勾配や平滑度の不良箇所を検知できます。またトンネル工事では、掘削面のひび割れやずれを点群データから把握し、崩落のリスクを遠隔で評価する研究も進んでいます。人が直接測定できない高所・狭所も点群なら非接触で測れるため、労働者の危険低減につながります。さらに出来形管理の迅速化は品質トラブルの早期是正を可能にし、品質管理の効率化と施工後の安全性向上に寄与します。

維持管理(インフラ保全): 完成後の橋梁・トンネル・ダム等のインフラ点検にも点群が活用され始めています。構造物の定期点検でレーザースキャンしておけば、経年変化を3次元データで蓄積できます。例えばトンネル内をスキャナー搭載ロボットで走行し、毎年の点群を比較すれば、微小な変形やひび割れの拡大を定量的に検出できます。静岡県では県内全域の高精度点群データを整備した「バーチャル静岡」により、地すべり地形や盛土の変化を監視する取り組みもあります。このように点群データはインフラのデジタルアーカイブとなり、将来の補修計画や災害時の被害把握にも役立っています。

遠隔施工・DX: i-Constructionの進化形として、点群データを活用した遠隔施工も視野に入っています。現場を丸ごと点群でデジタル化し、それを基に建設機械を遠隔操作したり、自律運転させたりする実証も行われています。例えば清水建設は四足歩行ロボットとドローンでトンネル内外を3Dスキャンし、得られた点群をスターネット経由で即時に本社拠点へ伝送することに成功しました。これにより、現地に行かずとも遠隔地からリアルタイムで施工状況を確認でき、将来的には遠隔での施工管理や監視・検査が可能になると報告されています。即時共有される点群データとBIM設計情報を突合することで、その場で出来形確認や鉄筋・コンクリート施工の異常検知を行うといった高度な施工管理も見えてきています。点群は単なる記録データに留まらず、リアルタイム施工のプラットフォームとしても活用範囲を広げつつあります。


点群データ導入によるメリット

点群データを導入することで、建設業務には以下のような大きなメリットが生まれます。


省力化・業務効率の改善: 何より作業時間と手間の削減効果が顕著です。例えば従来2日かけていた測量作業が、ドローン点群測量なら0.5日(半日)で完了したとの報告があります。人が機械を据えて1点ずつ測っていた工程を一括スキャンに置き換えることで、測量から数量計算までのプロセスを劇的に短縮できます。また出来形検査でも、点群による自動照合により検査日数の短縮や書類作成の手間削減が可能となっています。このように点群活用は測量・計画・検査と幅広い工程の効率化を実現し、限られた人員でより多くの施工案件に対応できるようになります。

高精度化・品質向上: 点群データは非常に細密な情報まで含んでおり、現場の形状をほぼ連続的に計測できます。従来の数点の測量では見落としていた凹凸も点群なら把握でき、数量計算の精度向上や出来形の厳密な検証に役立ちます。例えばドローン写真測量でも標定点(基準点)を適切に入れれば、従来測量と同等の精度(誤差数センチ以下)を確保できることが確認されています。簡易な機材でも使い方次第で高精度を実現できるため、品質管理の信頼性向上と手戻りの削減につながります。さらに点群による出来形チェックで早期に不備を発見・是正できれば、施工品質全体の底上げになります。

記録性・データ資産化: 点群は現場の時点ごとの姿をデジタル記録するため、後から見返したり活用したりできる資産となります。工事前の地形点群データを保存しておけば、完成後に「以前はどうだったか」を正確に比較可能です。災害時には被災前後の点群差分から被害範囲や土砂量を迅速に把握でき、実際に静岡県熱海市の土石流では公開点群データが被害規模の迅速把握に貢献しました。また完成した構造物の点群は将来の維持管理に役立ち、劣化状況を時系列でモニタリングできます。紙の図面や写真では残せない立体的な記録をデータで蓄積できる点は、点群ならではのメリットです。

働き方改革・安全性向上: 点群活用は現場の働き方にも良い影響を与えます。危険を伴う高所・傾斜地での測量はドローンに任せられるため、人がヘルメットをかぶって崖を登るような場面が減ります。重労働だった出来形測定もスキャナーで非接触かつ短時間で終わり、肉体的負荷の軽減につながります。さらに業務時間短縮により残業削減や休暇取得の促進も期待できます。ICTに不慣れな高齢技術者でも、若手と協力して操作習得することで誰でも使えるツールになりつつあり、年齢や経験に関係なくデジタル技術を活用できる環境が整ってきています。このように点群技術は安全で魅力ある現場づくりと建設業のイメージアップにも寄与し、結果的に幅広い人材の参入や定着を促す効果も期待されています。


国内の業務効率化実例【ゼネコン・中小企業・自治体】

ここでは、実際に点群データ導入によって効果を上げている国内の事例を、大手ゼネコン・中小建設会社・自治体それぞれの視点から紹介します。


大手ゼネコンの事例: ある大手ゼネコンでは、施工現場の出来形確認にドローンで取得した点群データを活用しています。具体的には、出来上がった構造物の点群とBIMの設計モデルを重ね合わせて比較することで、施工ミスの早期発見を実現しました。従来は竣工検査で発覚していた寸法違いや施工漏れを前倒しで把握できるため、手直し工事の削減に大きく貢献しています。また清水建設は北海道のトンネル工事で、ロボットとドローンによる点群計測を実施し、これを衛星通信経由で東京本社に送り即時に解析する実証を行いました。その結果、遠隔地の本社からリアルタイムに現場状況を把握し、施工管理にかかる時間を大幅短縮できる可能性を示しました。このように大手では点群を高度に活用し、品質管理や遠隔マネジメントの効率化に挑戦しています。

中小建設会社の事例: 小規模な現場でも点群導入のメリットが現れています。ある中小土木業者の事例では、試験的にドローン写真測量で点群計測を行ったところ、約30分で現場全体の3Dスキャンが完了し、その場で盛土量の算出までできました。従来は撮影後に数時間かけてデータ処理していた工程を現場で即処理できたため、即座に測量結果を活用可能になったのです。この会社では「試してみたら大きな効果があった」という手応えから本格導入を決め、現在は小規模工事でも積極的に点群測量を取り入れています。中小企業にとってコスト面の不安はありますが、最近はスマートフォンと小型測位デバイス、安価なドローンなど手軽な機材から始めることもできるため、少ない投資で効果を検証し徐々に拡大するケースが増えています。「まずは安価な手段で小さく試す」ことで、費用対効果を見極めながら点群技術を自社の武器にしている中小企業も出てきています。

自治体(公共部門)の事例: 自治体でも点群データを活用した先進事例が見られます。静岡県は「バーチャル静岡」構想のもと、県ほぼ全域を航空レーザ測量し、高精度の3次元点群データ(総データ量15TB!)を取得・公開しました。このデータは誰でも入手可能なオープンデータとなっており、防災やまちづくり、観光まで幅広い用途に活用できます。実際、2021年の熱海市土石流災害では、災害前後の点群を比較して崩落土砂の範囲や量を迅速に把握し、被害状況の把握と二次災害防止に役立てました。また東京都も独自に23区の3次元点群データを整備し、2024年に一般公開しています。東京都はこのデータをデジタルツイン(都市の3Dモデル)として、防災計画やインフラ点検、歴史的建造物の記録、観光ルート作成、さらにはVR/ARの背景データなど様々な分野での活用を想定しています。このように自治体レベルでも点群データが社会インフラのDX基盤として位置づけられ始めています。


導入の課題と克服策(コスト・スキル・データ量)

便利な点群技術ですが、現場への導入にあたってはいくつかの課題(不安要素)も指摘されています。それらと、その克服策を整理します。


導入コストの課題: 「高価な3Dレーザースキャナーや専用ソフトを買う余裕がない」「小規模工事では投資に見合わないのでは」といった声が中小企業を中心によく聞かれます。確かに一昔前は機材一式で数百万円以上することもありました。しかし現在ではスマートフォンに取り付ける小型LiDARやRTK-GNSS受信機、安価なドローンなど低コストで始められる手段が登場しています。例えばスマホ装着型のGNSS受信機を用いれば、高価な測量機を買わずとも個人で精密測位が可能です。クラウドサービスや無料ソフトも充実してきたため、まずは小さな投資で試して効果を検証することが十分可能です。効果が確認できれば本格的な機材導入も無駄になりません。ポイントは「いきなりフルセットを揃えず、安価な方法でスモールスタートする」ことです。このような段階的導入によってコスト面のハードルは下げられます。

操作スキルの課題: 「ITが苦手な自分たちに使いこなせるか心配」「専門知識がないと難しいのでは」との不安もあります。しかし最近の点群計測ツールやアプリはユーザーフレンドリーに作られており、画面の指示に従うだけで誰でもスキャンできるものが増えています。例えばスマホの3Dスキャンアプリは、端末をかざして動くだけで自動的に点群化してくれます。また「専門知識がなくてもワンタッチで座標付き点群取得」ができる仕組みも登場しており、操作自体のハードルは着実に下がっています。最初は戸惑うかもしれませんが、触れていくうちに慣れるものです。社内でベテランと若手が協力して習得を進めたり、メーカーの講習会を利用したりすれば、社内にノウハウを蓄積できます。現場で本当に役立つツールであれば、作業員も前向きに覚えてくれるはずです。つまり、「やってみれば意外に簡単」というケースが多いため、現場に合った簡便なツールから試すことでスキル面の不安は克服可能です。

データ量の課題: 点群データは高密度な分、大きなファイルサイズになります。「容量が膨大で高性能PCがないと扱えないのでは」との懸念もあります。確かに一度に広範囲をスキャンすると数GB~数十GBに達することもありますが、これも扱い方次第です。例えば必要な範囲を限定すればデータ量は数十MB程度に抑えられますし、クラウド上で点群を確認・共有すれば手元のPCに高い性能は不要です。不要部分を削除するフィルタリングや点を間引くダウンサンプリング機能も各種ソフトに備わっており、データを軽量化する工夫が可能です。つまり「重たいデータをそのまま全部扱おうとしないこと」がポイントで、最近は重さを意識させないクラウド閲覧ビューアなど仕組みも出てきています。さらに通信面でも、清水建設の実証では点群圧縮技術により帯域を1/20に圧縮してリアルタイム伝送に成功しています。このように技術の進歩で「大容量ゆえ使えない」という壁は徐々に低くなっており、必要に応じて小容量から始めてみることで感覚を掴むのがよいでしょう。

精度・信頼性の課題: 「簡易な機材で本当に正確な測量ができるのか」「点群と従来測量でズレが出ないか」といった心配もあるでしょう。しかし結論から言えば、使い方が適切なら高い精度を確保可能です。例えばスマホ計測でもRTK-GNSSを併用すれば単独測位で±1~2cm程度、データを平均化すれば1cm未満の精度も実証されています。ドローン写真測量でも十分な数の既知点(標定点)を配置すれば、数cm以内の誤差で測量できることが確認済みです。肝心なのは手順を守り基準をきちんと設置するなど正しい運用で、これにより信頼に足る成果を得られます。むしろ人力測量のヒューマンエラーより点群計測のほうが安定する場面も多く、必要精度に応じて機材や手法を選べば問題ありません。「精度が不安」という心理的ハードルは、試験導入で従来法と比較してみることで払拭できるでしょう。


今後の展望(制度動向・AI連携・スマホ活用・BIM/CIM標準化)

点群技術を取り巻く今後の展望として、政策面と技術面の両方からさらなる発展が見込まれます。


まず政策・制度動向では、国土交通省が推進する「i-Construction 2.0」に注目できます。i-Construction 2.0は2024年4月に始動した次世代の取組で、デジタル技術をフル活用して建設現場の全工程を自動化することを目標としています。少人数でも安全かつ快適に働ける高効率な現場の実現を掲げており、AI・ロボット・IoT・クラウド等の活用で従来以上の省力化・安全性向上を目指しています。具体策としては、無人施工機械の導入拡大や施工管理の遠隔化などが挙げられ、点群データもリアルタイムの自動施工管理やデジタルツイン構築に欠かせない要素となっています。またBIM/CIM(建築・土木の3Dモデル活用)は近年一層推進されており、国交省直轄工事では2023年度から原則すべての設計・工事でBIM/CIM適用が始まりました。これは小規模案件や地方の工事も例外ではなく、今後は全ての建設プロジェクトで3Dデータ活用が標準になる時代が来ています。業界団体による人材育成(BIM/CIM技術者の資格創設など)も進んでおり、制度面からデジタル化を底上げする動きが強まっています。


技術面では、AIとの連携がキーテクノロジーでしょう。点群データは大量の3次元情報の塊であり、人が目視で分析するには限界があります。そこで近年は機械学習を使った点群解析が注目されています。AIにより点群から構造物や地物を自動認識・分類したり、傷や変形など異常箇所を自動検出したりする技術が研究されています。例えばトンネル壁面の点群データからクラック(ひび割れ)をAIが検出するといった応用です。また工事の進捗を点群の差分として可視化し、AIが予定工期との差を判断するといった施工管理支援も考えられます。将来的には現場で取得した点群がリアルタイムでクラウドにアップされ、AIが即座に解析して「ここの盛土が設計より○cm不足」といったフィードバックを即時通知することも夢ではありません。こうしたAI活用によって、点群データがよりスマートな意思決定ツールへと進化していくでしょう。


スマホ活用の進展も見逃せません。現在でも最新のiPhoneやiPadにはLiDARセンサーが搭載され、手軽に周囲の点群計測が可能です。今後はスマホやタブレットが現場監督や技術者の「3Dメジャー」となり、誰もが日常的に点群を扱うようになるかもしれません。例えば現場巡回中にスマホをかざして設備の位置をスキャンし、そのデータを即クラウド共有して設計者と確認するといったワークフローも現実味を帯びてきました。安価なスマホアプリやWebサービスも増えており、中小企業や技術者個人でも手元のスマホ一つで3Dデータ収集・活用が可能になるでしょう。これにより点群技術の裾野が広がり、専門部署だけでなく現場の誰もが3Dデータを使いこなす時代が到来すると期待されます。


最後にBIM/CIMの標準化・統合が進む点も重要です。点群は現状、設計BIMデータやGISデータとは別個に扱われることが多いですが、今後はこれらが一体的に連携していくでしょう。国交省はBIM/CIMガイドラインを整備し、発注図書に3次元データを含めることを原則化しています。その中で点群データも設計段階から成果品として扱われ、CDE(共通データ環境)上で関係者が共有・活用する流れが生まれています。将来的には点群→3Dモデル化→設計・施工・維持管理までワンストップでデータ連携する仕組みが標準となり、データ形式の互換や品質基準も業界標準として整備されるでしょう。いわば「点群からデジタルツインへ」の道筋が制度と技術の両面で築かれていく見込みです。


例えば清水建設は、四足歩行ロボットによるトンネル現場の点群スキャンと遠隔伝送を実証し、今後はロボットを遠隔自律制御することで現場の無人化・省力化を目指すと発表しました。このような最先端の取り組みは、まさにi-Construction 2.0やスマート建設の方向性を示すものです。点群データはそれ自体が目的ではなく、建設プロセス革新のための原動力です。今後も政策支援と技術革新のもと、点群によるデータ活用は建設業にさらなる効率化と安全性、そして新たな価値創造をもたらしていくでしょう。


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