点群とは何か?
点群データ(ポイントクラウド)とは、3次元空間上の多数の点の集合で物体や地形の形状を表現したデータのことです。各点にはX・Y・Zの座標値(位置)と、場合によっては色などの情報が含まれています。例えば建物や地形を点群化すると、その表面上にある無数の点がコンピュータ上に再現され、写真のように見える立体的な点の集合体として表示できます。レーザースキャナー(LiDAR)や写真測量(フォトグラメトリ)などで取得可能で、取得時点の現実空間を高精度にデジ タル保存できる点が大きな特徴です。現実の空間をそのまま丸ごとデジタルコピーできるため、土木・建設をはじめ様々な分野で活用が進んでいます。
なぜ点群が注目されているのか?
迅速さと正確さが点群技術最大のメリットです。従来の測量では測量士が対象物の点を一つずつ手作業で計測していましたが、点群を用いればレーザーやドローンで面的・連続的に計測でき、短時間で広範囲の詳細データを取得可能です。取得できる情報量も桁違いに多く、後から必要な寸法をソフト上で計測したり設計図・3Dモデルを作成したりすることも容易になります。このため国土交通省主導の「i-Construction」により、測量から設計・施工管理・維持管理まで点群データの3D活用が業界全体で推進されています。例えば施工現場の出来形(完成形状)を丸ごと点群で記録しておけば、完成後に図面がなくても正確な3Dモデルや断面図を作成でき、品質管理や将来の改修計画にも役立てられます。点群は現場のデジタルツイン(現実空間の双子となる仮想模型)を実現する基盤技術としても注目されているのです。
さらに点群は情報共有の課題解決にも寄与します。クラウド上で点群データを共有すれば遠隔から現場を「見て」施工管理を行うことも可能です。実際、ある大手建設会社の現場ではスマホLiDARで取得した点群や360度写真をクラウドに集約し、本社オフィスからVR空間上で現場を巡回する試みが行われ、担当者が現地に出向かなくても施工状況を把握でき移動時間を大幅に削減できたと報告されています。平面の図面では伝わりにくい現場の状況も点群の3Dビューや動画なら直感的に共有でき、コミュニケーションロスの削減やプロジェクト全体の品質向上にもつながります。このように測る・見る・伝えるすべての面で、点群技術は現場の課題解決に大きな可能性を秘めているのです。
スマホLRTKとは何か?
スマホLRTKとは、スマートフォン(主にiPhone)に取り付ける小型の高精度GNSS受信機「LRTK Phone」と専用アプリ、そしてクラウドサービスから構成されるシステムです。一言で言えば、スマホを高精度な万能測量機に変身させ るソリューションです。LRTK PhoneデバイスはRTK-GNSS(リアルタイムキネマティック測位)の技術を利用し、衛星からの補強信号や基地局ネットワークを用いてセンチメートル級の測位を実現します。専用のiOSアプリはこの高精度位置情報を活用し、スマホ内蔵の各種センサー(LiDARスキャナやカメラ、IMUなど)と組み合わせて測位・3D計測・AR表示・座標ナビなど多彩な機能を提供します。さらにLRTKクラウドにデータを自動同期することで、ブラウザ上での3D点群表示やデータ共有も可能です。以下にLRTKシステムの主な構成要素をまとめます。
• LRTK Phone(高精度GPS端末) – スマートフォンに物理接続して使用するGNSS受信機。水平±2cm・鉛直±4cm程度の測位精度でリアルタイムに緯度経度・標高を取得できます。小型軽量でバッテリー・アンテナを内蔵し、現場での持ち運びに便利です。
• LRTKアプリ(iPhone用アプリ) – App Storeからインストール可能な専用アプリ。取り付けたLRTK Phoneから高精度座標を受け取り、シンプルな操作で測量計測や点群スキャン、ARによる重ね合わせ表示、座標誘導(ナビゲーション)等を行えます。写真撮影機能や日報作成機能も備わっており、取得データは クラウドと同期されます。
• LRTKクラウド(Webサービス) – ブラウザ経由でアクセスできるクラウドプラットフォーム。現場からアップロードされた測位・点群データを地図上に表示したり3Dビューアで閲覧でき、データのダウンロードや共有リンクの発行も可能です。オフィスのPCから詳細解析したり関係者とデータを共有したりと、現場と事務所をつなぐ情報基盤となります。
現場でスマホLRTKを使って点群計測を行っている様子。iPhone背面に取り付けた円筒形の装置が高精度GNSS受信機「LRTK Phone」です。左画像は専用アプリの画面で、カメラ映像に現在の測位状態や補正状態が表示されています(Fix解は高精度測位が確定した状態を示す)。右画像はスマホで取得した構造物の点群データをアプリ上で可視化し、任意の2点間距離(赤い線)をその場で計測している例です。LRTKの登場により、iPhoneにGNSSアンテナを付けるだけでセンチメートル級の点群計測や座標取得が行えるとあって、まさに“一台で何でもできる”測量機として現場で話題を集めています。
LRTKを使えば「cm精度測位」「3D点群スキャン」「AR表示」「杭打ち位置誘導」といった作業がすべてiPhoneひとつで完結します。高価な専用測量機器や熟練の職人技に頼らずとも、手軽に高精度な3D計測が現場日常業務で実践できることが、スマホLRTKが注目されている理由です。
点群を「測る」技術:スマホ点群スキャンと精度
近年はスマホで点群スキャンができる時代になりました。iPhone 12 Pro以降のモデルにはLiDARセンサーが搭載されており、これを用いて周囲の環境を3Dスキャンして点群データを取得できます。LRTKアプリにもこの機能が統合されており、スマートフォンをかざすだけで目標物の点群を取得することが可能です。従来は大型機材が必要だった3Dレーザースキャンを、手のひらサイズのデバイスで行えるようになった点は画期的です。
気になる精度についても、実用上十分なレベルが確認されています。モバイル端末を用いた点群計測の精度検証では、iPhoneで取得した点群とトータルステーション(TS)で測 った基準点を比較し、X・Y・Z方向すべての誤差が14mm以内に収まったとの報告があります。この結果は国交省の定める出来形管理基準値(50mm)以内で「合格」に相当し、スマホスキャンでも約1〜2cmの精度が確保できることを示しています。もっとも、これは短時間に限られた範囲をスキャンした場合の精度であり、広範囲を一度に計測しようとするとセンサーの誤差が蓄積するため注意が必要です(一般に5m×10m程度の範囲を2分以内でスキャンし、区切りながら範囲を広げるのが良いとされています)。いずれにせよ、現場で要求される精度範囲内でスマホ点群が活用できることは大きな利点です。
さらにLRTKによって付加される位置座標の高精度化も重要です。通常スマホ単体のGPSでは数mの誤差がありますが、LRTK Phone経由で得られる測位データは水平±2cm程度の精度があります。これにより、取得した点群に厳密なグローバル座標(世界測地系の座標値)を付与できるのが強みです。言い換えると、スマホLRTKなら測った点群が図面座標やGIS座標系上の正しい位置に載るため、後続の設計・施工プロセスでそのまま活用できます。例えば従来のスマホLiDAR点群は相対的な形状把握に留まりましたが、LRTK と組み合わせれば計測と測位を同時に行い、「どこに・何があるか」を正確に記録できるのです。
点群を「見る」技術:現場・事務所・クラウドでの活用とAR表示
取得した点群データは様々な方法で「見る」ことが可能です。まず現場では、スマホやタブレット上でそのまま点群を表示し確認できます。LRTKアプリではスキャン直後に端末上で点群を3D表示し、必要に応じて距離や面積、体積をその場で計測することもできます。これにより「ちゃんと測れているか」「追加で計測すべき箇所はないか」を即座にチェックでき、現場での取りこぼしを防ぎます。また点群と設計データを重ね合わせて表示するAR(拡張現実)機能も登場しています。例えば施工中に取得した埋設管(地中に埋めた配管等)の点群を、埋戻し後に道路上から透視図のようにAR表示することが可能となりました。これにより、普段は見えない地下の埋設物も現場で直感的に「見る」ことができます。
スマホLRTKによるAR活用の 一例。左は道路工事で埋設した管渠を点群スキャンし3Dモデル化したもの、右は埋め戻し後の路面上でスマホ画面をかざし、地下にある管の点群モデルをAR透視して表示している様子です。LRTKクラウドにアップされた埋設管の点群データをiPhone上で呼び出し、現実の風景に重ねて可視化しています。これまで埋設管の記録は埋め戻し前に写真撮影や測量を行い、後でCAD図面化するという複雑なプロセスが必要でした。しかしこの技術を使えば埋設作業中にスマホでスキャンしてアップロードするだけで、管の形状や深さなどを高精度な3Dデータとして自動記録できます。後から別の工事で掘り返す場合でも、経験や勘に頼らずスマホ越しに見るだけで誰でも管の位置・深さが把握可能になるため、無駄な掘削や配管損傷リスクの低減につながります。点群AR表示はこのように現場での直感的な情報確認を支援し、将来的には施工管理の効率と安全性を飛躍的に高めると期待されています。
一方、事務所や離れた場所にいる人々が点群を見る方法としてクラウド活用が挙げられます。LRTKクラウドなどのプラットフォーム上に点群をアップロードすれば、インターネット経由でどこからでもそのデータにアクセスできます。専用ソフトを持っていなくてもWebブラウザ上で3Dビューアが動作するため、発注者や協力会社ともスムーズにデータ共有・閲覧が可能です。クラウド上の点群データに対して寸法を計測したり、断面を切って形状を確認したり、体積計算を行うこともできるため、単なる保管に留まらずオンライン上での解析・検討ツールとして機能します。例えば埋設管工事の現場では、埋戻し中にスマホやPCからLRTKクラウド上の点群にアクセスし、管径や埋設深さをその場で測ったり、一区間ごとの埋戻し土量を即座に算出するといった活用が実現しています。クラウドを使えば現場と事務所間でデータや知見をリアルタイムに共有できるため、点群は遠隔から現場を「見る」ための情報基盤としても有用です。
点群を「伝える」技術:データ共有と関係者への情報伝達
点群データは現場の状況をありのままに記録した高密度な情報であり、これを活用することで関係者への伝達力も飛躍的に向上します。例えば従来の報告資料では2次元の図面や数枚の写真で状況説明をしていた場面でも、点群の3Dビュー画像や動画を用いれば一目瞭然です。カラー写真データと組み合わせれば、点群そのものが視覚的にわかり やすいドキュメントとなります。実際に点群データから生成した3Dモデルを使って平面図や断面図を作成すれば、従来より信頼性の高い図面情報が得られるとも報告されています。平面図では読み取りにくい現場の凹凸形状や細部の状況も、点群を元にしたモデルやパース画像なら直感的に共有できるため、コミュニケーションの齟齬を減らしプロジェクト全体の品質向上につながるのです。
データ共有の面でも点群は強力なツールです。先述のクラウドを用いれば、現地にいないメンバーとも同じデータを見ながら議論できます。遠隔地間で施工検討や検査を行うリモート施工管理も点群活用で現実味を帯びてきました。大容量の点群データもクラウドに上げておけば関係者全員が最新情報を閲覧できるため、常に共通の認識を持って協働作業ができるようになります。例えば、現場代理人が出張先からタブレットで現場点群を確認しながら本社の監督と打ち合わせを行う、といったことも可能です。これにより「言葉や写真だけでは伝わらなかった細部が共有できて助かった」「現地確認の回数を減らせた」といった声も聞かれます(筆者注:想定されるメリットの例です)。点群データは言わば現場を丸ごと持ち運べる資料であり、発注者への出来形説明や他職種との取り合い調整など、様々 な場面でコミュニケーションロスを補ってくれるでしょう。
またLRTKには測位写真というユニークな機能もあります。これはスマホで撮影した写真の位置情報をRTK精度(cm精度)の座標値に置き換えて記録するものです。通常、写真の位置・向き情報は曖昧で後から見ても「どこを撮ったのか」わからなくなりがちですが、測位写真なら「どの構造物のどの部分か」を正確な座標付きで共有できます。例えば施工中に重要な部分の写真を測位写真として撮影・共有しておけば、離れたオフィスの担当者も正確な場所を把握した上で指示や協議が可能になります。点群スキャンほどデータ量が大きくなく手軽なため、写真ベースの高精度な情報共有ツールとして現場で重宝するでしょう。
現場の日常業務での点群活用
このような点群技術を日常業務に組み込むことで、現場の作業プロセスは大きく変革します。従来は節目節目でしか行わなかった計測作業も、スマホLRTKの手軽さを活かして定例的にスキャンするようになります。例えば毎週末にその週の施工箇所をスマホでスキャンしておけば、出来形の進捗を3D記録として蓄積可能です。関係者間の定例会議でも、その点群データをみんなで見ながら「ここまで施工できました」「この部分にズレがあります」といった確認ができます。図面や写真だけでは伝わりにくかった内容も点群という共通の土台があれば議論がスムーズになり、誤解による手戻りを防げます。現場代理人や職長がiPad片手に点群モデルを示しながら打ち合わせをしている光景も、そう遠くない未来に当たり前になるでしょう。
出来形管理にも日常的な点群活用が効果を発揮します。例えばコンクリート打設後に構造物をスキャンし、設計BIMモデルと点群を重ね合わせれば、位置や形状が図面どおりか即座に確認できます。もし不具合(打設不足やはみ出し等)があればその場で発見でき、早期に是正することで後工程への影響を最小限に留められます。従来はレベルやスケールで要所を測ってチェックしていた出来形も、点群を使えば構造物全体を面的に検証できるため、検査漏れが減り品質管理の精度が向上します。最近では点群から出来形検測結果の帳票を自動出力するシステムも登場しており、検査書類作成にかかる時間も短 縮されています。これは日々の出来形検査を効率化するだけでなく、出来形データをそのまま電子納品資料やCIMモデル作成に転用できるという利点もあります。
日常の測量業務も大きく様変わりするでしょう。これまで杭打ちや丁張の位置出し、出来形確認の測量には経験豊富な測量士の立ち会いが必要でした。しかしスマホLRTKの座標誘導機能を使えば、指定した座標までスマホ画面が矢印で作業員を誘導してくれます。測量の専門知識がない人でも杭の位置や検査点をピンポイントで特定できるため、「測量待ち」で工事がストップする時間を減らすことができます。出来形箇所の写真を撮る際も、測位写真機能により後から位置関係が分からなくなる心配がありません。このように誰もが使える計測ツールとして点群技術が日常化すれば、測量作業の属人化を解消し、現場全体の生産性向上に寄与するでしょう。
さらに記録の精度と効率も上がります。例えば従来は施工前後の状況を写真とメモで残していたものが、今後は点群スキャンしたデータとして保存されるように なります。口頭や文章では曖昧だった箇所も3Dデータなら確実に記録できるため、後日の振り返りや証跡としても信頼性が高まります。「現場をそのままスキャンしてタイムカプセル化する」イメージで、日報や出来形資料として点群をアーカイブする現場も増えてきています。こうした蓄積データは将来の改修工事や維持管理業務で貴重な資料となるため、現場のナレッジ(知見)を次世代に引き継ぐという意味でも点群活用には価値があると言えるでしょう。
スマホLRTK導入のステップ
便利なスマホLRTKですが、実際に現場へ導入するにはどのような手順を踏めばよいでしょうか。ここでは初めて導入する方向けに、基本的なステップを3つに整理して紹介します。
• 機材の準備: まずは対応するスマートフォンとLRTK Phoneデバイス本体を用意します。LRTK PhoneはiPhoneに装着して使用するため、比較的新しいモデルのiPhone(LiDAR搭載のProシリーズ推奨)を準備しましょう。またGNSS測位に必要な通信サービスの確認も重要です。ネットワーク型RTKを使う場合はNtrip配信サービスの契約や基地局情報の取 得を、通信圏外で使用する場合は日本の準天頂衛星システム(QZSS)のCLAS受信設定やオプションアンテナの用意を行います。機材さえ揃えばスマホに装着するだけで測位を開始でき、煩雑なセッティングは不要です。
• アプリの導入: 次に、App Storeから「LRTKアプリ」をインストールします。アプリを起動したらユーザー登録を行い、LRTK PhoneをBluetooth等で接続して機器登録を済ませます。測位に必要な設定(ネットワークRTKの接続先やCLASモードの選択など)もアプリ上で行います。使い方ガイドに従って初期設定を完了すれば、スマホ画面上で現在の測位状態(精度や衛星捕捉数)が表示され、準備完了です。あとはアプリ内の「測位」「スキャン」「写真」など各機能ボタンをワンタップするだけで、高精度な測位・計測がスタートします。
• 初期教育と試行運用: 導入当初は現場スタッフへの教育・訓練も欠かせません。とはいえ専門的な知識は不要で、基本的な操作方法さえ覚えれば誰でも扱えます。まずは試しに身近な構造物をスキャンし、点群表示や距離計測を体験してもらいましょう。測位写真を撮ってクラウドにアップし、別の端末で確認するといった一連の流れも実践してみます。数回使ううちに操作に慣れてくれば、日常業務への組み込みは目前です。 最初は社内の意欲あるメンバー数人で小規模に試行し、効果を検証しながら徐々に利用範囲を広げていくとスムーズです。現場の声として「スマホ感覚で扱えるので新人でもすぐ使いこなせた」「まずは出来形検査から導入したら作業時間が半分になった」等の好事例も聞かれます(筆者注:想定事例)。このように、小さな成功体験を積み重ねて社内展開していくことがポイントです。
点群活用の実例と現場の声
実際に点群技術を導入した現場からは、省力化や時間短縮に関する様々な声が上がっています。その中から代表的な実例をいくつか紹介しましょう。
• 埋設管工事の記録効率化: 前述のとおり、LRTKによる埋設管スキャン+AR可視化は劇的な効果をもたらしました。ある現場では「埋設物の記録作業が写真&手書き図から点群スキャンに変わり、データ整理にかける時間が大幅短縮できた」と報告されています。従来は埋設前後に何枚もの写真を撮影し、帰社後に図面へ位置を書き起こす必要がありました。LRTK導入後は埋設直後にその場でスマホスキャンしてクラウド保存するだけで記録完了。複雑な整理作業が不要になり、しかも記録漏れもなくなったことで出来形資料作成の負担軽減につながっています。さらに「後日に他業者が掘り返す際も、クラウド上の点群データを共有すれば一目で正確な埋設位置がわかり安全性が高まる」という声もあり、点群記録の付加価値を実感しているようです。
• 出来形検査の高度化と手戻り防止: コンクリート構造物の出来形検査にスマホ点群を導入した現場では、「その日のうちに設計モデルと出来形を突合できるようになり、ミスの早期発見で手戻りがゼロになった」との報告があります。打設完了後すぐに点群計測しBIMモデルと重ねてチェックする運用を定着させた結果、寸法超過・不足などの不具合を次工程に入る前に是正でき、後からやり直す無駄が解消されました。また点群を活用した出来形帳票の自動作成ツールも取り入れ、「検査書類を作る時間が従来比で数十分の一になった」といった声もあります。これにより現場監督はより生産的な作業(品質分析や工程検討など)に時間を充てられるようになりました。品質管理担当者からは「点群で測れば検査漏れ箇所がなく安心」「データが全部残るので後から確認要求が来ても慌てない」といった評価も得ています。点群による出来形管理は品質確保と効率化の両立を実現した好例と言えるでしょう。
• 遠隔臨場・ICT土工の推進: ICT活用工事の現場では、ドローン空撮や重機搭載GPSによる出来形管理が一般化しつつありますが、スマホ点群もそれを支える技術として注目されています。ある土工現場では、週次の出来形測量をiPhone LiDARスキャンで行い、盛土の体積算出から出来形図作成まで半自動化した結果、測量担当者の作業時間を約40%削減できたといいます(筆者注:想定事例)。また監督員による遠隔臨場(リモート立会い)でも、現場がクラウドにアップした点群データを監督官庁がオフィスでチェックするといった試行が行われています。参加者からは「現地へ行かずに済み移動時間と日程調整の手間が省けた」「点群なので細部まで確認でき、写真だけより安心感がある」と好評です。国土交通省の提唱する遠隔臨場や出来形データ提出にも対応できることから、スマホ点群はICT施工の現場でも活躍の場を広げています。
このように、実例からは時間・コストの削減や品質・安全の向上といった恩恵が数多く報告されています。現場の声を総合すると、「最初は半信半疑だったが使ってみたら手放せない」「作業負担は減ったのにデータ量は増えて一石二鳥」「若手が積極的に使いたがるのでDX推進の起爆剤になる」など、概ねポジティブな評価が多いようです。もちろん課題として、大容量データの取扱いや既存システムとの親和性確保といった声もあります。しかしそれ以上に得られるメリットが大きく、点群技術が現場にもたらす価値は確実に実証されつつあります。
今後の展望:施工管理の見える化、CIM対応、維持管理への展開
スマホLRTKに代表される点群技術の未来は、非常に明るいと言えるでしょう。今後さらに計測技術は進化し、点群取得はますます簡便かつ高速になると考えられます。現在でもGPSと連携したドローン計測、車載型モバイルマッピング、そしてスマホ内蔵LiDARと、新しいデバイスが次々登場しています。将来はより小型で高性能な3Dセンサーが普及し、誰もが日常的に3Dスキャンできる時代が来るかもしれません。実際、最新のスマートフォンには既にLiDARが搭載され、それを活用したアプリも次々と開発されています。技術の進歩によって点群取得や3Dモデル化のプ ロセスが一段と効率化され、コスト削減や品質向上が一層期待できます。
またクラウドやAIとの連携も進んでいくでしょう。膨大な点群データをクラウド上で保管・共有し、高速なコンピューティングで解析するサービスが一般化すると考えられます。例えば、点群から自動で地形の変化を検知したり、橋梁など構造物の劣化兆候をAIが診断したりといった応用です。現在でも点群ノイズを除去・分類するソフトウェアがありますが、ディープラーニングの導入で精度と自動化がさらに進むでしょう。そしてクラウド経由で最新の点群を関係者全員が閲覧できるようになれば、遠隔地間での協働も一層円滑になります。点群とAIによるリアルタイム施工管理が実現すれば、「人が現場に行かない施工管理」も夢ではありません。
国土交通省は令和5年度(2023年度)から全ての公共工事にBIM/CIMを原則適用すると発表しており、今後は設計・施工段階の3Dデータ活用が一層促進されます。点群データはCIMモデル(施工情報モデル)を構成する重要な要素であり、設計時から出来形管理、維持管理まで一 貫した3Dデータ連携が求められます。幸い、点群技術はこうしたニーズに応えるポテンシャルを十分に備えています。国交省の要領でも完成図書作成に点群活用が推奨されており、古いインフラ資産では現地スキャンにより正確な現況図面を作成するケースも増えています。例えば老朽橋梁では過去図面が残っていないことも多いですが、点群で橋全体をスキャンして復元図を起こせば、形状や寸法の整合性が高い信頼性の高い記録を得ることができます。完成時に取得した出来形点群は将来の定期点検や補修計画のリファレンス(基準資料)として非常に有用であり、維持管理への展開も進んでいます。実際、橋梁・トンネル・ダムなどのインフラ点検で、定期的に点群を取得して経年変化を定量的に把握したり、変位やひび割れの兆候を早期に検知したりする試みも始まっています。自治体レベルでも、都市全域の3D点群データをオープンデータ化して防災や都市計画に役立てる先進事例が登場しつつあります(例:奈良県香芝市の公開事例など)。
今後期待されるのは、点群データを核としたデジタルツインの実現です。デジタルツインとは、現実の施設や都市をサイバー空間上に丸ごと再現しリアルタイムにリンクさせる概念です。点群データはその「今」を映し出す欠かせない要素であり、センサーで継続取得する最新点 群を仮想空間に同期させることで、遠隔地にいながら現実と同じ状況を確認・操作できるようになります。土木・建設分野でも施工現場のデジタルツイン化が進めば、より的確な意思決定や創造的なプロジェクト管理が可能になるでしょう。実際、点群とBIMモデルを重ねて現場でAR表示し、出来形のズレを即時チェックするといった先進的な試みも始まっています。将来的にはこうした技術が普及し、「点群ありき」で業務フローを構築する時代が来るかもしれません。3Dスキャンとデータ活用が当たり前になれば、技術者には新たなスキル習得も求められますが、それ以上に得られる価値は大きいはずです。点群データはデジタル時代の土木・建設業に不可欠な基盤技術として今後ますます定着していくでしょう。
スマホLRTKをはじめとする手軽な点群計測技術は、現場の日常を変える力を持っています。計測や記録、情報共有のスタイルが刷新され、施工管理の「見える化」が加速するでしょう。読者の皆さんも、点群技術を活用した新たな現場DXにぜひチャレンジしてみてください。詳しくは公式サイトの紹介ページ(スマホLRTKの詳細)も参考になります👉 [LRTK公式サイト](https://www.lrtk.lefixea.com/lrtk-phone) です。点群活用が当たり前になった未来を見据え、「測 る・見る・伝える」技術を現場の明日への力に変えていきましょう。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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