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土木DXの鍵は点群データ:
最新トレンドと未来展望 

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2025年2月28日 掲載
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本記事では、土木業界で点群データの活用がいかに重要であり、今後の未来にどう影響するのかを分かりやすく解説します。デジタルトランスフォーメーション(DX)が土木業界にも押し寄せる中、その中心的な役割を果たすのが「点群データ」です。以下では、点群データ活用による施工の精度向上や効率化、そして業界の未来について順に説明していきます。 

1. 土木DXとは?点群データの重要性 

土木業界におけるDXとは、ICTやデジタル技術を活用して設計・施工・維持管理のプロセスを大きく変革することです 。例えば国土交通省は2023年度から直轄工事でBIM/CIMの原則適用を開始し、業界全体でデジタル化が加速しています 。人手不足や働き方改革(いわゆる「2024年問題」)への対応も背景にあり、DXによって生産性向上と安全性確保が急務となっています。 

こうしたDXの中で点群データは特に重要です。点群データとは、レーザースキャナや写真測量によって取得した無数の3次元点の集合で、現場の地形や構造物をありのままデジタルに記録したものです 。図面やモデルでは把握しきれない現場の詳細形状を正確に再現でき、「デジタルツイン」として現実空間のコピーを作る基盤となります。これにより、図面が無い老朽インフラでも3Dモデル化が可能となり 、現場の状況をデータで一元管理して分析できるようになります。 

点群データ活用によるメリットは大きく、施工の精度向上やコスト削減に直結します。例えば従来は人手と時間がかかった測量作業も、ドローン等で点群を取得すれば「2日かかっていた測量が0.5日で完了した」との報告もあります 。このように業務をスピーディーかつ効率的に行える点で、DX推進の鍵として点群データが注目されています。

 

2. 点群データとCIM連携の最新トレンド 

 

現場の点群データ(地形)と砂防ダムのCIMモデルを一体化したデジタルツインの例 。設計モデルと現況点群を重ね合わせることで、施工計画の最適化に活用できる。 

点群データをCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)やBIMの3Dモデルと統合する動きが進んでおり、これが最新トレンドの一つです。設計段階で作成した3Dモデル(BIM/CIMモデル)に、施工前後の現場点群データを組み合わせることで、現場全体のデジタルツインを構築できます 。デジタルツイン上では、設計と現況の比較検討やシミュレーションが可能になり、従来の2D図面では見落としがちな干渉や課題も事前に発見できます。 

具体例として、大手土木株式会社ではレーザースキャナーで取得した現場点群と、土工や構造物・仮設構造物のCIMモデルを統合し、砂防ダム工事のデジタルツインを作成しています 。このデジタルツイン上で施工計画を立てることで、切土・盛土の土量やコンクリート打設量、型枠・足場材の数量を高精度かつ迅速に算出できるようになりました 。結果として無駄のない施工計画が立案でき、コスト削減や工程短縮に繋がっています。 

国土交通省もBIM/CIMの活用を推進しており、「BIM/CIMを活用した監督・検査の効率化」の事例として点群データ連携が紹介されています 。点群×CIM連携により、設計・施工・検査がシームレスにデータ連携する環境が整いつつあり、これがスマート施工(Smart Construction)への移行を後押ししています。 

3. スマート施工における点群データ活用 

スマート施工とは、ICT技術をフル活用して施工プロセスを高度化・自動化する取り組みです。点群データはスマート施工の様々な場面で活用されており、特に出来形管理や土量計測で威力を発揮します。 

例えば、橋梁基礎工事の出来形管理では、従来は測量機器や下げ振りを使って杭の傾きや偏心を一本ずつ測定していました。これに対し、レーザースキャナで掘削箇所全体を点群計測し解析することで、深い基礎坑内でも安全かつ一括で出来形を把握できるようになりました 。若築建設の実証では、直径12m・深さ25.5mの深礎工で点群による出来形測定を行い、作業の省人化と安全性向上を確認しています。人が立ち入る必要が減り、ヒューマンエラーも防げるため、品質確保にも有効です。 

また、点群データを用いた土量計算の自動化もスマート施工の重要なポイントです。従来は現場で高さを測り図面と照合して土量を算出していましたが、点群があれば掘削前後のデータを比較するだけで切土・盛土量を即座に算出できます。前述のデジタルツインの例では、点群とモデルを突合することで切土・盛土量を高速かつ高精度に把握できています 。このように3D設計データと点群の連携により、出来形の偏差や過不足を視覚的に確認しながら施工を進められるため、手戻り削減と精度向上につながります。 

実際の現場事例としては、法面工事でドローン点群を使って出来形を評価し作業時間を短縮したケースや 、トンネル掘削で点群と設計モデルを比較して掘削過不足を管理するケースなど、数多く報告されています。点群データ活用により「計測→解析→是正」のサイクルが飛躍的に短縮され、スマート施工を支える基盤技術となっています。 

4. 施工管理と測量における点群活用 

点群データは、施工管理や測量の現場でも既存手法を大きく変えつつあります。まず測量分野では、精度と効率が飛躍的に向上しました。ドローンを使った写真測量やレーザースキャナ測量で得た点群を処理することで、従来は人手で行っていた地形測量が大幅に省力化されています。前述のようにドローン測量で測量期間が4分の1になった例 は、測量そのものの生産性革命と言えるでしょう。さらに得られた点群から数値地形モデル(DTM)や等高線図を自動生成し、設計や施工計画にすぐ活用できます。 

また、点群データは既存インフラの維持管理にも応用が広がっています。道路や橋梁の定期点検でレーザースキャンを行い、変状箇所を点群データ上で記録・比較することで、ひび割れ検出や変位計測を効率化できます。点群データをフィルタリング・分類して特徴を視覚化すれば、森林の管理や設備の維持管理、災害復旧現場の確認といった作業を大幅に効率化できるとの報告もあります 。例えば災害現場では、崩壊した地形をドローン点群で即座にモデル化し危険箇所を把握したり、土砂量を見積もって復旧計画を立案したりできます。点群データが現場状況の「見える化」を進め、迅速かつ的確な意思決定に寄与しているのです。 

さらに、ドローン測量との連携も施工管理上欠かせません。上空から広範囲を短時間で点群化できるドローンは、ダム・造成現場や山間部の法面工事などで活用されています。取得した点群はクラウド上で関係者と共有でき、遠隔から進捗を確認したり、専門家が離れた場所からアドバイスしたりすることも可能です。近年は高精度なRTK-GNSSを搭載したドローンも登場し、取得点群に位置情報を高い精度で付与できるようになっています。こうした測量×点群の進化が、施工管理の省力化と高度化を下支えしています。 

5. LRTKの活用:点群取得の手軽さとAR 

近年はハードルが高かった点群計測を手軽に行えるデバイスも登場しています。例えば LRTK Phone はスマートフォンに取り付ける小型デバイスで、RTK-GNSSによるセンチメートル精度の測位と点群スキャンが簡単に行えます。専用アプリを使えば現場でスマホをかざして周囲をスキャンし、その場で3D点群データを取得可能です。取得データには高精度な位置情報が付与されるため、測ったその場で点群上の距離や体積を計算することもできます 。盛土や堆積土をスキャンして即座に土量を算出する、といった使い方が現実のものとなっています。従来は専門業者に依頼していた点群計測が、自社スタッフのスマホ操作だけでできるため、現場のDX化を一気に推進できるでしょう。 

一方、より広範囲を高精度に計測したい場合は LRTK LiDAR のような専用LiDAR機器が有効です。LRTK LiDARは長距離のレーザースキャンが可能なハードウェアで、地上設置型の3Dレーザースキャナーとして機能します。大規模な造成現場や複雑なプラント設備の計測でも、高密度な点群を高速に取得できます。これまで高価だったレーザースキャナーを、比較的低コストかつ使いやすい形で提供している点が画期的です。LRTKシリーズには他にも、作業員が身に着けるLRTKウェアやヘルメット一体型のGNSS端末など、現場での位置計測・点群取得を手軽にするラインナップが揃っています 。自社の用途に合った端末を組み合わせることで、点群データ活用の幅がさらに広がるでしょう。 

さらに、ドローンとの連携も大規模現場では鍵になります。LRTKデバイスで取得できない範囲はドローン空撮による写真点群やUAVレーザースキャンでカバーし、地上・上空のデータを統合することで、現場全体の詳細な3Dデータを構築できます。例えば山岳トンネル工事では、坑内は地上型LiDARで、坑外の地形はドローンで、それぞれ点群化して繋ぎ合わせることでトータルな地形把握が可能です。LRTKの高精度測位技術はドローンによる写真測量の位置補正(ジオリファレンス)にも活用でき、空中写真から生成する点群にも精度を担保できます。こうしたマルチプラットフォームでの点群取得により、どんな現場でも隙のないデジタル記録が実現します。 

最後に、AR(拡張現実)技術を活用した点群データの可視化も見逃せません。タブレットやスマホを通じて現場を映し出し、その映像上に点群データや設計3Dモデルを重ね合わせることで、直感的に状況を把握できます 。例えば施工中の現場に設計の完成モデルをAR表示すれば、出来形(進捗)を一目で把握でき、計画との差異を即座に確認できます 。大手建設会社では周辺の点群データとBIMモデルを位置合わせし、AR上に建物の配置や配管位置を可視化するシステムを開発しました。その結果、基礎位置の検査や配筋チェックにかかる時間を多く削減できる見込みと報告されています 。このようにARを使えば、図面と現場を見比べる手間が省け、関係者全員が同じイメージを共有できます。施工ミスの早期発見や手戻り防止にもつながり、品質管理の精度向上にも寄与します 。LRTKの高精度デバイスで取得した点群をクラウドにアップし、ARグラスで共有閲覧するといった活用も将来は一般的になるでしょう。 

6. 今後の展望と業界の未来 

点群データ活用は今後さらに進化し、土木の未来を大きく切り開くと期待されています。まず注目すべきは点群データとAIの融合です。AIを使って膨大な点群から有用な情報を自動抽出する研究が進んでいます。例えば、点群上で構造物の劣化や変状を自動検出したり、掘削や盛土の進捗をAIが認識して工程管理にフィードバックしたりする技術です。これにより、熟練者の経験に頼っていたチェック作業も自動化・省力化でき、品質管理がさらに高度化するでしょう。実際、点群データを機械学習で分類して地物を識別する技術は実用化が始まっており、先述のScanXのように点群の自動分類・解析サービスも登場しています 。今後はAIの進化によって、点群データが持つ価値を最大限に引き出すことが可能になるはずです。 

通信技術の進展も見逃せません。5Gやクラウドの活用によるリアルタイム施工管理が現実味を帯びています。高速大容量の5G通信網を使えば、現場で取得した高精度点群データを即座にクラウドにアップロードし、オフィスや遠隔地からリアルタイムに現場の3D状況をモニタリングできます。監督者や発注者が現地に行かなくても、点群データ上で進捗を確認し指示を出すことが可能となり、遠隔臨場やリモート施工管理が当たり前になるでしょう。実際に国土交通省も遠隔臨場(リモート現場監督)のガイドラインを整備しつつあり、点群データや映像データを共有して検査・立会いを行う事例が増えています 。クラウド上に蓄積された点群データは、将来的な改修工事や災害対応の際にデジタルアーカイブとしても役立ちます。蓄積データを活用したシミュレーションやデジタルツインによる予測保全など、新たな展開も期待できます。 

こうしたスマート施工の未来が進む中で、求められるスキルも変わってきます。従来の測量や施工管理の知識に加え、ドローンの操縦や3Dデータ処理、AI解析の基礎といったデジタルスキルが技術者には必要となるでしょう。国も「i-Construction人材育成」を掲げており、3次元データを扱える人材の育成が急務です。逆に言えば、これらのスキルを身につければ業界での価値が高まり、DX時代の土木を牽引する存在になれます。DX化は企業にとっても競争力向上のチャンスであり 、点群データをはじめとするデジタル技術への投資が今後ますます重要になるでしょう。 

7. まとめ:

点群データ活用で変わる土木の未来 

土木DXの鍵として浮上する点群データは、測量から施工計画、品質管理、維持管理まで幅広い分野で革新をもたらしています。現場の「今」を精密にデジタル化し、設計データと融合することで、私たちはより賢く安全にインフラを作り、守ることが可能になりました。まずは小さな一歩から点群活用を始めてみることが大切です。例えば試験的に現場の一部を3Dスキャンし、従来の手法と比較してみるだけでも効果を実感できるでしょう。また社内で点群データを共有・検討することで、関係者のデジタルデータに対する理解も深まります。 

幸い、LRTK Phoneのように誰でも簡単に点群データを取得できるツールが登場しています。専門知識がなくても使えるデバイスを導入すれば、明日からでも現場DXを推進できます。点群データを活用した業務改善は、生産性向上やコスト縮減に直結し、ひいては働き方改革や人材不足解消にも寄与するでしょう。競争力強化のためにも、点群計測技術を自社に取り入れる意義は大きいと言えます。 

土木の未来は、データを制する者が制すると言っても過言ではありません。点群データという新たな「資源」を活用できる企業・技術者が、これからのインフラ整備をリードしていくでしょう。今すぐ始めるべき点群活用のステップとして、まずは小型RTK機器の導入や社員研修から着手し、できる範囲で現場の3Dデータ化を進めてみてください。そうした積み重ねがやがて大きなDXの成果となって表れるはずです。 

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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