top of page

地形測量における点群データ活用:
トータルステーションとの比較とメリット 

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均2分30秒で読めます
2025年2月28日 掲載
DSC03177.jpg

地形測量はインフラ整備や建設計画に欠かせない重要なプロセスです。従来はトータルステーション(TS)やレベルなどを用いて二人一組で行う測量が主流でしたが、近年は3Dスキャン技術による点群データの活用が大きなトレンドとなっています 。トータルステーションは1980年代以降に普及した測量機器で、角度と距離を一台で高精度に計測できるため、地形測量や建設現場の位置出しなど幅広い分野で使われてきました。一方で、国土交通省の推進するi-Construction(ICT施工)の流れもあり、ドローンやモバイル端末の搭載センサーによる3次元測量が現場に浸透しつつあります 。

本記事では、トータルステーションと点群データ測量を比較しながら、点群データ活用のメリットを施工管理、出来形管理、計画・設計の各場面で解説します。 

トータルステーション vs. 点群測量 

 

精度と測定手法の違い: トータルステーション(TS)は特定のポイントを1点ずつ狙って測定するのに特化しています。プリズムなどのターゲットに光波を当て、返ってきた信号から距離と角度を求めて座標を計算します。一方、レーザースキャナーやフォトグラメトリによる点群測量は、短時間で大量の測点を面的に取得できるのが特徴です。TSが「点」で測るのに対し、点群測量は「面」を一度に取得するイメージです。この違いにより、従来は測りにくかった複雑地形や大規模構造物も非接触で容易に計測できます。 

効率とスピードの比較: 点群データ測量の最大のメリットの一つが作業効率の向上です。例えば、数ヘクタール規模の造成地の地形測量では、トータルステーションなら約3日かかる作業が、地上型レーザースキャナーなら約2日、UAV(ドローン)写真測量なら半日程度で完了すると報告されています 。実際、レーザースキャナー搭載ドローンでの測量は、ある比較実験で従来法に対し6分の1の時間で広範囲のデータ取得を終え、全体の作業時間を半分以下に短縮したという結果もあります。効率化の観点ではレーザースキャナーの圧勝であり、人件費削減や日程短縮に大きく寄与します。 

コスト面: 測量コストについては、機器導入費用や人件費を総合的に見る必要があります。高性能な3Dレーザースキャナーやドローン測量機材は初期投資が大きいものの、短時間で広範囲のデータを取得できるためトータルの作業量削減によるコストメリットが期待できます。一方、トータルステーションは単価が比較的低く既存資産を活かせるため、狭小範囲の測定や既知点測量のみで十分な場合には依然有効です。適切な手法選定により、精度とコストのバランスを取ることが重要です。 

精度の比較: トータルステーションは1点ごとの測定精度が高く、ミリ単位の誤差で角度・距離を取得できます。点群データも近年はレーザースキャナーの高性能化や写真測量アルゴリズムの進化により、数センチ~数ミリ程度の精度を達成するケースが増えています。ただし、計測精度を担保するには適切な基準点校正や後処理が不可欠です。TSで取得した基準点を用いて点群に位置座標を与えるハイブリッド手法も一般的で、これにより衛星測位が使えない場所でも高精度な3D計測が可能となります。 

それぞれの弱点: 点群測量にも弱点はあります。レーザースキャナーの場合、黒色や光沢のある物体、ガラス面などはレーザー光を反射しにくく、データに欠損(ノイズや穴)が生じやすい傾向があります。また、点群は広範囲を一度に捉える反面、特定の一点だけを直接測るという用途には不向きです。視線が通らない死角の裏側なども取得できないため、細部の計測ではTSで補完する場面もあります。一方、トータルステーションは人力で点を稼ぐ必要があるため測点数が限られ、現場状況の全体把握が難しいというデメリットがあります。写真やメモがなければ「どこを測ったか」が後から分かりづらい点も指摘されています。したがって、実務では両者を上手く使い分け、広範囲は点群で素早く取得し、要所はTSで精密確認するといったハイブリッドな活用が理想的です。 

点群データの活用場面 

施工管理における活用 

施工管理では、工事の進捗状況や施工精度をリアルタイムに把握することが求められます。点群データを活用すると、現場全体の3Dの進捗記録を定期的に取得でき、各時点の出来高を可視化して比較することが可能です。例えば、毎週ドローンや地上レーザースキャナーで現場をスキャンすれば、点群データを時系列で重ねることで「どの部分が完了し、どこが未着手か」を一目で把握できます 。これにより、口頭や写真では掴みづらかった進捗も客観的なデータとして共有でき、施工計画の見直しや資材手配の判断に役立ちます。

 

また、点群データと設計BIMモデルを重ね合わせることで、施工中の構造物が設計通りの位置・形状で進んでいるかをその場で検証できます。FARO社のBuildITのようなソフトでは、スキャンした現場点群と設計データを比較し、ずれを色分けしたヒートマップで表示できます。鉄骨建方やコンクリート打設の直後にその場でスキャンし、設計モデルとの差異を確認すれば、もし誤差や施工ミスがあっても即座に発見して是正できます。これは従来のように要所要所をTSで測って数値チェックする方法と比べて、圧倒的にスピーディーで網羅的な施工精度管理が可能となる点でメリットが大きいです。 

さらに、点群データの活用は安全管理の面でも有効です。人が立ち入れない危険箇所や高所もリモートでスキャンできるため、測量作業員のリスク低減につながります。例えば法面の変状確認やトンネル内の計測を遠隔操作ロボットやドローンで行えば、作業員が危険域に入らずに必要データを取得できます。以上のように、施工管理では点群データが進捗の見える化と施工精度保証、安全性向上に貢献しています。 

出来形管理における活用 

 

出来形管理(出来形測定)とは、完成した構造物や造成地形が設計通りの寸法・形状になっているかを検証する工程です。従来はトータルステーションや巻尺で代表点を測り、図面寸法と照合する方法が主流でした。しかし点群データを用いれば、完成物を全面的にスキャンして取得し、設計3Dデータや基準断面と隙間なく比較することができます 。例えば道路やダム堤体の出来形をチェックする際、完成形の点群と設計モデルとの差をカラーマップ表示すれば、一見して高低や厚みの過不足を把握可能です。人手では測定が難しい曲面や複雑形状(球形タンクのような構造物)でも、点群ならその曲面全体の出来形を評価できます。 

具体的には、点群処理ソフト上で設計面と出来形点群を突き合わせ、許容誤差を超える箇所を色分け表示したり、断面図を自動生成したりできます。これにより、出来形の検査作業が大幅に効率化します。従来は現場で測った点を一つ一つ図面と見比べて合否判断していたものが、今やソフト上で面的・立体的に検証できるため、見落としも減り品質管理水準が向上します 。さらに、ヒートマップで視覚的に不具合箇所を示せるので、発注者や検査官への説明資料としても分かりやすく、有効です 。 

出来形管理への点群活用は土量管理にも威力を発揮します。切土・盛土工事では、施工前後の地形点群データを比較することで出来高数量(土量)の算出が自動化できます。平均断面法のような手計算をせずとも、点群同士の差分から盛土・切土量を精度良く算出できるため、出来高管理や出来形図作成が迅速になります。このように点群データは、出来形管理において品質検査の効率化と信頼性向上に寄与しています。 

計画・設計における活用 

 

計画・設計段階でも点群データは有用な情報基盤となります。まず、工事着手前に現況地形や周辺構造物を点群で取得しておくと、設計モデルとの干渉チェックや整合性確認が容易にできます 。例えばリノベーション工事で既存構造との取り合いを検討する際、現地をスキャンした点群と新設構造物の3Dモデルを重ねれば、当初の設計に無理や干渉がないか事前に発見できます。これにより、設計ミスを未然に防ぎ、施工後の手戻りを減らすことが可能です 。 

設計変更への迅速な対応も点群活用のメリットです。施工中に地盤条件の変化などで設計修正が必要になった場合でも、最新の現況点群を用いて即座に再設計シミュレーションができます。点群データ上で新たな構造物配置を試行し、出来形を予測することで、設計変更の影響を素早く評価できます 。これは従来、変更箇所を再測量して図面起こしし直す手間を考えると画期的な効率化です。 

また、都市計画や土木計画では点群データから詳細な3D地形モデルを作成し、経路計画や造成計画に活用できます。点群から起こしたデジタル地形モデル上で道路線形を検討したり、住宅団地の配置をシミュレートしたりといった具合に、仮想空間上で計画を詰めることが可能です。近年注目されるデジタルツインの文脈でも、点群データは現実空間の精密なコピーとして機能し、計画策定から維持管理まで一貫利用できます。例えば完成後の維持管理では、定期点検時の点群を蓄積することで構造物の経年変化を追跡できますし、災害時には被災前後の点群比較で被害量を迅速に算出する、といった応用も期待できます。 

以上のように、計画・設計フェーズで点群データを用いることは、現況把握の高度化と設計プロセスの柔軟化をもたらし、安全で最適な設計・施工につながります。 

具体的な活用事例 

 

点群データ活用の具体例として、いくつかのプロジェクト分野を挙げます。 

  • 道路建設: 道路の新設や改良工事では、着工前にドローン写真測量で沿線地形の点群を取得し、設計のベースとするケースが増えています。施工中も、路盤や法面をスキャンして設計モデルと比較することで、所要の高さ・勾配が確保されているか随時チェック可能です。出来形では舗装完了後の路面をスキャナ計測し、平坦性や横断勾配をヒートマップで評価するといった使われ方をしています 。これにより、長大な道路でも区間全体の品質を漏れなく検証できるようになりました。 

  • ダム・治水工事: ダム建設では基礎掘削からコンクリート打設まで大規模な土工が伴いますが、点群計測により掘削形状や堤体形状を常に3Dで把握できます。設計断面との差異を逐次確認することで、掘削過不足やコンクリ打設の変状を早期に補正できます。また河川改修では、施工前に河道や堤防の現況をスキャンしておき、計画高水敷との比較や出来形確認に活用されています。点群データに基づき土量を精密に算出できるため、盛土材の発注管理や出来高精算もスムーズになります。 

  • 都市開発・造成: 市街地再開発や造成工事では、既存建物や地形を含めた広域の点群データを取得し、設計検討に役立てています。例えばビル建設プロジェクトで周囲の建物位置を点群で把握すれば、クレーン配置計画や仮囲い計画に活かせます。都市部では上空からの写真測量に加え、地上LiDARやモバイルマッピングで建物立面も取得することで、360度死角のない現況モデルを作成できます。これにより、周辺環境と調和した設計や、景観シミュレーションによる住民説明など、計画段階から点群を情報共有ツールとしても活用できます。 

  • トンネル・橋梁: トンネル工事では掘削面の形状を毎掘進ごとにスキャンし、設計断面とのズレをチェックすることで、掘削しすぎ・足りない箇所を即座に把握します。橋梁工事では橋脚や桁の出来形を点群で計測し、設計高さや傾きの許容範囲内か検証します。特に長大橋では全橋梁を丸ごとスキャンしてBIMモデルと突合することで、全要素の出来形を一括評価する試みもあります。さらに竣工後の維持管理にも点群が応用され、定期点検時にスキャンした点群からひび割れや変位を検出する研究も進んでいます。 

 

これらの事例からも分かるように、点群データの活用は道路、河川、ダム、都市開発など多様な土木・建設分野で進んでおり、現場の効率化と品質向上に寄与しています。実際、山梨県では県内の建設事務所全てに点群処理システムを配備し、地形モデルの断面抽出や出来形管理を円滑化した結果、道路管理や河川工事の安全性・生産性が大きく改善したと報告されています 。 

 

また、大手建設会社が協業したトンネル工事では、四足歩行ロボットとドローンにLiDARを搭載して坑内外を計測し、取得した点群をリアルタイムで遠隔地に伝送する実証が行われています。このシステムにより、本社にいながら現場の進捗や出来形を即座に確認でき、遠隔からの施工管理が実現しました。点群データは、このように広域計測や遠隔モニタリングといった新たな施工管理手法も可能にしています。 

LRTKの紹介

(最新技術による点群計測) 

 

最後に、点群計測の最新ソリューションとして注目されるLRTKについて触れます。LRTK(レフィクシア社)は、GNSS-RTK(リアルタイムキネマティック)測位技術と高精細3Dスキャン機能を組み合わせた画期的な測量デバイスシリーズです。その特徴をいくつか紹介します。 

  • iPhone+LiDARで手軽に高精度測量: LRTK Phoneと呼ばれる製品は、iPhoneやiPadに装着できる小型のRTK-GNSS受信機で、スマホをセンチメートル級精度の万能測量機に変身させます。iPhone搭載のLiDARスキャナとRTK測位を連携させることで、単体では数メートル程度の誤差があるモバイル点群計測が飛躍的に高精度化します。これにより、現場でスマホをかざすだけで高精度な点群データを取得し、任意の2点間距離や高低差を即測定するといったことが可能になります。専用アプリとクラウドサービスを通じてデータは即時に共有でき、測量図や設計図との照合もその場で行えるため、1人1台で現場の即時測量・検測を実現します。従来は重機材と専門オペレーターが必要だった3D測量が手のひらサイズでこなせる点は、現場の生産性向上に直結するでしょう。 

  • マーカー不要の高精度3Dスキャン: LRTK LiDARと呼ばれる地上型レーザースキャナーデバイスも提供されています。こちらはRTK-GNSSを内蔵したスキャナーで、煩雑なターゲット設置や既知点への誘導なしに、スキャンと同時に測点に絶対座標(世界座標)を付与できるのが強みです 。GNSS-RTKによるセンチメートル級の測位と高密度レーザースキャンを組み合わせ、なんと200m先の構造物まで高精細に捉えることが可能です。広範囲の現場も数台のセットアップでカバーでき、取得した点群はその場でスマホやタブレット上で数百万点規模まで表示・確認できます。もしデータ欠落が見つかっても即座に再スキャンできるため、取りこぼしのない効率的な計測が行えます。 

  • クラウド連携とデータ共有: LRTKで取得した点群データはクラウドサービス「Lクラウド」に自動アップロードされ、一元管理されます。専用ソフトをPCにインストールせずとも、ブラウザ上で座標の確認や距離・勾配測定が完結し、関係者とオンラインでデータを共有できます。現場でスキャン→クラウド送信→オフィスで即座に設計担当が確認、といったワークフローが可能になり、遠隔地とのコラボレーションが円滑になります。これまで巨大な点群データのやり取りはハードディスク郵送と言われた時代からすると、画期的な省力化と言えます。 

  • ドローン測量との組み合わせ: LRTK技術はドローン搭載の写真測量やLiDARとも親和性が高く、相互補完的に使うことで更なる効率化が可能です。例えば広大な造成地では上空からドローンで概略の地形点群を取得しつつ、構造物周辺や細部はLRTK LiDARで地上計測するといった使い方が考えられます。双方の点群を統合することで、上空からの俯瞰データと地上からの詳細データが揃った高精度かつ高密度な3Dモデルが短時間で完成します。実際、前述のトンネル工事のように地上ロボットLiDARとドローンを併用する例も登場しており、今後こうしたマルチプラットフォーム測量が主流になる可能性があります。 

 

以上のようにLRTKは、専門機器とモバイルデバイスの垣根を超えて誰でも簡単に高精度なRTK測量・3Dスキャンを可能にするソリューションです。「点群」や「RTK」、「トータルステーション」、「3Dスキャン」といったキーワードが示す測量技術の進化は、着実に現場の働き方を変えつつあります。

 

地形測量における点群データ活用は、トータルステーションの精度と信頼性を継承しながら、その利便性と表現力を飛躍的に拡大するものです。今後ますます点群データが普及し、施工管理・出来形管理・計画設計のあらゆる場面で威力を発揮することでしょう。本記事で述べた手法や事例、そしてLRTKのような最新技術を参考に、ぜひ自社のプロジェクトに3D点群活用を取り入れてみてください。きっと測量・管理業務の効率と品質が向上し、新たな価値創出につながるはずです。 

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page