はじめてのRTK測量:
土木技術者が知っておくべき基礎知識

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2025年3月13日 掲載

RTK測量とは、高精度な衛星測位をリアルタイムで行う技術です。RTKは Real Time Kinematic(リアルタイムキネマティック)の略称で、日本語では「動的干渉測位」を意味します。
従来の単独GPS測量と比べて飛躍的に高い精度で位置を測定できるため、土木測量の現場でも活用が広がっています。
本記事では、RTK測量の基本概念から仕組み、GPS測量との違い、活用方法、初心者が始めるための準備、精度向上のポイントまで解説します。さらに、LRTKを活用した簡単導入方法や無料資料請求の案内も紹介します。RTK測量に興味を持つ土木技術者や測量担当者の方はぜひ参考にしてください。
1. RTK測量とは?基本概念とGPS測量との違い
RTK測量とは、基地局(基準局)からの位置補正情報を利用して行う高精度な衛星測位方法です。1台の受信機で行う通常のGPS測量(単独測位)では、得られる位置情報には数メートルの誤差が発生しますが、RTK測量では数センチ以内の誤差に抑えることが可能です
。この高精度を実現するため、RTKでは2台のGNSS受信機を使用します。1台を基準局(既知点に設置)として固定し、もう1台を測定対象の移動局として運用することで、両者の相対位置関係から精密な測位を行います。
RTK測量では、観測したい点(移動局)と既知点(基準局)で同時にGNSS観測を行い、基準局から送られる補正データを用いて移動局の位置をリアルタイムに補正します。これにより衛星信号に含まれる各種誤差要因が打ち消され、単独測位より格段に高い精度で測位できるのです。例えば、日本の測地系においてもRTKならXYZ座標をセンチメートル精度で求めることが可能で、従来は難しかった精密な測量作業が現場で即時に行えるようになっています。
2. RTK測量の仕組み(基準局・移動局・補正情報)
基準局とは位置座標が正確にわかっている固定局のことで、工事現場では既知点や現場付近の基準点にアンテナを据えて設置します。一方、移動局(ローバー)は測位したい各測点にアンテナを持って移動する受信機です。両局は同時にGPSやGLONASSなど複数のGNSS衛星からの信号を受信し、基準局側で観測したデータをリアルタイムに移動局へ送信します。移動局の受信機は、自身の観測データと基準局から送られた補正データを即座に解析し、高精度な位置座標を算出します。これがRTK(リアルタイム)測量の基本的な仕組みです。
補正情報の伝送には無線通信が利用され、一般的には以下のような方法があります。
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専用の無線機による通信:基準局と移動局の間をUHF帯や特定小電力無線(920MHz帯)などの無線で直接つなぎます。現場にインターネット環境がなくても運用でき、短距離であれば安定した通信で補正データを届けられるメリットがあります。ただし電波の届く範囲(見通し距離)や障害物の影響を受けるため、広い現場では中継器が必要になる場合もあります。
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ネットワーク型RTK(Ntrip方式):移動局が携帯回線などインターネットを通じて補正情報配信サービスに接続し、基準局の代わりに国土地理院の電子基準点網などからリアルタイム補正データを受け取る方式です。仮想基準点(VRS)方式とも呼ばれ、全国各地に整備された基準局網を利用するため、自前で基準局を設置せずにRTK測位が行えます。現場での初期投資が抑えられる反面、サービス提供会社との契約や通信環境が必要になります。
RTK測量では、基準局と移動局の距離(基線長)が長くなるほど通信遅延や大気誤差の影響で精度が低下しやすいという特徴があります。
一般的に数km程度までの短基線であれば高精度を維持できますが、離れすぎると誤差が蓄積し、固定解が得られにくくなります。こうした長距離測量の課題を解決するために、国土地理院の電子基準点データを活用したネットワーク型RTK-GNSSが実用化されており、長基線でも短基線と同程度の精度で測位が可能となっています。要するに、自前の基準局を置かずに広域補正情報を得られるネットワーク型RTKを使えば、基準局から遠い現場でもcm級測位ができるわけです。
3. 土木測量におけるRTKの活用方法
高精度かつ即時に位置座標を取得できるRTK測量は、土木・建設分野の様々な場面で活用されています。具体的には、以下のような用途でRTKのメリットを生かすことができます。
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基盤測量・現況測量:道路や造成地の縦横断測量、地形測量などで、従来はトータルステーションや水準測量に多大な時間を要した作業も、RTK-GNSSを使えば測量者が移動しながら短時間で多数のポイントを計測できます。地形図作成や設計のための現況把握に威力を発揮します。
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丁張り・杭打ちの設置(測設):設計図上の座標を現地に出す作業(丁張りかけ、杭打ち)の精度向上と効率化にもRTKが使われています。従来は測点ごとに光波測距で視通を確保する必要がありましたが、RTKなら見通しがなくてもGNSSで位置出しできるため、障害物の多い現場でも迅速に測設作業を行えます。
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出来形管理・品質管理:ダムや道路の盛土・切土の出来形測定、舗装厚の検証など、施工後の形状を面的に計測する用途にもRTKが利用されています。広範囲の出来形管理を短時間で行え、取得した3次元データから土量計算や仕上がり精度の評価を行うことができます。
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インフラ点検・維持管理:高速道路や鉄道、橋梁などのインフラ点検では、ひび割れや変状箇所の位置を正確に記録することが重要です。RTK対応GNSS機器を用いれば、点検箇所の写真とその座標をひも付けて記録したり、異なる時期の測定結果を比較して経年変化を追跡したりできます。従来は紙地図上でおおまかに場所を示していたインフラ点検も、RTKにより精密な位置情報と結び付けたデジタル管理が可能になります。
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ICT施工・マシンガイダンス:最近の施工現場では、ブルドーザーやグレーダーなど建設機械にGNSS受信機を搭載し、自動制御で整地や掘削を行う 情報化施工(ICT施工) が普及しつつあります。RTK-GNSSはこれら建設機械のマシンガイダンスにも用いられており、設計面と機械のブレード位置をリアルタイムに突き合わせて自動制御することで、人手による測量や丁張り設置を減らしつつ高精度な施工を実現しています。例えば、国土交通省のi-Construction施策でもRTK-GNSS搭載機械による施工が推奨されています。
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UAV測量・空中写真測量:ドローン(UAV)を用いた写真測量にRTKを組み合わせる事例も増えています。RTK対応ドローン(あるいはカメラに外部GNSS受信機を搭載)を使えば、飛行中に撮影画像に高精度の撮影位置情報が付与されるため、地上に設置する標定点の数を大幅に削減できます。その結果、広範囲の測量でも作業効率が上がり、精度も向上します。土木分野では造成地の土量計算や法面の変位計測などでUAV写真測量が活用されていますが、RTKとの組み合わせによってより実用的かつ精度の高い3次元モデル作成が可能となっています。
このように、RTK測量は基礎的な地形測量から高度なICT施工、維持管理、空間データ計測まで幅広く役立っています。特に「迅速さ」と「精度」が要求される場面でRTKの効果は大きく、今後も土木技術者にとって欠かせない技術となっていくでしょう。
4. 初心者がRTK測量を始めるための準備
RTK測量をこれから始めたいという初心者の方向けに、事前に準備すべきポイントを整理します。必要な機材や手順を把握しておけば、スムーズに導入することができます。
RTK測量開始までの準備項目:
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測量機材の用意:RTK対応のGNSS受信機を準備します。基本は基準局用と移動局用の2台セットですが、自前で基準局を設置しない場合は移動局用1台+補正サービス契約でも構いません。アンテナ、三脚、ポール、バッテリーなどの付属品も含め、現場で測量できる一式を揃えましょう。最近はスマホと連携して使える小型GNSS受信機も登場しており、後述のLRTKもその一例です。
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通信環境の整備:基準局から移動局へ補正情報を伝送する通信手段を用意します。無線機を使う場合は送受信用の無線モジュールを準備し、免許が必要な周波数帯の場合は申請も行います。ネットワーク型RTKを利用する場合は、移動局側にインターネット接続できるスマートフォンやモバイルルーターを用意し、Ntrip配信サービスの契約を事前に結んでおきます(例:国土地理院の電子基準点データを提供するVRSサービスなど)。
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既知点の確保と基準局設置:自前で基準局を設置する場合、現場付近に正確な座標値が分かっている既知点を確保することが重要です。公共基準点(四等三角点や電子基準点)や事前に測量した既知点にアンテナを据え付けて基準局とします。既知点がない場合でも仮基準点を設けてRTK測量は可能ですが、その場合は後から既知点と結合して座標補正を行う必要があります。基準局の設置場所は見通しの良い開けた場所を選び、三脚などで安定させましょう。
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測量用ソフト・コントローラーの準備:GNSS受信機を制御したり測位結果を確認したりするためのソフトウェアや機器を用意します。メーカー純正のコントローラ端末や、タブレット・スマホ用のアプリケーションがあります。ネットワーク型RTKを使う場合は、Ntrip接続用のアプリやソフト上で補正サービスの設定(IPアドレス、ポート、ログイン情報など)を行います。日本測地系の測量成果が得られるよう座標系の設定も確認しましょう。
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動作テストと練習:実際の現場に出る前に、準備した機材一式でRTK測量の動作確認と練習を行います。例えば、会社の敷地内で既知点を基準局にして周辺数点を測量し、既知点との差を確認することでシステムが正しく動作しているか検証できます。移動局が「FIX解」(整数マルチパス解決済み)になるまでの時間や、衛星の捕捉状況なども事前に把握しておきましょう。測量手順に不安がある場合は、経験者に立ち会ってもらったり、メーカー提供のトレーニング動画やマニュアルを参照したりすると安心です。
以上の準備を経れば、ひと通りRTK測量を始める体制は整います。特に基準局の取り扱いと通信設定は初心者がつまずきやすいポイントなので、焦らず確実に準備しましょう。また、初めは天候の良い日中など衛星受信状態の良い環境で練習し、徐々に本番の測量に移行するとスムーズです。
5. 測量精度を向上させるためのポイント
RTK測量で高い精度を安定して得るためには、いくつかの工夫や注意点があります。以下に精度向上のための主なポイントをまとめます。
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基準局座標の精度確保:基準局に設定する座標値はできるだけ正確なものを使いましょう。既知点の座標を採用するのが理想ですが、未知点を仮基準にする場合は後日その基準点を厳密に測定し、測量成果全体にオフセット補正を適用する必要があります。基準局座標に1mの誤差があれば、移動局で得られる座標も一様に1mずれてしまいます。「絶対精度」を求めるなら基準局の精度が肝心です。
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アンテナ設置と測角測高:基準局・移動局のアンテナはしっかりと固定し、できるだけ水平に保ちます。アンテナ高(アンテナ基準面から測点までの高さ)を正確に測定し入力することも重要です。アンテナ高の入力ミスはそのまま高さ方向の誤差につながります。また、移動局のポールは可能な限り鉛直に立て、傾斜補正機能付き機種でもキャリブレーションを行ってから使いましょう。
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衛星受信環境の最適化:測量現場の周囲環境にも注意を払いましょう。上空を広く見渡せる開けた場所で測位するのが理想です。建物の陰や樹木の下では衛星を十分に捕捉できなかったり、マルチパス(電波の反射)が発生して測位精度が劣化したりします。どうしても遮蔽物がある場所を測る必要がある場合、測定時間を伸ばしてデータを安定させたり、障害物の少ないタイミング(衛星配置の良い時間帯)を選ぶなど工夫します。
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複数周波数・複数衛星系の活用:可能であればマルチGNSS・マルチ周波数対応の受信機を活用しましょう。GPSに加えGLONASSやGalileo、みちびき(QZSS)など複数衛星を使うことで、衛星配置が良くなり精度向上と測位の安定化が期待できます。L1/L2など複数周波数に対応する受信機であれば電離圏遅延の補正精度も上がり、速やかにFIX解が得られるようになります。最新のRTKサービスでは、QZSSのセンチメータ級補強サービス(CLAS)の電波を受信して補強情報を得るタイプもありますが、対応機器を用いることで通信不要で広域補正が可能です。
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定期的なチェックと検証:測量作業中も適宜精度をチェックしましょう。たとえば一日の作業開始時と終了時に既知点を観測し、その座標差を確認するといった方法で精度管理を行います。万一大きな誤差が生じていれば、その日の測点データを補正または再測する判断材料になります。また、移動局で測位中にFIX解からFLOAT解(解が不確定な状態)に戻ってしまった場合は、すぐに再度初期化(リセット)してFIXに戻してから測り直すようにします。常に解のステータスやRTKの残差値を監視し、異常があれば原因を究明する姿勢が高精度維持には不可欠です。
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測位結果の平滑化と平均化:必要に応じて、得られた測位結果をそのまま使わず平滑化処理や時間平均を取ることで精度向上を図れます。RTKはリアルタイム性が特徴ですが、例えば1点を測るのに数秒〜数十秒静止し、その間の座標を平均するといった方法で精度をさらに高められます。特に標高値は変動が大きい傾向があるため、余裕がある場合は複数回観測して平均を取ると安心です。
以上のポイントに留意することで、RTK測量の精度と信頼性を一層高めることができます。要約すれば「正確な基準」「良好な受信環境」「機器の性能活用」「常時モニタリング」が精度確保の鍵となります。高精度が要求される場面ほど基本に立ち返った対策が重要です。確実な運用で、RTK測量の恩恵を最大限引き出しましょう。
6. LRTKを活用したRTK測量の簡単導入
高精度なRTK測量は魅力的ですが、機材を一から揃えるとなると高額になりがちで、中小規模の土木業者やこれから導入する初心者にとってハードルが高い面もありました。そこで近年登場しているのが、スマートフォンを活用した手軽なRTKソリューション 「LRTK」 です。LRTKはレフィクシア株式会社が提供するデジタル測位技術ブランドで、専用の小型GNSS受信機とスマホアプリを組み合わせて、誰でも簡単にcm級測位ができることを目指した製品シリーズです。
中でも初心者におすすめなのが LRTK Phone(エルアールティーケー・フォン)です。LRTK Phoneはスマートフォンに後付けして使うタイプのGNSS受信機で、アンテナ・GNSS受信機・バッテリー・無線通信機能が一体化されたオールインワンのデバイスです。使い方は非常に簡単で、手持ちのスマホ(AndroidまたはiPhone)にLRTK Phoneを装着し、専用アプリ「LRTK App」をインストールして起動するだけ。これだけで、スマホ上でRTK測位によるセンチメートル級の位置情報を取得できるようになります。従来のRTK機器のように複雑な設定や専門知識を必要とせず、直感的な操作で測量が始められる点が大きな特徴です。
LRTK Phoneは通信手段としてBluetoothやWi-Fi接続に対応しており、スマホとはワイヤレスで連携します。また、920MHz帯の特定小電力無線にも対応しているため、通信圏内であれば基地局役のLRTKと移動局役のLRTK間で直接補正データをやり取りすることも可能です。基準局を自前で用意しない場合は、スマホのモバイル回線を通じて電子基準点等のネットワークRTKサービスに接続し、補正情報を受け取って測位することもできます(Ntripクライアント機能対応)。
つまり、自前の基地局を置く方法とネット経由で補正を受ける方法の双方に対応しているため、現場の状況や運用形態に応じて柔軟に導入できるのです。
現場での具体的な活用シーンとしては、スマホで撮影した写真にLRTKで得た高精度座標を自動付与し、クラウド上にデータ保存するといったことが可能です。例えばコンクリート構造物のひび割れ調査や災害現場の状況記録では、スマホで写真を撮るだけでその位置(経度緯度)をcm精度で記録できるため、報告資料の精度と信頼性が飛躍的に向上します。測量専門でないインフラ点検担当者でも、スマホ操作感覚で正確な位置付き写真データを扱えるようになるのは画期的と言えるでしょう。
LRTKシリーズには、スマホ装着型のPhone以外にも様々なラインナップがあります。例えば、LRTK Pro2は小型・軽量な据え置き型のRTK測量機で、防塵防水・耐衝撃性を備えた現場向けの堅牢モデルです。アンテナからバッテリー、無線モジュールまで全て内蔵しており、ネットが届かない山間部などでも日本の準天頂衛星「みちびき」のCLAS補強信号を受信して測位が可能、さらに傾斜補正機能も搭載しているためポールが斜めになった状態でも正確な位置を取得できます。
また、ユニークな製品としてはLRTKヘルメットも提供されています。こちらは測量アンテナ一体型のヘルメットで、作業員がヘルメットを被って歩くだけで自動的に測量ができるというものです。超薄型の独自アンテナが内蔵されており、最大12時間駆動のバッテリーで連続測位が可能、取得した座標はBluetooth経由でスマホに送信されるため完全ハンズフリーでの測量を実現します。
障害物の多い現場や両手が塞がっている状況でも、作業員の動きをそのまま測量データに変えることができ、作業効率の向上に寄与します。
このようにLRTKを活用すれば、RTK測量の導入ハードルを大きく下げることができます。専門の測量技術者でなくとも、現場の監督員や施工管理担当者が自ら高精度測位を扱えるようになるため、測量待ちによる工程の遅れを減らしたり、リアルタイムで出来形を確認して即座に施工に反映したりといったメリットも生まれています。価格面でもサブスクリプション(月額利用)プランが用意されており、初期費用を抑えて導入できる柔軟さも魅力です。まさに「RTK測量の民主化」とも言えるLRTKは、小規模な土木業者やこれからRTKにチャレンジする方々にとって強い味方となるでしょう。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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