RTK測量で工事品質向上:
土木現場の精密測定ガイド

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2025年3月13日 掲載

精密測定が工事品質向上につながる理由
RTK測量による精密な位置測定は、土木工事の品質管理に直結します。従来の測量誤差が数メートル単位では、設計図どおりに施工しても出来形(できがた)にズレが生じかねません。しかし、RTKのセンチメートル級測位なら狙った位置・高さに施工物を収めることができ、設計どおりの品質を確保しやすくなります。例えば、橋脚やトンネルなど構造物の位置出しを高精度に行えば、部材の継ぎ目や合流部での狂いが減り、構造物全体の耐久性・安全性が向上します。また、道路工事で路盤や舗装の仕上げ厚を正確に管理することで、凹凸の少ない滑らかな仕上がりとなり、耐久性も長持ちします。測量精度の向上により手戻りや施工ミスの早期発見・是正が可能になり、結果的に品質不良の防止と工期短縮、コスト削減にもつながるのです。
さらに、RTKによるリアルタイム測位は、施工中の段階で即座に計測結果を得られるため、その場で品質チェックを行いやすいという利点もあります。たとえば掘削工で所定の深度まで掘れているかを即時に確認し、必要に応じて追加掘削や埋め戻しを指示できます。これにより、後からの測量で誤差が見つかり再施工といった事態を未然に防ぎ、初回から品質基準を満たす施工を実現できます。要するに、精密測定がもたらす「測ってすぐ分かる安心感」は、現場の判断ミスを減らし品質管理の精度を一段と高めるわけです。高品質なインフラを築くためには、ミリ単位までこだわる精密測量が不可欠と言えるでしょう。
RTKによる精密測定の具体的な活用シーン
RTK測量の威力は、さまざまな土木施工の場面で発揮されます。ここでは特に活用が進んでいる基準点測量、出来形管理、掘削・埋戻し管理、舗装厚の管理の4つのシーンに焦点を当て、その具体例を紹介します。
基準点測量での活用 – 正確な基準が工事の要
どんな工事も、まずは基準となる測量点(ベンチマーク)を現場に設定することから始まります。RTK測量を用いれば、この基準点測量を迅速かつ高精度に行うことが可能です。従来はトラバース測量など時間のかかる手法で既知点から測量範囲内に新たな基準点を設置していましたが、RTKなら電子基準点や既知の座標値から直接現場へ座標を持ち込めます。例えば、国土地理院の提供するネットワーク型RTK(VRS方式)を使えば、全国に配置された電子基準点からリアルタイムに補正情報を取得し、現場の任意点でcm級の基準点測量ができます。これにより広い工事エリアでも短時間で複数の基準点を設置でき、後続の測量・施工をスムーズに進められます。
基準点測量でRTKを活用する際のメリットは、人員と時間の大幅な節約です。トータルステーション(TS)による多角測量では2人1組での作業が普通でしたが、RTK-GNSSなら作業員1人でアンテナを持って歩き回るだけで測点を設置できます。視通しの悪い森の中や見晴らしの効かない市街地でも、空が見える場所さえ確保できれば設置可能です。また、既知点間の測量誤差が蓄積するリスクも低減します。RTKは常に全球測位衛星系(GNSS)の世界座標にひも付いた測位を行うため、長距離の測量でも誤差が蓄積しにくく、離れた複数現場で統一基準を保つことも容易です。正確な基準点が素早く得られれば、その後の出来形測定や墨出し作業すべての精度向上につながり、工事全体の品質底上げに寄与します。
出来形管理への活用 – 仕上がりをリアルタイム検証
出来形管理とは、完成した構造物や施工部分が設計どおりの寸法・形状になっているか確認し、品質を検査する工程です。RTK測量はこの出来形管理にも活躍しています。たとえば道路の路盤整形後や盛土・切土の施工完了時に、仕上がり面の高さや勾配をRTKで測定すれば、設計値とのズレを即座に把握できます。数cmの誤差までリアルタイムに検出できるため、もし規格値からの逸脱があればその場で追加整正し、再度RTK計測して確認する、といったその日のうちの手直しが可能です。これは従来のTSやレベルによる測量記録を持ち帰ってから判断する方法に比べ、圧倒的に効率的です。
特に近年は国土交通省が推進する「ICT土工」などで、3次元出来形管理データの活用が進んでいます。RTK搭載のタブレットや測量機器で取得した多数の点群データを使えば、出来形の3次元モデルを短時間で作成可能です。これにより、道路やダムなど大規模構造物でも、一度に広範囲の出来形を把握し、施工の均一性や平坦性をチェックできます。例えばダムの法面の出来形をRTK-GNSSで連続測定し、3Dで色分けした誤差マップを作成すれば、高低差のムラを一目で発見でき品質管理に非常に有用です。もっとも、RTKによる高さ方向の計測精度については注意が必要です。公共工事では高さの許容誤差が±5cm程度と定められることが多く、それを確実に検証するには測量誤差を±1cm程度に抑える努力が求められます。必要に応じて、RTKによる出来形測定とあわせて水準測量で高さを精密補正するなどの工夫も取り入れ、信頼性の高い出来形管理を実現しましょう。
掘削・埋戻し管理への活用 – 見えない部分も精密チェック
土木工事では、掘削や埋め戻しといった地中の作業プロセスでもRTK測量が威力を発揮します。たとえば建設現場で基礎を掘削する際、設計どおりの深さ・形状まで掘れているかをRTKで随時測定すれば、掘り過ぎや掘り残しを防止できます。従来は職人の勘や重機のオペレーターの目視で行われていた深度管理も、RTKなら数センチの狂いも見逃しません。掘削底や側壁の出来形を確認することで、必要以上に掘り下げて生コンの埋戻し量が増える(コスト増につながる)といったミスも避けられます。
埋め戻し作業でも同様に、所定の高さまで材料が充填・転圧されているかをRTKで検測します。各層ごとの締固め後に高さをチェックし、計画高と比較することで、沈下や過剰盛土の予防につながります。特に道路や鉄道の路盤構築では、層厚ごとの丁寧な管理が将来の沈下防止に重要です。RTK測量なら広いエリアの高さを短時間で何点も測れるため、転圧による沈み込み具合を面的に評価することも容易です。例えば、盛土を敷設→転圧した直後と、翌日沈下が落ち着いたタイミングでRTK計測を行い、差分を解析すれば、全体の沈下傾向を把握できます。これにより追加転圧の要否を判断し、規定の地耐力・密度を確保できる厚みで施工できているか確認できます。
なお、掘削・埋戻し管理では重機と測量の連携もポイントです。最近のICT建機(3Dマシンコントロール搭載重機)はGNSSを利用してバケットやブレードの高さを自動制御するものがありますが、RTK基準局からの補正情報で精度を高めているものが多くあります。重機による粗施工と、人手による精密測量を組み合わせることで、見えない部分の施工品質も万全を期すことができます。
舗装厚の管理への活用 – 道路の長寿命化を足元から支える
道路舗装工事においてもRTK測量は重要な役割を果たします。舗装厚の管理とは、アスファルトやコンクリート舗装の仕上げ厚が設計基準を満たしているか確認する工程です。一般に、舗装前に路床・路盤の高さを測定し、舗装後に路面の高さを再度測定して、その差分から実際の舗装厚を求めます。RTKを用いれば、この舗装前後の高さ測定を迅速にかつ高い再現性で行えます。誤差が数cm以内であれば、舗装厚(通常数十cm程度)の評価において十分な精度と言えます。
具体的には、まず路盤仕上げ時にRTKで出来形測定を実施し、縦断・横断方向のプロファイルを取得します。次に舗装打設後、同じ測点をRTKで測り直します。RTK測位は再現性が高くないと言われますが、短時間に同一箇所を測り比べる場合には影響を小さくできます。測定した路盤高と路面高の差から求めた舗装厚を全地点で検証し、不足箇所や過厚箇所がないかチェックします。過度に厚い舗装は材料ロスとなり、薄すぎる舗装は早期損傷につながるため、適切な厚みを確保することが品質上不可欠です。
RTKによる舗装厚管理の利点は、施工直後の出来立てホヤホヤの路面を人が歩き回らずに測定できる点です。通常、舗装直後は高温で柔らかく、人が載ると表面を傷めてしまいます。RTKなら作業員が路肩からポールを伸ばすか、車両にアンテナを搭載して計測することで、新設舗装への直接的な荷重を避けつつ精密測定が可能です。最近ではドライブバイ測量(車載型GNSS測量)技術も発達しており、RTK受信機を載せた車でゆっくり走行しながら路面高さを連続計測するといった手法も実用化されています。これらの技術により、安全かつ効率的に舗装厚を検証でき、品質確保に役立っています。
RTK測量で精度を向上させるコツと注意点
RTK測量を最大限に活用するには、いくつか押さえておきたい精度向上のコツと注意点があります。高い測位精度を安定して得るために、以下のポイントに留意しましょう。
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衛星受信環境を確保する: RTKはGNSS衛星からの電波が命綱です。周囲に高層建物や樹木があると電波が反射・減衰し、測位誤差の原因(マルチパス)になります。出来るだけ見通しの良い開けた場所で測定し、どうしても遮蔽物がある場合は測点を少し移動させるなど工夫しましょう。また、衛星の配置(衛星ジオメトリ)が悪い時間帯には測定を避けるのも手です。受信機の画面でPDOP値(測位幾何強度)を確認し、高すぎる場合は測定を一時見合わせるといった判断も精度維持に有効です。
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初期化(整数固定解)を安定させる: RTK測位では、搬送波の整数サイクル不定値(アンビギュイティ)を解決して「固定解(Fix解)」を得る必要があります。測定開始直後や電波途絶後には解が不安定になりがちなので、必ず基準局とローバーを静止させた状態で十分な衛星数を確保し、初期化を完了させてから測点の移動を始めてください。固定解が得られていない(フロート解の)状態で測定した点の座標は信頼できません。機器の表示や音声ガイダンスで固定/フロートの状態を確認し、確実にFixになっていることを都度確認する習慣をつけましょう。
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高さ方向の精度に注意: GNSS測位は一般に平面方向より高さ方向の精度が劣る傾向があります。そのため、基準点の高さ既知誤差やジオイドモデルのずれなど、高さまわりで潜在的に生じる誤差要因に気を配る必要があります。重要な高さ測量では、同じ点を数回測定して平均を取る、あるいは別途レベルで高さ基準点に検証測量するなどの対策が有効です。また、日本では電子基準点による日本重力系の高さ基準(ジオイド高)が整備されていますので、可能な限り公式のジオイドモデルや補正サービスを利用し、高さ精度を補完しましょう。
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測定の再現性を確認する: 前述のとおりRTK測量は時々刻々と測位値が変動し、同じ場所でも完全に同じ値が得られない特性があります。そこで、重要な測点については時間をおいて複数回計測し、一致性を確認することが大切です。一度測った後、しばらく他の点を測ってから最初の点に戻り再測定し、差が許容範囲内か確かめましょう。国のガイドラインでも、RTKによる基準点測量時には同一点の再測定を行い、得られた座標値の偏差をチェックするよう推奨されています。この手順により偶発的な誤差や機器のドリフトを検出でき、データの信頼性が向上します。
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機器の特性と限界を理解する: RTK-GNSS機器にも得意不得意があります。例えば、高速で移動する対象の測位や、地下や屋内での測位はRTKの範囲外です。また、無線で補正情報を送受信する都合上、通信圏外ではネットワーク型RTKが使えないなどの制約もあります(この点は次項のLRTKで克服されています)。使用する機種の仕様(対応衛星、周波数、無線範囲)を事前によく理解し、必要に応じて予備バッテリーの準備や通信環境の確認をしておきましょう。機器を正しく扱い、その限界を知った上で運用することが、精度トラブルを防ぐ最大のコツです。
以上のポイントを踏まえれば、RTK測量のポテンシャルをフルに引き出し、安定した精密測位によって工事品質の一層の向上を図ることができるでしょう。
最新RTK技術「LRTK」による精密測定
RTK測量のハードルを大きく下げる技術として、近年登場した「LRTK」にも注目が集まっています。LRTK(エルアールティーケー)はレフィクシア株式会社が提供する最新のRTK測位ソリューションで、スマートフォンを使ってRTK測量ができる画期的なシステムです。従来は専用の高価なGNSS受信機や無線機材が必要だったRTKが、LRTKでは手持ちのスマホに専用デバイスを装着するだけで実現できます。これにより、測量の専門部署でなくとも現場監督や技術者自身が手軽にセンチメートル精度の測量を行えるようになりました。
LRTKの技術的なポイントは、日本の準天頂衛星システム「みちびき」が配信するセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)に対応していることです。スマホに装着したアンテナ一体型デバイス(LRTK Phone 4C)がみちびきのL6帯信号を受信し、専用アプリでリアルタイムに補正情報を適用することで、スマホ単体では実現できない高精度測位を可能にしています。特筆すべきは、携帯電波の圏外でも測位が可能な点です。通常のネットワーク型RTKは移動通信網を介して補正データを受け取りますが、山間部や地下では通信が途絶する場合があります。LRTKはみちびきからの直接補強信号を使うため、通信圏外の現場でもセンチメートル級測位が継続できるのです。これはトンネル工事や山岳工事など、従来GNSS測量が困難だったシーンでも測位を可能にする大きなブレイクスルーと言えるでしょう。
現場での使い勝手も優れており、LRTK専用アプリ(LRTK App)上で測量点の記録や図化が簡単に行えます。例えば、測量しながらスマホで写真を撮影すれば、その写真に撮影場所の高精度座標と方位情報を自動付加して保存できます。インフラ点検で撮影した写真を地図上にプロットしたり、出来形管理で撮影した現場写真に測位情報を埋め込んだりといった活用が手軽にできます。また、取得した点群データや3Dモデルをクラウドで共有する機能も開発されており、現場とオフィス間でデータ連携を円滑にするプラットフォームとしても期待されています。まさに「スマホが万能測量機になる」ツールとして、LRTKは現在建設業界で静かなブームになりつつあります
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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