1人1台RTK時代へ:
iPhoneとLRTKで変える土木測量の常識

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2025年3月14日 掲載

近年、建設・土木業界では深刻な人手不足や働き方改革への対応が大きな課題となっています。特に測量分野では熟練技術者の高齢化や後継者不足が顕著で、これまで50年以上も大きな技術進歩がない状態が続いてきました。従来の測量作業は専門知識が必要で1人では行えず2人以上での作業が必須とされ、長時間労働にもつながっていました。
こうした背景から、業界全体でデジタルトランスフォーメーション(建設DX)が求められており、国土交通省も「i-Construction」などを通じてICTや3次元測量の活用を推進しています。例えば、ドローン測量の導入によって作業日数を大幅に短縮し必要な人員を削減できることが実証されており、少人数でも測量業務を進められる技術として注目されています。
こうした流れの中、「1人1台RTK」という新たな測量スタイルが現場に革命をもたらそうとしています。RTK(リアルタイムキネマティック)測位とは、GNSS(全地球測位システム)に基づく高精度な測位技術で、リアルタイムにセンチメートル級の測位が可能になるものです。
従来は高価な専用機器と熟練オペレーターが必要だったRTK測量が、スマートフォンと小型受信機さえあれば誰でも行える時代が到来しつつあります。例えばiPhoneに装着できる小型RTK受信機「LRTK Phone」を用いれば、スマホがそのまま高精度な測量機器に変身します。この技術革新により、土木測量の常識が大きく変わろうとしています。
従来の測量手法と1人1台RTK測量の比較
従来の建設測量では、トータルステーション(TS)やレベルといった光学測量機器、あるいはGNSS測量機器を用いるのが一般的でした。これら従来手法にはいくつかの課題があります。まず人手と時間の問題です。トータルステーションによる測量では、測点にプリズムを持つ作業員と機器を操作する測量士の最低2名が必要で、機器の据付や角度・距離の読み取りに時間を要しました。
またGNSS測量でも、基地局(ベース局)の設置や測量計画の立案に専門知識が求められ、場合によっては複数人での作業や高価な機材が必要でした。手作業によるメジャー測量や水準測量はなおさら時間がかかり、測定結果の記録や図面化まで含めると長時間の作業につながります。
さらに、従来の測量は職人技術に依存した属人的な作業になりがちでした。ベテラン測量士の経験と勘に頼る部分も多く、現場ごとに測量精度や効率にばらつきが出ることも課題でした。例えば狭い現場や障害物の多い環境では、従来手法だと測量自体が困難になるケースもありました。また、測点の記録ミスや手計算による誤差など、人為的なエラーも発生しがちでした。
一方で1人1台RTKによる測量は、これら従来手法の課題を一挙に解決します。RTK測量は前述の通り衛星測位によってリアルタイムに数センチの測位精度を得られる技術であり、近年はネットワーク型RTKや国産衛星「みちびき」のセンチメータ級補強サービス(CLAS)の普及で利便性が飛躍的に向上しています。特にスマホ測量とも言えるスマートフォン+小型RTK受信機の組み合わせにより、単独作業でも即座に高精度測位が可能となりました。例えばLRTK PhoneをiPhoneに装着すれば、煩雑な基地局の設定やケーブル接続も不要で、一人の技術者が現場を歩き回りながら測量できるようになります。通常のスマホ内蔵GPSでは誤差数メートルあった位置精度も、RTKを使えば数センチメートル程度まで向上します。
その結果、これまで2人1組で半日かかっていた測量作業も、1人で短時間に完了できるケースが増えます。実際、iPhoneとLRTKによる1人1台体制が現場業務の生産性を大幅に向上させる可能性があると報告されています。
LRTK Phoneを活用したスマホRTK測量の流れ
では、実際にLRTK Phoneを使ったRTK測量がどのように行われるのか、その基本的な流れを見てみましょう。
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デバイスの準備と接続:まずiPhoneなどのスマートフォンにLRTK Phone受信機を取り付けます。LRTK Phoneはスマホケース一体型の超小型GNSS受信機で、BluetoothやWi-Fiでスマホとワイヤレス接続されます。煩雑なケーブル接続は不要で、受信機の電源を入れ専用アプリを起動すれば測位準備は完了です。アンテナとバッテリーを内蔵した受信機本体は片手に収まるサイズで、必要に応じて一脚や三脚に据え付けて使うこともできます。
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RTK補正情報の取得:高精度測位のためにGNSSの補正情報(RTK補正)を取得します。スマホがインターネットに接続できる現場では、民間のネットワーク型RTKサービスや基準局VRSから補正データを受信します。日本国内であれば、みちびき(準天頂衛星)によるCLAS(センチメータ級測位補強サービス)にも対応しており、携帯電波が届かない山間部などでも衛星から直接補正情報を得ることが可能です。LRTK Phone 4C圏外対応モデルなら、まさに通信圏外の現場でもCLASで高精度測位が継続できます
。このように多様な補正手段に対応しているため、どんな現場環境でも安定したRTK測量が行えるのが強みです。
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測量アプリでの測点計測:スマホ上の専用アプリ「LRTK」を使って測量を開始します。アプリには単点測位モードと連続測位モードがあり、単点測位では任意の地点の座標をワンタップで記録できます。測りたいポイントでスマホ画面のボタンを押すだけで、緯度・経度・標高を即座に取得できるので、従来のように読み取りや書き写しミスもありません。連続測位モードでは1秒間に10点(10Hz)の頻度で位置をログ記録でき、移動しながら地形のプロファイルを取ることも可能です。例えば敷地を歩き回って境界線や地形の形状を連続記録すれば、その軌跡を後で図化することができます。
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墨出し・位置出し(レイアウト):LRTK Phoneは計測だけでなく、設計図上の位置を現場に写し取る墨出し作業にも活用できます。従来は図面上の座標を現場に出すのに測量士が角度と距離を割り出して杭打ちやマーキングを行っていましたが、LRTKなら設計座標をアプリに入力して誘導機能を使うことで、誰でも所定の位置にマーキングできます。専用アプリ上では、設定したターゲット(目標点)に対する現在位置からの距離と方向がリアルタイムに表示されます。いわばスマホが測量機+ナビの役割を果たし、目的の点まで「あと何メートル」「どちら方向へ何度」といったガイダンスを表示してくれるのです。必要に応じて端末を一脚に取り付け、位置と高さを合わせ込んで印を付ければ墨出し完了です。複雑な計算や熟練の勘に頼らずとも、確実に基準点や構造物配置位置を出せるので、測量の専門外のスタッフでもレイアウト作業がこなせます。
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出来形管理・写真計測:施工後の出来形管理(出来形測量)にもスマホRTKが威力を発揮します。例えばコンクリート打設後の構造物の天端高さや中心位置を、一人で手早く測定できます。測定結果は即座にデジタルデータとして保存されるため、現場で確認しその場で是正が必要か判断可能です。さらにLRTKアプリには写真測量機能も備わっています。スマホのカメラで現場写真を撮影すると、その写真に高精度な撮影位置(緯度・経度・標高)とカメラの向きが自動記録されます。記録された写真は地図上に配置され、複数の写真を組み合わせて現況を俯瞰することもできます。例えば施工前後の写真を高精度な位置情報付きで残しておけば、出来形の比較検証も容易になります。
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点群スキャン(3D計測):iPhone 12以降のモデルに搭載されているLiDARスキャナーと組み合わせれば、地形や構造物の3D点群計測も可能です。LRTKアプリの「地形スキャン」機能を使い、スマホをかざして対象をスキャンすることで点群データを取得できます。取得された点群の各点にはRTK/CLASによる高精度な座標が付与されるため、従来のレーザースキャナー並みに精度の高い3次元測量がスマホ一つで実現します。これにより、掘削現場の出来形土量計算や構造物の変位計測など、高度な計測も1人でこなせるようになります。
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データ保存・共有(クラウド連携):測定が完了したら、データの整理と共有です。LRTKアプリで取得した位置情報データや写真、点群はそのままスマホ内に保存されるほか、ワンクリックでクラウド上の専用プラットフォーム「LRTKクラウド」にアップロードできます。クラウドに上げたデータは、ウェブブラウザ上で地図やモデルとともに可視化・管理できます。例えば日々の測量点をクラウドに蓄積していけば、自動で出来形管理の報告書(日報)を作成したり、関係者とリアルタイムに情報共有したりすることも可能です。これまで紙の野帳やCAD図面で個別に管理していた測量情報が、クラウドを介して一元化され、必要な人がすぐにアクセスできるデータベースに変わります。
以上がLRTK Phoneを用いたスマホRTK測量の基本フローです。現場での測量作業がこのようにシンプルになり、しかも精度は確保されていることがお分かりいただけるでしょう。次章では、実際の施工現場でどのようにこの技術が活用できるか、具体的なシーンを見ていきます。
建設施工現場におけるRTK技術活用シーン
スマホRTK測量(LRTK Phone)の導入によって、建設・土木の施工現場では様々な業務で効率化と品質向上が期待できます。ここでは代表的な活用シーンをいくつか紹介します。
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基準点測量と水準測量:着工時の仮設基準点の設置や、水準点の測定作業にスマホRTKが活躍します。従来は熟練測量士がトランシットやレベルを使い半日がかりで行っていた作業も、LRTKなら1人で短時間に終えることが可能です。設計図面上の座標や標高データをもとに現地で基準点を出し、即座に他の作業員と共有できるため、その後の施工全体の効率も上がります。例えば道路工事では、起点や中心線の基準出しを迅速に行えるため着工準備がスムーズになります。
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墨出し(位置出し)作業:建物の配置や構造物の設置位置をマーキングする墨出しは、施工精度を左右する重要な工程です。スマホRTKによる墨出しでは、誰でも正確な位置にマーキングできる点が利点です。鉄筋の配筋位置、アンカーボルトの据付位置、道路標識や照明柱の建植位置など、あらゆる「ここに設置」が求められる場面で、設計値通りの位置を現場に再現できます。LRTKのアプリに目標座標をセットしておけば、現場ではスマホ画面の案内に従って移動しマーキングするだけです。これにより、墨出し作業の属人化が解消し、測量の専門家不在でも現場施工を進められます。経営層にとっても、墨出しミスによる手戻りややり直しが減ることで工期短縮・コスト削減の効果が期待できるでしょう。
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出来形管理(出来形測量):施工後の出来形確認にもスマホRTKが有用です。たとえば舗装工事での路面高や、造成工事での敷地の仕上がり高さを短時間で密に測定し、設計値とのズレをリアルタイムに把握できます。重要構造物の出来形を従来より高頻度でチェックできるようになるため、品質管理のレベルが向上します。クラウドに蓄積された出来形データは、後日の検査にもそのまま活用でき、証跡として写真データとともに提出することも容易です。従来は施工後に専門業者に依頼していた出来形測量を内製化できれば、外注費用の削減にもなります。
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安全管理とメンテナンス:インフラ維持管理の現場でも、高精度位置情報は大きな武器になります。例えば高速道路や鉄道の巡回点検で、補修が必要な箇所を写真記録する場合にもLRTKが使えます。RTK測位で記録された写真には正確な位置座標が付与されるため、点検で見つけた損傷箇所を地図上で正確に共有できます。
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これにより、「〇〇橋梁の〇〇付近にひび割れあり」といった報告が、地図データとリンクした客観的な情報として管理されます。将来的には点検結果を蓄積したデジタルツイン空間上で、劣化の進行を時系列で追跡するといった応用も考えられます。スマホRTKによるインフラ点検DXとも言える使い方で、メンテナンス業務の効率と精度が飛躍するでしょう。
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デジタル施工・マシンガイダンス:建設機械への応用も視野に入ります。現在でも建機にGNSSを搭載しオペレーターを支援するマシンガイダンス技術がありますが、スマホRTKで取得した出来形データや設計モデルを現場即時でフィードバックできれば、重機オペレーターへの指示もより的確になります。たとえば掘削工で所定の掘削深さに達したかを、測量担当者がその場で確認してすぐオペレーターに伝えることができます。またAR機能を使って、タブレット画面にBIM/CIMモデルを重ね表示しながら施工する「デジタル施工」の分野でも、高精度な位置情報が威力を発揮します。LRTK PhoneはすでにARによる設計データの現場再現機能を備えており、図面やモデル上の位置に仮想のAR杭を打ち込むことも可能です。これにより、物理的に杭を打ちにくい場所でも仮想杭で位置出しできるなど、これまでにない柔軟な施工管理が実現します
。デジタルとリアルを融合した新しい施工スタイルへの発展も期待できます。
以上のように、スマホRTKことLRTK Phoneの技術は、測量から施工管理、維持管理まで幅広いシーンで活用が可能です。現場監督や施工管理者にとっては、進捗状況や出来形を自ら確認しやすくなるため、「測量待ち」で工程が滞ることが減少し、全体の生産性向上につながります。また経営層にとっても、DXツールの導入により人的リソースの制約を乗り越え、複数現場を少人数で効率良く管理できる体制づくりが可能になります。ひいては品質データの蓄積によるノウハウの共有化や、発注者への説明資料充実による信頼性向上など、副次的なメリットも得られるでしょう。
LRTK Phone導入のメリット
スマホRTKデバイス「LRTK Phone」を施工現場に導入することによって得られる主なメリットを、改めて整理してみます。
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測量コストの削減:最も直接的なメリットはコストダウンです。従来、高精度な測量には数百万円クラスのGNSS測量機や人件費がかかっていました。LRTK Phoneは超リーズナブルな価格で提供されており、初期投資を大幅に抑えられます。また外部測量業者へ依頼していた業務を内製化できれば、その分の外注費削減につながります。一人の作業員が測量を兼任できるようになるため、人件費の効率化効果も見逃せません。例えば小規模な測量業務のために毎回測量士を呼んでいたケースでは、LRTK導入後は現場スタッフ自身で対応できるようになります。
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簡単な操作性と習熟の容易さ:LRTK Phoneはスマートフォンのアプリで操作するため、専門機器特有の複雑な操作パネルやコード入力作業がありません。若手からベテランまで直感的に扱えるUIが用意されており、短時間のトレーニングで誰でも基本的な測量が実施できます。これは現場作業員全体のITリテラシー向上にも寄与します。属人的だった測量スキルが平準化され、特定の技術者に仕事が偏ることなくチーム全員で分担できるようになります。またスマホで完結するため、現場ごとに機材を運搬・設置する手間も減り、思い立ったときにすぐ測量作業を開始できるフットワークの軽さも魅力です。
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リアルタイムなデータ共有とクラウド連携:LRTK Phoneで取得したデータはクラウド経由で即座に共有可能です。これにより、現場で測った情報を事務所に持ち帰って図面化・報告書作成するといった時間差を大幅に短縮できます。例えば朝一番に現場測量した結果をその場でクラウドにアップすれば、オフィスのスタッフや発注者はリアルタイムに確認できます。関係者全員が最新の測量データを即時に閲覧・活用できるため、後追いの修正やコミュニケーションロスが減ります。クラウド上には測量点座標や写真、点群モデルが蓄積されていくので、過去データとの比較や統計解析も容易です。またCSVやPDFへのエクスポート機能もあり、従来の帳票類への出力にも対応しています。このようなデータ連携の迅速化は、DX推進の観点からも非常に大きなメリットです。
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安全性・品質の向上:一人で迅速に測量できることは、安全面や品質管理面でもプラスになります。例えば交通量の多い道路工事現場での測量も、立ち往生する時間を最小限にできるため作業員の被曝リスクが減ります。また高精度な測量により、施工ミスや出来形不良を早期に発見して是正できるため、最終的な品質も向上します。測量結果に対する信頼性が増すことで、追加工事やクレーム対応といったリスクも低減できるでしょう。
以上のように、LRTK Phone導入によってコスト・時間・人員・品質のすべての面でメリットが得られます。特に中小規模の土木業者や地方の建設会社にとっては、限られた人員で複数現場を回す必要がある中で、この「1人1台RTK測量」は強力な武器となるはずです。スマホ一つで完結する手軽さゆえ、現場への定着もスムーズで、DXツールの現場浸透事例としても理想的と言えるでしょう。
LRTKクラウド上で測量データを管理している画面例。スマホで取得した3D点群データをクラウド上で即座に表示し、距離や座標を計測したり、現場写真(右上)と紐付けて管理できる。クラウドを活用することで現場とオフィス間でデータをリアルタイム共有し、報告書作成や進捗把握を効率化できる。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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