RTK導入がもたらす現場監督業務の変化:
建設現場DXの実際

この記事は平均2分30秒で読めます
2025年3月7日 掲載

建設業界では深刻化する人手不足や高齢化への対応策として、デジタルトランスフォーメーション(DX)への期待が高まっています。特に近年は3次元モデルデータやAI、ドローン、そしてRTK測位(リアルタイムキネマティック)などの最新技術活用が進み、産官学が連携して建設DXを推進しています。
こうした流れの中で、建設現場の施工管理における高精度測位技術「RTK」の導入が、現場監督(施工管理者)の業務に大きな変化をもたらしています。
本記事では、RTK導入前後での現場監督の役割変化や、具体的なメリット、さらにRTK活用が切り開く建設現場DXの未来像について解説します。
RTK導入前後で変わる現場監督の役割
まずRTKとは「Real Time Kinematic」の略で、衛星を利用してセンチメートル級の高精度な位置情報をリアルタイムに取得できる測位技術です。従来のGPSより格段に精密で、ドローンの自動航行や建設機械の自動運転など、正確な位置情報が求められる分野で活用されています。このRTKを建設現場に導入することで、現場監督の仕事の進め方や役割分担が大きく様変わりします。
従来は測量士による丁張り設置や手作業での記録作業など、アナログで時間のかかる工程が多く、現場監督は測量結果を待って指示を出すなど受動的な対応に追われがちでした。一方、RTK導入後は測位データが即座にデジタル記録・共有されるため、現場監督自らがタブレット片手にリアルタイムで進捗と品質を確認・判断できるようになります。これにより、現場監督の役割は「現場の情報収集・確認作業」から「データに基づく迅速な意思決定と全体最適の指揮」へとシフトしていることがわかります。
実際、国土交通省の検証ではICT施工の導入により、従来2人必要だった現場作業員が1人で済むようになり、延べ作業時間も約5~6割削減できたという結果が報告されています。例えば、従来は測量機器(トータルステーション)による丁張り(墨出し)作業に複数人が必要でしたが、RTK-GNSSを用いれば視通しが不要で一人でも測量が可能となり、1点あたりわずか10秒程度で座標を取得できたという事例もあります。
このように、RTK導入後は少人数・短時間で測量や出来形確認が行えるため、現場監督は人手確保や測量待ちのストレスから解放され、より戦略的な現場マネジメントに専念できるようになります。従来は職人任せだった細かな出来形のチェックも、自ら高精度機器で随時確認できるため、品質管理や工程管理において主導的・能動的な役割を果たせるようになるのです。
RTKが現場管理にもたらす具体的なメリット
RTK導入によって現場監督の働き方がデジタル中心に変わることで、建設現場の管理には様々なメリットが生まれます。ここでは、「リアルタイム共有による迅速な意思決定」「施工精度の即時確認による手戻り削減」「記録・報告業務の省力化とデジタル化」という3つの具体的メリットについて詳しく見てみましょう。
測量結果のリアルタイム共有による迅速な意思決定
RTKを活用すると、上図のように測量データや出来形データがクラウド経由でリアルタイム共有され、現場とオフィス間で情報がシームレスに連携します。例えば現場で測定した点の座標データが即座にクラウド上の地図にプロットされ、オフィスの監督者や関連部署もその結果を即時に閲覧・確認できます。これにより、離れた場所にいる関係者とも現場の状況をリアルタイムで共有し、迅速な合意形成や指示出しが可能になります。
従来は、測量班が現場で取得したデータを現場監督が受け取り、図面に起こしたり報告書にまとめてからようやく所長や発注者に報告…というタイムラグがありました。RTK導入後は現場の状況や進捗をリアルタイムで共有できるため、意思決定のスピードが飛躍的に向上します。
たとえば「ある測点の高さが設計と合っているか?」といった確認も、その場でRTK測量結果をクラウドに上げて即共有すれば、オフィス側で即座にチェックしてその場で指示を返すことができます。これにより、判断待ちによる作業中断が減り、全体の工程もスムーズに進行します。さらに、クラウド上で共有された測位データは協力会社や発注者ともURL経由で簡単に共有できるため、関係者全員が同じ最新情報をもとに動ける環境が整います。リアルタイムデータ共有は、まさに建設現場DXの醍醐味であり、現場監督の意思決定を強力に支援するのです。
施工精度の即時確認で手戻り削減
RTKによる即時測位は、施工中の精度確認や出来形チェックをリアルタイムで行えることを意味します。従来は施工後に改めて測量して誤差が判明し、手直し工事が発生するケースも少なくありませんでした。RTK導入後は、施工の直後に現場監督自ら測位して出来形のズレをその場で検知・是正できます。これにより、施工後の手直しや修正作業の発生率が大幅に低下し、無駄なコストや工期延長を防ぐことができます。事実、ICT施工の活用によって設計と施工の精度が向上し品質が安定化することで、施工後の手戻りや修正を減少させられることが報告されています。
精度の高い施工が最初から実現できれば、あとでやり直す必要がなくなるため、現場全体の生産性向上とコスト削減につながるのです。
具体的な例として、道路工事の路盤厚を施工中にRTKで測定し、設計値との差異を即チェックすることで、その場で敷均し量を調整できたケースなどがあります。これまでは完成後の検査で厚さ不足が見つかり追加で材料を敷設する…といった非効率な手戻りが起こり得ましたが、RTKを使えばその日のうちに是正できます。また、重機オペレーターがICT建機で造成を行う際も、現場監督が並行してRTK測位で出来形を確認すれば、早期に誤差に気付き追加整正の指示を出せます。結果として「作って壊す」のムダが減り、品質も確保されるため、発注者や施主の信頼向上にも寄与します。
記録・報告業務の省力化とデジタル化
RTKを中核としたデジタル測量ツールの導入は、現場監督の記録業務や報告書作成の負担も大幅に軽減します。従来は現場で測量結果をメモし、事務所で図面や表にまとめ直すといった二度手間が発生していました。紙の野帳や写真帳をもとに出来形数量を算出したり、施工記録をExcelに転記したりする作業は、現場監督にとって大きな負担でした。
しかしRTK対応のクラウドサービスを使えば、測位データや写真などの記録が自動でデジタル保存されるため、人手で書き写す作業が減少します。例えばスマートフォン一体型のRTK測量機では、測点の座標値はクラウド上に即時アップロードされ、日時や測点名とともに自動プロットされます。
さらに測量と同時に撮影した写真には測定位置と方位情報が自動付加されるため、写真台帳作成時に「この写真はどこで撮ったか」「どの方向を向いて撮影したか」をメモする必要がありません。その結果、現場でのメモ作業や事務所での帳票作成作業がすべて短縮でき、写真の撮影場所記録ミスも皆無になります。デジタルに計測・記録されたデータはワンクリックでCSVやPDFに出力でき、そのまま出来形管理図や報告書の添付資料として活用可能です。
このように記録業務のデジタル化が進むと、現場監督は日々の報告書作成に追われる時間が減り、浮いた時間を現場の安全巡回や協力業者との打合せに充てることができます。また、データに基づく報告は主観的な抜け漏れがなくなるため、発注者への説明もスムーズになります。RTKによる自動記録機能は、施工管理DXにおけるペーパーレス化・効率化の象徴と言えるでしょう。
RTK活用で変わる建設現場DXの未来
DXの成熟度はレベル1からレベル5まで段階的に分類され、レベル1は従来アナログだった業務の可視化・オンライン化・ビッグデータ化、レベル2ではソフトウェアによる自動処理による業務効率化、レベル3で他のアプリやICT重機とのデータ連携による新たな価値創出、レベル4でデータ駆動型の建設現場を実現し、生産性と安全性が飛躍的に向上した状態、そしてレベル5では建設プロセスや働き方そのものが柔軟化・高度化するビジネスモデルの抜本的変革が実現した状態を表します。
RTKのようなリアルタイム高精度測位技術は、このDXの各レベルを押し上げる原動力となります。まずレベル1の現場情報のデジタル化において、RTK測位によって得られる正確な位置データ群は、紙に頼っていた現場情報をデジタルデータに置き換える要となります。レベル2のプロセス自動化では、RTK連携の施工機械や自動計測システムが人手の作業を置き換え、例えば自動締固めシステムが所定の密度になると停止するといった自律的な施工も実現していくでしょう。さらにレベル3では、RTKで取得した出来形データが設計BIM/CIMデータや他のクラウドサービスとAPI連携され、各種アプリ間でデータが統合利用されます。
例えば、RTKドローンで取得した点群データを即座に土量算出ソフトに連携して出来高管理に反映するといったことが可能になります。
レベル4に至ると、建設現場は完全デジタル化されたデータ駆動型となり、全作業や品質管理がリアルタイムデータに基づいて行われます。現場監督はタブレット上のダッシュボードで全重機の位置や進捗を把握し、AIが異常検知した箇所に重点巡回するといったスマート施工管理が日常となるでしょう。これは圧倒的な生産性向上と安全性向上をもたらし、労働災害ゼロの効率的な現場が実現します。最終的にレベル5では、データに支えられた新しい施工プロセスや契約スキームが生まれ、遠隔地からの施工指揮や、施工データを活用した保守サービスの提供など、建設ビジネスモデル自体が変革されていきます。
このような未来像の中で、RTKは建設現場DXの基盤インフラとして欠かせません。国土交通省が推進するi-Constructionでも、ICT建機やドローン測量と並んでRTK-GNSS活用が重要技術と位置付けられており、公共工事での導入も拡大しています。
今後は5Gやローカル5Gとの連携でRTK補正情報をより安定的に配信し、屋内外シームレスな測位による施工ロボットの活用なども期待されています。現場監督の働き方も、データを遠隔モニタリングして指示を飛ばす「リモート施工管理」へと発展し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が可能になるでしょう。RTKを中核に据えた建設現場DXの未来は、単なる業務効率化に留まらず、建設プロジェクトの在り方そのものを変えていくポテンシャルを秘めているのです。
LRTKによる施工管理DXの最適解
上述したように、RTK技術は建設現場DXを推し進めるうえで極めて重要です。しかし「高価な専用機器の操作は専門家にしか扱えないのでは?」という不安の声もあるでしょう。そこで登場したのが、スマートフォンを活用した画期的なRTKソリューション「LRTK」です。LRTK(エルアールティーケー)は超小型のRTK-GNSS受信機をiPhoneやiPadに装着するだけで、誰でも簡単にセンチメートル級の測位が行えるデバイスおよびクラウドサービスです。
LRTKを活用すれば、本記事で述べてきたメリット──リアルタイム共有による迅速な意思決定、即時精度確認による手戻り削減、記録業務の省力化──を現場全員が日常的に享受できる環境を構築できます。従来は高価で台数の限られた機器を測量担当者が扱っていましたが、LRTKは低コストで配備できるため「現場監督だけでなく全作業員が高精度測位端末を携行する」というスタイルも実現可能です。
こうした信頼性の高さも含め、LRTKは現場DXを推進する施工管理者にとって最適解と言えるでしょう。
RTKによる最新テクノロジーで現場監督業務をアップデートし、建設現場DXの波に乗るための第一歩を踏み出しましょう。資料請求やお問い合わせは当社ホームページの専用フォームから受け付けております。現場DXの未来はすぐそこまで来ています。この機会にぜひ、高精度測位「LRTK」による施工管理DXの最適解を手に取ってみてください。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。