RTK導入で拓く新ビジネスモデル:
高精度測位がもたらすサービス革新

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2025年3月7日 掲載

現場のICT化が進む中、RTK(リアルタイムキネマティック)による高精度測位技術が新たな価値を生み出しています。従来は特殊な測量機器が必要だったセンチメートル級の位置測定が容易になり、建設やインフラ、モビリティ分野で新しいサービスや収益モデル=GNSSビジネスモデルの創出につながっています。
本記事では、RTKデータ活用によって実現するサービス革新と、新規ビジネスモデル展開のポイントについて解説します。
RTK技術が生み出す新たなビジネスの可能性
RTKは、衛星測位の誤差を補正して数センチの測位精度を得る技術です。1990年代から国土地理院の電子基準点整備が進み、機器開発コストの低下もあって近年ようやく業務利用が本格化してきました。今や建設測量のみならず様々な分野で活用が広がり、これまでになかったビジネスチャンスを生み出しています。
たとえば、通信キャリア各社は自社の基地局網を活用したRTK補正サービス事業に参入しています。SoftBankの「ichimill」は全国約3,300箇所の基地局ネットワークを用いて高精度測位を提供するサービスで、農業機械の自動制御やドローンと組み合わせた実証も進んでいます。
KDDIの「VRS-RTK」やNTTドコモの「高精度GNSS補正サービス」などGNSSビジネスモデルが次々登場しており、高精度な位置情報をデータ提供ビジネスとして展開する動きが活発です。
現場サイドでも、RTK技術の democratization により新サービス創出の余地が広がっています。高精度な位置データをクラウド経由で即時共有できるようになったことで、測量会社や建設会社は取得した測位データを付加価値の高い情報に加工し、他社に提供するサービスを展開できます。また、従来は大手ゼネコンのみが保有していた高度な測位技術が中小企業にも手の届くものとなり、RTKデータ活用による差別化で競争優位性を確立するケースも出てきました。
RTK活用によって想定される新ビジネスモデルの一覧図。高精度測位データを基盤に、測量情報サービスや位置情報解析サービスなど多彩な展開が可能になる。
RTK導入がもたらすビジネスの可能性は多岐にわたります。高精度な位置情報そのものをサービス化(補正情報のサブスクリプション提供など)するモデルから、従来業務の高度化による付加価値創出(迅速なデータ提供や精密施工の請負など)まで、アイデア次第で新たな収益源を生み出せます。次章では、業界ごとの具体的なサービス事例を見ていきましょう。
高精度測位を活用したサービス
RTKによるセンチメートル級測位が現場にもたらす効果を、業界別に見てみましょう。建設や測量、インフラ保守、そしてモビリティ(自動運転や物流、スマートシティ)といった各分野で、従来にはないサービス革新が実現しつつあります。
測量・建設業界におけるデータ提供ビジネス
建設・測量業界では、RTK導入によって業務効率が飛躍的に向上するだけでなく、その成果データを他者に提供する新ビジネスが可能になっています。例えば、ある建設会社が自社工事で得た高精度な出来形測量データを地域のインフラ管理者や他の施工業者と共有・販売するといったサービスです。従来は紙の図面やPDFで引き渡していた情報を、正確な全球座標付きの3Dデータとしてクラウド配信することで、受け手側は即座にGISやCADに取り込んで活用できます。これにより、発注者や関連業者とのデータ連携がシームレスになり、プロジェクト全体の効率化に貢献します。
また、測量会社にとってはRTK測位データの提供それ自体がビジネスチャンスです。ドローン空撮や地上レーザースキャナ計測にRTKを組み合わせ、ミリ単位で補正された点群データやオルソ画像を生成してサブスクリプション形式で提供するサービスも考えられます。実際、国土交通省のi-Construction推進によりICT施工が普及する中、最新の測位技術をいち早く取り入れた中小測量企業が競合他社に対して優位に立つ事例も出始めています。高精度測位を武器に、自社内の生産性向上と他社向けデータ提供による収益化を両立できる点で、大きな可能性がある分野です。
インフラ点検・維持管理でのRTK活用
道路や鉄道、橋梁などインフラの維持管理分野でも、RTKが新たなサービス価値を生み出しています。広域かつ長大な構造物の状態把握には精密な位置特定が不可欠であり、RTK導入により点検業務のデジタル化・効率化が進みます。例えば鉄道会社では、線路や枕木のゆがみ検測にGNSSとレーザースキャナを組み合わせた計測台車を導入し、RTKで取得した高精度位置情報と3Dスキャンデータを突合することで、従来より精密な設備管理を実現しています。
高速道路会社でも、路面や橋脚の点検記録に位置情報を付与して一元管理するシステムが登場しており、将来的にはインフラ管理者同士が共通の高精度測地基盤を持ち、RTK前提の維持管理フローが標準化していくことも期待されています。
新ビジネスの視点では、インフラ点検データの高度化サービスが考えられます。ドローンにRTK搭載カメラを積んで橋梁やダムを自動点検し、そのひび割れ位置を正確にマッピングして報告するサービスや、道路巡回車にRTK対応GPSコンパスを設置して走行しながら路面変状を検出・通知するサービスなど、RTKデータ活用によって精度の高い維持管理ソリューションを提供できます。インフラ老朽化が進む中、こうしたソリューションは安全性向上とコスト削減の両面で価値が高く、公共・民間問わずニーズが高まっている分野です。
自動運転・物流・スマートシティ向けデータ活用
自動運転やスマート物流の分野でも、高精度な位置情報は欠かせません。自動運転車の車線レベルの自己位置特定や、自律移動ロボット(AMR)の経路制御には、GPS単独では不十分でRTKによるセンチメートル精度が求められます。実際、市販の高級車の一部にはRTK対応のGNSS受信機が搭載され始めており、カーナビの位置ズレ解消や高度運転支援に寄与しています。
物流分野では、港湾ヤードのAGV(無人搬送車)や倉庫内フォークリフトの自動運転において、高精度GNSSコンパスによる車両の向き・位置制御が活用されています。RTK基準局を工場内に設置し、自社構内の車両群をセンチメートル精度で管理することで、人手不足解消や安全性向上に繋げている企業もあります。
スマートシティでは、都市空間のデジタルツイン構築にRTKデータが威力を発揮します。街路灯や信号機などのインフラ設備をRTK測位で正確に3次元マッピングし、都市管理GISに取り込むことで、維持管理の効率化や防災計画の高度化が可能です。また、スマートフォンやARグラスと連動した位置連動サービスも考えられます。観光地でユーザーのデバイスをRTKで高精度測位し、本人の立ち位置に応じて歴史建造物のAR解説をピンポイントで表示するような体験型サービスは、従来のGPS精度では実現困難でした。高精度測位があってこそ成立する新しいサービスモデルとして、今後注目の領域です。
RTKを活用した新規事業モデルの展開方法
高精度測位を活かした新規ビジネスを立ち上げるには、技術の理解と戦略的な展開計画が重要です。以下に、RTKデータ活用による事業モデルを構築・展開する際のポイントを整理します。
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ニーズの明確化: まずセンチメートル級測位が必要とされるニーズを洗い出しましょう。現場のどんな課題が「高精度な位置情報」で解決できるのか(例:測量の手間削減、点検精度向上、無人化施工など)、具体的なシーンを想定します。その上で、自社の強みと組み合わせたサービスコンセプトを練ります。
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技術インフラの構築: RTKを利用するには基準局(基地局)と移動局が必要です。自前で基地局網を構築する方法もありますが、SoftBankや国土地理院など既存の補正情報サービスを活用する方が迅速です。必要なGNSS受信機やアンテナ、通信手段を揃え、現場で安定して測位できる環境を整備します。場合によってはインターネット経由で補正データを受信するネットワーク型RTKや、QZSS(みちびき)のCLAS信号を利用する方法も検討します。
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人材育成と運用ルール: 新技術導入に際しては、人材のスキル向上と現場での運用体制づくりが鍵となります。RTK測位の原理や機器の使い方を習得させ、データ品質を保つための手順(既知点での校正や電波状況のチェックなど)をマニュアル化します。誰でも扱えるよう教育し、「高精度だからこそ必要な注意点」を共有することで、サービス品質を安定させます。
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パートナー連携と差別化: 必要に応じて技術パートナーやプラットフォーム提供企業と連携しましょう。例えば、測位クラウドサービスを提供する企業と組んで自社サービスに付加価値を付けたり、ドローンメーカーやIoT企業と協業して包括的なソリューションを作り上げたりする戦略です。他社には真似できないデータの使い方や分析ノウハウを蓄積することで、競合との差別化を図ります。
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小規模導入と検証: 最初から大規模展開するのではなく、まずは小さな範囲でPoC(概念実証)を行いましょう。実際にRTKを使ってサービス提供してみることで、技術的課題やユーザーからのフィードバックを得られます。例えば限定された工事現場や一部施設で試行導入し、効果(作業時間の短縮率や精度向上によるコスト削減額など)を測定します。これにより事業モデルのブラッシュアップが可能となり、成功事例を元に営業展開もしやすくなります。
以上のステップを踏むことで、RTKを核とした新規事業モデルを着実に構築・拡大していくことができるでしょう。ポイントは「高精度」という強みをどのように顧客価値に転換するかです。ただ単に技術を導入するだけでなく、その精度によって顧客の課題をどう解決し、どんな新しい価値を提供できるのかを明確に描くことが、ビジネス成功への近道となります。
LRTKによるRTK活用
高精度測位ビジネスを検討する企業にとって、導入コストや運用の手間は大きな課題です。そこで注目されるのが、小型・簡便なワイヤレスRTKシステム「LRTK」です。LRTKは東京工業大学発のスタートアップ企業が開発したポケットサイズのRTK-GNSS受信機で、スマートフォン(iPhone/iPad)に装着するだけでセンチメートル級精度の測位を可能にするデバイスです。アンテナ・受信機・バッテリー・通信モジュールが一体化したオールインワン設計で、重量はわずか125gと非常に軽量。現場で携行して手軽に使える真のモバイル測量機として注目を集めています。
LRTKを活用すれば、これまで専門機器と熟練技術者が必要だったRTK測位が格段に身近になります。例えば、現場監督や作業員がそれぞれスマホ+LRTKを所持し、誰でも測量や出来形確認ができるようになります。取得した位置情報や点群データはクラウド上で瞬時に共有できるため、現場とオフィス間でリアルタイムに情報連携することも可能です。
しかも従来の高額な測量機に比べデバイス価格が安価であるため、「1人1台」の配備も現実的です。このようにLRTKによるRTK活用は、低コスト・高精度・手軽さを両立した最適解と言えます。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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