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欧州建設現場のRTK革命に学ぶ:
高精度測位活用の最前線

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2025年3月7日 掲載
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近年、欧州の建設業界では「RTK(リアルタイムキネマティック)測位」技術が現場のデジタル化を大きく前進させています。ドローン測量から重機のマシンガイダンスまで、欧州はまさに高精度測位を活用した建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の革命期にあります。RTKによるセンチメートル級の位置情報は、施工の生産性向上や品質確保に直結し、インフラ維持管理にも新たなソリューションをもたらしています。

本記事では、欧州におけるRTK活用の最新事情と主要国の事例を紹介し、日本との比較を通じて日本建設業界への示唆を探ります。最後に、当社が提供するLRTKソリューションによるRTK活用の最適解もご提案します。

欧州におけるRTK活用の現状と普及の背景

欧州では建設分野におけるRTK測位の現状は、既に多くの現場で日常的に利用される段階に達しています。背景には、欧州全体で進む建設DX推進と、各国に整備されたGNSS基準局ネットワークの存在があります。例えばドイツやフランス、イギリスなど欧州各国では、国や民間によるGNSS基準局(固定局)のネットワークが充実しており、広域にわたってリアルタイムな補正情報を提供しています。これにより、測量機や重機のオペレーターは自前の基地局を設置せずとも、インターネット経由でセンチメートル精度の測位が可能になっています。

このような広域GNSSネットワークの存在が、欧州におけるRTK普及の土台となっています。また欧州連合(EU)の独自衛星GNSSであるGalileoの運用も進み、GPS・GLONASS・GalileoといったマルチGNSS環境が整ったことで、より安定したRTK測位が可能になっている点も普及を後押ししています。

さらに、欧州でRTK活用が広がった背景には深刻化する労働力不足や生産性向上のニーズがあります。高度な測位技術を現場に導入することで、少人数でも効率的に測量・施工管理が行えるようになります。例えば従来は何人も必要だったトータルステーションでの丁張り設置が、RTK-GNSS搭載の重機によるマシンコントロールで省人化できるなど、省力化と精度向上を両立するソリューションとして受け入れられてきました。その結果、「RTKなしではプロジェクトを進められない」というほどに、欧州の建設現場ではRTKが重要なインフラ技術となっているのです。

欧州の建設DXの文脈では、RTKによる出来形管理や出来高測定の自動化も注目されています。測量士が現場を駆け回らずとも、リアルタイムに出来形データを取得してクラウドに送信し、設計データと照合して品質をチェックするといった流れが可能になりました。こうしたリアルタイム施工管理の実現も、RTK普及の大きなメリットと言えるでしょう。

主要国(ドイツ・フランス・イギリスなど)のRTK活用事例

欧州各国の中でも、とりわけRTKの活用が進んでいる主要国の事例を見てみましょう。ドイツ、フランス、イギリスといった国々ではそれぞれ独自の基準局ネットワークやサービスが整備され、多彩な現場でRTKが利用されています。

ドイツの事例

ドイツでは国家測地網として「SAPOS」と呼ばれる電子基準点ネットワークが運用されています。各州の測量局が連携して約300か所以上のGNSS基準局を配置し、全国どこでもRTK補正情報を取得可能です。建設現場では道路工事やダム建設などで、GNSSマシンガイダンスがいち早く導入されました。例えばブルドーザーやグレーダーにRTK-GPS受信機を搭載し、設計3Dモデルと連動させて自動的に整地を行う仕組みが一般化しています。ドイツ連邦高速道路会社の事例では、路盤の締固め作業にRTK測位を利用して厚さ管理を行い、施工品質の均一化と検査の効率化を達成しています。また学術面でも、ドイツ工科大学などが中心となりRTKアルゴリズムの改良や新しい活用法の研究が盛んです。

なおドイツでは1990年代から情報化施工の試験導入が進められてきましたが、当初の規格ではRTK-GPSの使用は必須ではありませんでした。それでも民間主導で普及が進んだ背景には、ライカやトプコンといった測量機メーカーの欧州拠点があり、現地ニーズに合わせた機器普及を積極的に行ったことが挙げられます。現在ではRTKを用いた施工管理はドイツの建設標準の一部となりつつあり、官民双方で高精度測位の恩恵を享受しています。

フランスの事例

フランスにおいてもRTK測位は測量・建設業で広く利用されています。フランス国土地理院(IGN)が運用する「RGP」という全国GNSSネットワークが存在し、約100基以上の基準局データをリアルタイム配信しています。さらに民間ではOrphéonネットワークが代表的で、Hexagon社傘下のGeodata Diffusionにより全国をカバーするRTKサービスが提供されています。Orphéonは前述の通り欧州広域ネットワークの一部を成しており、フランス国内のみならず国境を越えて近隣国でも利用できるのが特徴です。

建設現場での事例としては、フランスの大手建設会社ヴィンシ(VINCI)が高速道路工事にRTK-GNSSを導入し、路面の高さ管理を自動化しています。従来は人手で行っていた高さ計測を、モーターグレーダーに搭載したRTKで逐次確認・補正することで、施工スピードを約20%向上させたと報告されています。またパリ市内の再開発プロジェクトでは、地下埋設物の3DマッピングにRTK対応の地中探査機を用いて効率的に位置特定を行う試みもあります。フランスは測量士の国家資格制度が厳格な国ですが、そのプロフェッショナルたちがRTKを駆使して都市インフラの精密な測量・監理を実践している点は、日本にとっても参考になるでしょう。

イギリスの事例

イギリスでも、官民共同のRTKサービスが確立されています。国土地理院(Ordnance Survey)が運営するOS Netは、115以上の恒久的なGNSS基準点から構成される国営のRTKネットワークです​。このネットワーク上にSeptentrio社製の高性能受信機が設置されており、測量技師や建設技術者、精密農業の利用者に向けてリアルタイム補正データを提供しています​。OS Netの整備により、イギリス国内ならどこでもインターネット接続さえあればセンチメートル級測位が実現可能となりました。

実際の活用事例としては、イギリスの鉄道インフラメンテナンスでのRTK利用が挙げられます。Network Rail社は線路の定期検査にRTK対応のトロリー(軌道計測台車)を導入し、線路の歪みや位置ズレを高精度にモニタリングしています。これにより、従来の光学測量と比べ作業時間を大幅に短縮しつつ、ミリ単位の検出精度を確保しています。また建築分野でも、ロンドンの高層ビル建設現場でRTKドローン測量が活用されています。ドローンに搭載したRTK-GNSS受信機で取得した点群データを建設プロジェクトのBIMモデルと照合し、進捗管理や出来形検査に役立てる取り組みです。イギリスは政府主導でBIMやデジタル施策を推進してきた経緯があり、その流れの中でRTKもデジタル建設の必須技術として定着しました。

欧州と日本のRTK技術・活用の比較

欧州で進むRTK革命と比べて、日本の現状はどうでしょうか。技術インフラや活用度合いを比較すると、共通点もあれば相違点も見えてきます。

まず技術インフラ面では、両者とも高精度測位を支える基盤を整えています。日本には国土地理院が運用する「GEONET」というGNSS連続観測網があり、全国約1,300か所に電子基準点(CORS)が設置されています​。

このGEONETは世界でも有数の高密度測地ネットワークで、測位データはリアルタイム(Ntrip配信)でも提供されており、日本全国でRTK測位が可能な環境が整っています。一方の欧州も前述の通り各国にCORS網が存在し、国境を越えて相互利用も可能な広域サービスへと発展しています。例えば欧州ではHexagon社やTrimble社などの民間サービスによって国単位を超えた広域のRTKネットワークが運用されており、ユーザーは単一の契約で複数国で補正サービスを利用できます。この点、日本は一国で完結するネットワーク(GEONETや民間基準点)であるのに対し、欧州は複数国連携のネットワークというスケールの違いがあります。

次に測位衛星の活用について比較すると、欧州はGalileo、日本は準天頂衛星システム(QZSS「みちびき」)というそれぞれ地域拡張的な衛星を持っています。Galileoは欧州上空で多数の衛星が稼働しており、GPS・GLONASSと合わせて多頻度多角度からの測位が可能です。日本のQZSSは衛星数こそ少ないものの、日本の天頂付近に常時1機以上が位置するため山間部やビル街での測位補完に威力を発揮しています。また日本ではQZSSを用いた独自のセンチメータ級補強サービス(CLAS)が提供開始され、衛星から直接高精度補正情報を受信できる仕組みも整いつつあります。一方欧州でもGalileoの新サービスとして2023年から高精度補強サービス(HAS)が試験提供され始め、今後RTKとあわせて活用される可能性があります。このように、日欧ともマルチGNSS+衛星補強の体制を整えつつある点は共通しています。

サービス提供者と利用環境にも違いがあります。日本では国土地理院のGEONETの他、民間通信キャリアによるRTKサービスが隆盛です。例えばソフトバンクの「ichimill(イチミル)」は、独自に設置した3300基以上の民間基準点から補正データを配信し、GPS誤差を約5cm程度まで縮減できるRTKサービスです​。

携帯電話基地局も活用して高密度に基準点を配置しているため、移動しながらでも途切れず補正を受けられるのが強みです​。

NTTドコモやKDDIといった他キャリアもそれぞれ高精度測位サービスを展開しており、日本の民間主導によるRTKサービスは欧州以上に競争が活発です。一方欧州では、補正サービスは測量機器メーカー系(Hexagon/LeicaやTrimbleなど)の運営が多く、通信キャリアが前面に出る形は一般的ではありません。国や測量機関と機器メーカーが協力してインフラを築き、利用者(建設会社や測量事務所)はそれらと契約して使うケースが主流です。利用環境としては、日本の現場ではタブレットやオンボードコンピュータ上で簡易なRTKソリューションを使う事例も増えていますが、欧州では高性能の専用機器をじっくり使う伝統も根強く、現場技術者のリテラシーの違いもあると言えます。

総じて、活用の成熟度に関しては欧州が一歩先を行っていた歴史があります。欧州各国では2000年代からマシンガイダンス技術の普及が進み、既に1,000台を超える重機にシステムが搭載されたという報告も10年以上前になされています。

日本では国土交通省が2016年に「i-Construction」を打ち出しICT土工(情報化施工)の普及を図ったことで一気に追い上げましたが、地方の中小建設業者まで浸透している度合いでは、なお欧州に学ぶ点があるでしょう。ただし近年の日本はドローン測量やBIM/CIM推進と連動してRTK活用が急速に広がっており、技術水準としては欧州と肩を並べるところまで到達しつつあります。

欧州のRTK技術から学べる日本建設業界への示唆

欧州で培われたRTK活用の経験は、日本の建設業界に多くの示唆を与えてくれます。最後に、欧州の事例から日本が学べるポイントをいくつか整理します。

  • 官民連携によるインフラ構築: 欧州では測量機関と企業が協力して広域のRTK基盤を整備してきました。日本でも国土地理院のGEONETと民間基準点ネットワークとのデータ共有や相互補完を進めることで、さらに安定した補正サービスを全国隅々まで提供できるでしょう。官主導・民間主導の双方の強みを活かす姿勢が重要です。

  • 現場オペレーターのリテラシー向上: 欧州の施工現場では重機オペレーター自らがRTKシステムを操作・調整するケースも多く見られます。日本でもICT施工を推進する中で、現場技術者への測位技術教育を強化し、機器任せにしないデジタル人材育成が求められます。技術への理解が進めば、現場から新たな活用アイデアが生まれ、さらなる効率化につながります。

  • 中小企業への普及支援: 欧州では小規模な施工業者でも利用しやすい安価なRTK機器(簡易GNSSローバーやスマホ連携デバイス)が普及しました。日本でも同様に、中小土木・建設業者が導入しやすいローコストな機器やサービスプランを提供し、裾野を広げることが大切です。価格面の障壁を下げるとともに、導入メリットの周知や使い方サポートを充実させる施策が有効でしょう。

  • 新技術との組み合わせ: 欧州ではRTKと併せてマシンコントロールやAR、IoTセンサーとの連携が進んでいます。日本もRTKを単体で使うだけでなく、3Dマシンガイダンスや建設機械の自動制御、さらにはMR(複合現実)技術による出来形検査などと組み合わせ、スマート施工全体の最適化を図るべきです。RTKはその一要素として機能しますが、他技術と融合してこそ真の効果を発揮します。

これらのポイントを踏まえ、欧州の先行事例を教訓に日本独自の課題(例えば山間部の多い地形や都市部の高層建物環境)にも対応したRTK活用戦略を描いていくことが重要です。幸い日本には準天頂衛星や世界最高水準の測地網といった強みもあります。それらを最大限に活かしつつ、欧州の良い部分を取り入れることで、日本の建設DXもさらなる高みへと進むことでしょう。

LRTKによるRTK活用

欧州の最前線事例と比較しながら見てきた通り、RTK測位を現場で使いこなすことが今後ますます重要になります。とはいえ、「自社で導入するにはハードルが高いのでは?」と感じる方もいるかもしれません。そこで最後にご紹介したいのが、当社が提供するソリューション「LRTK」です。

LRTKは日本の建設現場のニーズに応えるべく開発されたRTK測位システムで、欧州の先進技術から多くを学び取り入れた最適解となっています。

LRTKの特長は、まずシンプルで導入しやすいことです。小型軽量のLRTK端末を現場に持ち込んで電源を入れ、スマートフォンやタブレットとBluetooth接続するだけで、即座にセンチメートル級測位が可能になります。複雑な設定は不要で、専用アプリからワンタップで国土地理院基準局や民間の補正サービスに接続し、高精度の位置情報を取得します。欧州の現場で培われた「誰でも使える測位機器」を目指し、直感的なインターフェースと頑丈な設計(防塵防水・耐衝撃)を実現しました。

また、LRTKはマルチGNSS対応でGPS/GLONASS/Galileo/みちびきに同時接続し、都市部でも安定したFIX解(整数解)を高速に得られます。欧州由来の最新アルゴリズムを搭載しており、ビル陰や山間部でも測位初期化時間を大幅に短縮しました。これにより従来機種では測位が不安定だった環境でも、ストレスなく高精度測位が行えます。測量作業はもちろん、重機オペレーション時の位置把握、さらにはARを用いた施工管理アプリケーションとの連携など、幅広い用途に対応可能です。実際にLRTKを導入いただいたお客様からは「従来のトータルステーション作業が半減した」「出来形検測をリアルタイムに行えるようになり品質管理が向上した」といった喜びの声が寄せられています。

 

欧州発のRTK革命の波は確実に日本にも押し寄せています。この機会にぜひ最先端の高精度測位活用をご体感いただき、自社のDX推進にお役立てください。私たちも皆様の現場でのRTK活用を全力でサポートいたします。お問い合わせやご質問も随時受け付けておりますので、どうぞお気軽にご連絡ください。共に未来の建設現場を創っていきましょう。

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

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