スマホでセンチメートル測位?
一般スマートフォンのRTK活用最前線

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2025年3月5日 掲載

近年、スマートフォンのGNSS(全球測位衛星システム)技術は飛躍的に進化し、高精度測位への対応が進んでいます。従来、スマホ内蔵GPSによる位置情報の精度は数メートル(およそ3~10m程度)に留まっていました。
しかしRTK(Real Time Kinematic)測位技術を活用することで、スマートフォンでもセンチメートル級の位置特定が可能になりつつあります。RTKとは移動局と基準局の二点間で衛星測位データを相対比較し、誤差をリアルタイム補正することで格段に精度を高める方式です。その結果、従来の数m誤差から数cm以内の高精度な測位が実現でき、測量・土木施工、農業、自動運転など位置情報の高度化が求められる分野で活用が期待されています。
スマートフォンのRTK測位の進化
スマートフォン向けGNSSチップの高精度化がこの流れを支えています。世界初のデュアル周波数スマホとして2018年に登場したXiaomi Mi 8を皮切りに、近年ではGoogle Pixelや最新のiPhoneに至るまで、L1とL5帯など2周波の測位に対応する端末が増えています。こうしたデュアル周波数GNSSにより電離層誤差の補正やマルチGNSS活用が可能となり、スマホ単体でも従来より格段に高い測位精度(デシメートル級)が得られるようになりました。
加えて、Android OSの機能強化も重要な進展です。2016年にリリースされたAndroid 7.0(Nougat)以降、開発者向けにスマートフォン内蔵GNSSのRawデータ取得APIが公開されました。これにより、擬似距離やキャリア位相(累積デルタレンジ)など、生の測位データを直接取得し、スマホ上で高度な測位アルゴリズムを適用することが可能となりました。すなわち、従来は高価な測量機でしか実現できなかったPPP(精密単独測位)やRTKによる高精度化を、スマホGNSSデータに適用する研究が盛んになったのです。
実際、スマートフォンの生測位データを用いたRTK実験では、短距離の基線であれば瞬時にセンチメートル級の精度を達成できることが報告されています。
もっとも、スマホ単体でRTKを実現するには課題もあります。スマートフォンの内蔵アンテナは小型で感度が低く、測位信号のノイズやマルチパス(反射)の影響を受けやすいです。
また、RTKには基地局からの補正情報が必要ですが、一般ユーザーがそれを入手・処理するハードルもありました。そこで登場したのが、次に述べるGoogleの「スマホデシメータチャレンジ」などの取り組みです。このような動きが、スマホGNSS測位の精度向上を後押ししています。
LRTKを活用したスマホRTK測位のメリット
LRTK Phoneをスマホに装着することで、手軽にRTK測位が可能に。 弊社が提供する LRTKシリーズ は、スマートフォンと組み合わせて利用する高精度GNSSソリューションです。その中でも LRTK Phone は、スマホに直接装着できるポケットサイズのRTK-GNSS受信機となっています。アンテナ・バッテリー一体型の小型デバイスをスマートフォン(主にiPhone)にマグネット付き専用カバー等で取り付け、Bluetoothで接続するだけで、ネットワーク型RTK(Ntrip経由の補正情報)を受信してセンチメートル級の位置情報を取得できます。従来のGPS測位がせいぜい数メートルの誤差だったスマホが、LRTKを装着するだけで数cmの精度にまで高まります。
特別なケーブル接続も不要で、スマホがそのまま高精度測位デバイスに変身する手軽さが大きなメリットです。
一般的なスマホ単体のRTK測位と比較しても、LRTK利用にはいくつかの利点があります。前述のようにスマホ内蔵GNSSはアンテナ性能やノイズの面で限界がありますが、LRTKデバイス側で高感度・マルチバンド対応のGNSSモジュールを搭載しているため安定してcm級精度を得やすくなっています。例えばLRTK Phone 4CはGPSやGLONASSはもちろん、Galileoやみちびき(QZSS)を含む4大衛星体系に対応し、L1/L2/L5など3周波で受信できる高性能受信機です。
これにより都市部でも多彩な衛星からの信号を捕捉しやすく、RTK解が得られる確率が上がります。また、従来スマホでRTKを行うには外部基地局データの入手や複雑な演算環境が必要でしたが、LRTKでは専用アプリ「LRTKアプリ」を使い直感的な操作で補正情報サービスに接続し測位を開始できます。専門知識がなくともボタンひとつで測位開始できる手軽さは、現場で大きな強みと言えます。
さらにLRTKシリーズならではの特徴として、スマホ+外部RTKデバイスの組み合わせによる拡張性があります。スマホ側のカメラや通信機能、クラウド連携と、LRTK側の高精度GNSSを融合することで、単なる測位に留まらないソリューションが実現します。例えばLRTKアプリでは1秒間に最大10点の連続測位(10Hz)で移動軌跡を記録でき、取得した軌跡を即座にクラウド上の地図で共有・確認することが可能です。
撮影した写真に高精度な位置座標と方位情報タグを付与し、あとからオフィスのPCで撮影地点を確認するといった機能も備わっています。
これらにより、現場で集めた測位データや記録をその場でクラウド送信し、関係者とリアルタイム共有するといったワークフローも簡単になります。スマホの持つ汎用性と通信力に、LRTKの持つ精密測位力を組み合わせることで、現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速すると期待されています。
スマホRTKの活用事例
建設業界: 工事現場では、測量機器による丁張り設置や出来形管理など位置確認作業が日常的に行われます。スマホ+RTKの高精度測位が実用化すれば、現場監督や作業員一人ひとりが手元のスマホで測量・墨出し作業をこなせるようになります。
実際、LRTK Phoneのようなデバイスは「1人1台の現場ツール」をコンセプトに開発されており、125gと軽量な端末をポケットに入れて必要なときに即座に測位・記録ができる手軽さが支持されています。
これにより、従来は専門測量班に依頼していた位置出し作業を自分たちで迅速に行い、作業の効率化と省人化を図ることができます。高精度な出来形測定データをその場でクラウド共有し、即座に本社や設計者と情報共有して判断を仰ぐことも可能となり、施工管理の迅速化・高度化につながっています。
測量・GIS業界: スマートフォンRTKは測量分野でも大きなインパクトを与えています。従来はトータルステーションやGNSS受信機を用いて行っていた基準点測量や現地調査が、スマホと小型デバイスだけで完結できる可能性が出てきました。たとえば地籍調査や用地測量の現場で、スマホRTKを使って境界点や特徴点を高精度に記録し、そのデータを即GISシステムに取り込むといった運用が考えられます。LRTKのクラウド連携機能を使えば、フィールドで計測したポイント群や軌跡データを事務所にいながら確認したり、複数スタッフで同時に測量結果を共有したりすることも容易です。
また、昨今需要の高まる既存インフラの維持管理(橋梁点検や変位計測など)でも、スマホRTKによる定点観測や簡易モニタリングが活用されています。従来困難だった「携帯圏外の山間部での測量」も、みちびき(QZSS)のCLAS補強信号を受信できるLRTKデバイスなら可能であり、山岳測量や災害現場の調査で威力を発揮しました。大掛かりな機材を持ち込めない現場でも、スマホとLRTKがあれば精度の高い測位データを収集できることが実証されています。
ドローン測量・自動運転への連携: 高精度測位技術は、ドローンによる空撮マッピングや自動運転分野とも親和性があります。RTK対応ドローンではセンチメートル級の位置情報を用いて高精度な自律飛行や空撮測量が行われていますが、これとスマホRTKを組み合わせれば、地上の検知点設置をスマホだけで済ませたり、ドローンの補正情報にスマホ経由のネットワークRTKを利用したりといった連携が可能です。また、昨今の自動運転車や建機にもGNSS+RTKの技術が応用されていますが、スマホで培われた小型・低コストな高精度測位のノウハウは、将来の車載システムやロボットにも波及していくでしょう。スマートフォンが車やドローンと通信し、相互に位置補正データをやり取りすることで、より安全で精密なナビゲーションが実現する可能性もあります。実際、農業用の自動運転トラクターなどではRTKによる数cm精度での走行が実用化されていますが、スマホRTKはそうしたスマート農業・スマートモビリティ領域への参入も視野に入れた技術と言えます。
今後の展望とLRTK導入の案内
スマホ測位技術は今後さらに精度・利便性が向上すると予想されます。デュアル周波数GNSS対応は中価格帯スマホにも広がりつつあり、将来的には全てのスマートフォンが高精度測位を標準機能として備える可能性もあります。測位衛星側の充実(Galileoやみちびき衛星の増強)や、新たな補強信号(欧州のGALILEO HASや日本のサブメーター級補強サービスなど)の提供によって、スマホ単体でも誤差数十センチ以内という時代が目前です。また、スマホ内部のセンサー融合やクラウド補正サービスの活用、さらにはAIによる測位誤差補正技術なども発展しており、トンネル内や高層ビル街での測位信頼性向上など、精度以外の面でも着実に進歩が続いています。
こうした中で、LRTKシリーズとスマートフォンを組み合わせるソリューションは、高精度測位の普及を力強く後押しする存在となるでしょう。LRTK Phoneのように誰もが手軽に使えるデバイスがあれば、「高精度測位は特殊な専門家だけのもの」という従来の常識が覆ります。現場の全員がセンチメートル精度の位置情報を扱えるようになることで、これまでアナログ作業だった部分がデジタルデータに置き換わり、新たな効率化や省力化が実現します。
LRTKシリーズには、スマホ装着型のPhoneモデルの他にも上位機種のProモデルや、360°カメラと連携して現場記録を効率化する製品など、用途に応じたバリエーションが展開されています。これらを活用することで、建設・測量から防災・農業まで幅広い分野で「誰でもどこでも簡単に高精度測位」が可能となり、現場のDXを強力に推進できるでしょう。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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