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RTK測位のローカライズ徹底解説
既知点と公共座標系を活用した座標変換方法

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2025年3月5日 掲載
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RTK測位とは、GNSS(全球測位衛星システム)を利用した高精度測位技術で、基地局(基準点)と移動局(ローバー)のデータをリアルタイムに比較し補正することで、数センチメートルの精度を実現します。通常のGPS測位は誤差が数メートル生じることがありますが、RTKでは基準局との相対測位により誤差を打ち消し、高精度な位置情報を得ることが可能です。例えば、従来のスマホGPSが5~10m程度のずれを生じるのに対し、RTKでは約1~2cm程度まで精度を向上できます​。

このような高精度測位は土木測量や建設施工管理で必須となりつつあり、ドローン測量や農業分野でも活用が広がっています。

では、なぜ既存の座標データを活用する必要があるのでしょうか?現場の測量や施工では、国や自治体が定めた公共座標系(例:日本のJGD2011基準の平面直角座標系)や、過去の工事で設定された既知点(既に正確な座標値が判明している点)の座標と、新たにRTKで測定した座標を一致させることが重要です。単にRTKで得られた座標(経緯度)をそのまま使うだけでは、既存の図面や基準点と整合しない場合があります。そこでローカライズ(既知点による座標合わせ)を行い、RTKの測位結果を既存の座標系に合わせ込む必要があるのです。具体的には、既知点の座標を基にRTK測位の結果を座標変換し、現場で使われている座標系(例えば平面直角座標系)上での位置を求めます。こうすることで、新旧データのずれを解消し、設計図や他の測量成果と高い整合性を保った測位が可能になります。

ローカライズ(座標変換)の基本

ローカライズとは、GNSSで得られたグローバル座標(経緯度や楕円体高)と、現地のローカル座標系で表された既知点の座標を比較し、両者のずれを補正する作業です​。測量ソフト上では「サイトキャリブレーション」とも呼ばれ、既知点のローカル座標(メートル単位の平面座標など)とGNSSで測定した全球測位座標(度単位の経緯度)との対応をとり、平面の平行移動量(シフト)、回転角度、スケール(縮尺)などの変換パラメータを計算します​。

これにより、GNSS測位で得た点にローカル座標系での座標値を割り当て、現場固有の座標基準に適合させることができます。

ローカライズにあたっては、日本の公共測量で用いられるJGD2011(日本測地系2011)や世界測地系(WGS84)などの基準座標系を理解する必要があります。JGD2011は日本全国をカバーする地理座標系で、平面直角座標系という地域ごとの投影座標系に展開されています。例えば、現場が東京都内であればJGD2011の◯系(平面直角座標系◯系)といったゾーンの座標系を使用します。既知点の座標はこの公共座標系で与えられていることが多く、たとえば基準点票石や電子基準点の座標値(経緯度やXY座標)がそれに該当します。

既知点の活用方法としては、以下の手順で座標変換を行うのが一般的です:

  1. 既知点の準備: 現地にある基準点や三角点など、正確な座標(公共座標系でのX, Y, Z値)が既知の点を選定します。最低3点以上の既知点を用意することが望ましく、公共測量の標準では既知点は3点以上使用するよう推奨されています​。既知点が少ない場合でもローカライズは可能ですが、点の数が多いほど安定した変換が得られます。

  2. RTK測位で既知点を観測: RTK受信機(ローバー)を用いて、選定した各既知点の位置を実際に測定します。GNSSから得られる座標は基本的に全球測位座標(例えばWGS84の経緯度や楕円体高)ですが、機器や設定によってはリアルタイムで平面直角座標系に変換された値を取得できる場合もあります。いずれにせよ、この段階で得られた測位値と既知点の「真の座標値」を比較します。

  3. 座標変換パラメータの計算: 観測したGNSS座標と既知点の公共座標系上の座標との差から、平面方向の平行移動量(ΔX, ΔY)、回転角度θ、およびスケール補正S等を算出します。一般的な手法としてヘルマート変換(2次元の七参数変換)が用いられ、X・Yのシフト量、回転角、およびスケール係数を最適適合させることで、測位誤差を全体的に最小化する変換を求めます​。既知点が1点や2点の場合は、シフトのみや、シフト+回転程度の簡易な補正になりますが、3点以上あることでスケール誤差も含めた包括的な補正が可能です。

  4. 変換の適用: 算出された変換パラメータをRTK測位システムに適用し、今後取得する点群や測量点の座標を公共座標系(または任意のローカル座標系)に変換します。これによって、RTKで新規に測定する点も、既知点と同じ座標基準系で記録されるようになります。例えば、元々経緯度(緯度経度)で得られた測位結果に変換パラメータを適用し、平面直角座標系のX,Y座標に変換することで、設計図やGISデータ上で直接利用できる座標値が得られます。

  5. 検証: ローカライズ後、既知点や追加のチェックポイントを再度測定し、変換後の座標が既知の値とどれだけ一致しているか確認します。隣接する既知点間の距離を比較する方法などで、変換前後での差異が許容範囲内に収まっていることを点検します​。もしズレが大きい場合は、他の既知点を追加して再計算したり、異常値のある点を除外するなどの調整を行います。

以上が基本的なローカライズの流れです。要するに、「GNSSのグローバル座標を、現場で使うローカル座標系に合わせる」ための手順と言えます。特に公共測量では「座標変換は平面直角座標系上で行う」「既知点は3点以上使用」といったルールが設けられており​、信頼性の高い成果を得るために慎重な計算と検証が求められます。

LRTKを活用したRTK測位のローカライズ手順

最近では、スマートフォンを利用してRTK測位を手軽に行えるデバイスとしてLRTKシリーズが登場しています。LRTKはレフィクシア株式会社が開発した小型のRTK-GNSS受信機で、iPhoneに装着して使用します​。

専用のスマホアプリと組み合わせることで、誰でも簡単にセンチメートル級の測量が可能となり、取得したデータはクラウドで管理・共有することもできます。ここでは、LRTK端末を用いた座標適用(ローカライズ)の具体的な手順を紹介します。現場ではこのような軽量機材で手軽に既知点測量とローカライズを実施できます。

手順を順に見ていきましょう。

  1. LRTK端末とスマホの接続・準備: まずスマートフォンにLRTK端末を装着し、専用のLRTKアプリを起動します。スマホとはBluetoothやライトニング端子経由で接続され、アプリ上でGNSS受信機の状態を確認できます。次に、補正情報の設定を行います。インターネット環境下であれば、Ntripクライアント設定をしてネットワーク型RTKサービスに接続するか、あるいは日本の準天頂衛星システム「みちびき」が提供するセンチメータ級補強サービス(CLAS)を利用して補正を受けます。後者の場合、携帯電波圏外の山間部などでも衛星から直接補強信号を受け取ることでRTK測位が可能です​。アプリ画面でRTKのステータスが「Fix(固定解)」になれば準備完了です。

  2. 座標系の設定: 次に、アプリ内で使用する座標系を設定します。LRTKアプリでは測位した座標をリアルタイムで平面直角座標系に変換して表示する機能があります​。ユーザーは事前に地域に対応する座標系(◯系)や測地系(JGD2011など)を選択するだけで、後はアプリが自動的に緯度経度から平面座標への換算を行ってくれます。例えば東京都内の現場であれば「平面直角座標系9系・JGD2011」といった設定を選ぶことで、その場で得られる測位値が直ちに公共座標系の座標として表示されます。高さ方向も同様に、楕円体高からジオイド高への変換(ジオイドモデルによる標高補正)が自動的に適用され、JGD2011の標高値が算出されます​。

  3. 既知点の測位と登録: 座標系設定後、現地の既知点を測定してアプリに登録します。例えば、現場に既設の水準点や既知点標がある場合、その上にLRTKを設置して測位し、得られた数値をアプリに記録します。測定にあたっては、精度を高めるために数秒~数十秒程度静止して平均化測位機能を使うと良いでしょう。LRTKアプリには「平均化測位」機能があり、指定回数の測定を行い平均値を計算してくれます​。これによって測定誤差をさらに低減し、安定した座標値を取得できます。平均化した測位座標と既知点の公式座標を比較し、必要に応じて差分をメモしておきます。複数の既知点を順次同様に観測します。

  4. ローカライズ(座標変換)の実行: アプリ上でローカライズ計算を行います。LRTKアプリには、測定した既知点とその既知座標を入力し、ワンタッチで座標補正を行う「座標適用」機能があります(※UI上では「既知点補正」や「ローカライズ」といった名称の機能で提供されている可能性があります)。この機能を使うと、先ほど取得した複数の既知点の測位値と、その既知点の正しい座標値を対応付けて登録します。アプリは内部でそれぞれの差を計算し、全体として誤差が最小になるような変換パラメータ(平面位置のオフセット量や回転補正量)を導出します。計算完了後、「ローカライズ適用」をオンにすると、アプリで表示される座標は以降すべて補正後の値、すなわち現場の座標系に揃った値に更新されます。

  5. 確認測定と運用: 最後に、ローカライズの結果を確認します。再度既知点を測ってみて、アプリ上で表示される座標が既知座標と一致しているか確認します。わずかな差が残る場合は、アプリ内でオフセット補正量を手動で微調整できる機能もあります。確認が取れたら、以後は通常の測量と同じ要領で未知点の測位や杭打ち作業に入ります。LRTKアプリ上では、現在位置と目標点との距離・方位をリアルタイム表示する機能や、点に名前やメモを付けて保存する機能などが充実しており、ローカライズ済みの座標系でそのまま現場作業を進められます。

このようにLRTKアプリではローカライズ後の座標を含め詳細情報を把握でき、測点ごとのメモ入力やデータ共有も簡単に行えます。

現場での運用例として、ある土木工事現場ではLRTKを用いて事前に基準点2~3点をローカライズ設定し、その後の出来形管理で取得する全点の座標を公共座標系に統一したケースがあります。測量担当者は、得られた座標をそのまま電子納品用の成果として使えるため、後処理で座標変換する手間が省け、大幅な効率化につながりました。

また、別の例では農地の区画測量で既知点(地籍調査の標石)の座標を基にローカライズを行い、圃場内の測量や農業機械のナビゲーションに役立てています。このように、LRTKを使ったローカライズは非常にシンプルな操作で現場座標を合わせ込めるため、初心者でも扱いやすく、測量技術者にとっても日常業務の生産性向上に寄与します。

ローカライズのトラブルシューティング

ローカライズを実施しても、場合によっては座標のずれや誤差が発生することがあります。ここでは、よくあるトラブルの原因と対処法を紹介します。

  • 既知点とのズレが解消されない: ローカライズ後に既知点を再測してもなお数センチ以上のズレが残る場合は、まず既知点の座標入力ミスや測定ミスを疑います。既知点の座標値(基準値)を再確認し、測定時に正しくその点にアンテナを据えていたかチェックしましょう。次に、十分な既知点数があるか見直します。1点のみの補正では他の場所で回転やスケールのずれが生じる可能性があります。対処法: 可能であれば別の既知点を追加観測して再度座標変換を行います。それでも改善しない場合、測位環境(周囲の建物や樹木によるマルチパスの影響)が悪かった可能性があるため、アンテナ設置場所を工夫したり時間を変えて観測し直します。

  • 全ての点が一定の方向にオフセットしている: 測定した新点が全体的に南西方向へ◯cmずれている…といったケースでは、ローカライズ計算で求めた並進量(シフト量)が正しく適用されていない可能性があります​。例えば、基準局の座標系と移動局の出力系が食い違っていると、全体に平行移動したような誤差が出ます。対処法: 基準局(ネットワークRTKの場合は仮想基準点)の座標系設定を確認します。JGD2011で計算しているつもりがWGS84のままだった、というような場合は座標系を統一し再計算します。また、LRTKの場合はアプリの「座標補正」設定がオフになっていないか確認し、必要なら手動でオフセット値を入力して調整します。

  • 高さ(標高)の誤差が大きい: 水平座標は合っているのに高さだけ10cm以上ずれる場合、原因はジオイドモデルや測地系の違いが考えられます。GNSSで得られる高さは基本的に楕円体高であり、これを標高(海抜高)に変換するにはジオイド高(ジオイド差)を差し引く必要があります。日本では「GSIGEO2011」などのジオイドモデルを用いますが、システム上これが適用されていないと高さにずれが出ます。対処法: アプリや受信機の設定で標高を求める際に適切なジオイド補正が使われているか確認しましょう​。既知点の水準点がある場合は、その高さとの差分を計算し、平均シフト法で高さにオフセットを適用する方法もあります​。LRTKアプリでは自動でジオイド補正されていますが、高さ基準をT.P.(任意のローカル高さ基準)に合わせたい場合は、既知点の標高差を用いて一括補正する機能を利用します。

  • RTKがFIXしない/精度が安定しない: 座標変換以前にRTK測位自体が不安定な場合、基準局からの補正情報が途切れていたり、衛星受信状態が悪い可能性があります。特にトンネル内やビル陰などではFIX解を得られにくくなります。対処法: 開けた場所で再初期化(アンテナを動かして再度FIXするのを待つ)を試みます。それでも難しい場合は、一時的に測位を中断して基地局データの再受信を行ったり、必要に応じて基地局に近づく(ネットワーク型の場合は仮想点の指定を変更する)などの対策を取ります​。また、LRTK端末固有の問題としてバッテリー残量低下やスマホとの接続不良がないかも確認しましょう。最新の端末では圏外でも使えるCLAS補強やオフライン用のL-Link機能もあるため、それらを活用して安定受信に努めます。

トラブルが発生した際には焦らず原因を切り分け、一つ一つ対処することが大切です。ローカライズのズレに関しては、既知点の再測定や座標計算の見直しを行えば大抵解決できます。また、測量現場ではローカライズ結果の検証として、既知点間の距離や方位の比較チェックがよく行われます。これによってローカライズの精度を裏付け、万が一誤りがあっても早期に発見できます。確実な手順と検証でトラブルを未然に防ぎ、高精度測位を安心して運用しましょう。

活用事例と応用

RTK測位のローカライズ技術は、土木測量やインフラ点検をはじめ様々な分野で活用されています。ここでは具体的な事例と応用の可能性をいくつか紹介します。

  • 土木測量での基準点測量: 道路や橋梁の施工現場では、設計図に基づいた位置出しや出来形管理のために、高精度の測量が欠かせません。従来はトータルステーションで既知点から測角・測距して座標を出すことが多かったですが、RTK測位を導入することで作業効率が飛躍的に向上します。例えば、事前に現場の基準点をRTKでローカライズしておけば、以降はGNSSローバーだけで任意の点の座標をリアルタイムに取得できます。ある造成現場では、重機オペレーターがタブレットとRTKを使って自ら必要な箇所の高さと位置を測定し、その場で埋設物の深さチェックを行うといった運用も実現しています。ローカライズ済みなので測定結果は直接設計座標系で表示され、即座に判断に活かせます。

  • インフラ点検と維持管理: トンネルや橋梁などのインフラ点検では、劣化箇所を正確に記録するために高精度な位置座標が必要です。RTKローカライズを活用すれば、点検で見つかったひび割れや損傷箇所の位置を公共座標系付きで記録でき、将来的な補修計画や他部署との情報共有が容易になります。実際にLRTKを用いて写真に位置情報タグを付与し、クラウド上で共有するシステムも登場しています​。点検員がスマホで写真を撮影すると、その写真にRTKで測位した正確な座標が自動付与されるため、後から地図上で劣化箇所を正確にプロットできます。これは道路巡回点検や上下水道のマンホール管理などにも応用され、紙の図面に手書きしていた従来作業をDX化する動きにつながっています。

  • 施工管理やAR技術への応用: ローカライズされた高精度座標は、AR(拡張現実)技術と組み合わせることで新たな施工管理手法を生み出しています。例えば、タブレットのカメラ映像に設計BIMモデルを重ねて表示する場合、数cmの精度でモデル位置を合わせる必要がありますが、RTKによりそれが可能となります​。ある土木会社では、LRTKを使ったARシステムで埋設管の設計位置を現場に可視化し、掘削前の事前確認に役立てています。従来はGPS精度の荒いARではメートル単位のずれが生じていましたが、RTKローカライズによってモデルと現地の差異を数cm以下に抑え、安全かつ正確な施工を支援しています​。さらに、施工中に取得した出来形点群データを公共座標系で即座に扱えるため、国土交通省の電子納品基準にも適合した成果を容易に作成できます。

  • 農業測位とスマート農業: 農業分野でもRTKの高精度測位が活躍しています。トラクターの自動操舵システムではRTK-GNSSが使われ、誤差数センチでの直進走行や区画管理が行われています。これにローカライズの考え方を適用すると、例えば圃場ごとに設定した基準点(圃場の四隅など)に合わせて測位データを補正し、区画図と現地を完全に一致させることが可能です。ある農業ICT事例では、ほ場土壌センサの測定位置にRTKローカライズを用いた座標を付与し、施肥マップを作成する際の精度向上につなげています。将来的には、農機の走行データやドローン空撮画像においても、ローカライズ済みの座標を利用することで、異なるデータソース間での位置ズレを無くし効率的な統合管理が期待できます。

以上のように、RTK測位のローカライズは単なる測量作業に留まらず、幅広い産業領域で応用されています。特にLRTKのような手軽なデバイスの登場により、測量の専門家でなくとも高精度位置情報を利活用できるシーンが増えてきました。土木・建設から農業まで、センチメートル精度の位置データを誰もが使いこなせる時代が目前に来ていると言えるでしょう。

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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