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初めてのRTK測位:基本設定と測り方ガイド

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2025年3月4日 掲載
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建設測量やインフラ点検の現場では、従来のGPSでは数メートルの誤差が生じるため十分でないケースがあります。そこで登場するのがRTK測位です。RTK(Real Time Kinematic)を使えば、基準局と移動局の2つのGNSS受信機による相対測位で誤差を打ち消し、センチメートル級の高精度測位が可能になります​。高精度な位置情報が得られることで、測量作業の効率化や施工管理の精度向上につながり、スマート施工や精密農業など幅広い分野で注目されています。

本記事では、初めてRTK測位を導入する方向けに、基本概念から具体的な設定手順・測定方法までをガイドします。特に弊社の小型RTK-GNSS受信機LRTKを例に、その特徴(従来機器との違い)や設定のポイントを解説します。LRTKは従来の測位機器に比べコンパクトで扱いやすく、スマートフォン連携による手軽さが特長です。その利便性を活かした現場導入メリットや、よくあるトラブル対策、さらに無料資料請求の案内まで紹介します。RTK基本設定やRTK測位手順のキーワードで検索している方にも役立つ実用情報を網羅していますので、ぜひ導入の参考にしてください。

RTK測位の基本概念

基準局と移動局(ローバー)の役割

RTK測位は、基準局(ベース)と移動局(ローバー)という2台のGNSS受信機を同時に使用します。基準局はあらかじめ正確な座標位置が分かっている地点に設置し、自分が受信したGNSS信号と既知の位置情報を比較して「位置のずれ(補正量)」を計算します。一方、移動局は測位したい地点側に設置し、基準局から送られてくる補正情報を使って自らの測位結果に補正を適用します。これにより、単独測位では数メートルあった誤差を数センチメートル以内にまで小さく抑えることができます​。両局が同じ衛星からの信号を受信しているため、共通に影響する誤差要因(衛星時計誤差や電離層・対流圏の影響など)は相殺され、相対的に高精度な位置を算出できる仕組みです。

RTK測位に必要なもの

RTKを行うにはハード・ソフト双方でいくつかの要素が必要です。まず、上述の基準局と移動局となる2台のGNSS受信機(今回はLRTK受信機を使用)が必要です。それに加え、基準局から移動局へ補正情報を届ける通信手段が必要になります。一般的にはUHF無線や特定小電力無線、あるいはインターネットを利用したNTRIP(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol)方式が用いられます。NTRIP方式では、基準局はインターネット経由で補正データを配信し、移動局は携帯回線などでインターネットに接続して補正データを受信します​。

この場合、GNSS補正情報(RTCM形式など)を配信するNTRIPサーバー(キャスター)と、それにアクセスするためのアカウント情報が必要となります。要約すると、LRTK受信機(二周波GNSS対応)×2台、NTRIP配信サービスへの接続環境、および基準局の既知座標情報がRTK測位開始に必要な準備物となります。

測位精度に影響する要因

RTKによる測位精度は理論上センチメートル級ですが、実際の精度にはいくつかの要因が影響します。まず重要なのは電波の受信環境です。GNSS衛星からの信号は遮蔽物に弱いため、基準局・移動局ともに上空が開けた場所に設置することが望ましいです。周囲に高い建物や樹木があると電波が遮られたり反射(マルチパス)したりして測位誤差や固定解の得られるまでの時間に影響します。また、基線長(基地局と移動局の距離)も精度に関わります。一般的に基線が短いほど両局が受ける誤差要因が似通うため精度が高く、長距離になるにつれて補正誤差の残差が大きくなりやすい傾向があります。実運用では数km程度までの距離であれば数cm精度を保ちやすいですが、十数km以上離れると固定解の取得に時間がかかったり精度が不安定になる場合があります。また、基準局の持つ座標精度にも留意が必要です。基準局に誤差があると、算出される移動局の絶対座標も同じだけずれてしまいます(相対測量としては高精度でも、測地系座標としてはずれる)。そのため公共座標系で高精度な成果が求められる場合、基準局はあらかじめ厳密に測位された既知点に設置するか、電子基準点ネットワークやCLAS等で校正しておくと安心です。最後に、衛星の配置(GDOP値)や利用衛星数、使用する周波数帯数なども影響します。マルチGNSS・マルチ周波に対応した受信機(L1/L2やL5帯対応)を使うことで、衛星数の不足による精度低下を防ぎ、より安定した測位が可能になります。

補足: 測位方式ごとの代表的な精度比較例を以下に示します(大気や測位条件により変動します)。

単独測位に比べてRTKは飛躍的に高精度であることが分かりますが、上記のような環境要因に注意を払うことで、そのポテンシャルを最大限に引き出すことができます。

LRTKのセットアップ手順

それでは、実際にLRTK受信機を用いてRTK基本設定を行い、測位を開始するまでの流れを順を追って見ていきましょう。ここでは一台のLRTKを基準局、もう一台を移動局として、自前でRTK測位環境を構築するケースを想定します。測位開始までに大きく (1)機器の起動と初期設定、(2)基準局の設定、(3)移動局の設定、(4)測位ステータスの確認、という4つのステップがあります。

1. 電源ONと初期設定

まずはLRTK受信機本体の電源を入れ、初期設定を行います。LRTK受信機の電源ボタンを長押しして起動すると、インジケーターランプが点灯しブートが開始されます。初回使用時やファームウェアアップデート直後は起動に時間がかかる場合があります。本体が起動したら、付属のスマートフォン用アプリまたはPC設定ソフトウェアを使ってデバイスに接続します。接続後、ファームウェアのバージョン確認を行いましょう。メーカーから提供されている最新ファームウェアがインストールされていることが重要です。不具合修正や機能向上のため、最新版への更新が推奨されます。必要に応じてファームウェアをアップデートしたら、測位モードがRTKモードに設定されていることを確認し、基準局・移動局それぞれの動作モードを指定できる場合はここで選択します(多くの機種では後述の設定項目で自動的に役割が決まりますが、念のため確認しましょう)。

初期設定の段階で、測位に使用するGNSS衛星システム(GPS, GLONASS, Galileo, BeiDouなど)や周波数帯設定を確認しておくことも大切です。LRTKはマルチGNSS対応ですので特別な理由がなければ全て有効にしておきます。また、測位データの出力フォーマット(NMEAやUBXなど)や更新レートも必要に応じて設定可能です。一般的な測量用途であれば1Hz~5Hz程度の更新頻度で十分ですが、機械制御などリアルタイム性が重要な場合は10Hz以上に設定することもあります。これらの設定項目は後から変更できますが、初回に一通り確認しておくと良いでしょう。

2. 基地局の設定

続いて、一台目のLRTK受信機を基地局モードで設定します。基地局は正確な座標が既知のポイントに設置する必要があります。まずは基地局として使用するLRTK受信機を測量用三脚などに据え付け、アンテナ高(地面からアンテナ位相中心までの高さ)を測定して記録します。次に、基準点の座標を設定します。もし設置場所が公共測量の既知点(三角点や電子基準点等)の場合は、その緯度・経度・高さ情報を入力します。独自に基準局を設置する場合は、別途高精度に測位して求めた座標値を用いるか、一旦RTKや長時間GNSS観測で概略位置を算出し、それを基準値として設定します(後で測位結果を既知点に合わせて平行移動させるローカライゼーションという手法もあります)。

座標を登録したら、NTRIPサーバーへの接続設定を行います。LRTK受信機をインターネットに接続できるようにし(内蔵のLTE通信モジュールや外部のWi-Fiルーター経由でネット接続します)、提供されたNTRIPキャスターのアドレス・ポート番号・マウントポイント・ログイン情報を入力します。基準局側は通常NTRIPサーバー(Ntrip Server)として動作し、自身が観測したGNSSの生データや補正情報(RTCM形式)がキャスターを通じて配信されるようになります​。正しく接続できれば、基地局のLRTK受信機が「配信中」あるいは「Broadcasting」というステータスになるはずです。NTRIPではなく無線通信で補正データを飛ばす場合は、双方の無線機設定(周波数チャネルや電波法順守の出力設定など)を行いましょう。この際、基地局IDやストリームの識別名を移動局と共有しておく必要があります。基地局設定の最後に、現在受信している衛星数やDOP値などを確認し、安定してデータが取得できていることをモニターします。問題なければ基準局側の設定は完了です。

3. 移動局(ローバー)の設定

次に、二台目のLRTK受信機を移動局モードで設定します。移動局側でもまずアンテナをポール等に取り付け、必要に応じてアンテナ高を設定します。続いて、移動局用受信機を基地局からの補正データに接続させます。通信方法がNTRIPの場合、先ほど基地局で使用したのと同じNTRIPキャスターの情報を移動局側にも設定します。ただし、移動局はNTRIPクライアント(Ntrip Client)として動作し、指定したマウントポイント(基準局データの流れているチャンネル)にアクセスして補正データを受信します​。移動局のLRTKをインターネット接続(例えば内蔵SIMによる4G回線やテザリングしたスマホ経由のネット)し、キャスターのアドレス・ポート・マウントポイント名・ログインID/パスワードを入力して接続を開始します。うまく接続できれば、移動局の受信機に基準局からのリアルタイム補正情報が届き始めます。

移動局では補正情報を受け取りつつ、自身でもGNSS衛星を受信して測位演算を行います。受信機やアプリの表示を確認し、解が「Single(単独)→Float(浮動)→Fixed(固定)」と遷移していくことをチェックしましょう。最初は補正が入らない単独測位状態ですが、補正データ受信後しばらくすると浮動小数点解(サブメータ級精度)が得られ、やがて整数値解(Fix解)となります。RTK固定解になるとセンチメートル級の精度に達したことを意味します。通常、空が開けていて十分な数の衛星が見えていれば、数十秒~数分程度で固定解が得られます。機種やアルゴリズムによってはさらに高速に解決する場合もあります。移動局の設定時にはこのRTK解のステータスが常に確認できるよう、受信機のインジケーター(固定解になると緑点灯など)やアプリ上の表示を注視します。

4. 測位精度の確認

基準局・移動局の設定が完了し、移動局でRTK固定解が得られたら、実際に測位精度を確認してみましょう。まず、移動局の現在位置データをモニターして、座標値が安定しているか確認します。固定解が得られている場合、平面位置は数センチ程度の範囲でほぼ一定値を示し、高さ方向も数センチ程度のばらつきに収まるはずです。多くのRTKシステムでは現在の解の種類(FIX/Float/Single)や推定精度(水平・垂直の標準偏差)を表示できますので、それらも参考にして精度を把握します。必要に応じて、同じ地点で数回測定を繰り返し、その結果のばらつきを見る方法も有効です。あるいは測位中の座標値をログに記録し、後で統計を取って精度評価することもできます。

理想的には、既知の座標点(例えば公共基準点)でRTK測位を行い、求まった座標と既知値を比較することで精度検証を行うのが確実です。誤差が許容範囲(数cm程度)に収まっていればシステムは正常に機能していると判断できます。もし大きなずれがある場合は、基準局に設定した座標値が間違っていないかや、測地系・楕円体高の扱いの違いなどを確認しましょう。また、移動局を静止させた状態で一定時間測位を続け、その座標変動をプロットすることで、リアルタイムの精度と安定性を把握することもできます。初期導入時にはこのような方法でRTKシステムの性能を確認しておくと安心です。

RTK測位の実践ガイド

基本設定が完了しRTKによる測位ができる状態になったら、実際の測量業務に活用していきます。ここでは、基準点測定および移動局を使った測量手順について解説し、最後に精度を向上させるポイントを紹介します。現場で円滑にRTK測位を行うためのノウハウとして参考にしてください。

基準点測定の準備と流れ

RTK測位を現場で運用する際、まずは基準点の測定または確認を行うと良いでしょう。基準点測定とは、現場の既知点(既に正確な座標値がわかっている点)や任意に設定したベースポイントをRTKで測定し、システムの精度や基準局座標の妥当性を確かめる作業です。

設置場所の選定: 基準点にする場所はできるだけ空が広く開け、周囲に電波を反射しそうな建物や金属物がない場所を選びます。建設現場であれば敷地内の高台や仮設のポール設置箇所、既存インフラ点検であれば橋梁上や線路脇の開けた地点などが考えられます。三脚やポールを用いて受信機を安定して設置できることも重要です。測定中に動いてしまうと誤差の原因になるため、据え付け後はしっかり固定します。

測定の流れ: 基準点となる地点に移動局(ローバー)を据え付けたら、RTK測位を開始します。すでに固定解が得られている状態なら、その場で数十秒程度静止して測位データを安定させます。次に、その点の座標を記録します。記録方法は、受信機の接続先であるデータコレクタやアプリ上で「ポイント測定」機能を使って平均値を取得するか、手動で現在値をメモする形でも構いません。可能であれば複数回測定して結果を比較します。例えば同じ点を3回測り、それぞれの差が数センチ以内であれば再現性良好と判断できます。既知点であれば測定結果と既知の真値を比較し、誤差を確認します。ここで大きな誤差(数cm以上)が出るようなら、基準局設定や機器に何らかの問題がある可能性があるため、後述のトラブルシューティングを参考に点検してください。

このように最初に基準点の測定・確認を行うことで、その日その現場におけるRTK測位の信頼性を把握できます。測量現場では「はじめに既知点を測る」ことが精度管理上の基本です。もし既知点がない場合でも、自前に設定した基準点を繰り返し測定することで精度確認は可能です。基準点測定が終われば、いよいよ本格的な測量作業に移ります。

移動局を使った測量の手順

移動局(ローバー)を用いた測量の具体的な進め方について説明します。RTK測位では、移動局を持って各測点を巡り、点ごとの座標を取得していきます。従来のトータルステーションによる測量と違い、視通や測線は不要で、移動局のアンテナさえ空を見通せればどこでも測点にできます。ここでは一般的な地上測量(作業員がローバーを持って歩く場合)を想定した手順を示します。

  1. 測点の計画と準備: 測定したいポイント(測点)をあらかじめリストアップします。図面上の要所(境界点や設計座標など)であればリスト化し、野帳やアプリ内のポイント一覧に登録しておくと便利です。LRTKのスマホアプリを使う場合、事前に測点情報をインポートしておくことで、現場で名前を付けて保存する手間を省けます。特に多数の点を測る場合は計画段階で整理しておきましょう。

  2. 移動局の携行: 移動局受信機は測量用ポールに取り付け、作業員が持って歩きます。ポール先端のアンテナ位置が測点の座標となるため、常にポールを鉛直に立てるよう注意します(気泡管で確認)。最近の受信機には傾斜補正機能が搭載されたものもあり、LRTK Pro2などでは多少ポールが傾いても自動補正できますが、基本は垂直を保つのが原則です。ポールの長さ(アンテナ高)は一定にし、設定でその高さを入力しておきます。

  3. ポイントの測定: 測点の位置に移動局アンテナを据えたら、数秒間静止して測位を安定させます。RTK固定解を維持したまま、アプリやコントローラ上で「観測開始」や「ポイント記録」を実行します。多くの場合、測点名やコードを入力して測定データと紐付けることができます。例えば「1番柱脚中心」や「試掘箇所A」など識別しやすい名前を付けます。記録ボタンを押すと、指定した測定時間(例:5秒間)でデータを平均して座標値を計算し保存してくれたり、瞬時に現在値を記録したりできます。測定モードは必要に応じて選びます。高精度を期すなら各点ごとに10秒程度測定して平均値を取ると安心です。

  4. データの保存と管理: 測点の測定が完了すると、その座標値および時刻、測位状態(FIX/Float)などが記録されます。LRTKシステムでは測定データがスマホアプリ上に蓄積され、クラウドに同期する設定も可能です。クラウドを利用すれば、現場で取得したデータが即座に事務所のPCで確認できるなど、データ共有が円滑になります。また、アプリ内でCSVやGeoJSON形式にエクスポートし、後でCAD図面に読み込んで活用することもできます。データ管理のポイントとして、測点名や属性情報を丁寧に入力しておくこと、測定ごとにメモ(例:「○○さん担当」や天候など)を残せる場合は記録しておくことが挙げられます。これにより後日の解析や報告書作成がスムーズになります。

  5. 複数点の繰り返し: あとは上記の手順を各測点で繰り返していくだけです。広い現場では効率よく回れる順路を考えながら進めます。複数人でローバーを持って同時並行的に測量する場合は、あらかじめ担当エリアを分けておくと良いでしょう。1つの基準局で複数の移動局を運用できるのがRTKの強みです​。例えば広い造成現場で同時に測量作業を進めたり、長い鉄道・高速道路の区間を複数人で分担して点検することも可能です​。このようにチーム全体で効率良く測点を取得していけるのがRTK測位のメリットです。

  6. 現場での確認: 主要な測点を一通り測り終えたら、現場で簡易的にチェックを行います。例えば同じ地点を二度測って結果を比較したり、既知点があれば改めて測って誤差を確認します。これにより粗いミス(測点名の取り違えや機器トラブルなど)を早期に発見できます。問題なければ全データを安全に保存し、機器の電源をオフにして測量終了です。

以上が移動局を使った基本的な測量の流れになります。従来の方法に比べてRTK測量は一人でも短時間で多くの点を測れるため、現場の生産性が大幅に向上します。またデータが即デジタルで得られるため、紙の野帳への書き写しミスなども防げます。測位結果はリアルタイムに確認できるので、その場で取り直しや追加測定の判断ができるのも利点です。

精度を向上させるためのポイント

RTK測位で安定して高精度を得るためのコツや注意点をいくつか挙げます。

  • 衛星視野の確保: 基準局・移動局ともにできるだけ全天空が見渡せる環境で測位することが重要です。特に移動局は障害物に近づきすぎないように意識します。建物沿いを移動する際は建物から少し離れる、樹木が茂るエリアでは頭上が開けたポイントで測位する、といった工夫をしましょう。どうしても遮蔽物が多い場合は、測点を追加して複数回測り平均したり、障害物の影響が小さい時間帯(衛星配置が良いとき)を狙うことも検討します。

  • アンテナの据え付けと整準: 測量用ポールを用いる場合は、常に気泡管でポールが鉛直になっているか確認します。傾きがあると高さ方向の誤差要因になります。また、三脚を使う基準局では据え付け時に脚をしっかり固定し、風などで動かないようにします。アンテナ高の入力ミスにも注意しましょう。現場ではメジャーでアンテナ高を測ったら、受信機やアプリの設定画面に正しい値を反映させます。

  • 観測時間と平均化: 各測点での観測時間を長めに取ることで精度向上が期待できます。例えば固定解を維持した状態で10秒~30秒程度静止し、その間のデータを平均すれば、瞬間的な誤差の影響を低減できます。ただし動的な現場では毎点それだけ時間をかけられない場合も多いので、重要度に応じて観測時間を使い分けると良いでしょう。短時間で測った点については、後で測量成果の精度検定を行い、必要なら再測定するなどの対応をします。

  • 衛星構成のモニタリング: 測位中に利用衛星数やDOP値が極端に悪化した場合は、一時的に精度が低下します。例えば衛星の配置が偏ってDOP値が10を超えるような場合や、受信衛星数が4基ギリギリまで減ってしまった場合などです。こうした際は無理に測定を続行せず、少し待って衛星状況が改善するのを待つことも検討しましょう。マルチGNSS対応受信機の場合はあまり起こりませんが、都市部で特定方向が遮られている場合などには起こりえます。

  • 基準局との距離管理: 基準局から遠く離れすぎると精度が落ちる可能性があるため、広いエリアを測る際は基準局の再設置も視野に入れます。例えば現場が東西に長い場合、途中で基準局を西端から東端に移して測り直すことで、全体の精度均一性を高められます。移設の際は重複点をいくつか測って座標を突き合わせ、つじつまが合うように調整します。

  • 定期的なチェック: 作業中も適宜既知点や仮固定点を測って誤差を確認する癖をつけましょう。長時間の作業では衛星の位置や大気状況が変化し、精度に影響を及ぼすことがあります。例えば1時間おきに基準点を測定して記録しておけば、その推移を見ることで途中で精度が悪化していないか把握できます。万一ズレが生じていれば、その区間のデータを再測定する判断もできます。

以上のポイントを意識することで、RTK測位の精度と安定性を維持しやすくなります。要は「空が見える場所でしっかり据える・焦らず安定させる・こまめに確認する」ことが肝心です。慣れてくると現場ごとの癖も分かってきますので、経験を積みながら精度管理のコツをつかんでください。

よくあるトラブルと対策

RTK測位の運用中によく直面する問題と、その原因や対処法をまとめます。初めての導入時には戸惑うこともあるかもしれませんが、典型的なトラブルのチェックポイントを知っておけば落ち着いて対処できます。

RTKの固定解が得られない場合

症状: 移動局の解がいつまで経っても「Float」のまま固定解(FIX)にならない、あるいは最初から「Single」状態が続いている。

考えられる原因: 衛星受信状況が悪く必要なデータが不足している、基準局からの補正データは届いているが内容に問題がある、初期設定の誤りなどが考えられます。具体的には、周囲の遮蔽物により衛星の信号が安定受信できていなかったり、基準局・移動局間で使用する測位システムや周波数の設定が不一致だと補正が適用できません。また、基準局の座標が大きくずれている場合や、移動局が基準局からあまりにも遠距離にある場合も、固定解の計算が収束しにくくなります。

対処法: まずは衛星の受信環境をチェックします。移動局を開けた場所に移動させ、衛星数が十分か確認しましょう。次に補正データの受信状況を確認します。移動局側の表示でRTCMメッセージを受信しているか、受信している衛星の識別子に差分データが反映されているか(通常、差分適用時は衛星マークが●になる等の表示あり)を見ます。補正が来ていないようなら通信設定を見直します。補正が来ているのにFIXしない場合は、基準局と移動局で使っている衛星系(GPSだけ/GLONASS含む等)が揃っているか確認します。

一方がGLONASSオフだと解決できないので双方同じ設定にします。また、基準局座標の精度も確認点です。もし仮の座標を使っている場合でも、数十メートル以上誤差があると初期の浮動解計算に時間がかかる可能性があります。できるだけ正確な値を入力しましょう。最後に、ソフトウェア的な不具合の可能性もあります。念のため機器を再起動し、基準局→移動局の順に立ち上げ直すと解決することもあります。それでもFIXしない場合、電離層乱れ等の環境要因も疑われます。その際は時間をおいて再度測位を試みるか、別の基準局(ネットワーク型RTKサービスなど)が利用できれば切り替えてみるのも手です。

NTRIP補正データが受信できない場合

症状: 移動局側でNTRIPに接続できない、補正データの受信が途切れる、「Differential age」が増大している等の通信不良が発生する。

考えられる原因: インターネット接続に問題がある、NTRIPの設定(アドレスや認証情報)が間違っている、あるいはキャスター側のサービスがダウンしている可能性があります。屋外での通信では携帯電話の電波状況によっても不安定になることがあります。またSIMのデータ容量超過やテザリングの不調など、通信機器側の要因も考えられます。

対処法: まずネット接続状況を確認します。スマートフォンをテザリングに使っている場合はスマホ自体がインターネットに繋がっているかチェックし、電波が弱ければ移動してみます。専用SIM内蔵型の受信機であれば、電波強度インジケータなどを見ます。必要に応じて受信機に外部アンテナを取り付け電波状態を改善します。次にNTRIP設定を再確認します。キャスターのURLやポート番号、マウントポイント名、ユーザー名・パスワードが一文字でも違うと接続できません。大文字小文字も正確に入力します。一度設定を削除し再登録し直すのも有効です。キャスターに接続できているかは、移動局側のログに「NTRIP:Connected」のようなメッセージが出るかで判断できます。もし接続エラー(Unauthorizedなど)が出る場合は認証情報を再確認します。また、キャスター側の問題も念頭に置きます。他の地域のNTRIPサービスに切り替えて試せるなら、切り分けとして試行します。時間帯によってはサーバーメンテナンス中ということもあります。どうしてもインターネット経由が難しい現場では、ローカル無線(デジタル簡易無線や特小無線)に切り替えることも検討しましょう。その場合、基地局・移動局それぞれ無線機のペアが必要ですが、インターネット不通地域でもRTKが可能になります。

基地局・移動局間の通信が不安定な場合

症状: RTK測位中に補正データの通信が断続的に切れる、固定解と浮動解を行ったり来たりする、基準局と移動局の接続が頻繁に再確立される。

考えられる原因: 基地局と移動局の間の通信リンクに何らかの不安定要素があります。NTRIPの場合は携帯回線の電波強度の変動やパケットロス、無線の場合は見通しの悪化や周波数干渉などが考えられます。また移動局が基準局から遠距離に移動しすぎて通信圏外になりかけている可能性もあります。特に、山間部や郊外で基地局⇔移動局の距離が広がると携帯電波が届かないエリアが出てくることがあります。

対処法: 通信環境の改善が第一です。携帯回線であれば、より安定した通信が確保できる場所で作業するか、モバイルルーターの位置を高所に置くなどして電波を拾いやすくします。場合によっては別のキャリアのSIMカードを用意し電波状況の良い方を使うといった工夫もあります(デュアルSIM対応機器なら自動フェイルオーバーも可能)。無線通信の場合は、アンテナの高さや向きを調整します。基地局の無線アンテナをできるだけ高く設置し、移動局との間に障害物がないようにします。免許不要の特定小電力無線等では出力が限られるため、見通し距離1km程度が実用目安です​。

それ以上の範囲をカバーするには中継器の設置や出力の大きいデジタル簡易無線(要免許)への切り替えを検討します。また、電波干渉が疑われる場合はチャンネルを変更してみます。同じ周波数帯を使う他の機器(工事用の無線機やイベント会場の通信など)があるとノイズになります。NTRIPであれば基本的に周波数干渉はありませんが、ポケットWi-FiやスマホのBluetoothテザリングが干渉するケースも報告されています。その場合、有線接続やUSBテザリングに切り替えると安定することがあります。

運用上の工夫: 移動局が広範囲を移動するような場合、事前に電波の届きにくいエリアを把握しておき、そうした場所の測量はできるだけ基地局に近いタイミングで行うよう計画します。また、一時的に通信が切れても測位自体はしばらくFloat解で続行できるため、慌てず通信が復旧するまで待つことも大切です(多くの受信機は補正データが途絶えても数十秒程度は内部予測で測位を維持します)。それ以上途切れると解がSingleに戻ってしまうので、再度FIXになるまで静止して待ちます。頻繁に起こる場合は上記のハード面の対策を強化しましょう。

LRTKの活用と導入メリット

最後に、LRTK受信機の具体的な活用事例と、導入することで得られるメリットについて紹介します。また、記事をお読みになってさらに詳しく知りたい方向けに無料資料請求・お問い合わせの方法もご案内します。

LRTKの導入事例(建設測量・インフラ管理・農業測量)

建設業界: LRTKは建設現場の測量・出来形管理において大きな威力を発揮します。例えば土木工事の丁張り設置や出来形検測では、従来は複数人がかりでトータルステーションを使っていた作業を、LRTKを搭載したスマートフォン1台で済ませることが可能です。i-Constructionの現場では3次元出来形管理のため多数の点を測る必要がありますが、LRTKなら現場監督や職人自身が測量を行えるため1人1台体制で生産性が大幅向上します​。

また、重機にLRTK受信機を搭載して掘削・盛土の高さ管理を行うなど、マシンガイダンス的な使い方もできます。道路工事では、長大な舗装区間の出来形を複数の作業員が手分けして短時間で取得し、そのデータをクラウドで即座に統合するといったワークフローも可能になります。これにより、従来は順番待ちだった測量作業が並行して進められ、工期短縮や人件費削減につながっています。

インフラ点検・維持管理: 鉄道や高速道路、橋梁などのインフラ点検においてもLRTKが活用されています。例えば高速道路会社の維持管理部門では、点検箇所の位置を正確に記録するためにRTK測位が導入されています。LRTK受信機は小型軽量で現場作業員が携行しやすいため、長大な区間を移動しながら多数の測点を記録する作業に適しています。複数のローバーを用いて一斉にデータ取得を行えば、広範囲を短時間でカバーでき点検効率が飛躍的に向上します​。実際に、ある鉄道会社では線路沿いにおけるゆがみや周辺設備の位置測定にLRTKを活用し、従来比で作業時間を半減させた例もあります。また取得した点群データや写真に位置情報を紐付けてクラウド管理することで、補修計画の立案もスムーズになったと報告されています。

農業分野: スマート農業においても高精度測位は重要です。LRTKは農機に後付けして自動走行トラクターのガイダンスに利用したり、圃場の区画測量・土壌サンプリング位置記録などに使われています。例えば水田の区画整備では、LRTKで測った地形データをもとに整地作業を効率化できます。また小型で安価なため、農家ごとにRTK基地局を設置するケースも増えています。LRTKを基地局モードで納屋などに設置し、自前の補正情報を発信して圃場内のトラクターが受信することで、通信コストをかけずに高精度な自動走行を実現している事例もあります。農機メーカーのガイダンスシステムと組み合わせた導入も可能であり、広大な農地で誤差数センチの直進走行やピンポイント散水を行うなど、精密農業を支える技術として期待されています。

LRTKが選ばれる理由(コンパクト性・操作の簡単さ・高精度)

数あるRTK-GNSS機器の中でLRTKが現場技術者に支持されている主な理由を3つ挙げます。

  • コンパクトで携行性に優れる: LRTK受信機の最大の特長の一つはその小型軽量さです。例えば円盤状のLRTK Pro受信機は直径10cmほど・重量わずか280gで、手のひらに収まるサイズです(前掲の図1参照)。さらにスマートフォン装着型のLRTK Phoneは受信機とスマホカバーが一体化したデザインで、重量125g・薄さ13mmというポケットサイズの端末になっています​。このように従来の測量機器に比べ格段にコンパクトなため、現場へ複数台持ち込むことも容易です。作業員それぞれが1台ずつ携行して、必要なときにサッと取り出して測位・記録できるという手軽さは革新的です​。車両への搭載やドローンへの積載も簡単で、応用範囲が広がります。

  • 操作が簡単で初心者にも扱いやすい: LRTKは測位の専門家でなくとも使いこなせるよう配慮されています。専用のスマホアプリを使った直感的なインターフェースで、NTRIP接続や測点記録もガイドに沿ってボタン操作するだけです。従来は煩雑だった基地局・移動局の設定もプリセットや自動認識によって簡素化されています。例えばLRTK PhoneならiPhoneに装着してアプリを起動し、ボタン一つでネットワーク型RTKの設定が完了します。また測位状態の表示やデータの保存もアプリ上で分かりやすく表示されるため、専用研修を受けていない一般作業員でも短時間のレクチャーで運用に加われます​。現場で使用することを念頭に、堅牢な設計や防水・防塵性能(IP規格)も確保されており、多少の雨天や粉塵下でも安心して使える点も評価されています。

  • 高精度かつ安定した測位性能: 小型で簡単とはいえ、測位精度は一切妥協していません。LRTKはマルチGNSS・マルチ周波数に対応し、理論上数センチ未満の精度を引き出せる最新鋭のGNSS受信エンジンを搭載しています。実測でも水平精度2~3cm、鉛直精度3~4cm程度の結果が得られており​、従来の大型受信機と比べ遜色のない性能です。加えて、日本の「みちびき(QZSS)」衛星が提供するセンチメータ級補強サービス(CLAS)にも新モデルで対応しており、RTK方式だけでなく衛星単独でも補強信号を受信して測位できる柔軟性があります​。このように様々な高精度測位技術を取り込むことで、都市部から山間部まで安定した測位を可能にしています。高精度な測位データはそのままクラウドに同期でき、現場DXに直結する利活用が図れるのもLRTKの強みです。最新のLRTK Pro2では傾斜センサーによる補正機能も備わり、実測精度・作業効率の両面で更なる向上が実現されています。

以上の理由から、LRTKは「誰でも扱える高精度測位端末」として注目を集めています。初めてRTK測位を導入する企業・団体にとってもハードルが低く、少ない投資で大きな効果が得られるでしょう。

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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