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センチメートル級の精度とは?RTKで可能になること

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2025年2月28日 掲載
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近年、建設や土木、インフラ保守の現場で衛星測位技術が非常に重要になっています。カーナビやスマートフォンのGPSに代表される位置情報は、今や日常業務に欠かせません。しかし、一般的な衛星測位では数メートルの誤差が生じ、高精度が求められる施工管理や測量の現場では不十分です。そこで活躍するのがRTK測位と呼ばれる手法です。

本記事では、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いた単独測位(スタンドアロン測位)と相対測位の違いを解説し、RTKでなぜ精度が上がるのかを詳しく説明します。さらに、RTK技術を進化させた注目の小型デバイスLRTKについても紹介します。

単独測位(スタンドアロン測位)とは?

単独測位とは、1台のGNSS受信機だけで自分の位置を算出する測位方式です。GNSS衛星(GPSやGLONASS、みちびき等)から送信される軌道情報や時刻情報を受信機で受け取り、衛星から電波が届くまでの時間から距離を計算して位置を求めます​。位置が既知の複数の衛星(最低4機以上)との距離を測定し、その交点として受信機の位置を割り出します。

しかし、単独測位にはさまざまな誤差要因が含まれます。例えば、衛星の軌道や時計の誤差、電離層・対流圏を通過する際の電波の遅延(大気誤差)、さらにビルや地形によるマルチパス(反射経路)の影響などです。受信機単体ではこうした誤差を補正できないため、得られる位置情報にはある程度のずれが生じます。一般的に、GNSS単独測位の精度は約数メートル程度と言われており、場合によっては約10mほどの誤差が発生します​。

例えば車のナビやスマホのGPS地図で位置がずれる経験があるでしょう。それでも単独測位は専用の基地局を必要とせず、広く簡便に利用できるため、船舶や航空機、自動車のナビゲーションなど高精度を必要としない用途で広く使われています​。

相対測位(RTK測位)とは?

相対測位とは、基準局と移動局の複数の受信機で同時にGNSS観測を行い、両者の位置関係(ベクトル)を高精度に求める測位方式です​。具体的には、位置が分かっている基地局(基準点)と、位置を求めたい移動局(観測点)を用意し、両方で同じタイミングに同じ衛星からの信号を受信します。二つの受信機が測った信号の到達時間差を比較することで、基準局から見た移動局の相対位置を算出します​。

このように二点同時に観測することで、単独測位では除去できなかった共通の誤差要因を相殺できるのが大きな特徴です。

例えば、基準局と移動局が近距離にあれば、両者の観測にはほぼ同じ衛星誤差や大気誤差が含まれます。そこで観測データ同士の差を取る(二重差などの手法)ことで、衛星の軌道誤差や電離層・対流圏による遅延誤差がキャンセルされ、誤差を大幅に低減できます​。これを利用したのがDGPS(Differential GPS)測位やRTK(Real Time Kinematic)測位です。DGPSでは基準局で計算した位置ズレ量(数メートル程度)を移動局に補正情報として送り、移動局は単独測位の結果を補正します​。

一方、RTK測位では両局でGNSSのキャリア位相(搬送波)の観測を行い、基準局の生データをリアルタイム送信して、移動局で相対測位解を導きます​。

搬送波は波長が数十センチと短く分解能が高いため、位相のずれから距離差を高精度に算出できます。整数波長の不確定性(整数アンビギュイティ)を解決する必要がありますが、解が安定すればセンチメートル級の精度でリアルタイムに位置決定が可能です。

RTK測位を行うには、基準局から移動局へ誤差補正のための観測データや補正情報を送信する通信手段が必要です。一般的には無線機やインターネット(モバイル回線)を通じてリアルタイムにデータをやり取りします。近年は基準局ネットワークを活用したネットワーク型RTK(VRS方式など)も普及しており、地域の電子基準点や解析サービスから補正データを受け取ることで、ユーザー自身が基地局を設置しなくてもRTK測位を実現できます​。

このように手間は増えますが、その見返りにRTKは単独測位では得られない高精度を実現します。基準局との距離にもよりますが、一般にRTK測位の精度は水平数センチメートル、鉛直数センチメートル程度に収まります​。実際、水平2~3cm・鉛直3~4cmほどの誤差で位置が求められ、単独測位と比較して桁違いに精度が高いのです​。

単独測位と相対測位の精度比較

単独測位とRTKによる相対測位では、得られる位置精度に大きな差があります。単独測位は補正を行わないため誤差が蓄積し、一般的なGPSでは3~10m程度の位置ずれが生じます。一方、RTK測位では基準局との相対観測により誤差が相殺されるため、数センチの誤差範囲にまで精度が向上します​。

言い換えれば、サッカーボール大の範囲にしか絞り込めなかった位置が、RTKでは指先程度の誤差にまで縮まるイメージです。単独測位は手軽な反面、上表のように精度面では相対測位(RTK)に劣ります​。

RTKではリアルタイムに基準局からの補正情報を反映することで、単独測位では避けられない誤差を大幅に低減できるのです。もちろんRTKでも衛星信号が途切れたり、基準局との通信が不安定になれば精度低下(固定解が得られずフロート解やDGPSレベルになる)します。しかし、良好な環境下では単独測位とRTK測位の差は歴然であり、測位精度が飛躍的に向上する理由がここにあります。

RTKの活用事例

高精度な位置情報が得られるRTKは、様々な分野で活用されています。特に土木・建設やインフラ関連の現場では、従来は人手や手間を要した計測作業を効率化し、精度向上する手段としてRTK測位が欠かせません。いくつか代表的な活用分野を紹介します。

  • 土木測量: 地形測量や用地測量で基準点を設置し、地図作成や出来形管理に活用。RTK-GNSSを用いることで、広範囲のポイントを短時間で測定し数cmの誤差で座標を取得できます。従来のトータルステーションに比べ作業効率が上がり、測量作業の省力化に貢献しています。

  • 施工管理・杭打ち(墨出し): 建設現場での位置出し作業にもRTKが利用されています。設計図の座標に基づき、現地で構造物の設置位置や高さをマーキングする「墨出し作業」は精度が命です。RTK対応機器を用いれば、一人でも正確に測点を出すことが可能です。また、重機のマシンガイダンス・マシンコントロールにもRTK-GNSSが搭載されており、オペレーターの支援や自動施工でミリ単位の施工精度を実現しています。

  • インフラ点検・維持管理: 道路や鉄道、橋梁などのインフラ点検でも高精度測位が威力を発揮します。例えば鉄道軌道の歪み測定や道路の沈下モニタリングでは、RTKによる定点観測で経時変化を数センチの精度で把握できます。高速道路の設備設置や補修箇所の特定でも、事前に測った高精度座標を基に現場を特定することで作業効率が上がります。

  • UAV測量(ドローン空撮): 写真測量用ドローンにRTKを搭載する事例も増えています。空撮写真の位置情報精度が単独測位だと数mずれるのに対し、RTK搭載ドローンなら各写真の位置を数cm以内で記録できます​。その結果、少ない地上標定点でも高精度な3次元測量モデルを作成でき、土量計算や出来形管理の精度向上・効率化につながっています。

このように、RTKの高精度測位は測量・施工からインフラメンテナンスまで幅広い現場で活躍しています。従来は測量の専門家だけの技術でしたが、最近では装置の小型化や低価格化も進み、現場技術者が直接RTK機器を扱うケースも増えてきました。

LRTKによるRTK測位の進化

RTK測位の需要拡大に伴い、近年では従来のRTK機器をさらに使いやすく進化させた製品も登場しています。その代表例がLRTKと呼ばれる小型RTK-GNSSシステムです。従来のRTK装置は、据え置き型の基地局とポールに据えた移動局、さらに無線機や外部バッテリーなど、持ち運びにかさ張る機材が必要でした。初期導入コストも高額になりがちで、中小の事業者にはハードルが高い面もありました。しかしLRTKは「いつでも、どこでも、誰でも」RTKを活用できることを目指し、技術的な工夫により利便性を大幅に向上しています。

LRTKの特長としてまず挙げられるのが、機器の小型・軽量化です。例えばスマートフォン一体型のLRTK Phoneという製品では、受信機本体がわずか125g、厚さ13mmというポケットサイズに収まっています​。

アンテナ・GNSS受信機・バッテリー・通信モジュールが一体化されており、この1台だけでセンチメートル級測位が可能な万能測量機になります​。従来のようなケーブル接続も不要で、スマホとワイヤレス連携することで現場での取り回しが非常に簡単です。スマホの画面上で測位結果の確認や点名入力ができ、測定データはそのままクラウド共有も可能です​。価格も従来品に比べてリーズナブルで、1人1台の時代を見据えた現場導入が期待できます​。

また、LRTKは技術面でも最新のGNSSソリューションを取り入れています。例えば3周波対応の受信機によりマルチパスや電離層誤差に強く、安定して固定解を得やすくなっています。さらに日本の準天頂衛星みちびきが提供するセンチメータ級補強サービス(CLAS)に対応しており、携帯通信圏外の山間部や沖合でも衛星からの補強信号だけで高精度測位が可能です​。

これは、インターネット経由のVRS補正が使えない環境でもRTK相当の精度を維持できることを意味します。現場のモビリティと測位精度を両立するこのような仕組みによって、LRTKは現場で使える実用的なRTK端末として進化を遂げています​。

 

 スマホをセンチメートル級精度の万能測量機に変える「LRTK Phone」。ポケットサイズなのでいつでも持ち歩き、必要な時に気軽に使える。

従来のRTKでは専門知識や煩雑な機器構成がネックでしたが、LRTKにより測位作業は飛躍的に手軽になりました。現場技術者がスマートフォン感覚で扱えるRTK-GNSSとして、今後さらに活用シーンが広がるでしょう。高精度測位の民主化とも言えるLRTKの登場は、建設ICTやインフラDXを下支えする大きな一歩です。

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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