top of page

UAV測量:PPKとRTKどちらを選ぶ?
現場条件別の最適解

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均2分30秒で読めます
2025年3月4日 掲載
DSC03177.jpg

近年、ドローンを用いたUAV測量(写真測量)では、位置情報の高精度化にGNSSのRTKやPPK技術が活用されています。RTK(リアルタイムキネマティック)とPPK(ポストプロセスキネマティック、後処理補正測位)はいずれもセンチメートル級の精度を実現できる測位方式ですが、その仕組みと適した現場条件に違いがあります。

本記事ではUAV測量におけるRTKとPPKの違いを解説し、現場条件に応じた最適な選択肢を提示します。

UAV測量におけるRTKとPPKの違い

まず、ドローン(UAV)測量で使われるRTKとPPKの基本について、その測位方法の違いと役割を整理します。両者ともGPSなどのGNSS衛星を利用して位置を求めますが、リアルタイムで補正するか(RTK)、事後に補正処理するか(PPK)が大きな違いです。

 

RTK測位とは:RTK(Real-Time Kinematic)では、ドローン搭載の移動局GNSSと地上の基準局(ベースステーション)をリアルタイムに通信させます。飛行中に常時送られる基準局からの補正情報をドローン側で即時適用することで、高精度な位置座標を逐次算出していきます。例えば基地局の既知点からの誤差補正をリアルタイムに受け取ることで、ドローンの位置情報の誤差を飛行中から数センチ程度に抑えることができます。RTKではフライト中に取得する写真データに正確な座標が即座に付与されるため、リアルタイム補正による高精度測量が可能です。

 

PPK測位とは:PPK(Post-Process Kinematic)では、ドローンは飛行中にGNSSデータをログ記録し、飛行後に地上の基準局データと照合して位置を補正します。つまり、ドローン飛行時にはリアルタイム通信を行わず、後処理(ポストプロセス)で補正する方式です。飛行後に専用のソフトウェアでドローン側の観測データと基地局の観測データを組み合わせて解析することで、高精度な位置情報を算出します。PPKは飛行中に通信環境へ依存しないため、山間部や通信が不安定な環境でも安定した精度が得られる利点があります。

どちらがより高精度か? 一般的な精度そのものは、RTK・PPKいずれも適切に運用すれば水平方向で数センチ、鉛直方向で数センチ~十数センチ程度と非常に高精度です。理論上は、飛行後に前後のデータを総合的に処理できるPPKのほうが若干有利で、RTKでは通信途絶時に一時的に精度が低下するリスクがあります​。

しかし通信が安定している環境下ではRTKでも常に固定解(高精度解)が得られ、最終的な測量成果の精度に大きな差はありません。要するに両者とも適切な条件下では同等の高精度を実現できます。重要なのは現場の条件や運用面でのメリット・デメリットを理解し、状況に応じて使い分けることです。

RTK測位のメリットと適用場面

RTK測位の最大の特徴は、リアルタイムに補正された高精度位置をその場で得られることです。ここではRTKの仕組みと利点、そしてどのような現場で有効かを解説します。

RTKでは前述の通り、基準局から移動局へのリアルタイム通信によって誤差補正を行います。具体的には、基地局を設置して電波やモバイルネットワーク経由でドローンに補正情報を送り続けるか、NTTやソフトバンクなどが提供するネットワーク型RTK(VRSなどの補正サービス)を利用します。後者の場合は現場で基地局を設置せずとも携帯回線を通じて仮想基準点のデータを受信できますが、通信環境が整っていることが前提です。いずれにせよ安定した通信環境が確保できれば、ドローンは飛行中ずっと高精度な位置情報を取得できます。例えば開けた地形で基地局から半径2~3km以内の範囲であればRTK運用が理想的に行えます​。

リアルタイム補正による恩恵として、飛行直後に結果が得られる点が挙げられます。取得した写真データには即座に高精度な測位情報(ジオタグ)が付与されているため、後処理で座標補正する手間が省け、データをすぐ解析・活用できます。測量現場でその場で出来形を確認したい場合や、撮影後すぐに点群処理・モデル作成に移りたい場合にRTKは有効です。また、ドローンのRTK測位情報を使ってリアルタイムに重機や農機を自動制御するといったスマート施工・精密農業の場面でもRTKが不可欠です。

では、どんなケースでRTKを選ぶべきでしょうか。以下にRTK方式が適している場面の例をまとめます。

  • 即時に測量結果を得たい場合:飛行後すぐに精度検証やデータ利用をしたい現場では、RTKなら撮影と同時に高精度座標が得られます。例えば工事現場で日々進捗を測量し即日報告するような業務に最適です。

  • 通信環境が良好な場所での作業:基地局との電波通信や携帯通信網が安定して使える現場では、RTK運用がスムーズです。平野部の造成工事や都市部の測量で基地局を設置しやすい場合などが該当します。

  • 短時間のフライトで高精度を確保したい場合:比較的狭いエリアの測量でフライト時間も短く、常に固定解が得られる状況であればRTKで迅速に高精度測位できます。限られた時間内で測量を完了したいケースにも向いています。

以上のようにRTKは、「その場で精度が出る」ことが重要なケースで真価を発揮します。一方で、リアルタイム通信が維持できない環境では性能を発揮できないため、次に述べるPPK方式の方が適する場合があります。

PPK測位のメリットと適用場面

PPK測位の利点は、現場でリアルタイム通信を必要としない点にあります。飛行中にデータを蓄積し、オフィスや帰社後にゆっくり高精度処理できるため、通信インフラや飛行時間の制約を受けにくい方式です。ここではPPKのメリットと活用シーンについて説明します。

PPKはドローン搭載GNSSと基地局GNSSのデータを事後的に照合して精密測位します。飛行中は衛星データを記録するのみで、リアルタイムの誤差補正は行いません。したがって、山間部や森林地帯など電波が届きにくい現場でも測位が可能です。例えば携帯電波の圏外地域やトンネル・地下空間の入口付近の測量でも、飛行中は記録だけ行い、後で地上で補正計算をすれば位置を求められます。RTKのようにその場での通信設備(無線機やインターネット接続)を用意する必要がなく、機体と基地局の距離が離れていても問題ありません。実際、RTKでは基地局から2~3km以上遠くなると精度維持が難しくなりますが、PPKなら長距離飛行やBVLOS(目視外飛行)にも対応可能です​。

精度面でも、PPKは安定した結果を得やすい傾向があります。仮に飛行中に衛星受信状態が一時的に悪化しても、記録データを前後の時系列で補完しながら解析できるため、結果的に途切れなく高精度な軌跡を再現できる可能性があります。また、RTKでは飛行中に通信が切れると「フロート解」やただの単独測位に戻って精度が大きく低下する恐れがありますが、PPKであれば後からデータを処理し直すことで精度を回復できます​。

一方デメリットとしては、結果がすぐには得られない点や、データ処理の手間・時間が発生する点が挙げられます。専門のソフトウェアや知識も必要になるため、現場でリアルタイムに対応したい場合には不向きです。

ではPPKを選ぶべきケースとはどんな場面でしょうか。主な例を挙げます。

  • 広範囲の測量や長距離ミッション:数km以上にわたる道路・鉄道・河川の測量や、離れた複数エリアを一度に空撮する場合など、RTKでは電波が届かない距離でもPPKなら対応できます。特にBVLOS飛行を伴うインフラ点検ではPPKが有効です。

  • 通信インフラが整っていない場所:山岳地域や離島、森林の伐採計画地など、基地局との通信が困難な現場ではPPK一択です。リアルタイム通信を気にせず飛行に集中できるため、安全面でもメリットがあります。

  • 最高精度を追求する場面:例えば精密な地形変化を捉えるモニタリングや、数cmの誤差も許されない計測では、PPKで全飛行データを解析し精度検証を行うと安心です。RTKだと万一途中で精度劣化が起きても気づきにくいですが、PPKならデータ不良箇所を解析時に検出し再飛行の判断ができます。

このようにPPKは、「現場環境に制約がある or 精度最優先」なケースで力を発揮します。飛行後の処理に時間をかけても確実な成果を得たい場合に適した方式と言えるでしょう。

RTK vs PPKの選び方(コスト・精度・作業時間)

RTKとPPKの特徴を整理したところで、実際の現場ニーズに応じた選定の判断材料として、コスト・精度・作業時間・運用面の観点で両者を比較してみましょう。


・RTK(リアルタイム補正測位)

測位方式:測位方式基準局と移動局をリアルタイム通信し、逐次補正しながら測位。飛行中に即時に高精度位置を取得。

必要機材・通信:基準局GNSS(またはVRSサービス)+通信回線や無線機が必要。通信圏内・数km以内の距離で運用。

測位精度:センチメートル級(通信が確保され固定解維持できれば非常に高精度)。リアルタイムに誤差補正するため常時高精度だが、通信断時は一時的に精度低下のリスク。

作業効率:後処理が不要なため即時に結果を活用可能。飛行後すぐデータ納品や解析ができ、現場の迅速な意思決定に寄与。

運用の手軽さ:飛行前の基地局設置や通信設定など準備がやや煩雑。通信維持など運用管理も必要。ただしワークフロー自体はシンプル(撮ってすぐ終わり)。

主な適用シーン:小~中規模現場の測量、進捗管理など短時間で結果が欲しい業務。インフラ施工現場での日常測量。リアルタイム制御が必要なドローン施工や農業。

導入コスト:RTK対応ドローンや基地局装置は高価になりがち。加えて通信機器や通信サービス(月額課金のGNSS補正サービス等)費用が発生する場合も。

・PPK(後処理補正測位)

測位方式:ドローン・基地局それぞれでGNSSデータを記録し、飛行後にデータを突合して測位。飛行中は補正せず事後計算で高精度化。

必要機材・通信:基準局GNSSは必要(後でデータ使用)が、飛行中の通信は不要。長距離飛行可。基地局データは後で取得(現地記録または電子基準点ログ利用)。

測位精度:センチメートル級(オフィスで時間をかけた解析により安定した高精度)。通信環境に左右されず、データ解析で誤差を徹底的に補正可能。RTK同等か条件によってはより高精度な結果を得やすい。

作業効率:後処理時間が必要で結果判明までタイムラグ。飛行後にオフィスで解析作業を行う手間がかかるが、解析中に別作業と並行も可能。

運用の手軽さ:飛行中のオペレーションはシンプル(ログ記録するだけ)。基地局も置くだけで通信不要。後処理の知識・PC環境は必要だが、フィールドでは最小限の手順で済む。

主な適用シーン:広域測量、山間部・離島など通信困難地での空撮。構造物や林など電波遮蔽の多い地域。高度な精度検証が必要なプロジェクト。時間に余裕のある測量計画。

導入コスト:PPK自体に特別な通信装置は不要。RTK非対応ドローンでも運用可。ただし高精度GNSS受信機や解析ソフトウェアは必要であり、機材構成によってはRTK同等のコストとなることも。

※上記は一般的な比較傾向です。実際の運用では、RTK機材でもフライトログを保存しておき後でPPK処理するなど両者を組み合わせて活用するケースもあります。例えばRTKドローンで飛行しつつ通信不良時に備えてデータを記録し、必要に応じて事後補正を行うことでリスクヘッジが可能です。RTKとPPKは対立する選択肢というより、状況に応じて補完し合う関係と言えるでしょう。

LRTKの紹介

最後に、RTK/PPKをより手軽に実現するソリューションとして注目の小型デバイスLRTKをご紹介します。LRTKは「いつでも、どこでも、誰でもRTKを活用できる」ことを目指して開発された、新世代のRTK-GNSSシステムです。その特長はまず機器が小型・軽量であること。従来、大型三脚やポールに据え付ける基地局機器と無線装置・バッテリーなど、RTK測量セットは携行が大変でした。しかしLRTKは手のひらに乗るコンパクトサイズで、専用ヘルメットに装着して歩きながら測量できるモデルや、スマートフォン一体型のモデルまでラインナップされています。例えばポケットサイズのLRTK Phoneをスマホに装着すれば、いつでもどこでもセンチメートル級測位が可能です。

技術面でも最新GNSSソリューションを取り入れており、高精度かつ使いやすい点も魅力です。LRTKデバイスはGPS・GLONASS・Galileoなど多星域のマルチGNSS受信に対応し、L1/L2/L6の複数周波数帯で測位することで電離層誤差やマルチパス(反射)の影響を低減しています。さらに、日本の準天頂衛星「みちびき」によるセンチメータ級補強サービス(CLAS)にも対応しており、携帯通信圏外の山間部や沖合でも衛星からの補強信号だけで高精度測位が可能です。これにより、RTK方式では電波が届かない現場でもLRTKデバイス単独で補正が受けられるため、実質PPKに近い形で現場即時の高精度化を実現します。

こうした工夫により、LRTKは現場技術者が誰でも簡単に扱えるRTK/PPK端末として進化を遂げています。UAV測量においても、LRTKをドローンに搭載してRTK測位を行ったり、ログを記録してPPK処理することが可能です。例えばLRTKデバイスを2台用意して1台を簡易基地局、もう1台をドローンに搭載すれば、通信インフラがない場所でも独自の無線リンクでリアルタイムに数cm精度の測位ができます。もちろん基地局を用意せずLRTK単体をドローンに積んでPPK運用することもでき、既存の機体に後付けして高精度化する用途にも適しています。

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page