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河川・砂防工事にRTK活用:
災害復旧で威力を発揮した測量法

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2025年3月4日 掲載
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災害発生直後の復旧現場では、被害状況の把握や復旧設計のために測量が欠かせません。特に河川工事や砂防工事のような現場では、一刻も早い対応が求められます。本記事では、災害復旧における測量の重要性と課題を整理し、高精度なRTK測位(Real Time Kinematic測位)のメリットや活用事例を紹介します。

さらに、RTK導入の具体的ステップや、小型高精度なRTKソリューション「LRTK」についても解説します。RTKによる災害復旧測量の最新動向を把握し、河川工事・砂防工事の効率化と測量精度向上にお役立てください。

災害復旧における測量の重要性

大規模な豪雨や地震により堤防決壊、土砂崩れといった被害が発生した際、まず必要となるのが正確な現況把握です。被災範囲や地形の変化を速やかに測量しなければ、的確な復旧計画を立てることはできません。例えば河川氾濫で護岸が崩壊した場合、どの範囲でどれだけ侵食が起きたかを早急に測量し、復旧工事の規模や方法を決める必要があります。また、砂防施設が土石流で埋まった場合も、崩落土砂の量や地形変化を測量して安全な復旧計画を検討することが重要です。

しかし災害直後の現場は瓦礫や倒木が散乱し、足場も悪く危険が伴います。従来の測量手法であるトータルステーション(TS)測量やレベル測量では、機器据え付けのための視通確保(見通しの良い直線経路の確保)や測点間の確定に手間がかかり、迅速な対応が難しい場面があります。実際、2004年の台風災害で被災した四国のある農地では、土石流や流木によってTSでは視通が確保できない状況となり、早期復旧のための測量手法の見直しが課題となりました​。復旧を急ぐ現場で従来手法に頼ると、人手と時間がかさみ復旧が遅れるリスクがあります。

そこで近年注目されているのがRTK測位による測量です。RTKは衛星測位を用いてリアルタイムに高精度な位置を取得できる技術で、災害復旧現場で威力を発揮します。例えば上記の四国の事例では、ネットワーク型RTKサービスを活用して測量を実施した結果、観測者1名と補助1名の体制で約60ヘクタールの被災農地外周を約1週間で測量完了できました​。従来通りTSで測量していたらその4~5倍の時間を要したと推定され、大幅な効率化につながったと報告されています​。

このようにRTK測位は、災害復旧において迅速かつ的確な測量を可能にする重要技術となっています。

災害復旧測量では安全性とスピードが求められるため、RTKの活用が進んでいる

従来のGNSS測量(静的測量や単独測位)では精度が数メートル程度に留まり、復旧工事の設計に必要な精度を確保するのは困難でした。一方、RTK測位を活用すれば誤差を数センチ程度まで抑えることが可能であり​、被災現場の細かな地形変化も把握できます。

例えば決壊した堤防の高さや洗堀の深さなども、RTKならその場で正確に測定でき、迅速な復旧設計に役立ちます。このようにRTKの高精度測量は、災害復旧の初動対応から工事完了まで一貫して重要な基盤となるのです。

RTK測位の基本と災害現場での活用

RTK測位とは何か? RTKとはReal Time Kinematicの略で、基地局(基準局)と移動局の2台のGNSS受信機を用いて同時に衛星信号を観測し、基準局で算出した誤差情報をリアルタイムに移動局へ送り位置を補正することで、センチメートル級の測位を実現する方式です​。通常のGPS(GNSS)単独測位では5~10m程度の誤差が生じますが、RTKでは一般に数cm程度まで誤差を抑えられるのが大きな特徴です​。

このため、従来GPSでは実用が難しかった精密測位が要求される分野、例えば土木工事の測量や重機のマシンガイダンス、自動航行ドローンなどでもRTK技術が活用され始めています​。

RTK測位には大きく分けて2通りの運用形態があります。一つは自前で基地局を用意し、その場で基準点を設置して運用する方法(ローカルRTK)で、もう一つは国土地理院や民間補正サービスが提供する既設基準局網を利用するネットワーク型RTKです。従来型のローカルRTKでは、現場ごとに既知座標を持つ基地局を設置して無線で補正情報を送信する必要があり、準備に手間とコストがかかりました​。

これに対しネットワークRTKでは、あらかじめ整備された電子基準点や民間基準局ネットワークから生成される補正情報をインターネット経由で利用できるため、移動局(ローバー)単体でRTK測位が可能になります​。基地局設置の手間が省けるだけでなく、長距離でも精度が維持しやすい利点があり、現在の主流となりつつあります。

それでは、このRTK測位が災害復旧の現場で具体的にどのように活用されるのかを見てみましょう。最大のメリットは測量時間の大幅短縮と即時性です。RTKはリアルタイムに高精度座標が取得できるため、測点を観測したそばから位置座標を地図や図面に反映できます。例えば河川氾濫現場では、被災直後にRTK受信機を担いで現地を歩き回りながら測量すれば、その日のうちに氾濫範囲の地形図を作成することも可能です。北海道のある洪水被害現場では、延長27kmにおよぶ農地排水路やパイプの高さをネットワーク型RTKで測量し、約2,700点に及ぶ観測をわずか1ヶ月半ほどで完了できました​。途中、山間部で携帯通信が不安定になる場面もありましたが、衛星配置や天空視界に問題なく順調に進められたとのことです​。

精度面でもRTKの効果は顕著です。RTKによって得られるセンチメートル級の測位情報は、従来のTS測量や水準測量と遜色ない精度です。水平・高さともに誤差数センチの精度が担保できるため、災害前の既存図面や設計値との比較も的確に行えます。また、現地で即座に測位結果が得られるため、必要に応じて追加測点をその場で測る柔軟な対応も可能です。従来は事務所に戻って解析してから不足点を再測という手戻りも発生しましたが、RTKならそのリードタイムがありません。

さらにRTKは省力化にも貢献します。TS測量では一般に測量手とターゲット(プリズム)保持者の2名以上が必要でしたが、RTKなら単独で受信機ポールを持って歩けば測量可能です。測量のために一直線上の視通を確保する必要もなく、障害物を避けて点ごとに自由に動いて測量できる点は災害現場で大きなアドバンテージです。実際、北海道の先述の事例では熊笹が生い茂る現場で「従来方式(TSとレベル)では伐採作業に人手と時間を要する」が、「RTK方式なら点ごとの測量で済むため最適」であったと報告されています​。

結果、従来法の3分の1程度の期間で作業完了し、想定以上の効率化を実現できたとのことです​。このように災害現場においてRTK測位はスピードと精度の両面で大きな効果を発揮し、復旧作業を強力に支援します。

【導入事例】RTKを活用して迅速復旧を実現したケース

ここでは、実際にRTK測位を活用して災害復旧を円滑に進めた事例を3つ紹介します。河川工事や砂防工事の現場で、RTKがどのように利用されたのか具体的に見ていきましょう。

事例①: 河川氾濫後の護岸復旧工事でのRTK活用

ケース: 大雨により中小河川が氾濫し、河川敷の農地や堤防の一部が損壊した現場。護岸の復旧工事に先立ち、被災範囲の測量を迅速に行う必要がありました。

課題: 従来はトータルステーションとスタッフを用いて河川断面を測量し、氾濫域の浸水深や侵食状況を把握していました。しかし氾濫後は土砂や瓦礫が広範囲に散在し、見通しの良い測線を確保することが困難でした。また測点数も多く、人力で測ると数週間を要する見込みでした。

RTK活用: そこでネットワーク型RTK-GNSSによる測量を提案。事前に精度検証を行い発注者の了承を得た上で、移動局1台と3名の人員で測量を開始しました。受信機は既存の携帯通信網を利用して補正情報を取得し、測点ごとに歩いて計測します。27kmにわたる農地の排水路や暗渠パイプの位置・高さを含め約2,700点を測量し、約1.5ヶ月で完了しました​。

効果: 初めてのネットワークRTK活用でしたがトラブルもなく、予想以上に早く作業が完了しました​。熊笹などの繁茂地帯でも、TSのように伐採し直線を出す必要がなかったため作業負荷が大幅に軽減されました。​

従来方式(TS+レベル)なら3倍以上の時間がかかったと推定されるところ、RTKにより大幅な効率アップが図れています​。この測量データをもとに早期に護岸復旧の設計に着手でき、被災から短期間で仮復旧・本復旧工事へ移行できました。発注者からも「広範囲を高精度に測量できたRTK-GNSSが復旧検討に役立った」と評価されています​。

事例②: 土砂崩れ現場での測量と土砂量計算

ケース: 豪雨により山腹が崩壊し、土砂が下流の道路を埋塞した現場。復旧工事では、崩落した土砂の撤去量を見積もり、二次災害防止のための対策工を計画する必要がありました。

課題: 土砂崩れ現場では斜面が不安定で、人が立ち入って細かく測量するのは危険を伴います。従来は崩壊地形の外縁部でTSによる測量を行い、ある程度は推計で土量を算出していました。しかし推計では精度に限界があり、土砂搬出量の過不足や追加対策工の検討漏れにつながる恐れがありました。

RTK活用: そこでRTKを用いたUAV写真測量と地上測量を組み合わせて土砂崩れ現場を計測しました。まずドローンによる空撮写真にRTKで測位した位置情報を付加してオルソ画像や点群モデルを作成し、崩壊地形の3Dモデルを取得しました。加えて、ドローンでは捉えにくい樹林下の地形や法尻部分については地上からRTK受信機で追加測点を計測し補完しました。この手法により、崩壊土砂の体積を高精度に算出することが可能となりました。

効果: UAV+RTKによる測量により、崩壊範囲を短時間で網羅的に把握できました。現地踏査を最小限に抑えつつも詳細な地形データを取得できたため、安全性と効率性が向上しています。得られた点群データから撤去すべき土砂量を正確に算出し、ダンプ搬出回数や仮置き場の容量も適切に計画できました。また、復旧工法の検討にも役立ち、擁壁や土留めの設計を迅速に行えました。ある測量会社の報告では、RTK測位によるUAV測量を使って土砂崩れの状況を迅速に把握し、設計・施工計画に活用したケースも見られるとのことです​。このようにRTK技術は土砂災害現場での調査・測量に新たな解決策をもたらし、土砂量計算や復旧計画の精度向上に寄与しています。

事例③: 砂防ダム建設におけるRTK測位による施工管理

ケース: 土石流対策のための砂防ダムを緊急整備するプロジェクト。山間部の渓流にコンクリート製の砂防堰堤を築造する工事で、限られた工期内に施工を完了する必要がありました。

課題: 砂防ダム工事では基礎岩盤の掘削から堰堤本体の打設まで、高精度な位置・高さ管理が求められます。従来は基準点を設置してTSで出来形を検測したり、工事用測量に人手を割いたりしていました。しかし山間地形では視通が利かず、曲がりくねった渓流沿いで測量基線を確保するのに苦労する場面もありました。また、頻繁な測量作業は作業員の負担となり、工程進捗にも影響していました。

RTK活用: 本工事では最新のICT施工技術と併せてRTK測位を導入しました。まず、現場に既知点を設定して施工エリア全体の基準座標系を構築し、施工中は移動局RTKで常時測量できる体制を整えました。具体的には、重機オペレータや施工管理技術者が携帯するタブレット端末にRTK-GNSS受信機を搭載し、必要なときに即座に出来形を測定できるようにしました。基礎掘削では、掘削完了面の形状をRTKで測り取り設計モデルと比較することで、過掘防止と出来形管理を効率化しました。堰堤本体の施工でも、打設高さを随時RTKで確認しながら進め、従来は別途行っていた通り芯出し(墨出し)もRTK連動の機器で迅速に実施しました。

効果: RTKによるリアルタイム測位を施工管理に取り入れたことで、品質管理と工程管理の両面でメリットが得られました。測量専門のスタッフに頼らずとも、現場監督者自身が手元の端末で必要な箇所の座標・高さを確認できるため、作業の手待ち時間が減少しました。例えばコンクリート打設時には、所定の天端高に達しているかをその場で確認でき、打設量の微調整を即時に行えました。また、出来形データがデジタルで蓄積されるため、そのまま検査資料や3次元の竣工図書作成にも活用できました。結果として工期短縮につながり、従来より少ない測量人員で複数現場を管理できたためコスト面でも効果が出ました。

この事例では国土交通省が推進するi-Constructionの流れも受け、3次元設計データとRTK測位を組み合わせたスマート施工が実践されました。砂防工事のように山間部で見通しの悪い環境でも、RTKなら電波が届く空さえ開けていれば高精度測量が可能です。実際、本工事でも渓谷という難条件下でRTK測位が問題なく機能し、最終的に設計精度通りの砂防ダムを完成させることができました。今後は他のダム工事や法面工事でも、同様のRTK活用による施工管理の高度化が期待されています。

RTK導入のための具体的なステップ

災害復旧にRTK測位を活用するには、どのような準備や手順が必要でしょうか。ここでは、RTK導入の具体的ステップと留意点を解説します。

ステップ1: 必要機材の準備
RTK測量を行うには、基本的にGNSS受信機(アンテナ一体型含む)が必要です。一般的な構成は、基準局用と移動局用の2台ですが、既存の補正情報サービスを使う場合は移動局用1台だけで運用できます。受信機はGPSだけでなくGLONASSやみちびき(QZSS)などマルチGNSS対応で、できればデュアル周波数受信(L1/L2)の高精度機が望ましいです。さらに、移動局で補正情報を受け取るための通信手段も準備します。自前で基地局を運用する場合は、基地局から移動局へ電波を飛ばすための特定小電力無線機やUHF無線機を用いるケースがあります。ネットワーク型RTKを利用する場合は、移動局側にインターネット接続環境(SIM内蔵の通信モジュールやテザリング可能なスマホ等)を用意し、現場でオンライン通信できるようにします​。

また、GNSS受信機の設定やデータ確認のためのフィールドコントローラー(専用端末やタブレット)も必要です。近年はスマホやタブレットで操作できる受信機も増えてきています。

ステップ2: 測量計画の策定
機材が揃ったら、RTKによる測量計画を立てます。災害復旧の場合、限られた期間で効率よく必要な測量データを取得する計画が重要です。まず基準点の確保方法を決めます。ネットワーク型を使う場合でも、念のため現場付近で公共座標系に基づく既知点を一つ設定し、RTKの精度検証や万一通信不良時のバックアップに備えると安心です。測量範囲が広い場合は、効率化のためにエリアを分割しチームで同時並行測量することも検討します。測点の密度(間隔)や観測項目(平面位置のみか高さも含むか)は、必要な成果物に応じて決めます。例えば地形図作成が目的なら数メートル間隔で測点を配置し、土量計算が目的なら崩土の外周と断面を押さえる、などの計画です。RTK測量は即時に結果が得られるため、現場で不足データを確認しながら適宜補間できる柔軟性も持ち合わせます。測量後のデータ処理(CAD図化や点群解析)の手順も考慮し、スムーズに復旧設計へ引き継げるように段取りしておきます。

ステップ3: 運用と測量実施
計画に従い現場でRTK測量を実施します。開始前に基準局を設置・起動(または補正サービスへのログイン)し、移動局側で正しく補正情報を受信できているか確認します。GNSSの衛星配置(GDOP値)や電離層の影響が大きい時間帯は避け、可能な限り精度の良いタイミングで観測を行うこともポイントです。測量中は常に現在の受信状況と解(ソリューション)をモニターします。RTKではFIX解(フロート解が整数バイアスを解決した状態)になって初めてcm級精度が保証されます​。移動局の表示がFIXになっていることを逐次確認し、もしFLOATに戻った場合は少し待つか受信機を再初期化して再度FIXを得るようにします​。

また測点ごとに十分な観測秒数を確保し、できれば平均化機能等で精度向上を図ると良いでしょう。観測が終わったら、データに欠測や飛点がないか現場でチェックし、不足があれば追加測量します。

ステップ4: 測量データの活用と共有
RTKで取得した測量データは即座に活用できます。フィールド端末上で簡易的に等高線や横断プロットを表示し、現地で関係者と状況を確認することも可能です。オフィスに戻った後は、本格的にCADソフトやGISソフトに取り込んで図面化・解析を行います。災害復旧では、測量データから被災前後の地形変化を把握したり、復旧工法の検討材料としたりします。例えば河川堤防の復旧設計では、決壊箇所の現況高を測量データから取得し、健全部との比較で不足土量を算出して設計に反映します。砂防施設の計画では、渓流の縦断勾配や断面形状をデータから読み取り、堰堤高や堆積容量の検討に用います。また、RTK測量データは電子納品にも適した形式で残せるため、復旧後の維持管理資料としても価値があります。最近ではクラウド上で測量データを共有し、設計者や発注者とリアルタイムに情報共有を図る取り組みも進んでいます。

ステップ5: 導入コストと効果の検証
RTK機材の導入には一定の投資が必要ですが、その効果と天秤にかけて判断します。高精度GNSS受信機は従来数百万円単位の高額機材でしたが、近年は低コスト化・小型化が進んでいます。例えば通信型の民間RTK補正サービスを利用する場合、年間契約費用が数十万円程度発生しますが、基地局設置の手間を考えれば十分に元が取れるケースも多いでしょう。導入にあたっては、まず小規模な現場で試験導入し効果検証を行うのも一つの方法です。「RTK測位によりどれだけ作業時間が短縮できたか」「人員をどれだけ他作業に振り向けられたか」「得られた精度は要求を満たしているか」といった指標で評価します。例えば先述の事例のようにRTK導入で測量作業が従来比1/3〜1/5になったのであれば、十分な投資対効果があると言えるでしょう。​導入効果が確認できれば、社内の他プロジェクトや他支店へ横展開し、標準的な手法として定着させていきます。

RTK導入時の注意点:
最後に、RTKを現場で安定運用するための注意事項を挙げます。まず通信環境の確保です。ネットワーク型RTKではインターネット経由で補正情報を受信するため、通信回線の品質が測位精度・安定性に直結します​。移動局側の通信が不安定だと補正データが途切れ途切れになり、解がフロートに戻ったり最悪RTK測位が中断することもあります​。

したがって測量現場ではできるだけ電波状態の良い通信手段を使うことが重要です。都市部であれば4G/5G回線で問題ありませんが、山間部や地下ではポケットWi-Fiやテザリングが圏外になるケースもあります。そのような場合に備えて、後述するみちびき(QZSS)のCLAS補強信号を活用したり、一時的に自前基地局方式に切り替えるなどの対策も検討しましょう​。

実際、近年では携帯圏外でも測位可能なソリューションも登場しており、みちびきのCLASに対応した受信機であればインターネット接続できない災害現場でも衛星からの補正情報で高精度測位が可能です​。このような通信インフラに依存しない仕組みを予備で用意しておくと、非常時の安心感が高まります。

次に衛星受信環境への配慮です。RTKは上空の衛星信号を受信するため、周囲に高い建物や樹木があると視界遮蔽やマルチパス(反射)によって測位が不安定になります​。

できるだけ開けた場所でアンテナを設置し、必要に応じて受信機の仰角マスク設定で低仰角の衛星を除去するなど、ノイズ源を避ける工夫をしましょう。また雨天時はアンテナに水滴が付くと信号減衰する場合があるため、防水カバーの使用や定期的な拭き取りも有効です。さらにバッテリー残量の管理も重要です。GNSS受信は連続稼働で電力を消費するため、長時間作業では予備バッテリーや充電手段を確保します。最後に操作習熟も忘れてはなりません。最初は機器の設定やトラブル対応に戸惑うかもしれませんが、操作自体は難しくないため実際に使い慣れることで不安は解消します​。

測量チーム全体でRTK機器の取扱訓練を行い、だれもが即応できる体制を整えておけば、いざという時にスムーズに活用できるでしょう。

LRTKの紹介

災害復旧におけるRTK活用を促進する中で、特に注目されているのがLRTKという小型RTK測位ソリューションです。LRTKは東京工業大学発のスタートアップ企業・レフィクシア社が開発したデバイスで、スマートフォンやタブレットに装着して使用するポケットサイズのRTK-GNSS受信機です​。重量はわずか125g、厚さ13mmほどのコンパクトな筐体にバッテリーも内蔵されており、この一台でスマホがセンチメートル級精度の万能測量機に早変わりします​。専用のアプリとクラウドサービスを組み合わせることで、誰でも手軽に高精度測位を現場で活用できるのが特徴です。

災害復旧現場でも携行しやすく、必要なときにすぐ測量を行える利便性が高い

LRTKの特長: 最大の特長はその手軽さと高精度の両立です。従来のRTK機器は三脚に据えて…というイメージがありますが、LRTKはポケットに入れて持ち運び、必要な時にスマホにカチッと装着するだけで即座にcm級測位が可能です​。測位データはスマホ画面でリアルタイムに確認でき、点群計測や墨出し(位置出し)作業にも応用できます​。

さらに測位結果や取得した点群データはクラウド上で瞬時に共有できるため、現場からオフィスへ情報伝達もシームレスです​。

例えば被災現場で測ったデータをその場でクラウド送信し、設計担当者がオフィスで即時に確認するといった使い方も可能になります。にもかかわらず価格は非常にリーズナブルに設定されており、1人1台配備して現場作業の生産性を飛躍的に高めることも現実的です​。

精度面でも信頼性があります。LRTKは日本の準天頂衛星みちびきが提供するセンチメータ級補強サービス(CLAS)に対応しており、通信圏外の山間部や災害直後でインフラが寸断された現場でも衛星から直接補正情報を受信して高精度測位が可能です​。

これは大規模災害時に非常に有用な機能で、携帯回線が不通でも測量が継続できる安心感につながります。またマルチGNSS対応でGPS/GLONASS/Galileo/みちびきに対応し、都心部でも安定したFIX解を得やすくなっています。現場実証では、単独測位で12cm程度だった精度がLRTK使用時には平均化処理も合わせて8mm程度まで向上したとの報告もあり、既存の測量機に匹敵する本格的な精度を発揮しています​。

施工現場での導入事例: LRTKは既に土木施工の現場で多数の導入実績が生まれつつあります。例えばある道路工事現場では、従来はトータルステーションで行っていた丁張の墨出しをLRTKとスマホアプリで行うことで、1人で短時間に済ませることができました。

別の橋梁点検の現場では、橋脚の沈下量測定にLRTKを活用し、作業員自らが高所作業車上で測位して即時に結果を把握することで点検効率が上がったという報告もあります。災害復旧の文脈でも、被災宅地の高さ測量や仮設道路の通線測量などでLRTKが用いられ、迅速な復旧判断に貢献しています。何より「スマホで使える手軽さ」が現場の担い手に受け入れられており、難しい教育をせずとも直感的に扱える点が普及を後押ししています。

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

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