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建築外構(エクステリア)でのRTK測位:
敷地内の位置出しを迅速に

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2025年3月4日 掲載
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近年、建築の外構工事や造園工事の現場で、RTK測位という高精度測量技術が注目を集めています。従来の測量方法は確立された手法ではあるものの、現場での位置出しに手間と時間がかかり、人的な誤差も無視できません。

本記事では、外構工事における測量の重要性から始め、RTK(Real Time Kinematic)方式のGNSS測量の仕組みとメリット、従来法との比較、そして新しい測量ソリューションLRTKの活用事例と導入メリットについて解説します。これにより、RTKを活用した施工(RTK施工)による現場効率化の可能性をご紹介します。

建築外構工事における測量の重要性

建築物の外構(エクステリア)工事や造園工事では、着工前の測量が極めて重要です。敷地の境界線の確認や境界標の測定、設計図通りに構造物を配置するための正確な位置出し(墨出し)は、施工精度の確保に欠かせません。わずかな位置のズレでも、フェンスや塀の位置が隣地にはみ出したり、アプローチの幅が計画と合わなくなったりといった問題につながる可能性があります。トラブルや手戻りを防ぎ、設計どおりの品質を実現するために、施工前の綿密な測量作業が求められます。

また、外構や造園では地面の起伏や勾配にも注意が必要です。例えば敷地内の高低差測量を正確に行い、適切な高さ基準を把握しておかなければ、排水計画に支障が出たり、仕上がりの高さが狂う恐れがあります。土間コンクリートや庭の地形造成では、数センチの誤差が雨水の流れや仕上がりの見映えに大きく影響するため、精密な高さの測定と水糸によるレベル出しが重要です。さらに、境界測定や基準点の設定は法律面でも重要で、敷地境界を誤れば近隣との紛争にもなりかねません。このように、外構工事における測量は施工品質と円滑なプロジェクト進行の土台となる作業なのです。

従来の測量方法と課題

外構工事や土木工事の現場で伝統的に用いられてきた測量方法には、トータルステーション(TS)や光学式のレベル機、巻尺(スケール)や水準器(水平器)を使った手作業の測量などがあります。測量士はまず現場に基準となる杭打ちや水盛りを行い、図面上の寸法をもとに巻尺で距離を測ったり、TSで角度と距離を読み取ってポイントを出したりします。例えば建物の配置や門扉・アプローチなどの位置を出す際、既知のポイントからひもや墨出し用の糸を張り、そこから巻尺でオフセットして印をつけるという手順が従来は一般的でした。水平・垂直方向のレベル出しにはスタッフとオートレベルを用いて高さを測定し、所定の高さに印を付けていきます。このような方法でも経験豊富な職人であれば高い精度を出せますが、どうしても手作業ゆえの課題が残ります。

第一の課題は手間と作業時間です。トータルステーションを使うにしても、1人がプリズムを持ちもう1人が機器を操作するなど最低2人以上の人員が必要で、広い敷地やポイント数が多い場合は測量に丸一日かかることもあります。巻尺とチョークを使った墨出しでは、何度も測っては印を付ける作業を繰り返すため非常に時間がかかりますし、長い距離を測る際には巻尺がたるんだり一直線に張れなかったりして、微妙な誤差が累積することがあります。特に複雑な庭園の造園工事などでは、曲線や斜めの配置を出すのに細かい採寸と計算が必要で、従来手法では大きな負担となっていました。

第二の課題は測量誤差とヒューマンエラーです。手作業では人間が数値を読み取り記録するため、わずかな読み間違い・書き間違いが位置ズレにつながります。例えばメジャーで測った寸法を書き留める際に「503cm」を「508cm」と記録してしまえば、5cmものズレが生じかねません。水平器で傾斜を確認する場合も、気泡のわずかな偏りを読み違えると勾配が狂ってしまいます。また、現場で打った杭や墨出しのチョークが他の工事作業で消えてしまった場合、再度測り直しが必要になるなど、やり直しの手間も発生しがちです。こうした人的ミスや手戻りは、工期の遅延や追加コストにも直結します。

さらに、都市部の狭い現場や障害物の多い環境では、トータルステーションで一直線に視通しが取れない、測量機器が設置しにくいといった制約も従来法の課題でした。例えば建物が建ち並ぶ中庭で基準点から直接測れない場合、いったん別の基準を設けて間接的に測る必要があり、その分手順が増えてミスのリスクも上がります。このように、従来の測量方法では手間・時間・人員がかかり、現場によっては精度確保にも苦労する場面がありました。

RTK測位の仕組みと導入メリット

こうした課題を解決する新技術として登場したのがRTK-GNSS測量です。RTK(Real-Time Kinematic)とはリアルタイム・キネマティックの略で、衛星測位(GNSS)の誤差をリアルタイムに補正してセンチメートル級の精度を実現する高精度測位技術です​。

具体的には、既知の座標を持つ基準局(ベースステーション)と移動しながら計測する移動局(ローバー)の2台の受信機を用意し、双方で同時に4基以上のGNSS衛星(GPSやGLONASSなど複数衛星システム)の信号を受信します。そして、基準局側で観測された位置情報と移動局の観測値との差(誤差)をリアルタイムに算出し、その補正情報を移動局に送信することで、移動局は誤差が除去された高精度な位置座標を得ることができる仕組みです​。

この相対測位方式によって、単独のGPS測位では数メートル程度生じていた測位誤差が数センチメートルまで縮小され、常に高精度の測量が可能となります。実際、RTK測位の精度は一般に±2センチメートル程度と言われており​、外構工事のような現場測量でもほぼ誤差を意識しないレベルの精度が得られます。

RTK-GNSS測量を導入することで、外構・土木の施工プロセスは飛躍的に効率化されます。まず、RTKなら測位結果がリアルタイムに得られるため、ポイントごとに測って墨を打つといった手順を繰り返す必要がありません。GNSS受信機を搭載したポールや端末を持って所定の位置に立てば、その場で高精度の座標が取得できます。これにより、従来法に比べ位置出しのスピードが格段に向上し、測量作業時間を大幅に短縮できます​。

例えば、ある土木現場ではRTK搭載のドローン測量によって、地上での標定点設置作業が不要となり、測量作業時間を大幅短縮できたケースがあります​。同様に外構工事でも、従来半日かかっていた敷地全体の水盛り・墨出し作業が数時間程度で完了するといった具合に、作業効率が飛躍的に向上します。

次に人員削減と省力化も大きなメリットです。RTK測量機を使えば、基本的に1人で受信機を持って歩き回るだけで測量が可能になるため、これまで測量チームを編成して行っていた位置出し作業を一人測量で完結できます。これは人手不足に悩む建設業界にとって非常に有効で、特に中小規模の工事現場では貴重な測量の専門人材を効率的に使えるようになります。作業コストの削減効果も見逃せません。短時間で高精度な測量を行えるため、従来法に比べて現場の作業コストを大幅に削減できるとの報告もあります​。誤差が減ることで手直しや追加工事のリスクも下がり、トータルで見れば機器導入費用を上回るコストメリットをもたらすでしょう。

さらに、RTKはデータのデジタル化による利点も提供します。測点の座標値がすべてデジタルデータとして保存されるため、後で図面に起こしたりクラウドで共有したりしやすくなります。手作業では現場ノートへの記録や写真撮影などで管理していた測量結果も、RTKなら自動的に電子データとして蓄積でき、書き漏らしや記録ミスを防げます。また、後日増築や追加工事が発生した際にも、保存された座標データを利用してすぐに既存構造物の位置を把握できるので、リピート工事にも強いというメリットがあります。

RTK測位は、広い空が開けた郊外の現場はもちろん、条件が揃えば都市部の工事現場でも活用可能です。日本国内では国土地理院の電子基準点ネットワークや準天頂衛星「みちびき」の提供するCLAS(センチメータ級測位補強サービス)を利用したネットワーク型RTKが普及しており、インターネット接続が難しい山間部や海上の現場であっても高精度測位を実現できる環境が整いつつあります​。実際、土木大手ゼネコン各社も現場での高精度GNSS測位の活用を加速しており、品質向上と現場負担軽減の両立を目指した取り組みが広がっています​。RTK技術は今や一部の測量専門家だけのものではなく、外構工事やインフラ点検など実務者レベルで使われ始めており、建設現場の新常識になりつつあると言えるでしょう。

【比較】従来法 vs RTK測位

では、従来の手作業中心の測量とRTK-GNSS測量では具体的にどのような違いがあるのか、主要な項目で比較してみます。

項目従来の測量方法(トータルステーション・巻尺 等)RTK-GNSS測量(RTK施工)

精度熟練者による手作業でミリ〜数センチの精度は出せるが、人為誤差が蓄積するとズレが生じる場合もある。長距離の巻尺測量では数cm単位での誤差リスク。常に数センチ以内(約±2cm程度)の高精度を保持​。誤差が蓄積せず、安定した精度で測位可能。高低差もGNSSで正確に取得。

作業人員2人以上(例:1人が測定器設置・操作、1人がスタッフ・プリズム保持)。複数人でのコミュニケーションが必要。基本1人で作業可能。補助者が不要になり、人員計画が容易。安全面でも周囲に人が少なく作業しやすい。

作業時間ポイントごとに測定・墨出しを繰り返すため時間がかかる。広範囲・多数点では半日〜数日要することも。リアルタイムに座標取得・位置出しできるため圧倒的に速い。位置出し作業を大幅短縮できる​(例:作業時間が従来比で半分以下になるケースも)。

使い勝手機器ごとに専門的な操作が必要(TSの角度読取、レベル調整等)。視通や測量計算など専門知識も要求。GNSS受信機と端末を用意すれば比較的簡単に測位開始。最近のRTK端末は直感的なアプリ操作で誰でも扱いやすい。

データ管理手書きメモや図面上で管理。記録漏れや読み違いのリスクがある。後でデータ化する手間も発生。測位データはデジタル記録されクラウド保存も可能。測量成果の共有や解析が容易で、記録ミスの心配なし。

コスト測量機器自体は安価(巻尺・水準器等)だが人件費が多く掛かる。高度な測量にはTS等高額機器も必要。ミスによる手戻りコストも潜在。RTK受信機など機器導入に費用が掛かるが、人件費削減や工期短縮効果で投資回収可。近年は機器価格も低減し、サブスクリプション型利用で初期負担を抑える選択肢も登場​。

※従来法の精度・時間は現場状況や人為要因に左右されます。またRTK測位の有効性も上空視界や衛星補強サービスの利用状況によりますが、ここでは一般的なケースで比較しています。特にコスト面では、RTK機器は以前より手頃になりつつあります。例えばLRTKのように月額制(サブスク)プランで初期費用を抑えて導入できるサービスもあり​、中小企業でも導入しやすくなっています。人件費削減や測量ミス削減による手直し不要といった効果まで考慮すれば、RTK導入による投資対効果(ROI)は十分に見込めるでしょう。

LRTKの活用と導入メリット

最新のRTK-GNSSソリューションの中でも、特に建設現場で注目されているのがLRTKです。LRTKは弊社が開発した高精度測位システムで、スマートフォンと連携して手軽にセンチメートル級測量を行えることが特徴です。中でも「LRTK Phone」はポケットサイズの超小型RTK-GNSS受信機で、これをiPhoneやiPadに装着するだけでスマホがそのまま高精度測量機器に変身します​。重量約125g・厚さ13mmの受信機にバッテリーとアンテナを内蔵しており、この1台をスマホに付ければ現場で使える万能測量機が完成します​。

専用のスマホ用ケースにワンタッチで取り付け可能な手軽さで、文字通り「1人1台」持ち歩いて必要な時にすぐ測量に使える実用的な端末です。

LRTKはスマホ連携による操作性と拡張性が大きな強みです。専用のLRTKアプリをスマートフォン(iOS)にインストールし、Bluetooth等で受信機と接続することで測量を開始できます。アプリ上でリアルタイムに現在位置の座標を確認したり、あらかじめクラウド経由で取り込んだ設計図や3Dモデル上に自分の位置を表示して、現場での位置誘導(ARによる墨出し支援)を行うことも可能です。実際、LRTKを使えば測位から点群データ計測、墨出し(位置出し)や誘導、写真計測やARシミュレーションに至るまで幅広い作業がスマホ一つでこなせます​。

取得した座標をもとに距離・面積を計算したり、盛土・掘削の土量を算出するといったことも可能で、たった1台のiPhone/iPadとLRTKがあれば外構工事に必要な測量機能をほぼ網羅できるのです​。専門的な操作を自動化し直感的なUIで提供することで、測量の専門技術がない現場スタッフでも扱いやすく設計されている点は、従来機器にはないメリットと言えるでしょう。

クラウド管理とデータ共有もLRTKの大きな魅力です。LRTKアプリで取得した測量データや写真は、その場で即座にクラウドのLRTK Webサービスにアップロード・同期することができます。これにより、現場で測った座標や撮影した箇所の情報を事務所のPCからリアルタイムに確認・検証することが可能です​。

例えば外構工事の進捗報告でも、測量データがクラウドで共有されていれば、「○○の基礎位置を所定どおり配置済み」といったことを座標データ付きで即共有でき、上長や発注者へのエビデンスにもなります。紙の野帳に記録する場合と違い記録漏れの心配がなく、データは自動的にバックアップされ蓄積されるため、後から「測り忘れた箇所があった」という事態も避けられます​。常に最新データを関係者間で共有できることは、施工管理や維持管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)にもつながります。

LRTKの高精度測位能力と機動性は、外構・造園のみならず様々な現場で活用されています。例えば高速道路のインフラ点検では、LRTK受信機をヘルメットに装着して作業員が中央分離帯を歩くだけで、ガードレールや眩光防止板などの設備を連続して測位・記録することができます​。

点検中に「どのポールに不具合があったか分からなくなる」といったことも、各設備に座標タグを付けておけば防げます。「あれ?何番目の板だったっけ?」と悩む代わりに、クラウド上の地図に正確な位置と番号が記録されるので効率的です​。また橋梁の維持管理でも、損傷個所をLRTKで測位しておけば「どこを修理すればいいの?」と後で迷う心配はありません​。建築の外構工事においても、例えば大規模な商業施設の外構レイアウトでLRTKを導入すれば、敷地内の照明柱やベンチ、植栽位置などを一人で次々とマーキングでき、測量班を待つことなく施工チームが作業に取り掛かれます。測位精度は実測で±3cm程度とされています​ので、細かな造作物の位置決めも安心です。これらの事例からも、LRTKによる高精度・省力化測量が現場にもたらすメリットは明らかでしょう。

外構・エクステリア工事やインフラ維持管理に携わる技術者の皆様は、RTK測位の活用によって従来とは次元の違う効率化と品質向上を実現できる可能性があります。手間のかかる測量作業をデジタル技術でスマート化し、「誰でも簡単に高精度測量」を実現するLRTKは、まさにこれからの施工現場の標準ツールとなり得るでしょう。もしRTKによる施工効率化にご興味があれば、ぜひ一度詳細資料をご覧いただき、現場への適用をご検討ください。

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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