鉄道工事でのRTK活用:
路線敷設とメンテナンスの精度向上

この記事は平均2分30秒で読めます
2025年3月4日 掲載

鉄道測量や鉄道工事では、ミリ単位の精度で位置を把握する測量が求められます。路線の敷設から軌道の保守に至るまで、高い測量精度が安全性・快適性を支える重要な要素です。
本記事では、鉄道工事における測量の重要性と課題を整理し、次世代の測位技術であるRTK(Real Time Kinematic)に焦点を当てて、その基本とメリット、導入事例、そして実際にRTKを導入する具体的なステップについて解説します。
鉄道工事における測量の重要性と課題
鉄道工事では、路線の正確な位置決めや構造物配置のために測量が欠かせません。特に新規路線敷設時の基準点測量は極めて重要で、基準点の位置精度が線路の曲線半径や勾配、駅の位置などすべてに影響を与えます。例えば、数ミリの誤差でも高速鉄道では走行安定性や乗り心地に影響しかねず、厳密な測量による位置出しが必要です。また、トンネル工事では両端から掘削したトンネルを正確に貫通させるため、地上での基準点から地下への測量導入が不可欠であり、鉄道測量の精度は工事の成否を左右します。
しかし、従来の測量手法にはいくつかの課題がありました。光学式の測量(トータルステーションやレベルを用いた手法)は高い精度(ミリ以下)を確保できますが、視通(測量機から標尺やプリズムが見通せる直線距離)が必要で、山岳部や市街地では中継点を多数設置する手間が生じます。長大な鉄道路線の測量では、測点間の見通し確保や何度も据え直しを行う必要があり、作業時間や人手が多くかかるのが難点でした。また、既存の基準点網に基づく測量では、現場ごとにローカル座標系を調整する必要があり、別工区間とのデータ統合に手間取るケースもあります。
鉄道の保守・メンテナンスにおいても精度管理の課題があります。線路は時間とともに軌道変位(沈下や横ずれ)が発生するため、定期的に軌道の状態を測定し、設計値との差異を把握しなければなりません。これまで、軌道検尺や検測車による測定では主に相対的な歪み量を把握し、目印となる標杭やキロ程標(距離標)をもとに問題箇所を特定していました。しかし、これらの方法では位置の特定に若干の誤差が含まれたり、別のデータと位置を突き合わせる際に精度不足となる場合があります。特に高速鉄道や過密路線では、わずかな狂いも見逃さない鉄道測量の体制が必要ですが、人力での測量には限界がありました。
こうした課題に対し、近年注目されているのがRTK測位によるアプローチです。RTKは高精度な衛星測位技術で、鉄道工事・保守における測量精度と効率を飛躍的に向上させる可能性があります。次章では、RTK測位の基本原理と従来手法にはないメリットを詳しく見ていきましょう。
従来測量手法とRTK測位の比較
RTK測位は従来のGPS単独測位と比べて格段に高い精度を持ち、光学測量と同等の精度を広範囲で実現できる点が大きな強みです。次章では、このRTK測位の仕組みと鉄道工事で得られるメリットを詳しく解説します。
RTK測位とは?その基本原理と鉄道工事でのメリット
RTK測位とは, 衛星測位(GNSS)の誤差をリアルタイムに補正し、センチメートル級の位置精度を得る測位技術です。通常のGPS(GNSS)単独測位では、衛星信号が大気圏を通過する際の遅延誤差や衛星時計の誤差などにより、数メートル程度の誤差が生じます。一方、RTKでは基準局(基地局)と呼ばれる既知の位置に設置した受信機で同時刻に捉えた測位誤差を算出し、それを移動局(ローバー側)に送信して補正することで、誤差を大幅に低減します。簡単に言えば、「位置が分かっている地点の測位データ」を用いて「未知の地点の測位データ」を補正する仕組みです。この結果、リアルタイムで数センチの精度を達成でき、GPSと比べて桁違いの測位精度が得られます。
RTK測位の導入により、鉄道工事・測量の現場では以下のようなメリットが得られます。
-
測量精度の向上: 前述の通り、RTKを使えば従来数メートルあったGNSS測位の誤差が数センチまで縮小します。例えば、日本では準天頂衛星「みちびき」の運用により、単独測位でも誤差5~10m程度だったものが、補強信号を活用したRTKでは数cmまで向上するケースが確認されています。これにより、鉄道の線路中心線や構造物位置を設計図どおりの精度で設置でき、後施工での微調整や手戻りを減らすことができます。測量精度向上はそのまま施工精度や安全性の向上につながります。
-
作業効率の飛躍的向上: RTK-GNSSは衛星からの信号さえ受信できればよいため、広範囲の測量を短時間で行えます。これまで光学測量で何人もかけて行っていた基準点出し作業も、RTKを用いれば少人数で同時並行的に作業可能です。例えば、路盤工事中の長大区間でも、作業員がそれぞれRTK受信機を携行して所定の位置を測設すれば、一度に多数の点を効率よく設定できます。結果として、工期短縮や人件費削減に貢献します。
-
リアルタイムの測位データ活用: RTKのもう一つの強みはリアルタイムで高精度測位ができる点です。即時に位置座標が得られるため、その場で測量結果を確認して施工に反映できます。たとえば軌道敷設中に、その場で軌道中心のズレを確認しながら敷設作業を進めることができます。また、測量データを現場のタブレットなどでリアルタイム表示し、設計値との差異を即座にチェックする、といったICT施工的な活用も可能です。これにより、ミスの早期発見・是正や品質管理の高度化が図れます。
-
アクセス困難地での測量: 従来法では困難だった場所での測量もRTKなら容易になります。視界が開けない谷間や障害物の多い市街地でも、上空の衛星さえ捉えられれば測量が可能です(※衛星信号が全く届かないトンネル内部などでは別途工夫が必要ですが、後述するようにINS併用や工夫でカバー可能です)。例えば、橋梁区間の上部構造物設置位置を地上から直接測りにくい場合でも、GNSS受信機を設置した高所作業車等でRTK測位することで、安全かつ正確に位置を特定できます。険しい山岳トンネルの坑口間測量でも、各坑口でRTKを用いて全体の座標を統一すれば、坑内測量の基準合わせがスムーズになります。
-
デジタルデータとの親和性: RTKで取得した座標データはデジタル形式で即座に蓄積できるため、後工程の設計データやGIS地理情報と容易に統合できます。鉄道の「デジタルツイン」やBIM/CIMモデル上に、現地測量した構造物や軌道位置を反映させて、精密な進捗管理や出来形管理を行うことができます。例えば、RTKで取得した軌道中心線の座標をそのまま3Dモデルに取り込むことで、現況と設計の差を可視化してチェックする、といった高度な活用が可能になります。
以上のように、RTK測位技術は鉄道建設・維持管理の現場で精度と効率の両面に革命をもたらしつつあります。それでは実際に、どのような場面でRTKが活用されているのか、具体的な事例を見てみましょう。
【導入事例】RTKを活用した鉄道工事・メンテナンスの成功例
ここからは、鉄道分野でRTK測位を導入し効果を上げた具体例を紹介します。新幹線の路線敷設から軌道検測、駅周辺の再開発まで、様々なケースでのRTK活用事例を見ていきます。
事例①: 新幹線の路線敷設におけるRTK測位の活用
ある新幹線工事の現場では、長大な路線の基準点測量と線路敷設にRTK測位が導入され、大きな成果を上げました。従来、新幹線のような超高速鉄道では、路盤や軌道をミリ精度で施工するため広範囲にわたる基準点網を確立し、丁寧にトータルステーションで測量するのが一般的でした。しかしこのプロジェクトでは、沿線に一定間隔で移動式のGNSS基準局を設置し、複数の測量チームがRTK受信機を携帯して建設現場を巡回する方式を採用しました。
その結果、山間部で視通が効かない区間でも衛星測位により一貫した座標系で作業でき、各工区間の測量データ統合が非常にスムーズになりました。例えば、トンネル坑口から反対側の坑口までの距離やズレ量をリアルタイムに把握できたため、掘削中の方向修正が的確に行え、坑内での貫通誤差が最小限(数ミリ以内)に抑えられました。また、高架橋区間では橋脚の位置出しにRTKを活用し、支間長の誤差管理が容易になりました。結果的に、路線全体の測量工程が従来比で約30%短縮されるとともに、出来形の精度検査でも設計値との誤差がごくわずか(従来工法では±数センチ程度の誤差許容範囲に対し、RTK活用後は±1センチ以内)に収まりました。この事例は、RTK導入により新幹線工事の測量精度向上と工期短縮を両立した成功例と言えます。
事例②: 軌道検測・変位測定でのRTKの応用
鉄道の保守分野でもRTKは威力を発揮しています。あるケースでは、軌道検測車にRTK-GNSS受信機を搭載し、走行しながら軌道の位置座標を高精度に記録する取り組みが行われました。従来、軌道検測車は軌道の凹凸やゆがみ量(軌道変位)をセンサーで測定し、その位置をキロ程(距離)で管理していましたが、RTKを併用することで各測定データに絶対座標を付与できるようになりました。その結果、検測データのポイントを地図上に正確にプロットでき、将来的には不具合箇所をGNSS座標で管理することで、補修作業時に現地で即座に問題箇所を特定することも可能になります。実験では、走行中におけるRTK測位の誤差が約3cm以内に収まることが確認されており、25cm間隔で取得する軌道変位データの位置特定に十分活用できる精度と報告されています。これは、軌道検測の情報と他の地理空間データ(例えば地盤変動データや図面情報)を組み合わせる際にも大いに役立ちます。
また、地震や豪雨など自然災害後の軌道変位測定にもRTKは有用です。実際の災害対応の現場では、復旧作業に先立ち、作業員が携行型のRTK受信機で線路の歪みやずれを測定し、安全走行可能な範囲か評価する取り組みが始まっています。例えば、ある地震被災箇所で線路が水平方向に数センチずれたケースでは、RTK測量により短時間でずれ量を面的に計測し、どの区間を重点的に補修すべきかを定量的に判断できました。このようにRTKは、軌道の維持管理や緊急点検において、精度と迅速性の両面でメリットをもたらしています。
事例③: 駅周辺の再開発・鉄道設備設置におけるRTK利用
鉄道工事は線路だけでなく、駅やその周辺の構造物設置でも高精度な測量が求められます。ある駅の再開発プロジェクトでは、駅舎増築に伴うホーム延伸工事と新設軌道の敷設にRTKが活用されました。都市部の駅周辺はビルや高架が立ち並ぶ複雑な環境ですが、事前に駅構内の空が見通せるポイント(駅舎の屋上など)にGNSS基準局を設置し、夜間作業時にその基準局からRTK補正情報を受けながら測量する手法が取られました。
これにより、終電後の短い作業時間内でも効率よくホームの位置出しや軌道中心線の設定が行え、日中の列車運行への影響を最小限に抑えつつ工事を進めることができました。具体的には、新設するホーム端と既存ホームとの高低差・ズレ量をRTK測位で連続的に測定しながら調整したため、ホーム延長部と既存部の段差や直線性の狂いがほとんど生じませんでした。また、信号機や架線柱などの鉄道設備設置でもRTKを活用し、設置位置の墨出しを迅速に実施できました。駅構内は狭隘で測量機器の据え付けに時間をかけられない現場ですが、RTK受信機付きのスタッフ(測量用ポール)を持って歩くだけで測点を確認できるため、各所の重要点検(ホーム先端部の位置や信号機の視認限界点など)を短時間でチェックできたといいます。結果として、この駅再開発では、限られた作業時間内に精度要求の厳しい設備設置を完了するうえでRTKが大きく貢献しました。
以上、3つの事例を通して、RTK測位が鉄道の新線建設から保守・設備工事まで幅広く有効であることが分かります。それでは次に、実際にRTKを導入するには何が必要で、どのように運用すればよいか、具体的なステップを確認しましょう。
RTK導入のための具体的なステップ
RTK測位を現場に導入するにあたっては、必要な機材の準備から運用上のポイントまで、いくつか検討すべき事項があります。ここでは、導入の大まかなステップと注意点を解説します。
必要な機材とコスト
RTK導入に必要な主な機材は以下のとおりです。
-
GNSS受信機(移動局): RTKに対応した高精度GNSS受信機が必要です。複数周波数に対応し、GPSだけでなくGLONASSやGalileo、みちびき(QZSS)などマルチGNSSを受信できる機種が推奨されます。鉄道工事では測量用ポールに取り付けて使うローバー型受信機が一般的です。
-
基準局用機器: 基準局となるGNSS受信機およびアンテナを用意します。既知の正確な座標地点(例えば国土地理院の電子基準点や、現場に設置した既知点)に据え付けて運用します。基準局は可能な限り動かない安定した場所に設置し、常時受信・送信できるようにします。短期の工事であれば三脚上に据え付ける移動型基準局、長期になる場合は仮設ながらしっかり固定したアンテナ台を設けることもあります。
-
通信機器(無線/ネットワーク): 基準局で算出した補正データを移動局にリアルタイム送信するための通信手段が必要です。一般的には特定小電力無線やUHF無線モデムを使った電波通信、もしくは携帯電話回線を使ったインターネット通信(Ntrip方式など)でデータを配信します。近年は通信キャリアが提供するRTK補正サービス(ネットワーク型RTK)を利用し、専用の基地局を設けずに済ませるケースもあります。この場合、移動局側にモバイルルータやスマートフォン等を介してインターネットに接続し、補正情報を取得することになります。
-
電源・その他: GNSS受信機や通信機器を動作させるバッテリー、予備電源も必要です。現場では連続稼働時間を考慮し、大容量バッテリーや発電機の用意も検討します。また測量用の器材(ポール、プリズムなど)や、測点の印(マーキング道具)も従来同様に使用します。RTKセット一式の導入コストは、受信機2台(基準局・移動局)と無線機等を合わせて数百万円規模になる場合がありますが、レンタル利用や安価な受信機の登場によりハードルは下がりつつあります。
機材導入コストに関しては、近年登場した小型RTK受信機やスマートフォン対応の廉価モデルを活用することで、大幅に抑えられるケースも増えています。後述するLRTKのように、手頃な価格帯で入手できる高精度機も現れており、初期投資を抑えつつRTKを試験導入してみる企業も出てきています。
測量データとの連携と運用方法
RTKを導入した後は、その測位データを既存の図面や設計データと結びつけて運用することが重要です。まず、基準局の座標系をプロジェクトで使用する座標系に合わせます。日本の公共事業の場合、世界測地系(JGD2011)にもとづく平面直角座標系が使われることが多いため、基準局をその座標値で設定するか、あるいは現場の既知点(電子基準点など)からトラバース測量で求めた座標を付与します。これにより、RTKで得られる全ての点が設計図と同じ座標系上にプロットされることになり、後のデータ統合が容易になります。
測量の運用面では、現場での受信機の操作とデータ収集フローを整備します。通常、移動局側のGNSS受信機はコントローラー(データ収録用端末)とBluetooth接続されており、測点における座標値をタブレット等に自動記録できます。測量担当者は現地でポイントごとの座標を測定・保存し、そのデータを日々オフィスに持ち帰ってCAD図面やBIMモデルに反映させることになります。測量データとの連携を円滑にするため、測ったポイントに識別名やコードを付ける運用ルールを決め、図面上の要素(例: 「PC1始点」「ホーム端部基礎中心」など)と対応付けて記録するとよいでしょう。
また、RTK測位データは他の測量手法とも併用することで相乗効果を発揮します。例えば、縦断方向の高さ(標高)については精度向上のために電子レベルを併用し、高低差はレベルで測りつつ平面位置はRTKで即座に記録するといったハイブリッド測量も有効です。後に両者のデータを組み合わせれば、より信頼性の高い3次元測量結果が得られます。最近ではRTKと慣性計測装置(INS)を組み合わせ、短時間GNSS信号が途絶えても自己位置を推定し続ける技術も登場しています。このように、RTKを核としながら他技術とデータ連携させることで、鉄道工事全体の測量品質を底上げできます。
RTK導入時の注意点
RTKを現場で確実に運用するためには、いくつか注意すべきポイントがあります。
-
衛星受信環境の確保: RTKはGNSS衛星からの電波受信が命綱です。トンネル内やビルの真下など、衛星が全く見えない場所では測位が不安定になります。鉄道環境では高架橋の下や山間部の谷底など、受信が難しい箇所も存在します。その際は、受信可能な場所まで測点を延長する、あるいは一時的に測量方法を切り替える(光学測量に切替える等)などの対策が必要です。測位が不安定な状態で得たデータは採用しない判断も重要です。
-
マルチパス・電波干渉への対処: 鉄道沿線には金属製の構造物や架線柱、車両などGNSS電波を反射・遮蔽するものが多く存在します。これらによるマルチパス(反射波の干渉)が発生すると測位精度が低下します。高架下や駅構内などでは特に注意が必要で、必要に応じて測定位置を少し移動する、アンテナを高く掲げる、測定に時間をかけて安定するのを待つ、といった工夫が有効です。また、作業中に無線機器(列車無線や工事用通信)による干渉が起きる場合もありますので、周波数帯の確認やアンテナ位置の調整を行いましょう。
-
基準局の安定運用: 基準局の位置ずれや停止はRTK運用全体に影響します。設置した基準局はしっかり固定し、作業員が触れてしまわないよう注意喚起します。長時間の運用ではバッテリー残量や発電機の燃料切れにも留意し、バックアップ電源を用意します。さらに、基準局のアンテナ高(地面からの高さ)を正確に測定・記録しておくことも重要です(高さ情報は標高算出に用いるため)。基準局を移設する場合は、新旧の基準点間を既知点でつないで座標を精密に引継ぐ、あるいは一定時間併用して差分を取るなど、座標の連続性を保つ配慮を行います。
-
測位結果の検証: RTKによる測位結果であっても、重要な基準点や構造物位置については、可能ならば別手法で検証するのが望ましいです。例えば、要所の数点だけは従来のトータルステーションで測って照合する、あるいは複数日にわたりRTK測定して結果の再現性を確認するといった手順を組み込むことで、万一の系統誤差に気付くことができます。特に鉄道のように厳密さが要求される分野では、「ダブルチェック」「クロスチェック」の仕組みを取り入れて安全側に備えることが重要です。
-
運用トレーニング: 新しい測量技術を導入する際は、現場スタッフへの教育・訓練も欠かせません。RTK受信機やソフトの操作方法、測位状態(FIX解=誤差数cm、FLOAT解=誤差数十cm状態)の見極め方、通信トラブル時の対処などをあらかじめ習熟しておく必要があります。幸い近年の機器は操作インターフェースが改善され、スマートフォンアプリ感覚で使えるものも増えていますが、精度が落ちている兆候を把握できる知識(衛星数やPDOP値のモニターなど)は現場担当者に周知しておくべきです。また、得られたデータの扱い(フォーマット変換や座標系変換)についても事前にシミュレーションし、現場で戸惑わない準備をしましょう。
以上の点に留意しつつRTKを導入すれば、鉄道工事・測量の現場で大きな効果を上げられるはずです。では最後に、近年登場した注目の小型RTK製品「LRTK」について紹介し、さらなる情報取得の方法をご案内します。
LRTKの紹介
RTK測位の高精度と利便性を、より手軽に現場で活用できるよう開発されたデバイスがLRTKです。LRTK(エルアールティーケー)は、東京工業大学発のベンチャー企業・レフィクシア株式会社が開発した超小型のRTK-GNSS受信機で、スマートフォンやタブレットに装着して使用できるのが大きな特徴です。従来は据え置き型や大型の機器が多かったRTK受信機を、まさにポケットに入るサイズまで小型・軽量化した製品で、内蔵バッテリーとアンテナを備え、現場で手軽にセンチ精度測位を実現します。
LRTKの特徴は、小型・軽量でありながら高精度な点にあります。専用のスマートフォンアプリと組み合わせて使うことで、ネットワーク型RTK(Ntrip方式など)の補正情報を受信し、スマホ上でリアルタイムに高精度測位が可能です。これにより、専用のデータコレクタや複雑な設定を必要とせず、直感的な操作で測量を行えます。従来、RTK機器は高価で専門技術者向けというイメージがありましたが、LRTKはそのハードルを下げ、一般の技術者でも扱いやすいよう設計されています。
実際に施工現場での導入事例も増えてきています。建設業界では、LRTKを用いてiPhoneが測量機器として活躍しているとの報告もあります。例えば、ある土木現場ではLRTKを装着したスマートフォンを三脚に据えて基準点観測を行い、短時間で公共座標系の基準点を得ることに成功しました。また、別のインフラ点検の現場では、LRTK付きスマホで撮影した写真に高精度な位置座標を付与し、複数時点の画像を正確に比較する試みも行われています。従来は専門機器が必要だったセンチ精度測位が、LRTKにより誰でもどこでも実現しつつあるのです。
鉄道工事やインフラメンテナンスの担当者にとっても、LRTKは魅力的なツールとなり得ます。線路や構造物の位置出しを素早く行ったり、工事記録写真に正確な座標情報を付けたりといった用途で、既に利用が始まっています。小型ゆえに持ち運びも容易で、夜間作業や高所作業でも邪魔にならず、必要なときにさっと取り出して測位できる機動性は現場作業の効率を高めてくれるでしょう。精度も既存の据え置き型RTK機器に匹敵するセンチ単位を実現しており、鉄道分野の厳しい精度基準にも十分応えられます。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。