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土木測量×RTK革命:
トータルステーションからの移行事例

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2025年3月4日 掲載
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土木測量の現場で、トータルステーションによる従来手法からRTKによる高精度測位への移行が進んでいます。

本記事では、トラバース測量など旧来の測量手法とその課題を整理し、RTK測位(Real-Time Kinematic)の登場によって解決できるポイントを解説します。さらに、実際にトータルステーションからRTKへ移行して業務効率化に成功した事例を、大規模工事・インフラ維持管理・中小企業の3つの観点から紹介します。最後に、小型高精度RTK端末「LRTK」の特長と導入方法について触れ、測量DXの最新情報と無料資料請求の案内を提示します。RTK測位のメリットを理解し、自社の土木施工や測量業務への活用を検討するきっかけとしてぜひご活用ください。

1. 土木測量における従来の手法と課題

トラバース測量の基本(作業プロセス・必要機材・精度)

土木測量で古くから用いられてきた手法の一つがトラバース測量です。これは既知点から出発し、複数の測点を順に結んでいくことで基準点網を構築する測量手法です。具体的には、まず始点となる既知座標の地点に測量機(トランシットやトータルステーション)を据え付け、バックサイトとフロントサイト方向にプリズム(標尺)を立てて水平角度と距離を測定します。これを繰り返しながら測点を増やし、最後は始点または別の既知点に閉合することで測量ネットワークを構成します。必要な機材はトータルステーション(角度計と電子距離計を統合した測量機)およびプリズム、三脚、標尺、測量板などです。トラバース測量における測点間の角度・距離観測を経て各点の座標を算出し、閉合誤差の調整を行うことで最終的な座標値を決定します。適切に実施すればミリメートルオーダーの精度も得られますが、測線が長くなるほど誤差が累積するため、一定区間ごとに既知点による補正や厳密な誤差閉合処理が必要です。

トラバース測量は基本を押さえれば堅実な精度を確保できますが、その作業プロセスには手間と時間がかかるという側面があります。熟練の測量技術者2名以上で班を構成し、1人がトータルステーションを操作、もう1人が離れた地点でプリズムを保持して測点となる地点を順々に観測していく必要があります。起伏の激しい地形や障害物の多い現場では測線の確保が難しく、測点を追加したり迂回したりするなど計画に柔軟性も要求されます。こうした人力中心のトラバース測量は、測量範囲が広域になるほど時間と人的リソースを要するのが実状です。

トータルステーションを用いた測量の限界(作業負担・時間・人的リソース)

トータルステーション(TS)は角度と距離を同時に計測できるため、従来のトランシット+距離計に比べ飛躍的に効率化された測量機器です。しかし、それでも従来型測量の限界はいくつか存在します。まず、作業負担の面では、計測ごとに機器を据え直す必要があり、広い現場では三脚を担いで何度も移動・設置を繰り返す労力が発生します。また作業時間の面でも、一度に観測できる範囲は測器の視通範囲内に限られるため、視線を遮る障害物や高低差がある環境では手戻り作業が増えがちです。さらに人的リソースの観点では、通常2人1組での作業が必要(ロボットTSを用いても単独作業には限界あり)であり、人員手配や合図のためのコミュニケーションコストもかかります。測点数が多い地形測量や出来形管理では、全ポイントを1点ずつ測量していくトータルステーションではどうしても時間がかかり、進捗が測量作業に左右されてしまう場面もあります。

加えて、施工中の振動や騒音がある現場ではトータルステーションによる測量作業に制約が生じる場合があります。例えば重機やダンプの稼働による振動で測定値が安定しない場合、従来は安全のため測量時に周囲の重機作業を一時停止して対応していました​。

このように従来手法では現場の他作業と測量とを分離せざるを得ず、効率化のボトルネックとなるケースもありました。以上のような課題から、土木測量の世界では「より少人数で迅速に、高精度な測位を行いたい」というニーズが高まっていたのです。

2. RTK測位の登場とメリット

RTK測位とは?(GPS測位との違い)

RTK測位とは、衛星測位の一種であるリアルタイム・キネマティック(Real-Time Kinematic, RTK)方式によってセンチメートル級の高精度位置をリアルタイムに求める技術です。従来のGPS測位(GNSS単独測位)は1台の受信機だけで自位置を算出するため、衛星軌道誤差や大気の影響など様々な誤差要因により数メートル程度の誤差が生じていました​。

一方、RTK測位では基準局(既知の座標を持つ受信機)と移動局(計測したいポイントの受信機)の両方で同時にGNSS衛星信号を観測し、基準局との差分情報を移動局にリアルタイム送信することで誤差を補正します。これにより単独測位では避けられない誤差を大幅にキャンセルでき、実用上2~3cm程度の誤差にまで位置精度を高めることが可能です​。

基準局の位置は事前に正確に求めておき、移動局は基準局との距離(ベースライン)を高精度に測定することで、自身の座標をリアルタイムに算出します。

RTK測位はアメリカGPSだけでなく日本のみちびきやロシアGLONASSなど複数の衛星群(GNSS)を利用でき、通信で補正データを受け取りながら測位するため、単独測位とは一線を画す高精度さが得られます。その反面、基地局からの無線通信環境や衛星信号の受信環境が悪化すると精度が低下する(解が不定になり通常のGPS並みの誤差に戻る)点には留意が必要です​。良好な環境下ではRTKと通常GPSの差は歴然であり、まさに“革命”的な測位精度向上をもたらしました。

RTKを用いることで解決できる課題

RTK測位の導入によって、前述した従来測量の課題の多くが解決に向かいます。まず大きいのは作業効率の飛躍的向上です。RTK-GNSS受信機(移動局)は1人で持ち運び可能なため、測量作業を単独作業化できます。視通の確保も不要で、移動局が衛星から電波を受信できる空が開けた場所であればどこでも測点とすることができます。例えば山間部や市街地で従来は測量のために見通し線を設定するのに苦労した現場でも、RTKなら障害物越しに測量可能なので「視通が困難な現場でも一人で迅速かつ高精度な測量が可能」となり、作業時間の短縮と効率化が期待できます​。

またリアルタイムで測位結果が得られるため、毎点の観測ごとに計算や図面上での確認を挟む必要がなく、その場で結果をチェックし次の測点へと進めます。広範囲のポイントを短時間で連続測定できるため、地形測量や出来形管理において従来のトータルステーションに比べ作業効率が格段に上がり、省力化に大きく貢献します​。

精度面でも、RTKは基準局との相対測位によってミリ~数センチの精度を確保できます。水平方向の精度はほぼ基準局からの距離に依存せず安定しており、例えば半径10~15km程度の範囲なら誤差2~3cm程度で測位可能です​。鉛直方向については一般に水平の2倍程度の誤差となるため厳密な高さ管理には留意が必要ですが​、それでも現場レベルの高さ測量には実用十分な精度です。RTKで取得した座標値は世界測地系(地球座標)に直接基づくため、現場ごとにローカル座標を構築する手間も削減できます。言い換えれば、複数現場や既存図面との整合も取りやすく、測量データの利活用範囲が広がるというメリットもあります。

トータルステーションからの移行による効率化のポイント

トータルステーション測量からRTK測位への切り替えによって得られる効率化のポイントを整理します。最大のポイントは繰り返しになりますが「人数と時間の大幅な節約」です。従来は2~3人で分担していた基準点測量を、RTKなら1人で完遂できます​。補助員が不要になるだけでなく、騒音下で大声での誘導や合図を送る必要もなくなるため、安全性・快適性の面でも向上します​。

また、作業を他の工程と並行して進めやすいのも重要な効率化ポイントです。前述のようにRTK測量なら重機稼働中でも支障なく測点観測ができるため、施工と測量を分断せず並行して進められます​。これにより工期全体の短縮にも寄与します。

さらに、RTKでは測位結果がリアルタイムに得られるため即時にデータ活用が可能です。移動局で観測したポイント座標をその場でタブレット等に表示し、図面データと照合してチェックしたり、必要に応じて追加測点をそのまま測ることも容易です。トータルステーションでは一度事務所に持ち帰って計算・図化しなければ判断できなかったことも、RTKなら現地で完結できるケースが増えます。測量から設計・施工へのフィードバックが迅速になることで、全体のPDCAサイクルも加速します。

最後に、測量範囲の拡大も見逃せません。トータルステーションでは地上で機器設置可能な範囲に限られていたのに対し、RTK-GNSSなら広大な測量エリアでも途中に測定不能な空白地帯が生じにくくなります。例えば起伏の大きな造成現場で従来は中間点の設置や測量計画の調整が必要だった場面でも、RTKならそのまま一筆書きのように広域を測定して回れます。このように、RTKへの移行は測量作業そのものの生産性と柔軟性を飛躍的に高め、結果として土木施工全体の効率化につながるのです​。

トータルステーション測量とRTK測量の比較

RTK測位は従来のTS測量と比べて人員・時間の削減、作業範囲や柔軟性の拡大といった面で多くの優位性があります。一方で、初期導入コストや運用に必要な通信環境整備といった新たな要件もあります。次章では実際にRTKを導入した事例を確認しつつ、導入ステップや必要機材・コストについて具体的に見ていきましょう。

3. 【導入事例】トータルステーションからRTK測位への移行成功事例

事例①: 大規模土木工事でのRTK導入による作業効率化

まずは大規模土木工事現場でトータルステーションからRTKへ移行した事例です。群馬県で行われたダム関連の大規模造成工事では、通常1年かかる工事をわずか3ヶ月で完了させるという極めて厳しい工期が課されていました​。従来手法のままでは到底間に合わないため、施工会社(池原工業株式会社)では測量作業の抜本的な効率化策としてRTK-GPS測量システムを導入しました​。具体的には、トプコン社製のRTK-GPS受信機「GR-2100」シリーズと、福井コンピュータ社の土木施工システムを組み合わせ、現場の基準点測量・出来形管理に活用したのです​。RTK導入の効果はてきめんでした。これまで測量は2~3人一組で行い、重機やダンプの振動が収まる早朝や夜間に分けて作業していたものが、RTKなら日中の重機稼働中でも1人で支障なく測量可能となりました​。移動局を持って現場内を回り、測りたい地点でボタンを押すだけで即座に座標が記録されるため、1点の測定に30秒とかからないスピードで進みます​。

得られた測量データもリアルタイムでタブレットに表示され、設計データとの突合や出来形の確認をその場で行えるようになりました。結果として「広い現場でも測量は1人で十分。測量作業全般が驚くほど効率化された」と現場担当者が語るほどの生産性向上を実現しています​。

方向出し・距離測定・高さ確認のすべてを一人でこなし、丁張り設置までできてしまうその効果に、「これは現場技術者にとって画期的なことだ」と驚きを持って受け入れられました​。

この事例が示すように、大規模工事でRTKを導入すれば工期短縮の切り札となり得ます。実際、測量の効率化により工事全体の進捗に余裕が生まれ、当初「あり得ない」と言われた工期を無事に達成できたとのことです。RTKは単なる測量精度向上ツールに留まらず、施工プロセス全体を変革しうるテクノロジーとして評価されています。

事例②: インフラ維持管理(高速道路・鉄道)のRTK活用事例

次に、インフラ点検・維持管理分野でのRTK活用事例を紹介します。高速道路や鉄道といったインフラのメンテナンスでは、広域かつ長距離にわたる構造物の状況把握や精密な位置特定が求められます。従来、路線測量や変位計測にはトータルステーションや水準測量が用いられてきましたが、RTKの導入により大きな効率化と高度化が実現しています。

鉄道の例では、レールの歪みや沈下を定期的にモニタリングするためにRTKを応用したケースがあります。あらかじめ線路沿いに基準点を設置し、定期巡回時にRTK移動局で各基準点の高さや位置を計測することで、経時的な変化を数センチの精度で捉えることができます​。従来は水準測量で時間をかけていた作業がリアルタイムに完了し、異常の早期発見・補修計画に役立っているといいます。

また高速道路では、トンネルや橋梁の設備設置位置の測定、路面の沈下や変状の調査にRTKが活用されています。例えば、高速道路上の補修箇所を特定する際に、事前にRTKで測定した高精度な座標データをカーナビやタブレットに取り込み、現地でその座標を照合することでピンポイントで補修地点を特定できます​。これにより広い高速道路上でも作業員が迷わず迅速に作業箇所に到達でき、夜間作業の短縮や安全性向上につながったと報告されています。

その他、都市インフラでは埋設管やケーブルの把握にもRTKが利用されています。あるケースでは地中レーダー(GPR)による地下埋設物探査と組み合わせ、RTK-GNSSで各探査ポイントの位置を測定して得られたデータを3次元化することで、埋設管の詳細な位置図を作成した事例があります​。これにより掘削工事の際のリスク低減や、維持管理図面の高度化に寄与しています。

以上のように、インフラ維持管理分野でもRTK測位は精度と効率性の両立を実現し、これまで困難だった作業を可能にしています。高速道路や鉄道といった公共インフラを管轄する技術者にとって、RTKは新たな強力ツールとなりつつあります。将来的には、各インフラ管理者が共通の高精度測地基盤を持ち、RTKを前提とした維持管理フローが標準化していくことも期待されます。

事例③: 中小土木企業がRTKを活用して競争力を強化したケース

最後に、中小規模の土木・測量企業によるRTK活用事例です。近年、測量機器の低価格化や各種補助制度の拡充もあり、中小企業でもRTK測量機の導入が進んでいます。その背景には、人手不足や高齢化が深刻化する中で、生産性向上によって事業継続と競争力維持を図りたいという強いニーズがあります。

ある地方の測量会社では、従来スタッフ2~3名で1日かけて行っていた用地測量を、ネットワーク型RTKサービスを活用して1名で半日以下で完了させることに成功しました。基準局を自前で設置する代わりに、民間提供のネットワークRTK補正サービス(VRS方式)に接続することで、受信機1台だけで即座にセンチメートル精度の測位を実現しています​。これにより基準局用の機器と設置作業が不要となり、機材コストも削減されました​。実測では従来比で測量作業時間が30%以上短縮し、浮いた人員を他業務に充てることで受注案件全体の処理件数を増やすことができたとのことです。「端的にメリットとして言えることは、『ラク』で『早い』ということ」と述べており、従来1往復していたトータルステーション測量がRTK導入後は不要になったことが大きいといいます​。

別の中小建設会社では、山間部の造成現場でRTKドローンも併用することで、地上と空中の測量を統合して作業時間を大幅短縮した事例があります。従来は測量班が半日かけて設置していた多数の標定点(地上基準点)をRTKドローンでは極力省略し、上空からの写真測量で3次元地形モデルを作成しています。地上では要所のみRTKで座標確認することで、従来手法と同等の精度を確保しつつ測量工程全体を約50%短縮しました。これにより若手オペレーターでも最新ICTを駆使して高品質な測量成果が出せるようになり、人材育成と企業アピールにもつながったといいます。

このようにRTK技術は大企業のみならず中小企業でも導入効果が高く、事業改善の切り札になっています。実際、日本政府の支援策として「中小企業省力化投資補助金」の対象製品にGNSS測量機(RTK)が指定されており、一定の補助を受けて導入することも可能です​。補助制度の活用により初期投資のハードルが下がったことで、今後さらに多くの中小企業がRTK測位に踏み切り、業界全体の底上げが図られていくでしょう。

4. RTK導入のための具体的なステップ

必要な機材と導入コスト(GNSS受信機、基地局、ソフトウェア)

RTK測位を導入するにあたって必要となる主な機材は以下のとおりです。

  • GNSS受信機(ローバー局): 測量者が持ち運び測点で観測する移動局です。測量用ポール先端に装着するアンテナ一体型受信機が一般的で、衛星からの信号受信と補正情報の適用機能を備えています。

  • 基準局用受信機: 自社で基準局を設置する場合に必要です。既知座標点に据え付けて連続観測を行い、そのデータを移動局へ送信します。移動局と同等かそれ以上の精度・安定性を持つ機種が推奨されます。

  • 通信機器(無線機・モバイルルーター等): 基準局から移動局へ補正データをリアルタイム送信する通信手段が必要です。一般的には特定小電力無線やUHF無線を使う方法と、Ntrip対応のインターネット経由の方法があります。近年は移動局にSIMカードを挿入し、携帯通信網で補正情報を受信するスタイルが主流です。

  • 測量用コントローラー/ソフトウェア: 移動局で取得した座標データを表示・記録したり、測設(スタッキング)のナビゲーションを行うための端末です。専用のフィールドコントローラーやタブレット端末にソフトウェアを導入して使用します。点名入力やメモ、コードといった付加情報もこの端末で扱います。

  • その他付属品: 三脚(基準局固定用)、測量ポール・プリズム(必要に応じTS併用時や検測用)、予備バッテリー、日除けケースなど現場運用に合わせて準備します。

 

導入にかかるコストは、受信機の性能やメーカー、運用方式によって幅がありますが、一般的な2周波RTK-GNSS受信機のセットで数百万円程度から導入可能です​。

高性能なものでは1セット500~800万円に達する場合もありますが、最近は海外製を中心に比較的安価な機種も増えてきました。また、前述の補助金を活用できれば購入費用の1/2が補助されるケースもあり、中小企業でも実質数百万円未満で最新RTK機器を導入することができます​。さらに、基準局を自前で用意せず民間のネットワークRTKサービス(年間契約や時間課金)を利用することで、初期コストを受信機1台分に抑える選択肢もあります。自社のニーズや予算に応じて機器構成と調達方法を検討すると良いでしょう。

RTKを使うための準備(基準局の設置、ネットワークRTKの利用)

RTK測位を運用するには、現場で基準局から補正情報を得る仕組みを整える必要があります。その方法は大きく2通りあります。

  1. 自前の基準局を設置する方式: 現場もしくは近傍の既知点に自社保有の基準局用GNSS受信機を据え付けます。三脚や固定台にしっかりと設置し、連続して衛星観測を行います。設置地点の正確な座標値(緯度・経度・楕円体高)をあらかじめ国土地理院の電子基準点や既知の測量基点から求めておくことが重要です。基準局から移動局へは、同じ無線周波数に設定した特定小電力無線機やUHF無線でリアルタイムに補正データ(RTCM形式など)を送信します。山間部など通信インフラが乏しい現場では、この自前基準局方式が有効です。

  2. ネットワークRTKサービスを利用する方式: 自社で基準局を持たず、外部の補正情報配信サービスに接続する方法です。日本全国には電子基準点ネットワークや民間のGNSS基準局網が整備されており、代表的なサービスにはVDRSやVRS方式のネットワーク型RTKがあります。移動局側でインターネット接続環境(携帯通信網など)を用意し、Ntripプロトコルを介して配信サーバにアクセスすることで、現在地周辺の基準局から生成された補正情報を受け取ります​。これにより基準局を設置せずに1台の受信機だけでRTK測位が行えます​。都市部や広域移動を伴う測量ではこちらの方式が便利です。

どちらの方式でも、基準局の既知座標系と現場の座標系の統一が重要です。公共測量であれば日本測地系(JGD2011)の平面直角座標系を用いることが多いですが、移動局が得る座標が期待通りの系で出力されているか確認します(必要に応じて受信機側で測地系変換やジオイド補正を設定)。また測量前には、基準局・移動局とも正常に衛星を捕捉し補正が適用されているか、既知点で検証測位して精度を確認する手順も欠かせません。

準備段階としてもう一つ、作業に携わる技術者への教育・トレーニングも重要です。RTK特有の用語(固定解/フロート解、衛星幾何分布GDOP値など)やトラブル発生時の対処(衛星が途切れた場合の再測位方法など)について事前に知識共有しておくと、現場でスムーズに対応できます。機器ベンダーやサービス提供元が開催する講習会を活用するのも良いでしょう。

測量作業の流れとトータルステーションとの比較

RTK測量の基本的な作業の流れは、従来のトータルステーション測量に比べると非常にシンプルです。

  1. 基準局のセットアップ: (自前基準局方式の場合)現地の既知点に基準局受信機を据え付け、電源ONして測位を開始します。正確な座標を設定し、移動局へのデータ送信を開始します。(ネットワークRTK方式の場合)移動局側の端末で補正サービスにログインし、補正データ受信を開始します。

  2. 移動局の測位開始: 移動局受信機の電源を入れ、基準局からの補正情報を受信してRTKモード(固定解)になるのを待ちます。通常数秒~数十秒で高精度解が得られます。測位が安定したら、電子野帳やタブレット上に現在座標を確認します。

  3. 測点の観測: 測量したいポイントに移動局(ポール先端のGNSSアンテナ)を正確に据え付けます。気泡管でポールを整直し、記録ボタンを押して観測開始します。数秒観測して平均値を取るなど設定に従い、自動的にその点の座標値が端末に記録されます。1点の測位時間は数秒~数十秒程度で完了します​。点名や特徴コード、メモ等も必要に応じ入力します。

  4. 繰り返し観測: 続けて次の測点へ移動し、同様に観測を繰り返します。ポイント数が多い場合でも移動しながら連続的に測れるため、途切れなくテンポ良く進められます。測点間の視通を気にする必要がないため、地形に合わせて自由な順序で測って構いません。

  5. 検測・終了: 全ての必要測点を観測したら、再度既知点に戻って検測を行い、測位のズレがないか確認します。問題なければ測量終了です。基準局を撤収し、移動局の電源をOFFにします。記録した座標データは端末からUSBメモリやクラウド経由でPCに転送し、図面作成や解析に利用します。

一方、トータルステーション測量の流れは以下のようでした。

  1. 測量機を据え付け(既知点)し、後視点を照準・測距して角度をゼロ設定。

  2. 前視点のプリズムを照準・測距して観測データ記録。

  3. 測量機を次の位置に移設し、既知点や直前測点を後視してセットアップし直し…(以下繰り返し)。

この比較から明らかなように、RTKでは「測量機を据え直す」手間が事実上不要です。常に自分自身が移動局として動けばよいので、設置→観測→撤収というセットを繰り返す必要がありません。測点ごとに三脚を立て直す時間が削減されるだけでも大幅な効率化です。また、得られるデータが即GIS/CADに直結している点も異なります。RTKでは観測と同時に数値座標データが蓄積されるため、角度・距離から座標計算する中間処理が省かれ、人的ミスも減らせます。

さらにRTKでは高さの測定も容易です。トータルステーションでは高さ(高さ角)の観測にミスがあると後で補正が難しいですが、RTKなら地上高(アンテナ高)さえ正確に入力しておけば自動的に各点の標高が算出されます​。ジオイドモデルを使えば海抜高さも即得られるため、レベルを併用せずに高低差管理ができる場面も増えてきます。

もっとも、従来技術が不要になるわけではありません。精度検証や補完用途においてはトータルステーションも依然有用です。例えばトンネル内や樹林下など、GNSS電波が受信できない環境では引き続きTSや従来手法が必要です。またRTKの高さ精度の限界から、精密な水準測量は引き続き不可欠な場面もあります。現場ではRTKとTS・レベルを上手に使い分け、互いの強みを活かすことが重要です。実際の導入現場でも「要所ではレベルで高さ確認を行っている」という報告があり​、RTKだけに頼らず従来技術で補完する姿勢が見られます。

以上、RTK導入の具体的ステップと留意点を述べました。適切な機材を揃え、周到な準備と教育のもとで運用すれば、RTKは驚くほど簡単に使いこなせるようになります。「固定局をセットすれば、あとは移動局を持って現場を回るだけ。1点測るのに30秒もかからない」という声もある通り​、一度流れを掴めば従来測量には戻れないほどの効率を実感できるでしょう。次章では、そんなRTK技術をさらに手軽に活用できるLRTKという最新デバイスを紹介します。

5. 【LRTKの紹介】無料で資料請求が可能

LRTKの特徴(小型・軽量・高精度)

RTK測位のメリットを最大限に引き出すには、機器の扱いやすさも重要です。ここで紹介するLRTKは、レフィクシア社(東京工業大学発ベンチャー)が開発したポケットサイズの万能測量機です​。特筆すべき特徴は、その小型・軽量さと利便性にあります。LRTKは重さわずか125g、厚さ13mmという超小型のRTK-GNSS受信機で、専用のスマートフォンカバーにワンタッチで装着して使用します​。つまり、手持ちのiPhoneやiPadと組み合わせるだけでセンチメートル級精度の測量機器に早変わりするのです。

LRTKの精度は従来の据置型RTK受信機に匹敵し、平面位置で数センチの誤差に収まります​。実験では単独測位で12mm程度の誤差だったものが、平均化機能により8mm精度まで向上することが確認されており、本格的な測量にも十分耐える性能です​。また、スマートフォンと連携した独自アプリにより、点の計測から記録・クラウド共有までワンストップで行えるのも利点です​。LRTKアプリ上で測位ボタンを押せば、緯度経度・高さ・時刻・測位状態といった情報が自動で記録され、メモや写真を紐付けることもできます​。測定データはワンタップでクラウド送信でき、事務所のPCから即座に確認可能です​。さらに、日本の平面直角座標系変換やジオイド高計算もアプリが自動で行うため、複雑な座標変換作業も不要です​。

機能面でも、LRTKは測位・点群計測・墨出し・ARといった幅広い用途に対応しています​。iPhone内蔵のLiDARスキャナやカメラと組み合わせることで、その場で高精度な点群データの取得や、設計モデルを現地映像に重ねるARシミュレーションも可能です​。

例えばLRTKを用いれば、スマホの画面上に測量で得た点の位置をARマーカーとして表示したり、指定した座標まで誘導するナビゲーションを行ったりできます​。これにより、従来は紙図面と現場を見比べながら行っていた杭打ち(墨出し)作業も直感的に行えるようになります​。

こうした多機能ぶりにも関わらず、LRTKの価格は非常にリーズナブル(低価格)に設定されています​。高額な専用機器を揃えなくても、スマホ+LRTKワンセット(1人1台)で測量から出来形管理まで完結できる点が大きな魅力です​。「ポケットに入れて常時携帯し、必要な時にいつでも使ってもらえる1人1台の現場ツールを目指して開発」されたという言葉どおり​、現場の誰もが手軽に持ち歩ける測量端末として、現場実務者の間で静かなブームを呼んでいます​。

施工現場での導入事例と効果

LRTKは既に複数の施工現場で導入され、その効果が実証されています。一例として、ある道路工事現場ではLRTKを現場監督員が常時携行し、日々の出来形管理に活用しました。測量専門の技術者を呼ばなくても、自ら設計図と現地を照らし合わせて要所の出来形をチェックできるため、検測待ちによる工事の中断が解消しました。結果として、施工と測量確認のタイムラグがなくなり品質確保が容易になるとともに、出来形不足による手戻りのリスクも低減しました。「現場の筆記具はLRTKがあれば全て不要になる」とも評され​、測点メモや野帳への記録すらデジタル化されたことで、報告書作成も含めた事務作業時間が大幅に削減されています。

また別のケースでは、インフラ点検業務でLRTKを導入しました。点検担当者がヘルメット装着型のLRTKデバイス(製品バリエーションの一つ)を被り、構造物の位置写真を撮影すると、自動的に高精度な撮影位置座標と方位がタグ付けされました。これにより、後からオフィスで写真を見返した際にも「どの地点からどの向きを撮影したか」が正確に地図上で再現でき、点検データの信頼性が向上しました。従来は手作業で写真に位置情報を書き込んでいた手間が省け、報告作成効率も格段にアップしました。さらにAR機能を用いて、点検箇所の変位を現地で3Dモデルと比較確認する試みもなされており、LRTKによってインフラ維持管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進みつつあります。

このようにLRTKは、高精度測位の専門知識がない現場スタッフでも直感的に使えるツールとして、大きな可能性を秘めています。「センチメートル級の精度を武器に、施工管理や測量業務のDXを加速させましょう。RTK技術とLRTKデバイスの活用で、現場の生産性と安全性は飛躍的に向上します。」とのメッセージが発信されている通り​、これからの建設現場の新常識となることが期待されるでしょう。

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

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