top of page

GNSSとGPSの違いとは?RTKが必要な理由

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均2分30秒で読めます
2025年2月28日 掲載
DSC03177.jpg

カーナビやスマートフォンの地図アプリでおなじみのGPSですが、目的地から少しズレた場所に案内されてしまった経験はありませんか?それはGPSによる位置測位の精度に限界があるためです​。近年、ドローンの自動航行や建設現場での3次元測量などより高精度な位置情報が求められる場面が増え、従来のGPSに代わって「RTK」という技術が注目を集めています​。

本記事では、GNSSとGPSの違いを解説し、なぜ誤差の小さいRTKが必要とされるのか、その仕組みと活用事例について紹介します。

GNSSとは?GPSとの違い

まずGNSSとGPSの違いを整理しましょう。GNSS(Global Navigation Satellite System、全球測位衛星システム)とは、人工衛星を利用して位置を測定するすべての衛星測位システムの総称です​。

代表的なものに米国のGPS(Global Positioning System)がありますが、他にもロシアのGLONASS(グロナス)、EUのGalileo(ガリレオ)、中国のBeiDou(ベイドウ)、日本のQZSS(準天頂衛星システム:愛称みちびき)など各国・地域が独自にGNSSを運用しています​。GPSはアメリカが開発したGNSSの一つであり、GNSSはこれら複数の測位衛星システムを含む概念なのです​。

ワンポイント: 日本では歴史的にGPSの利用が先行したため、衛星測位システム全般を「GPS」と呼んでしまうこともあります​。しかし正確には、GPSはGNSSを構成する一システムに過ぎません。

ではGNSSとGPSで何が違うのかというと、「利用できる衛星の数」とそれによる測位精度の違いです。単一のGPS衛星群だけでなくマルチGNSS(複数の衛星群)を使えば、常により多くの衛星から信号を受信できるため衛星の配置による誤差影響を減らせます​。

つまり利用可能な衛星の数が増えれば測位精度も向上するというわけです​。

実際、GPSのみよりもGPS+GLONASS等の複数GNSSを組み合わせた方が精度が安定しやすく、測位できない環境(ビル陰など)も減ります。GNSS対応の受信機を用いることで、GPS単独では得られない高精度で安定した測位が可能になります。

なぜGPS単独では誤差が大きいのか

私たちが普段使っているGPS単独測位(1台の受信機で行う測位)では、一般的に数メートルの誤差が生じます​。

この誤差の主な原因はいくつかあります。

  • 衛星の軌道・時計誤差: 人工衛星の軌道情報の予報誤差や、衛星内蔵時計のズレによる誤差​。たとえ原子時計でもわずかなずれが積み重ねれば測位に影響を及ぼします。

  • 大気圏による誤差: 電波が地球大気中を伝搬する際の影響です。電離層(上空約50~1000km)での遅延や対流圏(地上~約10km)の屈折によって信号伝播時間が伸び、距離測定に誤差を生じます。

  • マルチパス誤差: ビルや地面などに反射したGPS信号(マルチパス)が受信機に届くと、直接波と混信して距離計測が狂います​。特に都市部ではこのマルチパスの影響が大きくなります。

  • 受信機側の誤差: 受信機の内部時計のわずかな不正確さやノイズによる誤差、衛星数が不足した場合のジオメトリ(衛星配置)の悪さなども精度低下を招きます​。

以上のような要因が重なり、GPS単独測位ではどうしてもメートル級の誤差が発生してしまいます。例えばスマホのGPSで現在地が建物の隣の道路上に表示されてしまう、といった経験はこれら誤差要因によるものです。通常のカーナビや歩行者ナビでは数メートルのズレは許容できますが、インフラの維持管理や建設測量など高い精度が要求される分野ではGPSだけでは不十分と言えるでしょう​。
 

RTKが誤差を補正する仕組み

そこで登場するのがRTK(Real Time Kinematic)と呼ばれる高精度測位技術です。RTKは「リアルタイムキネマティック」の略称で、相対測位と分類される測位方式の一つです​。具体的には基準局(固定局)と移動局(ローバー)の2つのGNSS受信機を用いて4機以上の衛星から同時に信号を受信し、両受信機間で測定した距離情報をやり取りしてズレ(誤差)を補正することで、単独測位よりも高精度な位置を算出します​。この方法により、残る誤差をわずか数センチメートル以内に抑えられるのが最大の特徴です​。

では、RTKがどのようにしてGPS測位の誤差を補正しているのか、その仕組みを順を追って見てみましょう。

  1. 基準局を設置: まず既知の正確な座標値を持つ地点(既知点)に基準局となるGNSS受信機を設置します。基準局は自分の真の位置を知っている受信機です。

  2. 両局で同時に衛星測位: 基準局と移動局の双方が、同じタイミングで複数のGPS/GNSS衛星からの信号を受信し、それぞれ自分の位置を計算します。各受信機は通常のGPS測位と同様に衛星からの距離を測定します。

  3. 基準局で誤差を算出: 基準局は自ら計算した測位結果と、自身の既知の正確な座標を比較することで、その時刻における測位誤差(衛星からの距離測定のずれ)を求めます。例えば基準局の計算上の位置が真の位置から東に10cmずれていれば、「現在、GPSには東方向に10cmの誤差が含まれている」と判断できます。

  4. 補正情報の送信: 基準局が算出した誤差(補正量)を無線やインターネット回線でリアルタイムに移動局へ送信します。移動局は常に基準局からのリアルタイム補正情報(RTCMと呼ばれるフォーマットのデータなど)を受け取れる通信環境を用意します。

  5. 移動局で補正適用: 移動局では、自身が測定した生の衛星距離データに対して、基準局から受信した補正量を適用します。こうすることで、大気の影響や衛星時計のずれなど両受信機間で共通の誤差要因が相殺され、移動局の位置をセンチメートル単位の精度で求めることができます​。

以上がRTKによるリアルタイム誤差補正の流れです。要するに、GPS測位の「ずれ」をリアルタイムで補正することで、高精度な相対位置を得る仕組みと言えます。特にRTKでは電波の搬送波位相を利用した精密な測距を行っており(波長約20cmのキャリア波の位相差を解析)、整数周期の不確定性(整数アンビギュイティ)を解決することで数センチの精度を達成しています。これは通常のコード測位(擬似距離測定)だけでは到達できない精度です。

ネットワーク型RTK: 従来はユーザー自身が現地に基準局を設置する必要がありましたが、近年は携帯通信網を利用して全国各地の基準局データを配信するネットワーク型RTKサービスも普及しています​。

例えばソフトバンクが提供する「ichimill(イチミル)」では、全国に3300か所以上の独自基準点を整備し、ユーザーは自前で基準局を設置せずとも通信経由で補正情報を受け取れます​。

このようなサービスを利用すれば、移動局となる受信機1台だけで手軽にセンチ精度の測位が可能になります​。

RTKの活用事例

RTKによる高精度測位は、土木測量やインフラ維持管理をはじめ様々な分野で活用が広がっています。ここでは代表的な事例をいくつか紹介します。

  • 土木測量・建設分野: 建設業界では従来、人手や光学機器による測量に頼っていた場面でRTK-GNSSが活用され始めています。例えば、タブレットやスマホのLiDAR(ライダー)機能とRTK-GNSS受信機を組み合わせることで、高価なレーザースキャナを使わずに現場の3次元測量を行う手法が国土交通省にも推奨されています​。このようにRTKを用いることで、地形測量や出来形管理を効率よく高精度に行うことが可能になり、設計から施工管理までのDX(デジタルトランスフォーメーション)を後押ししています。また、重機の位置制御(マシンガイダンス/マシンコントロール)にもRTKが使われ、ICT施工※による施工精度向上と省力化に貢献しています。

  • インフラ維持管理(道路・鉄道・橋梁など): 高速道路や鉄道といった社会インフラの保守点検分野でもRTKの活用が期待されています。たとえば鉄道では、レールの沈下量や歪みを定期的に精密測定したり、架線やトンネルなど構造物の変位監視にRTK-GNSSを組み込んだセンサを用いることで、保守作業の自動化・高度化が図れます。道路・橋梁では、測位誤差の小さいRTK対応GPSを搭載した移動体で路面や構造物の検査を行い、補修箇所の位置を正確に記録するといった使い方がされています。実際、交通インフラの監視業務の自動化や無人化にもRTKは有効であり、高精度な位置情報を前提とした新たな維持管理手法が研究・導入されています​。

  • ドローン測量・点検: ドローンにRTK-GNSSを搭載することで、空中からの測量や設備点検の精度が飛躍的に向上します。例えば建設現場の空撮による出来形管理や、橋梁・送電線の点検では、RTK搭載ドローンで取得した画像に正確な位置情報(ジオタグ)を付与することで、後処理なしにセンチメートル精度の測量成果が得られます。また、自律飛行させる場合にもRTKなら事前に設定した飛行ルートからの逸脱を最小限に抑え、隣接する構造物への衝突リスクを低減できます​。RTKによる安定飛行が可能になれば、従来は人手で行っていた危険個所の点検をドローンで安全に代替することも可能になります。

  • そのほかの分野: RTKの利用は農業や物流、防災分野など多岐にわたります。農業ではRTKで位置を補正することによりトラクターなど農機の自動運転や、ドローンによるピンポイントの農薬散布が実現しています​。物流ではRTK対応の自動運転バスや宅配ドローンの実証も進んでいます​。スポーツ分野では選手の動きをセンチメートル単位で計測できるウェアラブルデバイスへの応用例もあります​。

  • このように、RTKの高精度測位はあらゆる産業のスマート化を支える基盤技術として期待されており、今後ますます活用シーンが広がっていくでしょう。

ICT施工※: 「ICT(情報通信技術)施工」とは、GNSSや3D設計データ、マシンコントロール技術等を活用して土木施工の効率化と高度化を図る手法です。

国土交通省が推進するi-Constructionの一環で、RTK-GNSSを搭載した重機で自動的に整地を行うなどの先進的事例があります。

LRTKの紹介と資料請求のご案内

最後に、RTKを手軽に活用できるソリューションである**「LRTK」**についてご紹介します。LRTKはレフィクシア株式会社が提供するRTK-GNSS受信機シリーズで、手のひらサイズの筐体にアンテナ・GNSS受信機・無線機・バッテリーのすべてを内蔵したオールインワン設計が特長です​。

煩雑な機器接続や現場での据え付け作業を必要とせず、現地に持ち運んで電源を入れるだけで高精度測位を開始できます。単体の受信機でネットワーク型RTKサービスに接続すれば、即座にセンチメートル級の測位が可能です​。

レフィクシアでは、現場での操作を支援するスマートフォン用LRTKアプリや、測位データをクラウド上で管理・共有できるLRTKクラウドといったサービスも提供しており、初めてRTKを導入する方でも安心してご利用いただけます。建設業界や測量技術者の方々が直面する「もっと手軽に高精度測位を使いたい」という課題を解決するソリューションとして、LRTKは開発・改良が重ねられています。

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page