top of page

衛星から補正信号を常時受信!準天頂衛星CLASで実現するcm級測位

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均4分45秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

建設現場や測量、農業、林業、防災などの分野では、位置情報の高精度化が欠かせません。従来、センチメートル級の精度を得るためには、GNSS測位でRTK(リアルタイムキネマティック)と呼ばれる方法を用い、移動局に加えて基地局やネットワークからの補正情報を受信する必要がありました。しかし通信環境に依存する従来手法では、山間部や通信圏外の地域での利用には制約がありました。そこで注目されるのが、日本の準天頂衛星システム(QZSS)が提供するCLAS(センチメータ級測位補強サービス)です。衛星から常時配信される補正信号を利用することで、通信インフラに頼らずにセンチメートル級測位を実現します。本記事では、準天頂衛星システムの概要やCLASの仕組み、RTKやSLASとの比較、現場での活用例、そして今後の展望について解説します。


準天頂衛星システム(QZSS)とは

準天頂衛星システム(QZSS)は、日本が運用する地域型の衛星測位システムです。愛称は「みちびき」と呼ばれ、しばしば「日本版GPS」とも紹介されますが、正確にはGPS(アメリカの全地球測位システム)を補完・強化するための地域拡張システムです。準天頂衛星は、その名の通り日本の上空で天頂付近に留まる軌道を採用しており、一日を通して常に少なくとも1機の衛星が日本のほぼ真上に位置します。これにより、山間部や高層ビル街でも衛星からの電波を受信しやすく、GPSだけでは衛星数が不足する環境でも測位しやすくなるメリットがあります。


QZSSは2018年に4機体制で本格運用が開始され、GPSや他国のGNSS(ロシアのGLONASSや欧州のGalileoなど)の衛星信号と組み合わせて、日本周辺における測位精度と可用性を向上させてきました。さらに2023~2024年に追加の衛星が打ち上げられ、2025年には7機体制での運用が目指されています。衛星数が増えることで衛星の視界がさらに安定し、将来的にはQZSSの衛星だけでも位置情報を得られるようになる可能性もあります。また、QZSSは通常の測位信号に加えて、日本独自の測位補強サービスを提供している点も大きな特徴です。それが後述するCLAS(センチメータ級測位補強サービス)SLAS(サブメータ級測位補強サービス)といった、高精度化のための補強信号です。


CLASの仕組みとメリット – PPP-RTKによるセンチメータ級測位

CLAS(Centimeter Level Augmentation Service、シーラス)は、準天頂衛星システム(QZSS)が提供するセンチメートル級の測位補強サービスです。CLASを利用することで、誤差数センチ程度という極めて高い精度で位置情報を取得できます。その背景にある技術がPPP-RTKと呼ばれる測位手法です。PPP-RTKはPrecise Point Positioning – Real-Time Kinematicの略で、従来のPPP(精密単独測位)とRTK(リアルタイムキネマティック)双方の利点を組み合わせた最新技術です。


PPP-RTKでは、GPSなどGNSS衛星の軌道誤差や時計誤差といった広域誤差に加えて、電離層遅延・対流圏遅延などの地域的な誤差をリアルタイムに補正します。具体的には、国土地理院が全国約1300か所に設置した電子基準点(GNSS基準局)の観測データを活用し、大気圏内の誤差情報を推定します。そして、その補正情報を準天頂衛星がL6帯の電波(L6D信号)で常時送信します。地上のユーザは、CLAS対応の受信機を用いてこのL6電波を受信し、自身のGNSS観測データに補正を適用することで、高精度な位置を算出できるのです。言わば、日本全国に張り巡らされた基準局ネットワークの情報を、人工衛星を介して共有し、単独の受信機でRTK並みの精度を得る仕組みです。


CLASの大きなメリットは、通信インフラに依存しない点と広域で一律に高精度化できる点です。基地局を自前で設置したりインターネット経由で補正データを取得したりする必要がなく、準天頂衛星からの信号さえ受かれば、日本全国どこでも均一な補正情報を得られます。また、補正情報の受信自体に利用料金はかからず、サービスはオープンかつ無料で提供されています(受信に必要な対応機器の準備は必要です)。このため、一度CLAS対応の受信環境を整えれば、ランニングコストを抑えながら常時センチメートル級測位を行えるという経済的な利点もあります。


ただし、CLASを利用するためには対応したGNSS受信機(L6信号対応機器)が必要となります。現時点でスマートフォンや一般的な市販GNSS端末は直接CLAS信号を扱えないため、専用の高精度GNSSモジュールや受信機を用いることになります。また、RTKに比べて初期の測位収束時間がやや長い点にも留意が必要です。受信を開始してからセンチメートル級の精度に達するまで、静止状態で数十秒〜数分程度を要する場合があります(環境や機器性能によって異なります)。もっとも、一度高精度解が得られれば、その後は移動しながらでも安定して補正が継続されます。リアルタイムで迅速な測位開始が求められる場面では従来型RTKに軍配が上がるケースもありますが、通信圏外でも安定して高精度が得られるCLASは、従来手法を補完する強力な選択肢と言えます。


通信インフラ不要で常時受信可能な補正情報

CLAS最大の特徴の一つが、通信インフラが不要であることです。従来のネットワーク型RTKでは、移動局が携帯回線などを通じて基地局データやVRS(仮想基準点)情報を受信する必要がありました。これに対しCLASでは、補正データがすべて衛星から直接降ってくるため、山奥の作業現場や携帯電波の届かない僻地でも、空が開けてさえいればセンチメートル級測位が可能です。これは、防災現場などインフラが寸断された状況下でも威力を発揮します。例えば大規模災害の被災地で通信網がダウンしていても、上空の準天頂衛星からの補強信号を受けて測位を継続できるため、迅速な現況把握に役立ちます。


また、補正情報を得るための通信費用やサービス利用料がかからないことも現場にとって恩恵です。既述の通りCLAS信号そのものは無料公開されているため、NTRIPなどの有料配信サービス契約が不要です。広大な農地で自動走行トラクターを運用するケースでも、毎月の通信コストを気にせず常に補正を受けられる点は経済的な利点となります。さらに、日本全国どこでも同じフォーマットの補正データが得られるため、地域によって異なる基地局を用意したり座標系変換を意識したりする必要もありません。これらの特長から、CLASは「どこでも」「常時」高精度測位が求められるフィールドで大きな価値を発揮します。


RTKやSLASなど他方式との比較

高精度測位を実現する方式はCLAS(PPP-RTK)のほかにも存在します。代表的なものとして、従来から広く使われているRTK測位や、サブメートル級精度を提供するSLAS(サブメータ級測位補強サービス)があります。それぞれの特徴を、精度や通信要件、可用性、導入性の観点から比較してみましょう。


測位精度: RTKは水平位置でおおよそ2〜3cm程度の高い精度が得られます。CLAS(PPP-RTK)も同程度のセンチメートル級ですが、動的な測位では誤差が10cm弱程度に及ぶ場合もあります。SLAS(SBAS)は数十センチ〜1m程度の精度で、RTKやCLASと比べると精度は劣ります。

通信要件: RTKは基地局との無線通信やインターネット経由のネットワーク通信が必須です。一方、CLASとSLASはいずれも衛星からの一方向通信で補正情報を受け取るため、地上の通信インフラは不要です。

可用性とカバー範囲: RTKは基地局から20〜30km程度の範囲でしか使えず、ネットワーク型RTKも携帯圏内でなければ利用できません。CLASとSLASは、日本の領域全域(ほぼアジア・オセアニアの一部)で衛星視界がある限り利用可能です。特にCLASは日本上空に最適化されており、地域に関係なく均一な精度が期待できます。

導入のしやすさ: RTKを使うには高価な基地局機器や有料の補正サービス契約、通信端末の準備などが必要で、運用にも専門知識が求められます。CLASは対応受信機さえ用意すれば、自動的に補正信号を受信できるため運用は比較的容易です(初期投資は必要ですが、運用コストは低く抑えられます)。SLASはGPS受信機が標準で対応している場合が多く、追加の設備投資なしで利用可能ですが、得られる精度が限定的であるため用途も限定されます。


以上のように、RTK・CLAS・SLASそれぞれに長所短所があります。最高レベルの精度や瞬時の測位には依然としてRTKが有利な場面もありますが、通信環境を問わず広域で使えるCLASの利便性は革新的です。また、精度要求が緩い用途であれば、手軽に使えるSLASで十分なケースもあるでしょう。現場のニーズに応じてこれらを使い分けることで、効率的かつコスト効果の高い位置情報活用が可能になります。


現場でのCLAS活用例

通信インフラ不要で高精度なCLASは、様々な分野の実務現場で活用が期待されています。その一部をご紹介します。


農業分野での自動操舵

広大な農地でトラクターやコンバインを自動運転させるスマート農業の現場では、走行経路のズレを数cm以内に抑える高精度測位が欠かせません。従来は基地局を設置するRTK方式が主流でしたが、山間の圃場や電波の届かない農場では運用が難しいケースもありました。CLASを利用すれば、農場が通信圏外でも準天頂衛星から補正を受け続けられるため、安定した自動操舵が可能となります。実証実験では、CLAS対応のGNSS受信機を搭載したトラクターが、インターネット接続なしで直線航行の精度を維持できることが確認されています。これにより、施肥や播種の重複・ムラを防ぎ、生産効率を向上させることが期待できます。また、農業用ドローンによる精密散布など、空中からの農作業支援にもCLASの高精度が役立ちます。


建設・測量現場での位置出しと施工管理

土木建設の世界でも、設計図通りに施工を行うためにセンチメートル級の位置決めは重要です。従来はトータルステーションやRTK-GNSSを用いて杭打ち(位置出し)や出来形確認を行っていました。CLAS対応のGNSS機器を使えば、基地局を設置せずとも現場で即座に測量作業を開始できます。例えば建設機械のガイダンスや、道路工事における基準点測量でCLASを活用すれば、煩雑な基準出し作業が効率化します。最近では、タブレットやスマートフォンと高精度GNSSを組み合わせ、図面上の設計ラインを現地にAR表示してチェックするといった先進的な事例も登場しています。CLASで取得した正確な位置座標を基にすれば、現場の状況をデジタルに記録・共有し、品質管理や進捗管理を高度化することが可能です。通信環境を気にせず測位できるCLASは、山間部のトンネル工事や地方のインフラ工事など、あらゆる建設現場で有用でしょう。


災害時の測量・調査への活用

地震や土砂崩れなどの災害現場では、一刻も早い状況把握と対応が求められます。しかし被災地では通信が途絶している場合も多く、従来のネットワークRTKによる測位が使えない場面も想定されます。CLASは衛星経由で補正情報を取得できるため、こうした災害対応の測量にも心強いツールとなります。具体例として、大規模地震後の地殻変動測定や崖崩れ箇所の地形測量などで、調査員がCLAS対応GNSS機器を携行すれば、通信圏外でも正確な位置データを取得できます。ドローンを飛ばして被災状況の空撮を行う際にも、CLAS対応の受信機を搭載すれば、取得画像に高精度な測位タグを付与して正確な地図を迅速に作成できます。災害時は時間との戦いですが、事前に用意したCLAS対応機器があれば、現地でインフラを構築する手間なく即座に測位が開始できるため、初動調査のスピードアップに繋がります。


林業・森林管理での測位

森林内での測量やGISデータ収集も、CLASの活躍が期待される分野です。山林では携帯電話が圏外となる場所が多く、従来はスタンドアロンのGPSで数mの誤差を許容して境界確認や植生調査を行っていたケースが一般的でした。今後、軽量なCLAS対応受信機とタブレット端末を組み合わせれば、森林の区画測量や資源管理にセンチメートル単位の精度を持ち込むことが可能になります。例えば、広葉樹林の間伐位置を精密に記録したり、森林内の測量標を設置せずにGNSSだけで境界を確定したりといったことも容易になります。樹木の枝葉による電波遮蔽が全くない開けた環境ほどではないにせよ、上空の準天頂衛星が高仰角から補正信号を届けてくれるため、標高の高い山間部でも安定した測位を支援してくれます。人力での測量作業が困難な険しい森林でこそ、通信フリーで使えるCLAS測位の価値が発揮されます。


準天頂衛星測位の今後の展望

日本の準天頂衛星システムとCLASによるセンチメートル級測位は、今後さらに進化していく見通しです。まず、前述の通りQZSSの衛星は7機体制へ増強されようとしています。2020年代後半にはそれ以上の増備計画も検討されており、衛星測位の信頼性・利便性は一層向上するでしょう。衛星数が増えることで、1機あたりの負担が減り複数衛星から同時に補正信号を受信できる可能性もあります。そうなれば、現在課題となっている初期収束時間の短縮や、遮蔽下での補正維持性能の向上など、サービス品質のさらなる改善が期待されます。


次に、ユーザー側の受信機技術の進化です。高精度GNSS受信機やアンテナの小型化・低価格化が進めば、CLASの利用ハードルは著しく下がります。例えば、将来的にスマートフォン自体がマルチバンドGNSS対応となり、直接CLAS信号を処理できるようになれば、誰もが手持ちの携帯端末でセンチメートル測位を享受できる時代が来るかもしれません。現時点でも、スマホに装着できる小型のCLAS対応デバイスや、タブレット連携型の高精度測位ソリューションが登場し始めています。今後は民生用ドローンや自動走行車両など、市販の移動体にもCLAS対応GNSSが搭載され、高精度測位が社会インフラの一部として当たり前に組み込まれていくでしょう。


さらに、CLASを含む高精度測位は、社会インフラとの連携によって新たな価値を生み出します。たとえば、自動運転システムでは高精度な自己位置推定が要となりますが、将来的にQZSSがより多くの衛星で補強信号を送り、信頼性・即応性が高まれば、車両や船舶の自律走行支援にも活用領域が広がります。また、都市のスマートインフラでは、道路や鉄道のメンテナンスに高精度GNSSデータを活かして点検や監視を効率化する試みも考えられます。準天頂衛星が提供する高精度な時空間情報は、災害監視ネットワークや気象観測システムと結びついてリアルタイムの安全・安心サービスに寄与することも期待されています。今後、衛星測位と地上インフラが一体となって日本全体を高度にデジタル管理する「空と地の融合」が進んでいくことでしょう。


まとめ:誰でも使える高精度測位へ

衛星から常時受信できるCLASによるセンチメートル級測位は、専門家だけでなく現場の誰もが恩恵を受けられる技術です。基地局や通信を気にせずに高精度GNSSを使えるようになったことで、これまで測量のプロに任せきりだった位置出し作業や、精度が不十分だった農業・林業のGPS利用が大きく様変わりしつつあります。[LRTK Phone](https://www.lrtk.lefixea.com/lrtk-phone)のようにスマートフォンを活用した測位ソリューションも登場しており、CLASに対応したこのデバイスをスマホに装着すれば、誰でも手軽に簡易測量や点検業務を行うことが可能です。LRTKは内蔵バッテリーとアンテナを備え、アプリを入れたスマホさえあれば現場で即座にcm級測位が開始できます。通信圏外対応アンテナによって準天頂衛星からの補正も受信できるため、従来型RTKでは難しかった場所でも高精度を維持できる点が魅力です。こうしたソリューションは、準天頂衛星の利便性を現場に届ける代表例と言えるでしょう。


日本発の準天頂衛星システムとCLASは、高精度測位の新時代を切り拓きました。これからも衛星技術と地上技術の融合により、私たちの暮らしや産業のあらゆる場面で「いつでもどこでも正確な位置」が得られる社会が実現していくでしょう。今後ますます進化する準天頂衛星のサービスに注目しつつ、現場への導入を検討してみてはいかがでしょうか。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page