近年、スマートフォンだけでセンチメートル級の精度で測量ができる時代が現実のものとなっています。建設現場や測量の分野では、位置のズレがわずか数センチでも品質や安全性に大きく影響するため、高精度な測位技術が求められてきました。従来は熟練の測量士が高価な機材を使いチームで行っていたセンチ精度の測量が、今やスマホと小型デバイスの組み合わせで誰でも手軽に行えるようになりつつあります。その背景にあるキーテクノロジーがVRS(Virtual Reference Station、バーチャル基準点)と呼ばれるGNSS測位の技術であり、そしてその技術を活用した新しいRTKシステムとして注目を集めているのがLRTKです。
本記事では、初心者にもわかるようにまずVRSとは何かを解説し、従来技術との比較やRTKとの違いについて説明します。さらに、VRSがもたらすメリットと、それを活用してスマートフォンでセンチ精度測位を実現するLRTKの仕組みを紹介します。LRTKの特長(精度・コスト・サイズ・操作性)や主要な機能(点群スキャン、AR表示、測位写真、杭打ち誘導など)を具体的に見ていき、土木・測量業務での活用事例と導入効果についても触れます。記事の最後では、LRTKを使った簡単な測量手順を紹介し、この新技術を導入するメリットについてまとめます。
VRSとは何か?初心者にもわかる基礎解説
まずVRS(Virtual Reference Station、仮想基準点)とは何でしょうか。簡単に言えば、GPSをはじめとするGNSS測位の誤差を補正して高精度化するための手法の一つです。私たちが普段スマホやカーナビで使っているGPSによる位置測定(単独測位)は、一般的に誤差が数メートル程度あります。建設や測量の現場で必要とされるセンチメートル単位の精度には、このままでは足りません。そこで登場するのがRTK(リアルタイムキネマティック)と呼ばれる高精度測位技術です。RTKでは、基準となる位置を正確に把握している固定局(基地局)と、測定したい移動局(ローバー)の2台のGNSS受信 機を用意し、同じ衛星からの信号を同時に受信します。基準局が自分の正確な位置と受信した衛星信号の差から誤差を算出し、その補正情報をリアルタイムで移動局に送信することで、移動局側は測定誤差を打ち消し、数センチの精度で自分の位置を特定できるようになります。
しかし従来型のRTK測位には弱点もありました。それは「高精度な測位を行うには、基準局を測量現場の近くに設置しなければならない」という点です。基準局と移動局の距離(基線長)が離れるほど、大気による信号遅延などの誤差が両局間で共有できず補正しきれなくなるため、RTKでは通常、基準局を数km以内という近距離に置く必要がありました。このため、測量現場ごとに自前で基地局を据え付けたり、場合によっては測量専門の外部業者に依頼したりする手間とコストがかかっていたのです。
そこでこの課題を解決するために生まれたのがネットワーク型RTKと呼ばれる手法で、その代表的な方式がVRS方式(バーチャル基準点方式)です。VRSでは、あたかもユー ザのすぐ近くに仮想的な基準局があるかのように補正データを作り出せます。具体的には、国や地域に多数設置された既知点(電子基準点)のネットワークを利用し、ユーザ(移動局)の大まかな現在位置情報をもとに、周辺の複数の基準局のデータをサーバ側で統合解析します。そしてユーザ近傍に「仮想の基準局」を計算上設定し、その仮想局で受信したであろう衛星信号データを生成して移動局へ配信するのです。移動局(ユーザ側)から見ると、自分のすぐ隣に基準局があるのと同じ状態になるため、距離による誤差の影響がほとんどなくなり、広いエリアで均一にセンチメートル級の精度が得られるようになります。
VRS方式の補正情報はインターネット回線経由で配信されます。一般的にNtripと呼ばれるプロトコルを用いて、移動局の受信機(あるいはそれに接続したスマホなど)が携帯通信網を通じて補正データをリアルタイムに受け取ります。こうして、現地に物理的な基地局を置かなくても、通信圏内であればどこでも1台の受信機だけでRTK測位ができるようになったのがVRSの画期的な点です。
RTKとVRSの違い – 従来技術との比較
前述のように、従来型のRTKとネットワーク型RTK(VRS)には運用方法に大きな違いがあります。ここでポイントを整理してみましょう。
• 基準局の設置: 従来の単独RTK測量では、現場付近に自前の基準局を設置する必要がありました。一方、VRS方式ではユーザ近傍に仮想基準点が設定されるため、自前の基地局は不要です。受信機(ローバー)1台だけで高精度測位が可能になります。
• 測位精度の範囲: 単独RTKでは基準局から離れるにつれて精度が低下します。例えば数十kmも離れるとセンチ精度を維持することは難しくなります。VRSでは常に近傍に仮想基準点がある前提なので、サービス提供エリア内であればどこでも均質な精度が得られます(広域でも数cmの誤差に抑えられます)。
• 初期設定と手間: 単独RTKでは基準局を据え付けたり座標を既知点に合致させる作業が必要で、測量開始までの準備に時間と人手がかかりました。VRSではインターネット経由で補正データを取得するため、受信機の電源を入れて通信を確保すれば短時間で測位を開始できます。準備の手間が大幅に削減 され、ワンオペレーションで即測量に取りかかれます。
• コスト面: 従来は高精度測位のために2台一組の高価なGNSS受信機(基準局と移動局)が必要でした。VRS利用の場合、移動局側の受信機のみを用意すればよく、機材コストを削減できます。ただし補正情報を受け取るサービス利用料や通信費は発生します。それでも機材費・人件費と比較してトータルコストを抑えられるケースが多いです。
• 従来技術との比較: なお、RTKが登場する以前は、光学式のトータルステーションや水準測量といった手法で高精度な位置出し・高さ測定を行っていました。これらは精度は高いものの作業に人手と時間がかかり、広範囲の測量には不向きでした。RTKおよびネットワーク型RTKの普及によって、こうした従来手法では数日かかった測量作業が飛躍的に効率化されています。
このように、VRSはRTKの弱点を補い「誰でも・どこでも・すぐに」センチ精度測位を可能にする技術と言えます。実際、日本国内では国土地理院が整備した約1,300か所の電子基準点(GNSS連続観測システム)を利用したネットワーク型RTK補正 サービスが提供されており、それを活用することで測量者は現場に基準局を置かずともリアルタイムに世界測地系座標(JGD2011など)の精密な値を取得できます。さらに民間事業者による有料のVRSサービスも普及しており、携帯電話網が届く範囲であれば日本全国どこでも安定したセンチメートル級測位が行える時代になっています。
VRSがもたらすメリットとLRTKによる実現
それでは、こうしたVRS技術の登場によって具体的にどのようなメリットが現場にもたらされるでしょうか。そしてLRTKはそのメリットをどのように活用しているのでしょうか。
VRSの主なメリット:
• 一人で高精度測量が可能: VRSのおかげで、一人の作業員が受信機1台を持ち歩くだけでセンチ精度の測量ができます。重い三脚や大きな装置を担いで既知点を設置するといった負担がなくなり、現場の省力化に直結します。
• 即時かつ広域に安定した精度: エリア内であればどこでも均一な精度が得られるため、広範囲の測量や連続した移動測量でも高精度を維持できます。移動のたびに基準局を据え直す必要もありません。結果として作業効率が飛躍的に向上します。
• 座標系の一貫性: VRSサービスを使うことで、観測データは自動的に全国共通の測地系座標に基づく値となります。基準局ごとにローカル座標を後で変換する手間が省け、データの一貫性・信頼性が高まります。
• 機材コストと運用コストの削減: 基準局用の高価な機器を複数揃える必要がなくなり、初期投資を抑えられます。また、複数の現場で同時に測量する場合でも、それぞれがネットワークから補正を受ければよいので、機材や人員を融通する手間も減ります。
こうしたメリットを最大限に享受するためには、VRSからの補正情報を手軽に受信できる環境が重要です。ここで登場するのがLRTKというソリューションです。LRTKはスマートフォンと専用の小型GNSS 受信機、およびアプリから構成されるスマホ連携型のRTK測位システムで、VRS技術を現場で手軽に使いこなすことを可能にしています。スマホのモバイル通信を介してリアルタイムに補正データ(VRS情報)を受信し、高精度測位を実現するよう設計されているため、特別な無線機や大型装置を用意しなくても「スマホ+LRTK」だけでVRSによるセンチ精度測位ができるのです。
スマホで使えるRTKシステム「LRTK」とは
それでは、このLRTKとは具体的にどのようなものなのでしょうか。LRTKは東京工業大学発のスタートアップ企業であるレフィクシア社が開発した、ポケットサイズのRTK-GNSS受信機とスマートフォン用アプリからなる測量システムです。コンセプトは「現場で誰もが使えるポケットサイズのRTK測量機」であり、その名の通り小型・安価・簡単操作を追求して開発されました。iPhoneやiPadなどのスマートフォン端末に取り付けて使用する設計で、重量は約125g、厚さ13mm程度という薄型軽量デバイスに高性能なGNSSアンテナ・受信機、バッテリー、通信モジュールが一体化されています。この名刺大サイズの受信機をスマホに装着して電源を入れるだけで、そのスマホがセンチメートル精度の測量機器へと早変わりします。
LRTKデバイスはBluetoothやWi-Fiでスマートフォンとワイヤレス接続し、スマホ側の専用アプリを通じて操作します。測位に必要な衛星からの信号受信はLRTKデバイス本体が行い、インターネット経由の補正情報受信やクラウドへのデータ送信はスマホ側が担うため、ケーブル接続も不要で非常にスマートです。
LRTKの主な特徴:
• 高精度: LRTKはマルチ周波数対応の高性能GNSS受信機を搭載しており、VRS補正を利用したRTK測位で水平1〜2cm・垂直3cm程度の精度を実現します。実際に一級水準点測量用の高級GNSS機器と比較したテストでも、同一点の測位結果が数ミリの差に収まるほど高い精度が確認されています。これは従来数百万円クラスの機材でなければ得られなかった測位精度と遜色ありません。
• 小型・軽量: 前述のようにポケットに収まる超小型サイズで、現場作業員が常に携帯していても負担になりません。専用のスマホケースや一脚(オプション)を用いることで、現場で素早く取り出して片手で測量するといった運用も可能です。従来の据え置き型GNSSやトータルステーションとは比較にならない取り回しの良さです。
• 低コスト: LRTKは価格も非常にリーズナブルに設定されています。高精度GNSS機器というと従来は高額でしたが、LRTKは1人1台配備できることを目指した価格帯になっており、組織内で複数導入しても予算を圧迫しにくいのが魅力です。安価だからといって精度が劣ることはなく、前述の通りプロ仕様機器と肩を並べる性能を持っています。
• 簡単な操作性: 専門的な設定や難しい操作を極力排した設計で、測量の専門家でなくとも直感的に扱えます。スマホアプリの画面上で「測位開始」「測点記録」といったボタンを押すだけで座標が取得でき、必要な座標変換(平面直角座標系やジオイド高への変換など)も自動で行われます。メモを入力したり写真を添付したりすることもでき、現場でノートを取る代わりに全てスマホで完結します。
• 堅牢性と信頼性: 建設現場での利用を想定し、防塵・防水性能や耐衝撃性を備えたタフな構造になっています。雨天や粉塵が舞う中でも気にせず使用でき、現場機器として安心して持ち出せる耐久性があります。内蔵バッテリーで長時間駆動できるため、作業中に電源を探す必要もありません。
これらの特徴により、LRTKは「RTK測位の民主化」とも言える革新性を持ったツールとなっています。高価で専門家しか扱えなかったセンチ精度測量を安価で誰もが扱える身近なものにし、現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を後押しする存在です。実際、LRTKを現場に導入したところ「毎日の業務が大きく変わった」「測量待ちの時間が減り作業がスムーズになった」など好評の声が上がっており、一部では「1人1台の静かなブーム」が起きているとも言われています。
LRTKの主な機能と現場でできること
LRTKは単に点の座標を測るだけでなく、現場の様々なニーズに応える多彩な機能を搭載しています。スマホアプリとクラウドサービスを連携させることで、従来別々の機材や手法で行っていた作業を1台でこなすことが可能です。ここではLRTKが提供する主な機能をいくつか紹介します。
• 単点測位とデータ記録: 最も基本となる機能は、任意の地点の正確な座標を記録する単点測位です。LRTKを測りたい地点に当ててスマホでボタンを押すだけで、緯度・経度・標高あるいは平面直角座標値を取得できます。測点名や時間、GNSSの受信状態も自動で記録され、現場メモも電子的に残せます。記録されたデータはその場でスマホ画面上の地図に表示され、クラウドにアップロードしてオフィスと即時共有することもできます。紙の野帳に手書きする手間が省け、測り忘れや記録ミスも防止できます。
• 連続測位・軌跡計測: LRTKは移動しながら連続的に位置を測定して軌跡(トラッキングデータ)を取得することも可能です。例えば歩行や車両で移動しつつ1秒間に最大10点の高精度座標を記録でき、これを平面図や縦断面図として確認できます。階段や道路の縦断形状をその場で把握したり、掘削や埋め戻しの進捗を可視化したりと、現場検測に役立ちます。取得した軌跡データはCSVやPDFで出力でき、そのままCAD図面に取り込むこともできます。
• 高精度点群スキャン: iPhone/iPadに搭載されたLiDARセンサー(光測距による3Dスキャン機能)とLRTKを組み合わせることで、グローバル座標付きの3次元点群データを手軽に取得できます。通常、スマホ単体のLiDAR計測ではスキャン中に位置がずれて地面が歪んでしまったり、取得した点群に測位座標が付かないという課題があります。しかしLRTKが常に自己位置を高精度に把握しているため、スキャン中の点群の歪みを抑え、取得した全点群に正確な座標を付与できます。ポケットから取り出したスマホ1台で現況の3D点群を取得し、任意の2点間距離や体積をその場で測定する、といった芸当も可能です。取得した点群データはクラウド上で3D表示したり、ダウンロードしてCADやGISソフトで利用できます。
• 測位写真(写真測量機能): LRTKを使って写真撮影を行うと、撮影した写真にセンチ精度の位置座標とカメラの向き(方位)が自動でタグ付けされます。例えば構造物のひび割れや施工後の状況をスマホで撮影すると、その写真に対応する撮影位置(緯度経度・高さ)と方向が記録され、後から地図上で「どこからどちらを向いて撮った写真か」を一目で確認できます。従来はデジカメで撮った写真を紙の図面に貼り付けて位置を記入したり、膨大な写真を整理するのに苦労していましたが、LRTKの測位写真機能により現場調査の記録作業が大幅に効率化します。クラウド上では撮影地点ごとに写真を時系列で管理でき、経年変化の比較も簡単です。
• 杭打ち誘導(座標ナビゲーション): 測量で得た座標を活用して、目的の地点まで端末を誘導する機能も備わっています。あらかじめ狙いの目標点座標をアプリに設定しておけば、現地でスマホ画面のナビ表示に従って移動するだけで、指定の座標位置にぴたりと立つことができます。これは杭打ち作業や境界標の設置、定点観測地点の再訪などに非常に便利です。目的地に近づくと画面表示がより精密な案内に切り替わり、最後はスマホを見ながら数センチの誤差まで位置合わせが可能です。前回調査した地点に後日別の担当者が行く場合でも、LRTKの座標ナビを使えば迷わず同じ場所を特定でき、調査結果の比較も確実になります。
• ARによる可視化: LRTKは位置精度を生かしたAR(拡張現実)機能も充実しています。例えば取得した点群や設計図から生成した3Dモデルを現地のカメラ映像に重ねて表示し、設計データを実際の地形上に投影するといったことが可能です。通常のスマホARでは位置合わせに誤差が生じたりマーカーが必要な場合もありますが、LRTKの高精度な 測位によって、マーカー無しでもモデルを正確な座標位置に配置でき、ユーザーが歩き回ってもモデルの位置がズレにくい安定したAR表示を実現します。これにより、現場で関係者と完成イメージを共有したり、設計と現況の食い違いをその場で確認したりといった活用が期待できます。
• 屋内・遮蔽下での測位: 橋梁の下やトンネル内部など、GNSS信号が直接届かない場所で位置を測りたい場合もあります。LRTKには一時的に衛星測位が途切れても相対位置を維持する機能があり、例えば橋の下に入る前に位置を固定しておき、遮蔽環境下でもその位置からの相対移動を推定して屋内での測位を可能にします。完全なGNSS遮断下では精度は落ちますが、短時間であれば数cm〜数十cm程度の誤差で位置を記録でき、従来諦めていた箇所の測位・撮影記録にも役立ちます。
• クラウド連携とデータ共有: LRTKで取得した全てのデータ(座標、写真、点群、メモ等)はクラウドサービスと連携して管理できます。現場からワンタップでクラウドにアップロードすれば、オフィスのPCから即座にデータを閲覧・ダウンロード可能です。URLを発行して関係者と共有する機能もあり、パスワード付きのリンクを送るだけで発注者や協力会社と成果を共有できます。これにより、測量結果の確 認や図面への反映がリアルタイムで行え、現場と事務所間の情報伝達がスムーズになります。
この他にもLRTKには、写真から高精度3Dモデルを生成するフォトグラメトリ機能や、取得した点群と設計3Dデータを重ね合わせて土量差分を自動計算するといった高度な機能まで搭載されていますが、主要なものは以上の通りです。要するに、LRTKさえあれば現場の測位・計測・記録・共有までをオールインワンでこなせると言っても過言ではありません。
土木・測量業務におけるVRSとLRTKの活用事例と導入効果
それでは、実際の土木・測量業務ではVRSとLRTKがどのように活用されているのか、いくつか事例と導入効果を見てみましょう。
• 施工現場での杭打ち・出来形管理: 従来、施工現場で構造物の位置出し(墨出し)や杭打ちを行う際には、測量班がトータルステーションで位置を出し、作業員がその指示に従って杭を設置するという手順が一般的でした。LRTK導入後は、施工管理技士が自らLRTKで現場に出て、図面上の座標をもとに杭打ち位置まで誘導を受けてマーキングし、そのまま杭を打つことができます。一人で杭打ち作業の測点出しから確認まで完結するため人手が減り、測点間違いも起きにくくなりました。出来形管理でも、施工後すぐにLRTKで仕上がり位置を測定してクラウドで共有すれば、事務所で即チェックが可能となり手戻りの防止につながっています。
• 図面作成・地形測量: 設計用の図面作成や現況地形の把握にもLRTKは力を発揮しています。例えば道路設計のための現地測量では、従来は多数のポイントをチームで測って数日かけて図面化していました。LRTK導入後は担当者が一人で必要な地点を次々測位し、その場で平均断面や距離を算出できます。点群スキャン機能で地形全体を計測しておき、後から必要な断面を切り出すことも可能です。測量作業のスピードが飛躍的に向上し、図面作成や数量計算にかかる日数が大幅短縮されました。
• インフラ点検・維持管理: 橋梁やトンネル、道路などのインフラ点検業務では、ひび割れや変位の位置を正確に記録することが重要です。LRTKを搭載したタブレットやスマホで点検箇所を撮影・測位すれば、異常箇所の座標を即座に取得して写真に紐づけられます。例えば従来は「橋脚から東に5mの位置に幅◯mmのひび割れ」などと記録していたものが、LRTKなら「緯度経度◯◯の高さ◯m地点にひび割れ」といった客観的な位置データとして残せます。これにより次回点検時に同じ箇所を容易に見つけられるだけでなく、経年変化を定量的に比較して補修計画に活かすことも簡単です。点検結果のデジタル化が進み、インフラ維持管理の効率と精度が向上しています。
• 災害対応・緊急測量: 地震や豪雨などの災害現場では、一刻も早く被害状況を把握し共有することが求められます。LRTKは小型で機動性が高いため、災害直後の被災地にも容易に持ち込んで測量できます。実際、ある地震災害では現地の携帯電話基地局がダウンしインターネットが使えない状況でしたが、LRTKが日本の準天頂衛星「みちびき」からのセンチメータ級補強信号(CLAS)を直接受信して高精度測位を実現し、被害状況の記録に貢献しました。大きな機材を運び込めない場所でも、ポケットサイズのLRTKなら1台で現地の測位と写真記録が行え、クラウド共有機能で本部との情報共有も迅速に行えます。災害対応においてもLRTKは小さな巨人として威力を発揮しています。
以上のように、VRSとLRTKの組み合わせは測量・施工・維持管理といった幅広い現場業務に変革をもたらしています。その導入効果は、測量作業時間の短縮、人員削減によるコスト低減、データ精度の向上、そして現場とオフィス間の情報連携強化など多岐にわたります。国土交通省が推進する*i-Construction*(ICT施工)の流れにも合致した技術であり、デジタル化による生産性向上を目指す企業や自治体にとって最適なソリューションといえるでしょう。
LRTKのセットアップと使い方 – VRS接続の流れ
ここまで読んで、LRTKの便利さは理解できたけれど「実際の使い方が難しそう」と感じる方もいるかもしれません。ですがご安心ください。LRTKのセットアップと測量開始までの手順は非常にシンプルです。最後に、LRTKを使った測量の基本的な流れをステップごとに紹介します。
• デバイスの装着: 現場で測量を開始する際、まずLRTK受信機本体をスマートフォンに装着し、電源を入れます。 専用ケースに収めてワンタッチで取り付けることができ、準備に手間はかかりません。
• アプリと接続: スマホでLRTK専用アプリを起動し、Bluetooth経由で受信機に接続します。接続が成功すると端末から音や通知で知らせてくれます。
• 測位の開始: アプリ上で測位を開始すると、受信機が衛星からの信号を捉え始めます。起動直後の段階では衛星単独測位の状態で、精度はおおよそ±数メートル程度です(これをノンRTKもしくはシングル解と呼びます)。
• VRSへの接続: アプリの設定画面から補正情報サービス(VRS)に接続します。事前にサービスのアカウント情報を登録しておけば、ボタン一つでネットワークに接続可能です。スマホがインターネットに繋がっていれば、自動的に周辺の仮想基準点からの補正データを受信し始めます。
• 高精度測位(Fix解): 補正情報の受信後、数十秒ほどで測位の精度が飛躍的に向上します。アプリ上のステータス表示が「Float(浮動解、精度中程度)」から「Fix(固定解、最高精度)」に変われば準備完了です。これで測位誤差は±2〜3cm以内に収まっている状態となります。
• 測量の実施: あとはアプリ上の「測点取得」「連続測位」などのボタンを押していくだけです。単点測位であれば測りたい地点でボタンをタップすれば座標が記録されます。連続測位モードにすれば歩きながら自動で軌跡を記録してくれます。記録が終わったら「クラウド送信」ボタンでデータをアップロードし、オフィスの同僚と即共有することもできます。
以上のように、複雑な設定や難解な操作は一切ありません。現場に到着してから測量を始めるまで、慣れれば1分とかからず高精度測位が可能になります。専門の測量機材を据え付けて測る場合と比べ、圧倒的なスピードと手軽さであることがご理解いただけるでしょう。
おわりに – LRTKで始めるスマート測量革命
スマホと小型デバイスでセンチメートル精度の測量ができる――これは一 昔前には考えられなかった驚くべき進歩です。VRS技術の普及と、それを最大限に活用するLRTKの登場によって、測量のハードルは確実に下がりつつあります。現場の施工管理者や作業員が自らのスマホ片手に必要な時にサッと測量を行い、即座にデータを共有できるようになれば、これまでの「測量待ち」「記録整理」の非効率が解消され、現場全体の生産性が向上するでしょう。
例えば、朝礼前に現場の要所をLRTKでサッと測定し、クラウド上の地図に昨日までの施工範囲がプロットされた画像を共有するといった使い方も可能です。重機オペレーターにとっても、LRTKで示された杭打ち位置に従えば誤差なく施工できるという安心感があります。日常業務の中にLRTKを取り入れることで、「誰でもできる高精度測量」が当たり前のものとなり、現場のDXが加速していくことでしょう。
高精度測位はこれからの建設・測量業界において欠かせない基盤技術です。LRTKはその技術を身近なスマホに融合させた画期的なツールとして、大きな可能性を秘めています。もし皆さんの現場で測量作業の効率化やデジタル化に課題を感じているのであれば、このLRTKを導入してみる価値は十分にあると言えます。最先端のVRS×スマホ技術で、現場の作業を一歩先のステージへと進化させてみませんか?
詳しい製品情報や導入事例は[LRTK公式サイト](https://www.lrtk.lefixea.com/)にも掲載されています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

