目次
• はじめに
• 点群土量計算のメリットと高精度化
• 点群データ取得の手法と課題
• クラウド処理による即時土量算出
• データ共有と可視化で進む現場DX
• リアルタイム土量管理が生む工期短縮
• スマホ×GNSSで実現する手軽な高精度測量(LRTK)
• おわりに
• FAQ
はじめに
土木工事や造成工事で発生する土量計算(掘削・盛土に伴う土砂量の算出)は、施工管理において欠かせない重要工程です。従来は工事前後の地盤を測量し、横断面図を作成して平均断面法などで体積を計算する方法が一般的でしたが、この手法は人力作業が 中心のため大きな労力と時間を要し、現場が広範囲になるほど精度のばらつきや作業負担も問題となっていました。そこで近年注目されているのが、3次元の点群データを活用した土量算出です。現場をスキャンして得られる膨大なポイントクラウド(点の集合体)から地形のモデルを作成し、体積を直接計測することで、従来よりも迅速かつ高精度に土量を把握できるようになります。本記事では、この「点群土量計算」をクラウド技術で即時化する最新手法について解説し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進による施工管理革新と工期短縮の可能性をご紹介します。
点群土量計算のメリットと高精度化
ポイントクラウドを用いた土量計算には、従来手法にはない多くのメリットがあります。最大の利点は計測精度の向上です。点群データは地表面の微細な凹凸まで無数の点で記録しているため、地形をほぼ実物通りに再現できます。例えば掘削工事であれば、施工前の地盤点群と掘削後の地盤点群を比較することで、削り取られた土砂の体積(掘削量)を直接算出できます。断面法のように限られた測点間を補間す る必要がなく、地形の起伏を余すところなく反映した正確な数量算出が可能になるのです。また一度取得した点群データからは、計算エリアや基準面を後から変えて何度でも体積を算出できます。追加の測量をせずに別条件で再計算や試算ができるため、予測シミュレーションにも柔軟に対応できます。こうした特長から、点群による土量計算は精度と効率の両面で優れており、施工管理の新たなスタンダードになりつつあります。
もっとも、高精度な体積算出を行うには点群データ自体の品質確保が重要です。十分な密度で測り残しのない点群を取得すること、測点の座標が正確に基準座標系に合致していること、重機や樹木といった不要物の点群を適切に除去・処理すること――これらを徹底することで誤差の小さい土量計算が実現できます。実際に点群から算出した出来形数量(出来形=施工後の形状)が、従来の人力測量による算出値と比べて誤差約1%程度に収まったという現場報告もあり、条件を満たせばポイントクラウドによる土量算出は信頼に足る精度を示します。このように精度と効率を両立できる点群土量計算は、まさに現場のデジタル化を支える基盤技術と言えるでしょう。
点群データ取得の手法と課題
点群データの有用性が認識される一方で、「どうやって手軽に高品質な点群を取得するか」が現場の課題でした。かつては地上型3Dレーザースキャナや測量用ドローンなど専門機器を用い、測量士を含むチームで計測を行う必要がありました。しかし近年、写真測量(フォトグラメトリ)技術の進歩と普及により、施工管理担当者や現場スタッフ自身がスマートフォンやドローンを使って点群データを取得するケースが増えてきています。フォトグラメトリとは、カメラで撮影した多数の写真から対象物の3D形状を復元して点群化する技術です。ドローン空撮なら上空から短時間で広範囲を撮影でき、高低差の大きな地形や危険な斜面でも人が立ち入ることなく測量できます。スマホによる写真撮影でも、被写体をさまざまな角度から十分な枚数撮れば専用ソフトで高密度な点群モデルを生成可能です。高価なレーザースキャナを使わずとも身近なカメラで点群化できることは現場DXを進める上で大きなメリットとなり、各所で注目されています。
しかし、フォトグラメトリによる点群取得には課題もいくつか存在します。まず精度が撮影条件に左右されやすい点です。写真の解像度や露出が不足していたり、被写体に強い日陰や反射があると、点群生成の過程で誤差や欠損が生じやすくなります。また地表面をスキャンしたつもりでも、草木や重機・ゴミなど余計な物体まで写り込むと、生成後に地面だけを抽出する手間が増えます。さらに大きな問題として、データ処理に時間がかかる点が挙げられます。撮影自体は数分〜十数分で終わっても、その後の写真解析(点群化)に高性能PCやオンラインサービスで数時間を要することが珍しくありません。従来のやり方では測量→データ処理→土量算出までタイムラグが生じ、その場でリアルタイムに結果を得るのは難しいのが実情でした。
他にも運用上のハードルとして、ドローンを飛ばすには航空法に基づく飛行許可申請や操縦技能が必要になること、スマホ単体の写真測量ではGPS誤差により生成モデルが現実の座標系とずれてしまう恐れがあることなどがあります。せっかくスマホで点群化できても、その点群がどの高さ・位置なのか不明確では出来形(土工の出来上がり形状)の数量算出に使えません。精度保証のため には基準点となる標定点(既知座標のターゲット)を別途設置し、それを点群に合致させるといった一手間が必要でした。このように現場で点群を取得するポテンシャルは高まってきたものの、「誰でも簡単に高精度な点群計測を現地完結できる」理想を実現するには、従来技術だけではいくつか課題が残っていたのです。
クラウド処理による即時土量算出
こうした問題を解決し、その場で点群土量計算を完結する鍵となるのがクラウド処理技術です。写真解析や体積演算のように時間と計算資源を要する処理でも、クラウド上の強力なサーバーを使えばスピーディーに実行できます。現地で撮影した大量の写真データもネット経由で即座にアップロードし、クラウド側で高速に点群生成・体積算出を行えば、従来は半日~数日かかっていた土量計算をその日のうちに完了させることが可能になります。例えばドローンで15分ほど現場空撮した後、クラウド処理を活用して撮影当日に出来形点群モデルを取得・土量算出まで終えられたという報告もあります。これにより、重機施工が終わった直後にその出来形体積を確認するといったリアルタイムな数量管理が現実のものとなります。
クラウド処理によって得られた結果はインターネット経由で即共有できるため、オフィスに戻ってデータ集計する手間もありません。現場でタブレットやPCからクラウド上の計算結果をすぐ閲覧でき、必要に応じて追加撮影や再計算をその場で行うこともできます。クラウドサービス側で点群データのホストや可視化まで対応していれば、専門ソフトを手元に用意しなくてもブラウザ上で3Dモデルを表示・体積確認が可能です。こうして現場ですぐに土量が算出できれば、たとえば掘削が予定より不足していればすぐ追加で掘る範囲を決め直したり、盛土が設計より多ければ早めに余剰土の搬出計画を立てたりと、工事を中断せず迅速な判断につなげられます。クラウド活用により、点群土量計算は初めて「リアルタイム」の領域に踏み込み、施工管理のあり方を大きく変えようとしています。
データ共有と可視化で進む現場DX
点群データをクラウドで扱うメリットはスピードだけではありません。取得した高精度な3Dデータを可視化・共有し活用することで、現場のDXが加速します。クラウド上にアップロードされた点群モデルは関係者間で容易に共有でき、離れたオフィスや発注者(自治体職員など)もブラウザで現場の3D状況を確認できます。従来は報告書に平面図や断面図を貼り付けて説明していた出来形も、点群データがあればインタラクティブに現場を再現しながら説明することが可能です。例えばクラウドのビューア上で計測範囲の点群モデルを自由に回転・拡大し、任意の断面をその場で表示したり、色分けヒートマップで設計との誤差を示したりといった高度な可視化がワンクリックでできます。こうした視覚的な情報提供によって、現場監督や施工管理者だけでなく発注者や協力業者も直感的に状況を把握しやすくなり、説明や協議にかかる時間も短縮されるでしょう。
また、点群データの活用は報告書作成や帳票出力の効率化にも貢献します。クラウドシステム上で体積計算結果が自動集計され、盛土量・掘削量がすぐ算出されるだけでなく、そのエビデンスとなる3Dモデルや比較図をスクリーンショットとして簡単に取得できます。出来形管理の資料として、これらの画像や数値をレポートに添付すれば説得力の高い報告書が作成できます。手作業で図面を描き起こしたり写真を貼り付けたりする時間を削減でき、デジタルデータをそのまま報告に転用できるのはDXならではです。さらに最近注目されているのが、点群データのAR(拡張現実)連携です。タブレットやスマートフォンのカメラ越しに、取得した点群モデルや設計の3Dデータを現実の風景に重ねて表示することで、出来形の検査や施工チェックを直感的に行えます。例えば施工途中の盛土の上にタブレットをかざし、画面上で設計モデルと現在の地形点群を重ねて色分け表示すれば、どの部分をあと何センチ削るべきか・盛るべきかが一目瞭然です。ARによる視覚支援でミスを防止しつつ、点群計測で得た精密データを現場作業にフル活用できるこの手法は、現場DXの次なる展開として大きな期待を集めています。
リアルタイム土量管理が生む工期短縮
点群土量計測とクラウド即時処理の導入は、工事全体の工期短縮

