top of page

TSを用いた出来形管理要領と従来管理の違い4視点

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均7分30秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

目次

TSを用いた出来形管理要領を理解する前提

視点1 計測作業は手作業中心から座標データ中心へ変わる

視点2 設計値の扱いは図面確認から基本設計データ確認へ広がる

視点3 記録と帳票は転記作業からデータ連携による管理へ変わる

視点4 検査対応は現場確認中心から根拠データを示す運用へ変わる

従来管理が不要になるわけではない理由

導入前に確認したい実務上の注意点

まとめ TS出来形の理解を現場DXにつなげる


TSを用いた出来形管理要領を理解する前提

TSを用いた出来形管理要領について調べている実務担当者の多くは、従来の巻尺、レベル、水糸、丁張りを使った出来形管理と、トータルステーションを使った出来形管理の違いを整理したいと考えているはずです。出来形管理そのものは、施工した構造物や造成形状が設計図書、施工管理基準、特記仕様書などに対して適切な寸法、位置、高さで仕上がっているかを確認し、工事品質を説明するための管理です。その目的は昔から変わりません。しかし、どのように測るか、どのように記録するか、どのように帳票化するか、どのように検査で説明するかは、TSを使うことで大きく変わります。


ここでいうTSとはトータルステーションを指します。ただし、要領で扱うTSは、単に角度と距離を測るだけの機器というより、基本設計データや出来形計測データなどの施工管理データを扱い、出来形管理に必要な計測と確認を行うための出来形管理用TSとして理解することが重要です。従来管理では、現地で高さや幅員、法長、出来形寸法などを個別に測り、その値を野帳や管理表に記入し、後から帳票へ転記する流れが一般的でした。一方、TSを用いた出来形管理では、あらかじめ作成した基本設計データや施工管理データを活用し、現地で取得した座標データを設計値と照合しながら管理します。単に機械が新しくなるのではなく、管理の中心が紙の数値からデータへ移る点が重要です。


TSを用いた出来形管理要領は、工種、発注機関、適用する年度、現場条件によって確認すべき内容が変わる場合があります。近年は、TSだけでなく複数の3次元計測技術を含む要領や監督・検査要領が参照される場面もあるため、実務では必ず対象工事の特記仕様書、施工管理基準、適用される要領類、監督職員との事前協議内容を確認する必要があります。この記事では、特定の年度版や特定の発注者だけに依存する説明ではなく、実務で混同しやすいTSを用いた出来形管理要領と従来管理の違いを、計測作業、設計データ、記録と帳票、検査対応という4つの視点から整理します。これからTS出来形を導入する担当者、施工計画書に管理方法を記載する担当者、若手へ説明する立場の担当者が、現場で判断しやすくなることを目指します。


まず押さえておきたいのは、TSを用いた出来形管理は、従来管理を単純に省略するための仕組みではないということです。適用範囲に該当し、要領に沿って実施する場合には、従来の巻尺やレベルによる一部の計測作業を置き換えられる場面があります。しかし、現場で測る、確認する、記録する、説明するという管理の責任は変わりません。むしろ、測定前のデータ準備、器械設置の妥当性、基準点の確認、設計データの整合確認、測定結果の保存方法など、事前準備とデータ管理の重要性は高まります。従来管理では経験者の現場感覚で補えていた部分も、TSを用いる場合はデータとして整理し、関係者が後から追跡できる状態にすることが求められます。


視点1 計測作業は手作業中心から座標データ中心へ変わる

従来の出来形管理では、管理断面ごとに幅、延長、高さ、法長、厚さなどを個別に測定する考え方が中心でした。現場では水糸を張り、巻尺を当て、レベルで高さを読み、測定者と記録者が声を掛け合いながら数値を確認します。この方法は直感的で、現場の状況を見ながら柔軟に対応しやすい利点があります。小規模な補修、単純な形状、確認点が少ない作業では、従来管理のほうが早く判断できる場面もあります。ただし、測定点が多い工事や、断面形状が複雑な工事では、測る位置の取り違え、読み間違い、記入漏れ、後日の転記ミスが発生しやすくなります。


TSを用いた出来形管理では、現地の測点を座標として取得し、その座標を設計データと照らし合わせる考え方が中心になります。測定点は単なる幅の値や高さの値ではなく、どの測点のどの管理項目に対応する位置なのかをデータ上で関連付けて扱います。例えば、ある管理断面の左肩、センター、右肩といった点を測る場合、従来管理では図面と現地の目印を見ながら測定者が位置を判断しますが、TS出来形では基本設計データや測点情報に基づいて、取得した点がどの設計位置に対応するかを確認しながら進めます。この違いにより、測定作業は現地で寸法を読む作業から、設計位置に対して現地座標を取得する作業へ変わります。


この変化は、現場作業の段取りにも影響します。従来管理では、管理断面の位置を出し、測る項目を決め、測定値を記録すれば、後は事務所で整理する流れになりがちです。TSを用いる場合は、現場へ出る前に座標系、基準点、設計データ、測点名、管理項目、機器内のデータ設定を確認しておく必要があります。現地で機器を据え付けた後も、器械点と後視点の設定、既知点との整合、プリズム高や器械高の入力、測定対象点の選択が正しいかを確認しなければなりません。つまり、測定そのものは効率化しやすい一方で、測定前の準備の質が出来形管理の信頼性を左右します。


TSによる測定の利点は、取得点の位置情報が残りやすいことです。従来管理では、野帳に測点名、幅、高さなどを記録しても、実際にどの位置を測ったかを後から完全に再現することは難しい場合があります。現場写真やメモで補足することはできますが、記録者の表現に依存します。TSを用いた出来形管理では、測定データに座標や測点情報が残るため、どの点をいつ測ったのか、設計値との差がどの程度だったのかを追跡しやすくなります。これは、施工途中の手戻り防止だけでなく、検査時の説明や社内の品質管理にも役立ちます。


ただし、TSを使えば測定ミスが自動的になくなるわけではありません。器械点の設定が誤っていれば、取得する座標全体に影響します。プリズム高や器械高の入力を誤ると、高さ管理にズレが生じます。測点の選択を間違えると、正しい位置を測っていても、別の管理項目として記録されるおそれがあります。従来管理では目で見て気づけるズレが、データ上では一見整って見えることもあります。そのため、TS出来形では、測定作業を効率化するだけでなく、器械設置、データ選択、測定点の意味を理解したうえで操作することが重要です。


視点2 設計値の扱いは図面確認から基本設計データ確認へ広がる

従来管理では、設計値の確認は図面、数量計算書、施工管理基準、現地の丁張りなどを中心に行います。測点ごとの計画高、幅員、法勾配、構造物の寸法を確認し、現場で測った値と比較します。設計変更があった場合は、変更図面や協議記録を反映し、どの図面を正として管理するのかを関係者で確認します。この方法では、図面を読む力と現地での判断力が大きな役割を持ちます。経験豊富な担当者であれば、断面図や平面図を見て、現地で必要な測定点を判断しやすい一方、図面の見落としや古い図面の使用による誤りも起こり得ます。


TSを用いた出来形管理では、設計値は図面に加えて、基本設計データや施工管理用のデータとして扱われます。これは、設計図書の内容を現場計測に使える形へ整理したものと考えると分かりやすいです。道路土工や河川土工などでは、中心線形、縦断、横断、法面、管理断面、測点などの情報が互いに関係しています。TSで出来形を管理するには、これらの設計情報を、現地で測る点と対応できるように準備する必要があります。したがって、TS出来形の設計値確認は、紙やPDFの図面を見るだけでなく、機器や帳票作成に使うデータの中身が正しいかを確認する工程まで含まれます。


ここで重要になるのが、基本設計データの作成段階での照査です。中心線形の起終点、曲線要素、追加距離、横断構成、計画高、法勾配、管理する測点範囲などに誤りがあると、現場で正確に測定しても、比較対象となる設計値が誤っているため、出来形管理としては正しい結果になりません。従来管理では、測定者が図面を見ながら違和感に気づく場合がありますが、TSを用いるとデータ化された設計値を前提に作業が進むため、入力段階の誤りがそのまま管理結果へ影響しやすくなります。データを作った人、照査した人、現場で使う人が別々の場合は、特に確認の抜けが起こりやすくなります。


従来管理との違いは、設計値の見える場所にもあります。従来管理では、設計値は図面上の寸法や標高として見えます。TS出来形では、設計値は画面上の測点情報、断面情報、帳票上の設計値、測定データとの比較結果として表れます。そのため、現場担当者は図面だけでなく、データ上で表示される測点名や管理項目が、実際の図面と一致しているかを確認する必要があります。測点名が似ている、左右の管理点が多い、設計変更前後のデータが混在しているといった状況では、誤ったデータを使って測定してしまうリスクがあります。


また、TSを用いた出来形管理では、設計変更への対応方法も明確にしておく必要があります。従来管理では、変更図面を印刷し直し、野帳の設計値を書き換え、管理表を更新することで対応することが多いですが、TS出来形では、基本設計データや管理データも更新しなければなりません。現場で古いデータを使い続けると、測定結果が設計変更後の条件と一致しないまま残ってしまいます。設計変更が発生したら、どの時点から新データを適用するのか、過去の測定データをどう扱うのか、帳票にどの設計値を反映するのかを整理することが大切です。


このように、TSを用いた出来形管理要領を理解するうえでは、設計データの扱いが従来管理より重くなることを認識する必要があります。TSは現場計測を支援する道具ですが、その前提となる設計データが正しくなければ、管理結果の信頼性は高まりません。実務では、データ作成後に図面との照合を行い、測点、横断、標高、管理項目、単位、座標系を確認し、必要に応じて試測や既知点確認を行うことが望ましいです。データを作る工程を単なる事務作業と考えず、出来形管理の品質を決める重要工程として扱うことが、TS出来形を安定して運用するポイントです。


視点3 記録と帳票は転記作業からデータ連携による管理へ変わる

従来管理で負担になりやすいのが、現場で測った値を整理し、出来形管理表や出来形図、写真帳、検査資料へ反映する作業です。現場では野帳やチェックシートに測定値を記入し、事務所に戻って表計算ファイルなどへ転記し、規格値に対する判定や差分の確認を行います。この過程では、現場での読み間違いだけでなく、数字の転記ミス、単位の取り違え、測点名の入力ミス、左右の取り違え、古い様式への入力といった人的ミスが起こりやすくなります。測定点が少ない場合は大きな問題になりにくくても、管理点が増えるほど確認作業に時間がかかります。


TSを用いた出来形管理では、現地で取得した測定データを、帳票作成や出来形確認に連携しやすくなります。測定値を人が一つずつ読み上げて入力するのではなく、取得データを施工管理データとして扱い、設計値との差分や規格値との関係を確認する流れになります。これにより、転記作業の削減、計算過程の明確化、測定点と帳票の対応関係の整理がしやすくなります。特に、同じ測点を複数回測る場合や、施工段階ごとに確認を重ねる場合は、データとして残ることの意味が大きくなります。


帳票作成の考え方も変わります。従来管理では、帳票は現場測定後に作る成果品という性格が強く、現場作業と事務所作業が分かれがちでした。TS出来形では、測定時点で帳票に必要な情報を意識してデータを取得する必要があります。測点名、管理項目、設計値、実測値、差分、測定日時、測定者、使用した基準点や機器設定など、後から説明に必要になる情報を漏れなく残すことが大切です。データ連携ができるからこそ、現場での測点選択や記録ルールが曖昧だと、後で帳票を整える際にかえって手間が増えることがあります。


TSを用いた管理では、帳票の作成が楽になるという印象だけが先行しがちですが、実際には帳票化を前提にした測定計画が重要です。どの工種で、どの管理項目を、どの頻度で、どの断面で測定し、どの様式にまとめるのかを事前に整理しておかなければ、データはあるのに提出資料として使いにくいという状況になります。従来管理でも測定計画は必要ですが、TS出来形ではデータ構造と帳票様式がつながるため、計画段階の不備がより明確に表れます。施工計画書には、使用する測定方法だけでなく、データの作成、確認、保存、帳票化、再測定時の扱いまで記載しておくと運用が安定します。


記録の信頼性という面でも違いがあります。従来管理では、測定値の根拠を確認する際、野帳、写真、管理表、図面、担当者の説明を組み合わせて判断します。TS出来形では、測定データそのものに位置情報や設計値との差分が紐づくため、確認の流れをたどりやすくなります。もちろん、データファイルだけを保存しておけば十分というわけではありません。どのデータが最終成果なのか、再測定前後のデータをどう区別するのか、誤測定を削除した履歴をどう残すのか、設計変更前後のデータをどう保管するのかといったルールを決める必要があります。


社内管理の面では、TS出来形のデータ活用により、現場代理人、主任技術者、測量担当者、品質管理担当者が同じ根拠を見ながら確認しやすくなります。従来管理では、現場で測った人しか細かい経緯を把握していないことがあり、検査前に担当者が不在になると説明に時間がかかる場合があります。データ管理が適切であれば、後から別の担当者が確認しても、測定点、設計値、差分、帳票の対応関係を追いやすくなります。これは、属人的な管理から組織的な品質管理へ移行するうえで大きな利点です。


一方で、データ連携に頼りすぎるリスクもあります。帳票作成ソフトで資料化できるように見えても、測定点の選択が誤っていれば正しい帳票にはなりません。規格値の設定や管理項目の選択が現場条件に合っていなければ、見かけ上は整った資料でも、実務上の説明力は不足します。従来管理で行っていた現場の形状を目で見て、数値の妥当性を考える姿勢は、TS出来形でも欠かせません。効率化の本質は確認を省くことではなく、転記や集計にかかっていた時間を、施工品質の確認と判断に振り向けることにあります。


視点4 検査対応は現場確認中心から根拠データを示す運用へ変わる

出来形管理は、施工中の品質確認であると同時に、完成検査や中間確認で施工結果を説明するための根拠にもなります。従来管理では、検査時に管理表、出来形図、写真、現地確認を組み合わせて説明することが多く、検査職員や監督職員が現地で代表点を確認し、帳票の数値と現場の仕上がりを照合する流れになります。現場で水糸や巻尺を使って再確認することもあり、実物を見ながら説明しやすい反面、測定箇所が多い場合や広い範囲の工事では確認に時間がかかります。


TSを用いた出来形管理では、現地確認に加えて、測定データ、設計データ、帳票の関係を示すことが重要になります。どの測点を測ったのか、設計値との差はどの程度か、規格値に対してどの範囲に収まっているのか、データ上で確認できる状態にしておくことで、検査時の説明がスムーズになります。従来管理では帳票の数値が中心だったものが、TS出来形では測定点の位置情報と設計値の対応関係まで含めて説明できる点が違いです。これは、検査のためだけでなく、施工中に不具合を早期に発見するうえでも有効です。


ただし、検査対応がすべて机上で完結するわけではありません。出来形管理の目的は、現地に完成した構造物や土工形状が設計要求を満たしていることを確認することです。データが整っていても、現地で沈下、欠損、局所的な仕上がり不良、排水勾配の不自然さ、法面の崩れ、施工範囲の取り違えなどがあれば、目視確認や追加測定が必要になります。TS出来形は検査の根拠を強化する手段ですが、現場確認を不要にするものではありません。実務では、データによる確認と現地の実態確認を組み合わせることが大切です。


検査時に差が出るのは、質問への答えやすさです。従来管理では、検査でこの数値はどこを測ったものか、なぜこの測点を管理対象にしたのか、設計変更後の値は反映されているのかと聞かれたとき、図面、野帳、写真を探しながら説明する場合があります。TS出来形では、測点情報と測定データの整理ができていれば、根拠を示しやすくなります。特に、施工範囲が広い工事、同じような断面が連続する工事、複数の担当者が測定に関わる工事では、データによる一貫性が検査対応の安心材料になります。


一方、TSを用いた出来形管理では、検査前のデータ確認が不十分だと、従来管理より説明に困ることもあります。例えば、測点名が図面と一致していない、管理断面が抜けている、再測定データと旧データが混在している、帳票の設計値が変更前のままになっている、現場写真と測定データの対応が分からないといった状態では、せっかくTSで測っていても信頼性を伝えにくくなります。データは便利ですが、整理されていないデータは検査資料として弱くなります。測定後すぐに確認し、日々のうちに不備を直しておくことが重要です。


検査対応の観点では、発注者との事前協議も大切です。TSを用いた出来形管理を採用する場合、どの工種に適用するのか、どの管理項目を対象にするのか、従来管理を併用する範囲はあるのか、提出する帳票やデータの形式はどうするのか、現地確認をどのように行うのかを事前に確認しておくと、施工後の手戻りを防ぎやすくなります。現場ごとに条件が異なるため、一般論だけで進めるのではなく、対象工事に求められる管理方法へ落とし込むことが必要です。


従来管理が不要になるわけではない理由

TSを用いた出来形管理を導入すると、従来管理はもう不要だと考えられることがあります。しかし、実務ではそのように単純には分けられません。TS出来形は、従来管理の課題であった転記作業、測定点の追跡性、設計値との照合、帳票作成の負担を軽減しやすい方法ですが、現場で形状を理解し、施工の良し悪しを判断する力は従来管理で培われてきた考え方に支えられています。測量機器が示す数値を見て、現場として妥当かどうかを判断するには、図面読解、丁張り、レベル確認、巻尺での概略確認といった基本が欠かせません。


例えば、法面の出来形を確認する場合、TSで取得した点が規格値内に入っていたとしても、測定点の間に局所的な凹凸があるか、排水上の問題がないか、仕上げ面が施工目的に合っているかは、現地を見なければ分かりません。構造物周りの取り合いでは、座標値だけでなく、隣接する既設構造物、仮設物、排水経路、施工順序との関係を確認する必要があります。従来管理で重視されてきた現場観察や簡易確認は、TS出来形の補助として今後も重要です。


また、すべての工事やすべての管理項目でTSを使うことが最適とは限りません。狭い場所、視通が確保しにくい場所、短時間で局所的に確認する作業、設計データ化の負担に対して測定点が少ない作業では、従来管理のほうが効率的なこともあります。TSを用いた出来形管理要領の適用範囲に含まれるかどうかだけでなく、現場条件、作業量、必要な精度、提出資料、担当者の習熟度を踏まえて、どの方法を採用するか判断することが大切です。大切なのは、道具を使うこと自体ではなく、品質を確実に管理できる方法を選ぶことです。


従来管理が持つ強みは、現場での即時性と分かりやすさです。巻尺で幅を当てる、レベルで高さを確認する、水糸で通りを見るといった作業は、関係者がその場で結果を共有しやすく、若手にも形状の意味を教えやすい方法です。TS出来形はデータ管理に優れますが、画面上の数字だけを見ていると、なぜその点を測るのか、設計値と施工形状がどう対応しているのかを理解しないまま操作してしまうおそれがあります。教育の場面では、従来管理の考え方とTSのデータ管理を結び付けて教えることが効果的です。


したがって、TSを用いた出来形管理と従来管理は、対立するものではなく、役割が違う管理方法として捉えるべきです。TS出来形は、測定点が多く、データの追跡性が求められ、帳票化の負担が大きい工事で特に力を発揮します。従来管理は、現地の形状を直感的に確認し、簡易な判断や補足確認を行う場面で有効です。両者の違いを理解したうえで、工種、規模、検査要求、現場条件に応じて組み合わせることが、実務的で安全な運用につながります。


導入前に確認したい実務上の注意点

TSを用いた出来形管理を現場に導入する前には、まず適用範囲を確認する必要があります。対象工種が要領や仕様で想定されているか、管理項目がTSによる測定に適しているか、発注者が求める提出資料と社内で作成できる資料が一致しているかを整理します。ここを曖昧にしたまま進めると、測定後にこの管理項目は従来管理で別途確認が必要だった、提出形式が想定と違った、設計変更後のデータが反映されていなかったといった手戻りが発生しやすくなります。施工計画段階で、適用する範囲と併用する従来管理の範囲を明確にしておくことが重要です。


次に確認したいのが、基準点と座標系の信頼性です。TS出来形では、器械を据える位置や後視に使う点が誤っていると、測定点全体の座標に影響します。基準点の成果、現地の点名、座標値、標高、点の保全状況、視通条件を確認し、必要に応じて既知点での確認測量を行います。従来管理でも基準は重要ですが、TS出来形では測定データが座標として連続的に扱われるため、基準点の誤りが帳票や検査資料まで広がりやすくなります。器械設置後の確認を形式的に済ませず、現場ごとのリスクを見て判断することが大切です。


基本設計データの作成と照査も欠かせません。設計図書からデータを作る際には、測点の追加距離、中心線形、横断構成、計画高、法勾配、幅員、構造物との取り合いなどを確認します。データ作成者だけで完結させるのではなく、現場を知る担当者が図面と照合し、実際に測る点として違和感がないかを確認すると、後工程のトラブルを減らしやすくなります。特に設計変更が多い現場では、最新版データの管理ルールを決め、古いデータを誤って使わないようにする必要があります。


操作する担当者の教育も重要です。TS出来形では、機器の操作方法だけを覚えても十分ではありません。器械高、プリズム高、後視点、測点選択、管理項目、設計値との差分、再測定の扱いなど、出来形管理としての意味を理解して操作する必要があります。若手に任せる場合は、最初から一人で測定させるのではなく、従来管理の考え方を説明しながら、TS上の表示と現地の形状を対応させる教育が有効です。画面の指示に従うだけでなく、数値に違和感があれば立ち止まれる状態をつくることが、ミス防止につながります。


データ保存とバックアップのルールも早めに決めておくべきです。測定データ、基本設計データ、帳票、写真、協議記録、設計変更資料が別々に保管されていると、検査前に整合確認へ時間がかかります。日付、工種、測点範囲、測定者、再測定の有無が分かるように整理し、最終成果として使うデータと作業途中のデータを区別します。データ名の付け方や保存先を統一しておくと、担当者が変わっても資料を追いやすくなります。TS出来形の効果を出すには、測定だけでなく、測定後の管理ルールまで含めた運用設計が必要です。


さらに、現場条件によってはTSだけに頼らず、補助的な確認方法を組み合わせることも考えます。視通が悪い場所、交通規制の時間が限られる場所、構造物が入り組んだ場所、足場や仮設物が多い場所では、測定計画どおりに進まないことがあります。そうした場合に備えて、従来管理による補足測定、写真記録、別日の再測定、測定点の追加などを事前に想定しておくと、現場判断がしやすくなります。TSを使うことを目的化せず、出来形を確実に説明できる状態をつくることが本来の目的です。


まとめ TS出来形の理解を現場DXにつなげる

TSを用いた出来形管理要領と従来管理の違いは、単に使う機器の違いではありません。計測作業は手作業中心から座標データ中心へ変わり、設計値の扱いは図面確認だけでなく基本設計データの作成と照査まで広がります。記録と帳票は転記作業からデータ連携による管理へ変わり、検査対応は現場確認に加えて、測定データと設計データの関係を根拠として示す運用へ変わります。この4つの視点を押さえると、TS出来形がなぜ効率化につながるのか、同時にどこで注意が必要なのかが見えやすくなります。


従来管理には、現場で直感的に形状を確認できる強みがあります。一方、TSを用いた出来形管理には、測定点の追跡性、帳票作成の効率化、データの一貫性、検査説明のしやすさという強みがあります。どちらか一方を絶対視するのではなく、現場条件に応じて使い分け、必要に応じて併用することが実務的です。特に、測定点が多い工事、設計値との照合が複雑な工事、検査資料の整合性を高めたい工事では、TS出来形の考え方を取り入れることで、品質管理と事務作業の両面で改善が期待できます。


ただし、TSを導入すれば自動的に品質管理が高度化するわけではありません。基準点の確認、器械設置、設計データの照査、測点選択、測定後のデータ整理、設計変更時の更新、検査前の整合確認といった基本を丁寧に行ってこそ、TSを用いた出来形管理の効果が発揮されます。データ化は便利ですが、誤った前提をそのまま拡大してしまう面もあります。現場担当者は、機器の操作だけでなく、出来形管理の目的と要領の考え方を理解し、数値の意味を説明できる状態を目指すことが大切です。


今後の施工管理では、TSによる出来形計測だけでなく、写真、点群、位置情報、クラウド共有などを組み合わせ、現場の状況をより分かりやすく残す流れが強まると考えられます。出来形管理は、検査のための資料作成だけでなく、施工中の判断、手戻り防止、社内共有、若手教育にも活用できる情報基盤になりつつあります。まずはTSを用いた出来形管理要領と従来管理の違いを理解し、自社の現場でどの作業をデータ化すれば効果が出るのかを整理することが、現場DXの第一歩です。


TS出来形の運用をさらに広げるなら、現場で取得した位置情報や点群を分かりやすく共有し、測量、出来形確認、写真記録、検査準備を一体で考えることも重要になります。特定の製品名やサービス名に依存して説明するのではなく、対象工事の要領、発注者の求める提出形式、社内のデータ管理体制に合う方法を選ぶことが大切です。TSを用いた出来形管理の考え方を土台に、現場の記録をより早く、分かりやすく、後から説明しやすい形で残していくことが、これからの施工管理に求められる実務力です。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page