測量の定義と基本的役割
測量(そくりょう)とは、土地や構造物の位置や形状、大きさを正確に測定する作業を指します。地形の高低差や境界線、建物の配置などを数値データとして記録し、設計図の作成や工事の進行管理に必要な基礎情報を提供する重要なプロセスです。例えば、道路や橋梁、ダムなど土木構造物の計画では、現地の地形や周辺環境を事前に詳しく測量して図面化します。正確な測量データがあってこそ設計どおりの施工が可能となり、出来形(完成物の形状)や品質が保証されるのです。逆に測量が不正確だと、施工箇所の位置ズレや高さの誤差が生じ、後工程で手戻りや補修が発生する恐れがあります。そのため、測量は「工事の基礎を築く最初の仕事」とも称されるほど現場に欠かせない重要業務となっています。
また、測量では通常平面位置(X,Y座標)と高さ(Z座標)で地点を表します。例えば建設現場では、図面上の基準点(既知の座標点)をもとに現場周辺に新たな基準点を設置し、そこから各構造物の位置出しや高さ管理を行います。測量で得られた座標値は設計図や施工計画の拠り所となり、一連の工事全体を通じた空間的な基準となります。こうして得られた正確な位置情報により、施工チームは敷地内において設計図面を再現し、構造物を正しい位置と寸法で築造できるのです。
測量の基本的な手法・機器
図: 現場でトータルステーションを用いて測量を行う様子。 従来、測量作業は2人1組で行うのが一般的で、一人が測量機器を操作し、もう一人が標尺(スタッフ)やプリズムを持って目標地点に立つことで、距離や高低差を計測していました。このように手間と人手を要する作業であるため、熟練の技術とチームワークが求められます。しかし近年は機器の自動化やデジタル化が進み、一人でも測量できるシステムも登 場しています。まずは、代表的な測量機器と手法を押さえておきましょう。
• レベル(水準儀) – 地面の高低差(標高)を正確に測るための機器です。望遠鏡のような形状をしており、水平線をのぞくことで離れた地点との高さの差を読み取ります。標尺(スタッフ)というメモリ付きの尺を目標点に立て、レベルから読み取った高さと既知の基準点標高を比較して目的の点の標高を算出します。熟練者であれば50m先でもミリ単位の精度で高さを測定できる非常に精密な方法です。ただし原則2人1組で行う必要があり、スタッフの読み違いなど人為ミスに注意が必要です。近年はデジタルレベルといって、スタッフの目盛を機械が自動読取することでヒューマンエラーを減らした機種も普及し始めています。
• トータルステーション – 角度と距離を同時に測れる近代的な光学測量機器です。内部からレーザーや光波を発射し、離れた目標(プリズム)までの距離を測定すると同時に、水平方向・鉛直方向の角度を高精度に観測します。これによって平面位置(X,Y)と高さ(Z)をまとめて算出可能で、数十メートル離れた点でもミリ単位の精度で位置を求めることができます。現場では「光波(こうわ)」とも呼ばれ、基準点の測設や構造物の位置出しなど広く用いられています。通常はプリズムを持つ補助員とセットで2人作業となりますが、最近では自動追尾型(トラッキング機能付き)のトータルステーションも登場しています。自動追尾タイプでは機械がプリズムの動きを追いかけてくれるため、一人でプリズムを持って歩きながら測点を次々観測することも可能です。これにより作業効率が大幅に向上しましたが、一人作業ではチェック漏れが起きやすいため慎重な確認が求められます。
• GNSS測量(GPS測位) – 人工衛星からの電波を利用して地点の緯経度・高さを測定する手法です。従来は天候や衛星配置によって誤差が大きかったGPS測量も、近年は複数周波数に対応した受信機や補強信号の活用でリアルタイムに数センチの誤差まで測位可能になっています。特にRTK方式(リアルタイムキネマティック測位)では、移動局と基地局の2台の受信機を用いてリアルタイムに高精度の位置座標を得ることができます。建設現場では、基準点を設置する基準測量や 重機の位置制御、出来形のチェックなど様々な用途でGNSSが利用されています。ただし衛星測位は上空の見通しが悪いと精度が出ないため、森林や高層建物がある環境では補助的にトータルステーション等の併用が必要になることもあります。
• 写真測量・3Dスキャナ – デジタルカメラやレーザースキャナーによって現場を非接触で3次元計測する手法です。ドローン(無人航空機)で空撮した多数の写真を解析して地形の点群データを起こすUAV写真測量や、地上型のレーザースキャニング装置で周囲を丸ごと点群計測する方法が代表例です。写真測量は広範囲を短時間でモデル化でき、レーザースキャナはミリ精度の高密度データが取得可能という利点があります。従来は特殊な測量業者に依頼する高度な手法でしたが、近年は国土交通省が推進する*i-Construction*(ICT施工)の追い風もあり土木業界に急速に普及しつつあります。最近ではタブレットやスマートフォン内蔵の簡易LiDAR(ライダー)で手軽に3D点群を取得できるアプリも登場し、小規模な現場なら技術者一人で周囲を歩き回ってスキャンするといった手法も実用化され始めています。こうした最新技術については後述する「ICT施工」の項目でさらに詳しく触れます。
土木・建設現場における測量の主な活用場面
測量は土木・建設プロジェクトのあらゆる段階で重要な役割を果たしています。ここでは、典型的な活用場面ごとに測量の役割を見ていきましょう。計画・設計から施工、完成後の検査に至るまで、測量は現場を支える縁の下の力持ちです。それぞれの場面で具体的に何を行い、なぜ必要とされるのかを実例を交えて解説します。
設計段階における測量(現地調査)
土木工事を計画・設計する際には、まず現地の地形や地物を詳細に把握するための測量が欠かせません。これを一般に「地形測量」や現地調査と呼びます。例えば道路や橋梁の新設計画では、計画ルート周辺の地形を測量し、縦断図や横断図を作成して設計に反映します。現況の高低差や地形の特徴、既存構造物や樹木・建物の位置を正確に図面化することで、設計者はその土地に適した構造形式や施工方法を検討できるのです。加えて、測量データから算出した土工量(切土・盛土の体積)をもとに工事費用の見積りや資材運搬計画を立てることもで きます。設計段階の測量によって、机上の計画と現地状況との食い違いを事前に発見し、設計修正を行うことも可能です。例えば測量の結果、計画していた橋脚の位置に想定外の岩盤露頭が見つかれば、設計を変更して対応するといった判断ができます。このように設計測量は「現場と図面のすり合わせ」を行う重要な工程であり、ここを疎かにすると後々の施工段階で不測の問題が生じるリスクが高まります。
また、長期間の工事では設計後にも追加の測量が必要になる場合があります。工事着手前の段階で設計図と現地の整合性を確認するための測量を行い、設計通り施工可能か事前チェックを実施します。さらに、工事途中で設計変更や追加工事が生じた際にも、その時点の最新の地形・出来形を測量し直すことで、変更設計の精度を確保します。例えば河川工事で計画変更により堤防高を再検討する場合、最新の河川敷の地形を再測量してから設計し直すことで、出来上がり高さのズレを防ぐことができます。このように測量は設計段階から工事完了まで、必要に応じて繰り返し現場の「今」を正確に記録する役割を担っているのです。
施工準備と丁張りによる測量(位置出し・水準出し)
実際の施工段階に入ると、図面上の計画を現場で再現するために位置出し(墨出し)や水準出しといった施工測量を行います。これは、建設予定物の正確な位置(平面上の座標)や高さ(標高)を現地に示す作業で、いわば「現場に設計図を描く」ようなものです。例えば建物の基礎工事であれば、基礎の外形寸法に沿って地面に杭を打ち、掘削範囲を示します。また道路工事では、道路中心線や幅員を示すために要所に杭やペイントで印を付けます。高さ方向については、設計高さを示す水糸(みずいと)や標示板を設置し、施工担当者がそれを基準に掘削や盛土の高さを合わせていきます。こうした作業によって、施工者(職人や重機オペレーター)はどこをどの程度掘削・盛土すればよいか、構造物をどこに据え付ければよいかを正確に把握でき、安全かつ効率的に工事を進められるのです。
施工現場でよく用いられる手法に「丁張(ちょうはり)」があります。丁張とは、木杭と水平板で構成された仮設の枠組みで、構造物の高さや位置の基準を示すものです。例えば建物の周囲に四隅の丁張を組み、板に基礎の上面高さや位置をマーキングしておけば、職人はその板を見ながらコンクリートを所定の高さまで打設できます。言い換えれば丁張は「空中に描いた設計図」の役割を果たし、現場作業員にとって分かりやすいガイドラインとなります。丁張に記された通りに施工すれば、出来上がりの高さや位置が図面どおりになるわけです。
ただし、丁張は木製の仮設物であるため工事中の振動や天候でずれたり破損したりすることがあります。そのため定期的な点検と補修、必要に応じた再測量による復元が重要です。丁張が狂ったまま作業を続けてしまうと、完成物の精度に重大な影響を及ぼします。例えば丁張の高さ表示が5cm低くずれてしまえば、その基準で施工した床版や梁はすべて5cm低い位置に出来てしまいます。そうなると後で全てやり直しになり、工期の遅延や余計なコストにつながりかねません。このように、施工測量の精度と信頼性が確保されていないと工事全体に大きな影響を与えるため、現場監督や測量技術者は丁張の管理も含め細心の注意を払っています。
施工測量で出した墨(すみ)や杭の表示は、実際に施工を行う作業員が読み取って作業します。そのため表示の仕方に工夫しないと誤解や読み間違いが起こる可能性があります。例えば杭に記載した数字が不明瞭だったために配筋位置を間違えた、というようなミスも現場では起こり得ます。したがって測点のマーキングはできるだけシンプルかつ明確に行い、場合によっては説明用の図面を現場に掲示するなどの配慮も必要です。このように、正確な測量と分かりやすい表示によって初めて施工ミスを防止できるのです。施工測量は地味な作業に思えますが、その成果が現場の隅々にまで及ぶため、まさに現場施工を支える要といえます。
出来形管理における測量(完成後の検測)
工事が完了または一定の区切りを迎えた段階では、出来形管理のための測量を行います。出来形管理とは、その工事で完成した構造物や造成地形が設計どおりの形状・寸法になっているか確認し記録する施工管理プロセスです。要するに、完成物を測定して「設計図どおりに施工できたか」を検証する作業であり、不備があれば是正するのが目的です。特に公共工事では、発注者(行政)が定めた規格基準に対し実際の出来形が合致していることを測定データで証明することが求められます。出来形測量で得られた数値や図表は完成検査時に提出され、これが合格しなければ工事は引き渡しできません。従って出来形管理は品質確保の要であり、現場監督にとって非常に重要視される工程となっています。
出来形測量では、構造物の主要寸法(長さ・幅・厚み)や高さ、勾配などを実際に測定し、設計値との誤差を調べます。例えば道路工事であれば、仕上がった路盤や舗装の厚み・幅員を計測し、所定の許容差以内に収まっているか確認します。橋梁工事なら、橋脚の高さや橋桁の長さ・位置が設計通りかを計測データでチェックします。またダムやトンネルでは出来形断面を計測し、設計断面との差を図化して評価します。これらの結果は出来形図表としてまとめられ、発注者への提出書類となります。もし測定結果が規格を外れていれば是正工事や減点措置となるため、施工者にとっては緊張の瞬間ですが、同時に自らの仕事の品質を証明する機会でもあります。
注意すべきは、出来形管理は工事の終盤だけでなく途中経過でも行われる点です。長期に及ぶ工事では、後で見えなくなる部分(地下に埋め戻す配管や基礎の鉄筋など)は、施工中に計測・記録しておかないと完成後に証明できません。そのため要所要所で区切って出来形測量や写真撮影を行い、中間検査や社内検査でチェックします。例えば上下水道の埋設管工事では、埋め戻す前に管の勾配や深さを測り、適切に施工されていることを記録してから土を被せます。また鉄筋コンクリート構造物では、打設前に配筋の間隔やかぶり厚さを測定・写真撮影して記録し、不備があれば是正してからコンクリートを打設します。現場では「写真が証拠」とも言われ、特に埋設物や覆工前の部分は写真や測定データでエビデンスを残すことが不可欠なのです。
近年、この出来形管理の分野でもデジタル技術の活用が進んでいます。従来は巻尺やスタッフ・レベルといった手作業で一箇所ずつ測っていた出来形管理も、3次元スキャナーやドローン写真測量によって一度に広範囲を計測し、出来形を点群データ(多数の座標点の集合)とし て記録する手法が登場しました。点群データで現場全体をスキャンしておけば、後から任意の断面や寸法をソフト上で解析でき、測り忘れによる見落としを防げます。例えば人力では測定が難しい法面の微妙なたわみや、路盤の局所的な凹凸も、点群を解析すれば検知可能です。実際「主要寸法は合格だったが図面と微妙に食い違う部分を見逃し、後日の検査で指摘を受けた」というケースもあり、点群測量による出来形管理は新たな品質保証のスタンダードになりつつあります。こうしたデジタル計測については次の章で詳しく述べますが、出来形管理でも測量の重要性が年々増していることは押さえておきましょう。
ICT施工(i-Construction)における測量技術の進化
近年、建設業界ではICT(情報通信技術)やIoTを活用した生産性向上策が推進されており、その中心の一つが測量・計測技術の高度化です。国土交通省が提唱する*i-Construction*では、測量・設計から施工・検査まで一貫して3次元データを活用することが奨励されています。具体的には、ドローン写真測量や3Dレーザースキャナによる出来形管理、省人化施工機械の導入などが各地の現場で進みつつあります。例えば大規模な造成現場では、ドローンで毎週空撮した地形データを点群化し、最新の土量や工程進捗を把握する取り組みがあります。また、ブ ルドーザーやショベルカーといった重機にGNSS受信機と3D設計データを搭載し、オペレーターの手を介さず自動でブレードやバケットの高さを制御するマシンコントロール施工も一般化してきました。これはまさに測量技術と施工機械の融合であり、丁張や人力による高さ確認を大幅に省略できる画期的な技術です。人が立ち入れない危険な場所でも遠隔で精密な掘削・盛土が可能となり、安全性向上にも寄与しています。
前述した3次元点群データの活用もICT施工を語る上で重要です。点群は現場を丸ごとデジタルコピーしたようなものなので、設計データとの比較検討や出来高管理に威力を発揮します。例えば、あるダム工事では施工途中の地形を定期的に点群計測し、設計の3Dモデルと重ね合わせて掘削・盛土の進捗や過不足をチェックしています。これにより、従来は工事後に行っていた出来高計算をリアルタイムに把握し、施工計画の見直しや出来形評価にフィードバックできるようになりました。さらに最近では、iPadやiPhoneに搭載された簡易LiDARで手軽に室内外の寸法を計測できるようになっています。スマートフォンを片手に構造物の周囲を歩くだけで大まかな3Dモデルを取得でき、狭小現場や室内工事の記録に役立てるケースも出てきました。ただし簡易LiDARの精度は限定的であるため、重要箇所の計測には専門の高精度機器が依然必要です。そこで登場したのが測位技術とデジタルセンサーを組み合わせた新しい測量システムです。次章で紹介するLRTKもその一つで、高精度GNSSとスマホ・クラウド技術を融合することで、まさにこの*i-Construction*時代のニーズに応えるソリューションとなっています。
測量が持つ法的・品質・安全管理上の重要性
以上のように測量は現場の正確な施工と品質確保に不可欠ですが、その重要性は法的な側面や安全管理の面から見ても極めて大きいものがあります。ここでは、法令・品質・安全の観点で測量の重要性を整理します。
まず法的な重要性についてです。測量によって得られる正確な位置情報や寸法データは、各種許認可や検査において基準を満たしていることの証明となります。例えば公共工事では出来形管理要領に基づき測定結果を提出しなければ検査に合格できませんし、民間の建築工事でも確認申請図と相違ない位置・高さで施工さ れていることを完了検査で示す必要があります。また土地の境界や面積測量は不動産登記や用地買収に直結する法律行為であり、一寸の誤りも許されません。誤った測量に基づいて土地境界を定めたり建物を配置してしまうと、後に近隣との境界紛争や違法建築問題に発展するリスクがあります。こうしたことから、日本では測量士や土地家屋調査士といった国家資格者だけが正式な境界測量図を作成できると法律で定められています。法令遵守と円滑な事業推進のためにも、測量は常に正確で信頼できる方法で実施しなければならないのです。
次に品質管理上の重要性です。測量の精度はそのまま施工物の出来形精度や品質に跳ね返ってきます。基準点の誤差は全ての後続測量に累積し、最終的に構造物のズレとなって現れます。特にコンクリート構造物など一度造ったら直せないものは、事前の測量でミスを防ぐことが極めて重要です。測量がしっかりしていれば、設計図通りの形状・寸法で施工でき品質基準を満たすことが保証されます。例えば鉄骨建て方工事ではアンカーボルトの位置をミリ単位で測設しますが、これがずれていると鉄骨がはまらず施工不良になります。同様に、道路工事 で縦断勾配の測量を誤れば水はけが悪くなるなど使用性・耐久性にも問題が生じます。このように測量精度の確保は施工品質確保そのものであり、品質管理活動の土台となるものです。
最後に安全管理上の重要性です。一見、測量作業自体は地味で安全とは関係ないように思われるかもしれません。しかし測量ミスが原因で重大な安全問題が起きる可能性もあります。例えば山岳工事で法面勾配の設定を誤れば、設計より急な斜面になって崩壊の危険性が高まります。仮設足場のアンカー位置や高さの測り間違いは、足場の強度不足や傾斜につながり、墜落事故の遠因となりえます。また重機作業範囲の立入禁止線を正しく測量して示さなかったために、第三者が危険区域に入ってしまう事故も考えられます。さらに施工中の安全だけでなく、完成した構造物の安全性も測量に依存します。橋脚や道路標識などの傾き・沈下計測は定期点検で行われますが、これらも測量技術です。万一異常を見逃せば事故につながるでしょう。このように測量は現場の安全確保とも深く関係しており、正確な測定と管理がリスク低減に不可欠なのです。
測量ミスがもたらす影響
測量作業におけるわずかなミスが、工事全体に大きな悪影響を与えることがあります。ここでは、測量の誤りがもたらす主な影響をいくつか挙げてみます。
• 施工のやり直し・工期遅延: 基準点の誤設定や位置出しミスに気づかず施工を進めてしまうと、後で構造物を作り直す羽目になります。例えば建物基礎の位置がずれた場合、上部構造との整合が取れず基礎を打ち直す必要が生じます。その結果、工期が延びて引き渡しが遅れ、クライアントや関係者に迷惑をかけることになります。
• 追加コスト・経済的損失: 測量ミスによる手戻り工事や補修には当然ながら余計な費用が発生します。例えば道路の路盤高が低すぎた場合、追加の材料を投入して嵩上げするコストがかかります。重大なミスでは工事そのものの中断・延期につながり、現場管理費や重機リース代の増大、違約金の発生など経済的損失も甚大です。
• 品質不良・構造物の欠陥: 測量誤差に気付かずに完成してしまった場合、設計と異なる寸法や勾配の構造物が出来上がってしまいます。これは性能低下や耐久性不足といった品質不良につながります。微小なずれでも、複数箇所で積み重なれば構造全体の応力状態に影響する可能性があります。出来形不良のままでは将来的な補修費用や維持管理コストの増加にも跳ね返ってきます。
• 安全リスクの増大: 設計通りでない施工は予期せぬ安全リスクを生む場合があります。例えばトンネルでボルトの打設位置を誤れば耐荷力不足となり崩落の危険がありますし、橋桁の据付位置がずれれば走行する車両に異常な荷重がかかることもありえます。測量ミスが直接の原因で事故に至るケースは稀ですが、潜在的な危険因子を現場に残してしまう点で看過できません。
• 契約トラブル・信用失墜: 公共工事では出来形不良は検査減点の対象となり、ひどい場合は契約解除や指名停止などの厳しいペナルティを招きます。民間工事でも、完成後に図面と違う部分が発覚すればクレームや賠償問題に発展しかねません。測量ミスは会社の信用問題にも直結します。一度「いい加減な測量をする会 社」と烙印を押されれば、今後の受注にも悪影響が及ぶでしょう。現場技術者にとって測量ミスはあってはならない重大インシデントなのです。
このように、測量の誤りは技術的・経済的・社会的に大きなダメージをもたらす可能性があります。逆に言えば、正確な測量を遂行することがこれらリスクの芽を摘み、プロジェクトを円滑に成功させる鍵となるのです。
測量の省力化と生産性向上の最新技術:LRTK
ここまで述べてきたように、測量は高度な精度と多大な労力を要する仕事ですが、近年はその省力化と生産性向上を実現する最新技術が登場しています。その代表格がLRTK(エルアールティーケー)と呼ばれる測量システムです。LRTKは建設・土木・測量分野向けに開発されたオールインワンの測位ソリューションで、最先端のGNSS技術とデジタルツールを組み合わせることでセンチメートル精度の測位を手軽に実現し、大幅な作業時間短縮と生産性向上を可能にするものです。国土交通省のi-Constructionにも対応したデジタル測量システムであり、まさに建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に最適なソリューションと位置付けられています。
LRTKの具体的な機能と利点をいくつか挙げてみましょう。
• センチメートル級の高精度GNSS測位: LRTKは最新鋭のGNSS(全球測位衛星システム)受信機を搭載しており、GPSだけでなくGLONASSやGalileo、みちびき(準天頂衛星)など複数衛星系の信号を受信して高精度測位を行います。みちびきが提供するセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)にも対応しており、2台のLRTK端末を基地局・移動局として用いることでインターネットが通じない現場でもリアルタイムキネマティック(RTK)測位が可能です。従来は携帯電波の届かない山間部での高精度測位は困難でしたが、LRTKなら電波圏外の山奥でも数cmの測位が行え、基準点測量を迅速に進められます。
• 傾斜補正機能による一人測量: LRTK端末はジャイロや加速度計を内蔵してお り、ポール(測量杖)が傾いた状態でもポール先端の直下座標を自動演算する傾斜補正機能を備えています。これにより、従来はポールを厳密に垂直に立てないと測れなかった場面でも、多少傾けたまま測定可能です。障害物のそばで真上に立てられない場合や、傾斜地でポールが垂直保持しにくい場合でも正確な位置を測れるため、一人での測量作業が格段に効率アップします。熟練を要した「ポール垂直の目視確認」から解放され、狭所や高所での測点観測も安全かつ容易になります。
• ワンタッチ測位とクラウド連携: LRTKは専用のスマートフォンアプリと連動して動作し、直感的な操作で測量が行えます。現場でボタン一つタップするだけで現在位置の測定からデータ記録まで自動で行えるため、専門の測量士でなくとも扱いやすいのが特徴です。取得した位置情報や観測データは即座にクラウド上にアップロード・共有することも可能で、オフィスに居ながらリアルタイムに現場の測点データを確認することもできます。例えば現場技術者がLRTKで撮影・測位した写真は、クラウド経由で社内の上司や発注者とも即共有でき、迅速な報告・指示に繋げられます。データは自動で整理・保存されるため、紙の野帳に手書きしていた頃と比べ記録漏れや書き間違いがなくなり品質管理の信頼性も向上します。
• 多目的な拡張性(360°カメラ・LiDAR連携など): LRTKシリーズには、GNSS受信端末であるLRTK Pro2のほかにも、スマートフォン一体型のLRTK Phone、360度カメラで現場全景を記録するLRTK 360、レーザースキャンモジュールのLRTK LiDAR、さらに安全ヘルメット一体型デバイスなど、多彩なラインナップがあります。現場の用途に応じてデバイスを組み合わせれば、屋外の高精度測量から屋内の位置出し、写真測量や点群計測まであらゆる場面を一つのシステムでカバーできます。例えばLRTK Phoneは屋内測位や写真に写った対象物の座標取得といった機能を持ち、GNSSの届かない環境でもスマホカメラで測量が可能です。このような汎用性により、従来は別々の機材と専門技術が必要だったタスクを一括して効率化できる点も大きなメリットです。
以上のように、LRTKは最新技術の粋を集めて測量業務を革新するツールと言えます。実際、複数の測量技術を組み合わせて活用する ことで精度の高い施工を実現し、工期短縮やコスト削減にもつながることが業界で確認されています。LRTKはまさにそのコンセプトを具体化した製品であり、一人で効率よく測量できることで人手不足の現場を助け、ミスの少ないデジタルデータによって品質と安全も飛躍的に向上します。国土交通省の後押しするi-Constructionの要件にも対応しており、今後さらに普及が進めば建設現場の生産性革命に寄与することが期待されています。
おわりに:次世代の測量技術導入へ向けて
測量は土木・建設業において欠かせない基盤業務であり、正確な測量なくして良いものづくりはできません。本記事で述べたように、測量は設計段階の現地調査から施工中の位置出し、完成後の出来形管理までプロジェクトの各所で重要な役割を果たしています。そしてその精度と効率を高めることが、品質確保・安全確保ひいては生産性向上の鍵となります。近年登場したLRTKに代表される最新の測量テクノロジーを活用すれば、従来は人手と時間を要した測量作業を劇的に効率化し、精度も安定させることが可能です。測量ミスによる手戻りやヒューマンエラーを減らし、デジタルデータによる確実な管理で品質と安全を両立できるでしょう。まさに測量の分野にもDXの波が押し寄せており、これからの現場において測量技術の高度化・ 省力化は避けて通れないテーマとなっています。貴社の現場でももし測量作業に課題を感じているようであれば、ぜひ今回ご紹介した次世代の測量ソリューションの導入を検討してみてはいかがでしょうか。新たな技術の力で、測量が持つ役割と重要性を次のステージへと進化させることができるはずです。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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