近年、スマホ測量(スマートフォンを活用した測量手法)が注目を集めています。これまで測量といえば専門の測量機器や複数人での作業が必要でしたが、現代ではスマートフォンとGNSS(全球測位衛星システム)の技術を組み合わせることで、手軽に高精度な位置情報を取得できるようになりました。特に、GNSSの高精度測位技術であるRTK(リアルタイムキネマティック)をスマホで活用することで、数センチの誤差という従来では考えられない精度で位置測定が可能になります。本記事では、GNSSとRTKの基礎から従来測量との違い、スマホ測量でRTKを活用するメリットについて解説し、さらに最新の高精度測位ソリューションであるLRTKを活用したスマホ測量の始め方や具体的な活用事例をご紹介します。最後まで読むことで、高精度な簡易測量をスマホで始めるための知識とステップが明確になるでしょう。
GNSSとRTKの基礎
GNSSとは、人工衛星を利用した全球測位システムの総称で、GPS(米国)、GLONASS(ロシア)、Galileo(欧州)、みちびき(日本の準天頂衛星)など複数の衛星測位網を含みます。GNSS受信機は複数の衛星から送られてくる電波信号を受信し、その距離情報から現在位置(緯度・経度・高度)を算出します。しかし通常のGNSS測位では、大気の影響や衛星時計の誤差などにより、数メートル程度の誤差が生じます。スマートフォンに搭載されたGPSもGNSSの一種ですが、一般的に5~10m程度の位置誤差があり、これでは正確な測量には不十分です。
こうした誤差を補正し、センチメートル級の精度を実現する技術がRTK(リアルタイムキネマティック)測位です。RTKでは、既知の正確な位置に設置した基地局(基準点)と、移動しながら測位する移動局(ローバー)の両方で同時にGNSS衛星信号を受信します。基地局は自分の正確な位置と衛星からの測定情報を比較することで誤差量を算出し、その補正データをリアルタイムに移動局へ送信します。移動局は受け取った補正情報を使うことで、単独では数メートルずれていた測位結果を数センチ程度まで高精度化できます。RTKでは衛星信号の搬送波位相と呼ばれる非常に短い波長の信号を利用しており、これによってミリメートルオーダーの測距精度が得られるため、最終的な位置精度も飛躍的に向上します。こうしたリアルタイムの高精度測位は土木測量や農業、自動運転など幅広い分野で活用が進んでいます。
従来の測量との違い
従来の測量手法とスマホを使ったGNSS測量(スマホ測量)には、いくつか大きな違いがあります。伝統的な測量では、トータルステーションやレベルといった光学式の機器を用いて、測量士が目標物に照準を合わせて距離や角度を測定していました。これには測量機とプリズムを持つ補助者の二人一組での作業や、測点間の見通し確保が必要で、作業時間と労力がかかります。また、高精度のGNSS測量機器を使う場合でも、据 え置きの基地局と移動局を設置し、後処理が必要なケースもありました。
主な違いを以下にまとめます。
• 必要な人数:従来は2人以上での作業が基本でしたが、スマホ測量なら1人で完結します。
• 視通の要否:トータルステーションでは機器とプリズムの間に直線の視通が必要でしたが、GNSS測量では上空が開けていれば障害物越しでも測位可能です。
• 作業効率:従来は機器設置や点ごとの読取り・記録に時間がかかりましたが、RTKによるスマホ測量では測りたい地点に移動して即座に高精度座標を取得できます。
• 測位座標:従来は基準点からの相対位置を測って後で基準系に変換していましたが、GNSSなら最初から世界測地系などの絶対座標を得られます。
• 機材とコスト:高性能な光学機器や専用GNSS端末は高価で重量もありましたが、スマホ測量では手持ちのスマートフォンと小型のGNSS受信機を使うため低コスト・軽量です。
このように、RTKを用いたスマホ測量は従来法に比べて省力化・効率化が図れ、現場作業のハードルを大きく下げています。特に測位結果がリアルタイムに得られるため、その場でデータ確認や追加計測が行える点も大きな利点です。
スマホ測量でRTKを活用するメリット
スマートフォンとRTK技術を組み合わせた「スマホ測量」には、従来の手法にはない様々なメリットがあります。主な利点をいくつか挙げてみましょう。
• 効率化と省力化:一人で手軽に測量できるため、人員配置の効率化につながります。例えば、広い現場でも 担当者がスマホ片手に歩き回るだけで位置測定ができ、複数人での重作業が不要です。
• リアルタイム測位:RTKにより現場で即座に高精度な座標が得られるため、その場で測定結果を確認しながら作業を進められます。追加の測定ややり直しも現地で判断でき、後戻りを減らせます。
• 高精度:スマホ測量は通常のスマホGPSでは達成できない数センチ精度を実現します。地形測量や構造物の設置など、精度が要求される作業でも信頼できる結果が得られます。
• コスト削減:高価な測量機器を購入したり専門業者に依頼したりする代わりに、手持ちのスマホと比較的安価なGNSS受信デバイスを利用できるため、初期導入コストや維持費を抑えられます。
• データ活用の容易さ:スマホでデータを取得することで、そのままクラウドにアップロードしたり、図面やGISソフトにインポートしたりと、デジタルデータとして活用しやすくなります。紙の野帳への記録や手動での転記が不要になり、ヒューマンエラーも減少します。
• 多機能な活用:スマホのカメラやセンサーと組み合わせることで、写真付きの測点記録やAR(拡張現実)による設計図と現地の重ね合わせ、LiDARスキャンによる3D点群取得など、単なる点の測量にとどまらない多彩な活用が可能です。
このように、スマホ測量は高精度・低コストであるだけでなく、デジタル技術と親和性が高いため、これからの建設・測量現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支えるキーテクノロジーと言えるでしょう。
LRTKの特徴と精度
LRTKは、スマートフォンで手軽にRTK測位を行うために開発された最新の高精度測位システムです。ポケットに収まるコンパクトなGNSS受信機(LRTK端末)とスマホアプリ、そしてクラウドサービスから構成されており、これ一つでRTKによる高精度測位が完結します。LRTK端末は重さ約165g・厚さ1cm程度のスマホサイズながら、複数の衛星測位システム(GPSやみちびき等)の信号を受信してRTK演算を行い、 水平±1~2cm・垂直±3cmほどの測位精度を実現します。その精度は一級水準の測量GNSS機器にも匹敵し、実験ではプロ仕様の受信機と同じ地点を測位しても数ミリ程度の差しか生じないことが確認されています。
LRTKは高精度でありながら扱いやすさも追求されています。基地局となる基準点データはインターネット経由で自動取得されるため、ユーザー自身が基地局を設置する必要はありません。屋外でLRTK端末の電源を入れてスマホと接続すれば、約20秒ほどでRTKの「Fix解」(誤差数センチの解)が得られ、すぐに測量を開始できます。測位した緯度・経度・高さのデータはそのまま平面直角座標系など任意の座標系に変換して記録可能で、従来必要だった座標変換の手間もアプリが自動で処理します。また、取得データはリアルタイムにクラウドへ同期でき、現場で測った結果を事務所で即座に確認・共有するといったことも容易です。小型・高性能で現場向けに最適化されたLRTKは、これから高精度のスマホ測量を始めたい方にとって有力な選択肢となるでしょう。
LRTKの導入方法・必要な機材
LRTKを導入してスマホ測量を始めるために必要な機材と、初 期設定の流れを説明します。
必要な機材:基本的には、高精度GNSS受信機であるLRTK端末と、対応するスマートフォン(現在はiPhoneに対応)だけで測位が可能です。LRTKアプリをインストールしたスマホとLRTK端末をBluetooth等で接続し、インターネットに接続できる環境があれば追加の基地局機器は不要です。より正確に測点の位置を特定するには、市販の一脚(ポール)や専用スタンドにLRTK端末とスマホを取り付けて使用すると良いでしょう。LRTKのスターターキットには安定した計測のためのポール(一脚)と先端の石突が含まれており、地面の目印に確実に端末を据えて測定できます。
導入とセットアップの手順:
• LRTK端末の準備:LRTK端末本体の電源を入れ、バッテリー残量が十分であることを確認します(必要に応じて充電)。
• ア プリのインストール:スマートフォンに専用のLRTKアプリをダウンロードしてインストールします。初回起動時にユーザー登録(LRTKクラウドのアカウント作成)を行い、アプリにログインします。
• 端末とスマホの接続:アプリ内の「端末接続」機能を使って、スマホとLRTK端末をペアリングします。近くにあるLRTK端末の一覧から自分の端末を選択すると接続され、正常に接続されると端末から音やランプで通知があります。
• 動作確認:屋外の見通しの良い場所で、アプリ上に衛星を受信している表示(衛星数や現在の測位モード)が出ていることを確認します。初期状態ではRTK補正が適用されていないため、精度は±数メートル程度ですが、次の手順で高精度化します。
• RTK補正の開始:アプリ上で基地局からの補正情報の受信を開始します。LRTKは自動的にインターネット経由で補正データを取得し始め、約20~30秒ほどで測位モードが「Fix(フィックス)」に切り替わります。FixになればRTKによるセンチメートル級測位が可能な状態です。
初期設定は以上です。一度セットアップが完了すれば、後は現場で電源を入れてアプリに接続するだけで高精度測位を利用できます。
LRTKの運用手順
現場でLRTKを使って測量を行う際の基本的な操作手順をいくつか紹介します。LRTKシステムはスマホアプリ上で直感的に操作でき、様々な測量ニーズに対応した機能が用意されています。
• ポイント測量(点の測定):測定したい地点にLRTK端末を設置し、スマホアプリの測位・記録ボタンを押すだけで、その地点の高精度な座標を記録できます。必要に応じて数秒間の測定結果を平均化して記録することも可能で、これにより1点あたりの精度をさらに向上できます。測点には名前やメモを付けたり、写真を撮って紐付けたりできるため、後で見返したときにも分かりやすく管理できます。
• 杭打ち・位置出し:あらかじめ基準点や設置予定の点の座標が分かっている場合、アプリにその座標値を入力して誘導に使えます。スマホ画面上に目標地点の方向と距離がリアルタイムに表示されるので、それを見ながら実際の現場で端末を動かし、距離がゼロになるポイントを探します。必要に応じて音やAR表示でガイドしてくれるため、一人でも正確に杭打ち位置を出すことが可能です。
• 連続測量・面積計測:歩きながら連続的に点を記録していくことで、地形の縦断・横断測量や敷地境界の測量にも対応できます。一定間隔で自動記録した軌跡データから、後で平面図を作成したり面積・距離を計算したりすることもできます。従来は測点間をメジャーや計算で求めていた距離・面積も、スマホ測量なら現場で自動算出されるため効率的です。
• データ保存と共有:測定が終わったら、アプリ上で保存したデータをクラウドに同期します。オフィスのパソコンからインターネット経由でクラウドにアクセスすれば、現場で取得した測量データ(座標一覧、写真、メモ、軌跡など)を即座に確認できます。必要に応じてCSVやDXF形式でダウンロードして、自社のCAD図面やGISに取り込むことも簡単です。紙の資料を持ち帰る必要がなく、データ整理の時間も短縮されます。
これらの操作をスマートフォン一つで直感的に行える点が、LRTKによるスマホ測量の大きな魅力です。現場での測量からデータ共有までシームレスに完結するため、これまでの煩雑な作業が大幅に簡略化されます。
スマホRTKの応用事例
最後に、スマホとRTKを活用した高精度測位が現場でどのように役立つか、その応用事例をいくつかご紹介します。
• 災害現場での迅速な測量:地震や豪雨による災害時に、被害状況を早急に把握するための測量にスマホRTKが活躍します。重機が入れないような被災地でも、担当者がスマホとLRTK端末を持って歩けば、崩壊した地形の状況を短時間で測定可能です。実際に某自治体では土砂崩れ現場においてLRTKを用いて迅速な地形把握を行い、復旧計画の立案に役立てました。
• 建設現場での出来形管理:道路や造成地の工事現場で は、設計図通りに施工できているか確認する出来形管理が欠かせません。スマホRTKを使えば、盛土や切土の高さ、構造物の設置位置などを施工担当者自ら測定し、その場で設計値との誤差を確認できます。従来は測量士に依頼していた検測もリアルタイムに行えるため、手戻りの防止と工期短縮に貢献します。
• インフラ設備の位置情報記録:水道管や電線柱、ガスバルブなどのインフラ設備の位置を正確に記録しておくことは、維持管理や点検において重要です。スマホRTKであれば、各設備の経緯度と高さを現地で即座に測定し、データベース化できます。写真やメモもその場で付与できるため、後から現場を再訪せずとも詳細な情報を共有できます。
• 3DスキャンとARによる設計施工支援:スマホのカメラやLiDARとRTK測位を組み合わせることで、現場の3次元スキャンやARによる可視化も容易になります。例えば、建物内部をスマホでスキャンして高精度な点群データを取得したり、完成予定の構造物モデルを現地の映像にAR表示して工事関係者間で共有するといった使い方も可能です。高精度な位置情報があることで、これら先進的な技術も誤差なく活用でき、現場のDXを促進します。
まとめ:LRTKで高精度簡易測量を始めよう
スマホ測量の登場により、測量の世界は大きく変わろうとしています。GNSSとRTKの仕組みを理解し、LRTKのような手軽で高精度なツールを活用すれば、これまで専門家に頼らざるを得なかった測量作業も自分たちで行える時代になりました。数センチ精度の位置情報が現場のスマホで即座に得られることで、建設・測量業務の効率と品質は飛躍的に向上するでしょう。高価な機材や大掛かりな準備はもう必要ありません。ぜひこの機会にLRTKを導入し、スマートフォンで始める高精度測位のメリットを実感してみてください。また、スマホ操作に慣れた若手だけでなく従来技術に精通した中堅技術者にとっても、スマホ測量は新たなスキルとして身につける価値があります。スマートフォン一つで測量が完結する時代を、LRTKとともに切り拓いていきましょう。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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