法面緑化で植生シートや植生マットを施工するとき、アンカーピンの間隔は仕上がりと初期安定に関わる重要な条件です。間隔や端部固定が不適切だと、風によるばたつき、地山との間の空隙、重ね部の開き、降雨後のずれなどが生じるおそれがあります。ただし、固定具を増やすだけで問題が解決するとは限りません。地山に有効に定着していないピンを増やしても固定効果は上がりにくく、法面の凹凸や排水不良を残したまま施工すると、別の不具合を招くことがあります。
実務上、「何センチ間隔なら安全」という全国共通の単一値はありません。設計図書、特記仕様書、標準施工図、承認された施工計画、採用資材の施工要領を確認し、勾配、法長、地山、端部、気象・排水条件、施工確認の順で検討する必要があります。公的資料に示される本数や寸法も、それぞれの適用範囲における標準例であり、個別工事の設計値へそのまま転用できるとは限りません。
本記事では、法面緑化を担当する設計者、施工管理者、現場代理人、発注担当者に向けて、アンカーピン間隔を検討する6つの基準を整理します。なお、本記事は一般的な確認手順を示すものであり、契約図書、設計照査、監督職員との協議、資材ごとの施工要領に代わるものではありません。
目次
• 法面緑化でアンカーピン間隔が重要な理由
• 先に押さえたい「間隔」より密度と配置の考え方
• 基準1:設計図書と固定具密度を起点にする
• 基準2:勾配と法長に応じて上下方向の配置を見直す
• 基準3:地山の硬さと凹凸でピン長と固定方法を検討する
• 基準4:法肩・法尻・端部・重ね部を重点確認する
• 基準5:風・雨・湧水・寒冷条件を追加条件として扱う
• 基準6:試験施工と出来形管理で現場への適合を確認する
• シート浮きとずれを招くよくある失敗
• 設計から施工までの実務手順
• アンカーピン間隔に関するよくある質問
• まとめ:間隔の数字より密着と弱点部の管理が重要
法面緑化でアンカーピン間隔が重要な理由
植生シートや植生マットは、植物が十分に成立するまでの間、種子や肥料などを保持し、法面表層の侵食を抑える目的で用いられます。施工直後は、地山への密着、端部や重ね部の納まり、アンカーピンや止め釘による固定が重要です。国土技術政策総合研究所の手引きでも、植生マットは地山と密着させることで侵食防止効果が高まるため、凹凸を少なく整地し、法肩を巻き込んで法尻方向へ敷設する考え方が示されています。
浮きがあると、端部や隙間から風が入り、資材が繰り返し動いて固定部や重ね部へ負担が集中するおそれがあります。雨水がシート下へ入り込めば、地山との密着が失われ、局部的な侵食や種子・細粒分の流出につながる可能性もあります。そのため、固定具の本数だけでなく、地山へ沿って敷設できているか、端部から風や水が入りにくい納まりになっているかを確認します。
資材のずれは、マットの自重、含水による重量変化、勾配、地山との摩擦、固定具の定着、資材の剛性や継ぎ方などが組み合わさって生じます。法長が長いから上端の固定点へ必ず荷重が集中する、あるいは急勾配だから一定割合で本数を増やせばよい、と単純化することはできません。勾配や法長は、標準配置の適否を再確認するための条件として扱い、固定系全体と現場の弱点部を見ます。
また、アンカーピンは植生シートや植生マットなどの表面資材を固定する部材であり、深いすべりや不安定な地山を安定化させる構造物ではありません。北陸地方整備局の設計要領でも、植生工の根系は比較的表層にとどまり、深いすべりを生じる法面には効果がないため、条件によっては構造物工を適用すると整理されています。湧水、表層崩壊、落石、著しい風化、開口亀裂などが確認された場合は、表面資材の固定だけで対応せず、設計者や発注者へ報告して必要な安定対策を検討します。
したがって、間隔を検討する前に、対象となる不具合を整理します。風による浮きなのか、含水後の資材のずれなのか、表流水の侵入なのか、地山そのものの不安定化なのかによって、必要な対策は異なります。
先に押さえたい「間隔」より密度と配置の考え方
仕様書や標準図では、固定具の条件が縦横のピッチだけで示されるとは限りません。1m²当たりの本数、100m²当たりの数量、アンカーピンと止め釘の合計、両者を分けた数量、資材幅に対応した配置図など、示し方はさまざまです。数字を読むときは、何を数えた本数なのかを最初に確認します。
固定具を正方形格子へ均等に置くと仮定した場合、概算ピッチは「1÷√(1m²当たりの本数)」で求められます。4本/m²なら約0.50m、6本/m²なら約0.41m、3本/m²なら約0.58mです。ただし、この計算は密度を距離の感覚へ置き換えるだけの算術上の目安です。実際の配置では法肩、法尻、左右端部、重ね部、構造物際などへ固定具を配分するため、中央部と端部を同じ間隔にするとは限りません。
公的資料の一例として、愛知県の積算基準では、植生マット工と肥料袋付き繊維ネット工についてアンカーピンと止め釘を合わせて6本/m²程度、植生シート工を4本/m²程度、肥料袋のない繊維ネット工を3本/m²程度とし、アンカーピンはφ9(D10)×L=200mm、止め釘はL=150mmを標準例としています。一方、中部森林管理局の令和6年標準施工図では、100m²当たり、肥料袋なしはアンカーピン300本、肥料袋ありはアンカーピン300本と止釘300本を示し、アンカーピンの配置は資材メーカーの資料等を参考にするとしています。これらは資料ごとの適用範囲における標準例であり、全国一律の設計値ではありません。
茨城県の施工管理基準にも、植生マット・繊維ネットについて肥料袋付き6本/m²以上、肥料袋なし3本/m²以上という例がありますが、同じ資料は、工法により標準本数が異なる場合は監督職員と協議する旨を注記しています。公的資料の数字は「どこでも使える安全値」ではなく、適用機関、工種、資材構成、契約条件を確認して読む必要があります。
施工管理上は、固定具を「資材のずれを抑える主要な固定」と「地山への密着を補う固定」に分けて整理すると配置を検討しやすくなります。ただし、「主固定」「補助固定」などの名称や役割分担は図書や資材によって異なります。現場独自の呼び方を正式な仕様と混同せず、配置図の凡例で固定具の種類、規格、役割を明確にします。
基準1:設計図書と固定具密度を起点にする
第一の基準は、発注図書、特記仕様書、標準施工図、承認された施工計画、採用資材の施工要領に示された固定条件を起点にすることです。「いつも50cmだから」「過去の現場で6本/m²だったから」といった経験値だけで決めるのは避けます。植生シート、植生マット、繊維ネットでは、厚さ、重量、伸び、袋材の有無、ネットの構成、ロール幅、必要な重ねが異なります。
最初に確認する項目は次のとおりです。
• 示された本数はアンカーピン単独か、止め釘との合計か
• 1m²当たりか、100m²当たりか
• 出来形面積に対する本数か、重ねやロスを含む材料数量か
• 法肩、法尻、左右端部、重ね部、切断部の増し打ちが標準数量に含まれるか
• ピンの径、長さ、形状、頭部の押さえ方法が指定されているか
• 配置変更や代替品の使用に承認・協議が必要か
固定条件を確認したら、総本数だけでなく配置図へ落とし込みます。ロール幅、縦継ぎ、横継ぎ、法肩の巻込み、法尻の端末、構造物際、排水施設との取り合いを描き、固定具の種類を記号で分けます。数量表だけでは、端部の不足や重ね部の片側だけを押さえる誤りを見落としやすいためです。
複数の図書で内容が異なる場合は、現場判断で少ない方へ合わせません。契約上の優先順位を確認し、設計者または発注者へ照会して、採用する規格、数量、配置、変更手続きを明確にします。資材の施工要領が契約図書と異なる場合も同様です。施工前の確認記録を残し、承認された内容を施工班へ共有します。
固定密度を面積から算出した後は、端部へ本数を配分した結果、中央部が過度に粗くなっていないかを確認します。また、肥料袋や基材袋を持つ資材では、袋部を押さえる位置や連続方向が施工要領どおりかを見ます。平均本数を満たしていても、必要位置に固定具がなければ仕様を再現したことにはなりません。
基準2:勾配と法長に応じて上下方向の配置を見直す
第二の基準は、法面勾配と法長を、標準配置の適否を見直す条件として使うことです。勾配が急になるほど資材自重の斜面下向き成分は大きくなりますが、実際のずれやすさは、地山との摩擦、資材の種類、固定具の定着、含水状態、端部処理などにも左右されます。そのため、勾配だけから一律の補正係数やピッチを導くことはできません。
緩勾配で法長が短く、地山が平滑で、設計図書の適用条件内にある場合は、標準配置を基本にします。一方、急勾配、長い法面、厚手または基材付きの資材、局部的な折れや突出がある場所では、設計図書や施工要領に照らして、法長方向の固定線、端部固定、ピン規格の再検討が必要です。変更が必要な場合は、施工計画の変更や設計協議を経て決定します。
図面上の代表勾配だけでなく、法肩の丸み、法尻の折れ、小段への取り付き、切盛境、岩や礫の突出部も確認します。平均勾配が緩くても、資材が凸部から凸部へ橋渡しされる場所は空隙が生じやすいため、下地整形や局部配置の見直しが必要です。
横継ぎや中間継ぎは、荷重分散を目的に現場判断で増やすのではなく、ロール寸法、設計図、施工要領に従います。継ぎ目を増やすと、水や風の侵入口も増える可能性があります。継ぎ目が必要な場合は、重ね方向、重ね幅、固定位置を指定どおりに施工し、上側の資材から流れ る水が継ぎ目へ入りにくい納まりを確認します。
施工は、法肩の固定を確実にしたうえで法尻方向へ進め、短い区間ごとに敷設と固定を完了させます。国土技術政策総合研究所の手引きも、法肩を巻き込んで固定した後、法尻方向へ敷設する手順を示しています。資材を強く引っ張って平らに見せるのではなく、地山へなじませ、しわや大きなたるみを残さないことが基本です。
基準3:地山の硬さと凹凸でピン長と固定方法を検討する
第三の基準は、地山の硬さ、締まり具合、石礫、風化、含水状態、表面凹凸に合わせて、指定されたピンが有効に施工できるかを確認することです。同じ本数でも、所定の打込み状態が得られず、頭部が浮いたり、ピンが容易に動いたりする状態では、設計どおりの固定とはいえません。
φ9(D10)×L=200mmなどの寸法は、公的資料にも標準例として示されますが、すべての地山に適合 する保証値ではありません。軟らかい表層、砂質土、含水した粘性土、礫質土、風化岩、硬質地山では、打込み性や保持状態が異なります。使用するピンの長さや形式は、契約図書と施工要領を優先し、現地条件と合わない場合は変更承認を得ます。
礫や硬い層に当たって所定の状態まで入らないピンを、曲げたり、切ったり、頭部だけ押し付けたりして本数へ計上してはいけません。許容される範囲で位置を移せるか、別の固定方法や下孔が必要か、資材そのものの適用を見直すべきかを、施工要領と設計者の判断に基づいて決めます。位置を変更する場合も、重ね部や端部を押さえる機能が失われないよう配置を再確認します。
凹凸への対応では、固定具を増やす前に下地処理を行います。浮石、浮土砂、突出した礫、切株、緩んだ土塊などを残すと、資材が地山から離れやすくなります。国土技術政策総合研究所の手引きでは、施工前に浮石や浮土砂等を除去して法面を清掃し、植生マットが密着するよう凹凸を少なく整地すること、凹凸が多い箇所ではアンカーピンを多用して密着させることが示されています。
ただし、深い凹部をピンで無理に引き込むと、資材の破れや固定部への局部的な負担を招くおそれがあります。整形、切込み、重ね処理など、資材に適した方法で地山へ追従させます。ピン頭は資材を確実に押さえつつ、打込み過多でネットやシートを損傷しない状態にします。
打設後の手触りや目視は、異常を見つける補助確認として有効ですが、合否判定の代わりにはなりません。引抜き確認も、すべての植生マット工で当然に行う標準試験ではありません。契約図書、品質管理計画、監督職員との協議で必要とされた場合に、方法、箇所、判定基準を定めて実施します。
基準4:法肩・法尻・端部・重ね部を重点確認する
第四の基準は、法肩、法尻、左右端部、重ね部、切断部、構造物との取り合いを重点確認することです。端部は風や水の侵入口になり得るため、浮きやめくれの起点として重点管理します。面積当たりの平均本数だけでは、こうした局部条件を十分に表せません。
法肩では、資材を設計図または施工要領で定める幅だけ天端側へ巻き込み、指定された方法で固定してから法面へ下ろします。巻込み幅を一律の数値で決めたり、余った資材を最後に折り返したりするのは避けます。天端からの表流水が資材下へ入り込まない納まりとし、必要な排水施設へ確実につなぎます。国土技術政策総合研究所の手引きも、法肩を巻き込むよう余裕を持たせて固定する施工を示しています。
法尻では、資材の端末が浮いていないか、排水溝や構造物との間に隙間がないか、集まった水で洗掘されるおそれがないかを確認します。ただし、シートやマットで既存の排水経路や水抜きを塞いではいけません。湧水や流入水がある場合は、固定を増やす前に排水計画を確認します。
左右端部、施工区画の境界、構造物の角、法面の張り出し部では、風の影響や切断端のほつれに注意します。どの範囲をどの間隔で密にするかは、設計図、標準図、施工要領に基づいて決めます。「端から何cmは必ず半ピッチ」といった全国共通ルールはありません。
重ね部は、重ね幅と方向だけでなく、両方の資材を確実に押さえられる位置に固定具があるかを確認します。横継ぎは表流水を受け流す向きとし、縦継ぎでは隙間やしわを残さないようにします。肥料袋付きの植生マットでは、隣接マットの隙間をなくし、肥料袋が水平方向に連続するよう留意する考え方が公的手引きに示されています。具体的な重ね幅と固定位置は、採用資材の施工要領を優先します。
樹木周り、排水路周り、曲線部、構造物際では、ロールを切ることで端部が増えます。標準の面積当たり本数だけを材料手配へ使うと局部固定分が不足する可能性があるため、施工図で切断位置と増し打ち分を拾い出します。
基準5:風・雨・湧水・寒冷条件を追加条件として扱う
第五の基準は、風、降雨、表流水、湧水、凍結融解、積雪などを、標準配置の適否を判断する追加条件として扱うことです。これらの条件があるからといって、標準ピッチを機械的に半分へすればよいわけではありません。排水、地山、端部、資材の適用性を含めて対策を選びます。
風に対しては、法肩、左右端部、凸部、構造物際、未固定範囲を重点的に管理します。施工中に広い範囲を一度に展開すると、固定前の資材があおられ、破損や飛散、高所作業上の危険につながります。施工計画と安全基準に従い、短い区間ごとに敷設と固定を完了させ、強風時は無理に作業を継続しません。
雨や湧水に対しては、固定具の増加より先に水の経路を確認します。天端排水が未完成、仮排水が法面へ流入している、縦排水路との取り合いに隙間がある、シート下へ湧水が出ている状態では、固定を増やしても根本対策になりません。国土技術政策総合研究所の手引きは、施工直前に表流水による侵食や新たな湧水がないか再確認し、必要な対策を検討すること、降雨直前や降雨中の作業を避けることを示しています。
寒冷地では、凍結融解や凍上により資材やピンの状態が変化する可能性 があります。同手引きでは、植生マットが凍上被害を受けやすい条件に対して、気象条件を踏まえ、長いアンカーピンへの変更、本数の増加、金網等による固定を検討する例が示されています。ただし、これらは現場判断で自由に追加するのではなく、設計条件、地域基準、資材適合性を確認し、必要な承認を得て採用します。
積雪地では、雪の移動、融雪水、凍結融解の影響が地域や斜面条件で異なります。一般的な本数だけで判断せず、発注機関の寒冷地仕様、設計者、資材供給者へ確認します。雪荷重を理由に特定のピッチを一律に推奨することは避けます。
増し打ちが必要な場合は、空隙、端部、継ぎ目、局部急変部など、原因と位置を対応させます。既設ピンの直近へ無計画に追加すると、地山や資材を傷める可能性があります。追加位置、ピン規格、数量、施工理由を記録し、承認された配置へ反映します。
基準6:試験施工と出来形管理で現場への適合を確認する
第六の基準は、必要に応じた代表箇所での試験施工と出来形管理により、図書で定めた仕様が現地で施工可能かを確認することです。法面は、同じ土質区分でも、含水状態、風化、礫の分布、締固め、凹凸が場所によって異なります。施工を始めて初めて、ピンが入りにくい場所、頭部が浮く場所、資材が追従しにくい場所が分かることがあります。
試験施工では、標準配置どおりに小区画を施工し、次の項目を確認します。
• ピンの打込み性と所定の施工状態
• 頭部による押さえと資材の損傷の有無
• 地山との密着、しわ、たるみ、空隙
• 法肩、法尻、左右端部、重ね部の納まり
• 肥料袋や基材袋の位置と連続性
• 排水施設や構造物との取り合い
• 施工手順と安全性
散水による確認を独自に行うと、法面を乱したり、契約外の試験になったりする可能性があります。降雨後の状態を確認する場合は、安全を確保し、施工計画または監督職員との協議に基づいて行います。標準配置で不具合が生じたときは、下地整形、排水、固定具の規格、配置、資材適用のどこに原因があるかを切り分けます。
出来形管理では、総本数だけでなく、固定具の種類、規格、配置、打込み状態、重ね部、巻込み部、端末処理を確認します。施工後に見えにくくなる箇所は、施工前後の写真を残します。一定面積ごとに使用本数を集計する場合も、契約図書で定められた測定頻度と方法を適用します。
茨城県の施工管理基準には、植生マットと繊維ネットのアンカーピン・止め釘を500m²に1箇所の割合で測定する例がありますが、これは同基準の適用工事における例です。同資料は工法により標準本数が異なる場合があることも注記しています。他の発注機関や工事へ、そのまま同じ頻度を適用しないようにします。
外観確認では、資材が地山へ沿っているか、ばたつく部分がないか、しわの谷へ水が集まりそうな形状になっていないか、ピン頭が浮いていないか、重ね部が開いていないかを見ます。手で押したときの空洞感は補助的な確認とし、合否は図書で定めた基準に従います。
施工後の初期点検を維持管理計画へ含める場合は、強風、まとまった降雨、凍結融解の後に、端部のめくれ、洗掘、重ね部の開き、ピンの抜け上がりなどを確認します。異常を見つけたら、増し打ちだけで済ませず、風、水、地山、施工状態のどこに原因があるかを確認して補修方法を決めます。
シート浮きとずれを招くよくある失敗
よくある失敗の一つは、面積と総本数だけを合わせ、配置を確認しないことです。中央部へ均等に打っていても、法肩、左右端部、重ね部が粗ければ、そこから風や水が入り込むおそれがあります。平均本数と配置図を両方確認します。
二つ目は、アンカーピンと止め釘を同じ役割として扱うことです。短い止め釘が密着補助として使われる仕様もありますが、どこまで主要な固定として数えるかは図書次第です。合計本数だけを見ず、種類別の規格と配置を確認します。
三つ目は、下地の凹凸を残したまま資材を強く引っ張ることです。施工直後は平らに見えても、凹部に空隙が残り、雨や風で資材が動く可能性があります。清掃と不陸整正を先に行い、資材を地山へなじませます。
四つ目は、所定の状態まで打ち込めなかったピンを、そのまま本数へ計上することです。礫や硬い層に当たったピンを曲げて押さえた状態は、設計 された固定状態とは限りません。位置変更や固定方法の変更が必要かを確認します。
五つ目は、法肩処理を最後に回すことです。必要な巻込み長さを先に確保せず法面を張ると、法肩で資材が不足したり、しわが集中したりします。法肩の固定位置と必要な余長を決めてから法尻方向へ施工します。
六つ目は、排水不良を増し打ちだけで解決しようとすることです。天端からの流入水、湧水、詰まった流末が原因なら、水の経路を直さない限り再発する可能性があります。排水処理を優先し、固定の変更はその後に検討します。
七つ目は、特定の公的資料にある6本/m²、4本/m²、3本/m²やL=200mmを全国共通の安全基準として扱うことです。これらは有用な標準例ですが、適用する発注機関、工種、資材、図書によって条件が異なります。個別工事の契約図書と承認された施工要領を優先します。
設計から施工までの実務手順
実務では、最初に設計条件を整理します。切土・盛土の区分、勾配、法長、小段、土質、地山の硬さ、湧水、天端からの流入水、風の影響、凍結・積雪条件、使用するシートやマットの構造を確認します。深いすべり、表層崩壊、落石、開口亀裂などの兆候があれば、植生資材の固定検討だけで済ませず、法面安定対策の要否を確認します。
次に、発注図書、標準図、施工要領から、固定具の種類、規格、数量、配置、重ね、法肩・法尻の処理を拾います。アンカーピン単独の本数か、止め釘との合計かを整理し、必要に応じて1m²当たりの密度へ換算します。換算ピッチは理解の補助に使い、実際の配置はロール幅、袋部、継ぎ目、端部に合わせて作図します。
その後、法肩、法尻、左右端部、重ね部、構造物際、排水路周辺、凹凸部、局部急勾配部などを施工図へ記入します。標準数量とは別に増し打ち分を見込む場合は、理由、範囲、固定具の種類を明記し、必要な承認を得ます。
施工前には法面を再確認します。設計後の降雨や風化で、表流水の跡、湧水、崩れ、浮石、土砂の緩みが生じていないかを確認し、必要な清掃、不陸整正、排水処理を行います。契約条件や施工計画に応じて代表区間で試験施工を行い、指定ピンの打込み性、資材の密着、端部と重ね部の納まりを確認します。
本施工は、法肩の巻込み固定から始め、法尻方向へ短い区間ごとに敷設・固定します。重ね方向を統一し、配置図に従って固定具を施工します。強風時、降雨直前、降雨中は、飛散、地山の乱れ、作業安全を考慮し、施工計画に従って作業可否を判断します。
完了時は、固定具の規格と本数、配置、頭部の状態、資材の浮き、重ね、端部、排水との取り合いを確認し、写真と集計記録を残します。施工後点検を行う場合は、時期、確認項目、補修判断を維持管理計画に定めます。
アンカーピン間隔に関するよくある質問
「アンカーピンは50cm間隔にすればよいですか」という質問には、50cmは計算上の目安の一つにすぎないと答えるのが適切です。4本/m²を正方形格子へ均等配置すると約50cmですが、実際には端部や重ね部への配分があり、4本がアンカーピン単独か止め釘を含むかも図書によって異なります。一律50cmとは決められません。
「間隔を狭くすれば狭くするほど安全ですか」という質問には、必ずしもそうではありません。過度に近接して打つと地山や資材を傷める可能性があり、下地や排水の問題は本数だけでは解決しません。必要な固定具を必要な位置へ、指定された方法で施工することが重要です。
「長いピンへ変えれば本数を減らせますか」という質問にも、単純な置換はできません。長さ、径、形状、本数、配置は一つの固定系として設計・指定されます。長いピンが地山への定着に有利な場合でも、資材中間部の密着や端部固定を自動的に代替するわけではありません。変更は設計照査と承認を経て行います。
「法肩だけ細かく打てばずれを防げますか」という質問では、法肩は重要ですが、左右端部、重ね部、法尻、局部的な折れや凹凸も確認が必要です。上端だけへ固定を集中させるのではなく、資材全体が地山へ密着し、端部が連続して納まる配置にします。
「止め釘はアンカーピン本数に含めてよいですか」という質問は、仕様書の定義次第です。アンカーピンと止め釘の合計を示す資料も、両者を別々に示す標準図もあります。数量表の注記、標準図の凡例、施工要領を確認し、名称だけで判断しません。
「地山が硬くてピンが入らない場合はどうしますか」という質問では、曲げたり切ったりして無理に納めるのは避けます。許容される位置変更、下孔、別形式の固定、別工法の必要性を、施工要領と設計者・発注者の判断に基づいて検討します。硬質地山では、植生マット工自体の適用性確認も必要です。
「施工後に少し浮いていても、植物が生えれば問題ありませんか」という質問には、原因を確認せず放置しない方がよいと答えます。初期の浮きが風や水で広がる可能性があるため、凹凸、端部、固定不足、湧水、施工時の張りすぎなどを確認し、図書と補修計画に基づいて早期に是正します。
まとめ:間隔の数字より密着と弱点部の管理が重要
法面緑化のアンカーピン間隔は、単一の数値で決めるものではありません。設計図書と資材仕様に示された固定密度・配置を起点にし、勾配と法長、地山の硬さと凹凸、法肩・法尻・端部・重ね部、風雨・湧水・寒冷条件を確認します。そのうえで、試験施工と出来形管理により、指定された固定状態を現地で再現できているかを確かめます。
4本/m²、6本/m²、3本/m²を概算ピッチへ換算する方法は便利ですが、平均値だけでは端部の弱さ、固定具の種類、重ね部の配置を表せません。浮き対策では地山への密着と端部からの風・水の侵入防止、ずれ対策では有効な定着と連続した端部・継ぎ目管理が重要です。下地整形や排水を省略し、固定具だけで解決しようとしないことも欠かせません。
施工前には、法面の勾配・法長、切土・盛土、地山、湧水、排水、使用資材、契約図書、施工要領をそろえ、設計者・発注者・施工者・資材供給者の間で固定具の規格、数量、配置、変更条件を確認してください。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

