法面緑化の施工では、設計時に定めた材料数量や施工条件を、そのまま最後まで維持できないことがあります。施工後の実測で残面積が想定より多い、吹付厚や跳ね返りの影響で材料消費が計画を上回る、納入が遅れる、保管中の材料に吸湿や破損が見つかるなど、残工区の材料計画を見直す場面はあり得ます。
ただし、材料不足を解消するために、施工担当者の判断だけで種子、肥料、基盤材、侵食防止・接着等の機能を担う材料や水量を変更するのは避けなければなりません。変更内容によっては、発芽・生育、付着、耐侵食性、吹付厚、圧送性などに影響し、設計図書や契約条件に関わる変更となります。
国土交通省関東地方整備局の令和8年度版「土木工事共通仕様書」では、植生用材料の種類・品質・配合は設計図書によること、工事実施の配合決定では発芽率を考慮し、設計図書に関して監督職員の承諾を得ることが示されています。実際に適用される手続きや管理値は、発注機関、工法、特記仕様書、施工計画によって異なるため、当該工事の最新版を優先してください。
この記事では、法面緑化の実務担当者が配合や使用量の見直しに直面したとき、材料切れを防ぎながら要求品質を守るための6手順を整理します。植生基材吹付工、客土吹付工、種子散布工などに共通する変更管理の考え方を示しますが、個別工事の設計図書や監督職員との協議・承諾等に代わるものではありません。
目次
• 法面緑化で現場配合変更が必要になる理由
• 手順1 設計条件と配合変更の目的を固定する
• 手順2 実施工数量と材料残量を同じ基準で再計算する
• 手順3 不足材料を機能別に分解して代替可否を判断する
• 手順4 試験練りと小規模施工で施工性と品質を確認する
• 手順5 承認、記録、作業員への周知を変更前に完了する
• 手順6 施工中の使用実績と施工後の品質を追跡する
• 材料不足と品質低下を防ぐ現場管理の要点
• まとめ 法面緑化の配合変更は数量管理と品質管理を一体化する
法面緑化で現場配合変更が必要になる理由
法面緑化で材料不足が起きる原因は、発注漏れだけではありません。設計時の地形・数量と施工時の法面状態との差、局部補修や巻き込み部の追加、平均吹付厚のばらつき、施工ロス、納入遅延、保管中の品質低下など、複数の要因が重なることがあります。
設計後の掘削や地山の変化によって凹凸、段差、局部的な崩れ、湧水箇所、補修部が生じると、材料計画上の施工面積や必要体積を見直す必要があります。吹付工の材料計画では、面積と厚さの積が基礎になるため、広い施工面では平均厚さの小さな差でも総使用量に影響します。ただし、契約上の数量や出来形数量を現場判断で置き換えてよいという意味ではありません。
施工時には、飛散、吹付面からの跳ね返り、ホ ースや混合槽内の残留、始終業時の廃棄などが生じます。勾配、地山の凹凸、表面状態、湧水、材料性状、ノズル操作、機械設定によって使用量は変わり得ます。強風や降雨など施工に不適切な条件では、無理に施工せず、施工計画や安全・品質上の中止基準に従うことが前提です。
調達・保管面では、納入遅延、搬入路の規制、破袋、濡れ、固結、異物混入などが有効在庫を減らします。表示された期限、推奨保管条件、品質保持条件がある材料は、それらを確認します。帳簿上の袋数が残っていても、実際に使用できる量と一致しない場合があるため、現物確認が欠かせません。
法面緑化の材料は、種子や肥料だけでなく、生育基盤、侵食防止・接着等の機能を担う材料、保水や施工性に関わる材料、水などが組み合わさっています。ある材料だけを減らすと、施工面積当たりの播種量や養分量、基盤の性状、付着性、圧送性が変わる可能性があります。反対に、特定材料や水を増やしすぎても、分離、だれ、閉塞、乾燥収縮などにつながるおそれがあります。
工法ごとに一般的な材料構成や施工厚の範囲は異なります。関東地方整備局の共通仕様書では、種子散布、客土吹付、植生基材吹付工を別の施工形態として整理しており、配合変更を一律の考え方で扱えないことが分かります。
したがって、配合変更の出発点は「何を減らせば最後まで施工できるか」ではなく、「変更後も何の性能と契約条件を守るか」です。設計条件、材料数量、機能、施工性、手続き、記録を順番に確認し、配合変更以外の対策も含めて判断します。
手順1 設計条件と配合変更の目的を固定する
最初の手順は、変更前の基準を明確にすることです。工法名、設計吹付厚、対象範囲、法面勾配、地山・土壌の状態、湧水の有無、施工時期、目標植生、種子配合、基盤材の配合、肥料、付着・侵食防止・保水等に関わる材料、検査項目を整理します。設計図書、特記仕様書、施工計画書、承諾済み資料に差がある場合は、適用順位と最新版を確認します。
吹付厚や植物導入条件は、単に材料在庫だけで決められるものではありません。国土交通省四国地方整備局の法面緑化に関する公的手引きの一例では、植生基材吹付工の吹付厚を検討する要素として、地山の状態、降水量、法面勾配、導入植物が挙げられています。これは個別工事の設計条件を置き換える基準ではありませんが、配合や厚さを法面条件と切り離して考えないための参考になります。
次に、変更の目的を一文で説明できるようにします。実測した残施工範囲に対して材料が不足するのか、特定材料の納入遅延に対応するのか、保管品の品質不良で使用可能量が減ったのか、法面状態の変化に対して施工性を見直すのかを分けます。数量不足への対応と、品質改善を目的とする技術変更を混在させると、必要な確認や手続きが曖昧になります。
変更範囲も固定します。全施工範囲に適用するのか、特定工区だけか、次回納入までの一時対応か、数回の練り混ぜに限定するのかを明確にします。同一法面の途中で配合が変わる場合は、測点、展開図、施工日、配合番号などで境界を特定できるようにします。
さらに、守るべき条件と調整候補を分けます。設計吹付厚、設計図書で定めた材料・配合、発生期待本数や播種量、要求される付着・耐侵食性、安全性、周辺環境への適合などは、必要な手続きを経ずに緩和できません。一方、施工計画や材料仕様で許容された範囲内の仕込み量、投入順序、練り混ぜ時間などは、施工設備に合わせて調整できる場合があります。
「承認」という一語だけで処理せず、当該工事で必要な行為が協議、承諾、確認、報告、設計変更のどれに当たるかを契約図書で確認します。公共工事の用語は意味が分かれており、現場内の社内決裁と、発注者側との契約上の手続きを混同しないことが重要です。
実務では、変更前配合、変更理由、対象範囲、守るべき性能、変更候補、確認方法、必要な手続き、責任者を一枚の変更管理票にまとめると、判断がぶれにくくなります。材料の単位も、袋、質量、体積、一槽当たり、施工面積当たりが混在しないよう、換算根拠と基準単位をそろえます。
この手順の目的は、材料不足を理由に要求品質まで下げないことです。変更の目的と限界を先に固定すれば、数量計算、代替材料の比較、試験、手続きを同じ基準で進められます。
手順2 実施工数量と材料残量を同じ基準で再計算する
二つ目の手順は、残工事に必要な量と、現場で使用可能な量を、同じ単位・同じ時点で再計算することです。当初発注量、納入量、払出量、使用量、廃棄量、帳簿残量、現物残量が別々に管理されていると、見かけ上は足りていても施工途中で不足します。
ここでは、契約・出来形上の数量と、社内の材料手配に使う見込数量を分けます。材料計画では、設計数量を起点に、未施工範囲の実測、出来形、補修予定、施工実績を用いて必要量を更新します。一方、契約数量や出来形数量の扱いは、設計図書、数量算出要領、施工管理基準に従います。関東地方整備局の令和8年度版共通仕様書では、出来形測量を基に数量を算出し、規格値を満たす場合は出来形数量を設計数量とする規定があるため、「現地実測だけで契約数量を置き換える」と読める表現は不適切です。
残施工範囲は、展開図や測点を用いて、斜面長、延長、凹凸、巻き込み、未施工部、補修予定部を確認します。吹付工の社内材料計画では、基本となる出来形体積を「施工面積×設計吹付厚」で整理できます。ただし、材料のかさ密度、含水状態、練り上がり量、圧送後の状態は工法や材料で異なるため、単純な体積換算だけで発注量を決めず、承諾済み配合、材料仕様書、過去の実績と照合します。
必要投入量を見積もるときは、試験分、機械内残留、始終業時のロス、局部補修などを社内計画上の予備として扱います。ロス率は根拠なく一律に置かず、既施工区の投入量、施工面積、吹付厚、跳ね返り、廃棄量を確認して補正します。過剰吹付や不適切なノズル操作による無駄まで、必要ロスとして固定化しないことが大切です。
材料残量は、未開封品、開封済み品、使用可否確認中の品、使用不可品に分けます。開封済み材料は、 可能であれば質量を測定します。吸湿した材料は見かけの質量だけで有効量を判断せず、固結、変色、臭気、異物、品質規格、供給元の取扱条件を確認します。異なるロットや類似材料の混用可否も、材料名だけでなく品質資料で確認します。
次に、一槽当たりの実際の投入量と施工可能面積を整理します。混合槽の公称容量と適正な作業容量は同じとは限りません。材料のかさ密度や含水状態によって仕込み体積が変わり、練り混ぜ後の状態や圧送条件でも出来高は変わります。一槽で何平方メートルを所定厚に施工できたかを記録すると、残量予測の精度が上がります。
材料ごとに「あと何平方メートル施工できるか」を計算し、最も早く不足する支配材料を特定します。基盤材が残っていても、種子、肥料、侵食防止・接着等の機能を担う材料のいずれかが先に尽きれば、承諾済み配合のまま施工を続けられません。
最終日までぴったり使い切る計画は避けます。機械トラブル、追加補修、材料状態のばらつきなどに備える予備量を 設定します。ただし、予備量は現場条件と実績に基づいて決め、根拠のない上乗せで余剰を増やさないようにします。
再計算の結果、施工順序の変更、追加搬入、在庫の適正な移動、ロス削減で解決できるなら、まず配合を変えない方法を優先します。配合変更は、数量管理だけでは不足を解消できず、必要な技術検討と手続きを経られる場合に限って検討します。
手順3 不足材料を機能別に分解して代替可否を判断する
三つ目の手順は、不足材料を商品名や袋数ではなく、法面緑化で果たす機能に分けて考えることです。材料の名称が似ていても、粒度、繊維性、保水性、養分、接着・侵食防止機能、かさ密度、混合性が異なることがあります。反対に、名称が異なっても、試験や品質資料によって同等性を説明できる場合があります。
種子が不足している場合は、質量比だけで判断しません。発生期待本数、発芽率、純度、単位粒数、施工時期、覆土条件、目標植生との整合を確認します。公的手引きでは、発生期待本数は播種量算出の基礎となる、一定期間に発芽を期待する本数であり、施工後に残る成立本数とは区別されています。また、播種量は発芽率、単位粒数、純度、立地や施工時期等の補正を含めて検討する考え方が示されています。
ある種の不足を別の種で補うと、初期被覆、将来の植生構成、周辺植生との調和が変わる可能性があります。特に在来種や地域性種苗、特定の目標群落が指定されている工事では、入手性だけを理由に種構成を変えず、設計意図と必要な手続きを確認します。
肥料が不足している場合は、製品質量だけでなく、成分、肥効期間、溶出特性、施用量、使用植物、基盤や土壌の性状を比較します。関東地方整備局の共通仕様書では、肥料が設計図書に示されていない場合、植物の育成特性、土壌特性、肥効期間等を考慮し、品質規格証明書を照合した上で監督職員の承諾を得るとされています。
基盤材が不足 している場合は、別材料で単純に体積を増やすことを避けます。生育基盤は、根系の生育空間となり、水分、空気、養分を保持しながら、法面に所定厚で安定して残る必要があります。粒度、繊維性、有機物の状態、かさ密度、乾燥収縮、排水性が変われば、同じ厚さでも性状は同じとは限りません。
侵食防止、接着、団粒化などの機能を担う材料が不足した場合は、工法ごとの役割と必要量を確認します。施工直後の外観だけでは、降雨や乾湿の繰り返しに対する安定性を判断できないことがあります。材料名や少量という理由だけで削減せず、品質資料、承諾済み配合、試験結果で影響を確認します。
保水機能を持つ材料が不足した場合、施工時の水を増やせば同じ機能になるとは限りません。加水量は混合・圧送・吹付時の施工性に影響しますが、乾燥後の基盤が水分を保持する性状とは別に確認する必要があります。過剰な加水は、材料分離、だれ、付着性低下、乾燥収縮を招く可能性があるため、許容範囲を材料仕様や試験で確認します。
代替材料を比較するときは、成分、粒度、含水状態、かさ密度、混合性、圧送性、付着性、乾燥後の状態、植物への影響、周辺環境への適合を一覧にします。品質規格証明書、試験成績書、取扱資料、安全情報を確認し、現場保管品の状態とも照合します。同じ分類名であることだけを同等性の根拠にしないことが重要です。
材料を減らす以外の方法も検討します。追加搬入まで施工範囲を限定する、施工順序を入れ替える、機械内残留を減らす、吹付距離やノズル操作を適正化する、施工班ごとのばらつきを抑えるなど、配合を変えずに不足量を縮小できる場合があります。
検討結果は、変更前後で「同じもの」「変わるもの」「未確認のもの」を文章と表で説明できるようにします。「類似品だから問題ない」「少量だから影響しない」という表現では根拠になりません。未確認事項が残る場合は、次の試験練り、小規模施工、追加資料で確認します。
手順4 試験練りと小規模施工で施工性と 品質を確認する
四つ目の手順は、変更の影響を机上資料だけで判断しにくい場合に、必要な手続きを経たうえで試験練りや小規模施工を行うことです。試験の要否、規模、評価項目は、設計図書、特記仕様書、施工計画、変更リスクに応じて決めます。すべての工事で一律に同じ試験が義務付けられているわけではありません。
試験練りでは、可能な限り本施工と同じ材料、ロット条件、混合設備、投入順序、練り混ぜ時間を用います。小型容器の手練りだけでは、実機での偏り、槽内付着、ポンプ負荷、ホース内の流れ、閉塞傾向を確認できないため、変更リスクが高い場合は実設備に近い条件で確認します。
確認する施工性には、混合の均一性、ダマや分離の有無、槽内付着、圧送の安定性、脈動、閉塞、吐出状態、飛散、跳ね返り、だれなどがあります。水量を増やして圧送しやすくなっても、法面への付着や所定厚の形成が悪化することがあります。反対に粘性が高すぎると、圧送負荷や吐出のばらつきが増える可能性があります。
小規模施工を行う場合は、本施工に近い勾配、地山状態、日照、風、湧水の条件を選びます。平坦面での試し吹きだけでは、急勾配部、凹凸部、金網周辺、法肩・法尻、湧水部での挙動を十分に確認できない場合があります。
合否判定項目は試験前に決めます。施工面積当たりの投入量、吹付厚、付着状態、表面の均一性、材料分離、跳ね返り、圧送の安定性などを、設計図書や施工計画の管理値と照合します。必要に応じて、材料の含水状態、かさ密度、混合の均一性、供試体や試験区の状態を確認します。
発芽や生育は施工当日に確定できません。種子変更の影響が大きい場合は、発芽試験、先行試験区、既往データ、供給元資料などを組み合わせます。施工直後の外観だけで「同等」と断定せず、降雨・乾燥後の亀裂、収縮、剥離、侵食、表面硬化も確認対象にします。
不具合が出たときは、一度に複数条件を変えないことが基本です。材料 比率、加水量、投入順序、練り混ぜ時間、機械設定、下地処理を切り分け、変更した条件と結果を記録します。原因が分からないまま水量だけを増減すると、再現性のない配合になります。
試験で要求性能を確認できない場合は、残工区が少ないことを理由に本施工へ進めません。追加資料の取得、再試験、施工範囲の限定、追加搬入待ちなどを検討し、未確認のリスクを不具合範囲へ拡大させないことが重要です。
手順5 承認、記録、作業員への周知を変更前に完了する
五つ目の手順は、変更配合を使用する前に、当該工事で必要な協議、承諾、確認、社内決裁、記録、現場周知を完了することです。試験結果が良好でも、契約上必要な手続きを経ていない配合を施工担当者の判断だけで採用すると、検査時に説明できず、手直しや契約上の問題につながる可能性があります。
変更資料には、変更理由、対象工区、適用期間、変更前後の配合、材料ごとの単位、換算根拠、機能比較、品質資料、試験結果、施工方法、管理項目、停止・再検討条件を記載します。一槽当たりの配合だけでなく、施工面積当たりや出来形体積当たりの量も示すと、槽容量が変わっても比較しやすくなります。
手続きの経路は、現場代理人、監理・主任技術者、施工管理担当者、品質管理担当者、監督職員など、当該工事の体制に合わせて明確にします。誰が技術的妥当性を確認し、誰が使用開始を判断したかを記録します。口頭の連絡や指示が認められる状況でも、書面化の方法と期限は契約図書に従います。
作業員への周知では、変更後の配合表を掲示するだけで終わらせません。材料の識別、投入順序、計量方法、許容された加水範囲、練り混ぜ時間、一槽当たりの施工目安、適用開始位置、異常時の連絡・停止条件を読み合わせます。半袋や端数を目分量で投入しないよう、計量方法も決めます。
交代勤務や複数班で施工する場合は、引継ぎ記録を残します。混合担 当、機械担当、ノズル担当、記録担当が同じ最新版を参照し、旧配合表が現場に残らないようにします。同一工区内の変更境界は、測点、展開図、配合番号、施工日報、写真で追跡できるようにします。
材料の識別管理も必要です。変更前材料、代替材料、使用可否確認中の材料、隔離品を分け、表示、保管場所、搬出順を整理します。ロット番号、納入日、品質資料と施工範囲を結び付けると、後日の原因調査がしやすくなります。
写真管理や記録の具体的な頻度は工事ごとに異なります。関東地方整備局の令和8年度版写真管理基準では、植生基材吹付工・客土吹付工について、厚さや材料使用量などを撮影項目とする例が示されています。これをそのまま全工事へ適用するのではなく、当該工事の写真管理基準と照合してください。
承諾や記録は事務作業ではなく、変更した施工条件を再現するための一部です。試験で良い結果が出ても、現場全員が同じ材料、同じ計量、同じ施工条件を守れなければ、品質は安定しません。
手順6 施工中の使用実績と施工後の品質を追跡する
六つ目の手順は、変更後の配合が計画どおり使用され、要求品質を満たしているかを継続的に追跡することです。配合変更は、承諾や使用開始で終わりではありません。材料収支、施工実績、出来形、初期安定、生育を確認して妥当性を評価します。
施工中は、一槽ごとの投入量、材料の識別情報、加水量、練り混ぜ時刻、施工時刻、施工範囲、施工面積、天候、作業班を、必要な精度で記録します。すべてを一槽単位で記録するか、ロット・日単位でまとめるかは施工計画によりますが、変更配合の適用範囲と使用量を後から再現できることが最低条件です。
材料収支は、前日末残量、当日受入量、当日払出・使用量、廃棄量、当日末残量がつながるように管理します。帳簿と現物に差が出た場合は、記録漏れ、破袋、機械内残留、別工区への移動などを当日中に確認しま す。差を数日放置すると、どの施工範囲に影響したか追跡しにくくなります。
施工品質は、吹付厚、被覆の均一性、付着状態、亀裂、材料分離、局部的な薄層、飛散・跳ね返りを確認します。見た目だけで判断せず、当該工事の出来形管理方法に従って、設計値と実測値を照合します。平均値だけでなく、法肩、端部、凸部、湧水部など弱点になりやすい箇所も確認します。
天候変化後の確認も重要です。降雨後は流亡、筋状侵食、剥離、土砂堆積を、乾燥が続いた後は亀裂や過度な乾燥を観察します。湧水箇所や排水施設周辺は一般部と分けて記録し、配合変更の影響と下地・排水条件の影響を切り分けます。
生育確認では、発芽の有無だけでなく、発芽の均一性、成立密度、種ごとの偏り、裸地の残存、初期の葉色、基盤の流亡との関係を見ます。発芽時期は植物、施工時期、気象によって変わるため、短期間の観察だけで失敗と断定しません。一方、広範な流亡、基盤剥離、明らかな無播種などが見られた場合は、早期に原因を調べ ます。
施工前に、社内の停止・再検討条件を決めておくと、品質低下の拡大を防げます。圧送詰まりの頻発、材料分離、所定厚を安定して形成できない、面積当たり使用量が管理範囲を外れるなどの兆候があれば、施工を止め、材料、機械、作業方法、下地条件を確認します。
追加搬入後に元の配合へ戻す場合も、切替位置、日時、配合番号を記録します。変更配合を継続する場合は、当初の承諾範囲を超えていないかを確認し、必要なら改めて手続きを行います。
関東地方整備局の令和8年度版施工管理基準では、測定・試験を施工と並行して行い、結果をその都度記録・保管すること、出来形を実測して設計値と対比することが示されています。具体的な項目と頻度は当該工事の基準を優先しますが、「施工後にまとめて記録する」のではなく、施工中から追跡する考え方が重要です。([国土交通省 交通局][1])
材料不足と品質低下を防ぐ現場管理の要点
配合変更を適切に行うだけでなく、緊急変更そのものを減らす仕組みをつくることが重要です。第一に、在庫を袋数だけで管理せず、承諾済み配合と直近の実績使用量から、あと何平方メートル施工できるかを把握します。追加手配や施工順序見直しを始める在庫水準も、材料ごとに決めます。
第二に、施工開始直後の実績を早期に計画へ反映します。最初の数槽または初日の投入量、出来形面積、吹付厚、跳ね返り、廃棄量を確認し、当初見込みとの差を計算します。差が大きい場合は、残数量と追加手配を早めに見直します。
第三に、配合と施工方法を分けて管理します。材料消費の増加が、ノズル距離、吹付角度、機械設定、混合時間、法面清掃、作業班のばらつきに起因することがあります。原因を確認せずに配合を薄めると、施工ロスを残したまま品質だけを下げるおそれがあります。
第四に、材料受入時の確認を徹底します。数量、荷姿、表示、破損、濡れ、固結、ロット、品質資料、保管条件を確認し、使用可能量を在庫に計上します。先入れ先出しが適切な材料は保管順を整え、雨水、直射日光、高温など材料に不適切な条件を避けます。
第五に、変更判断の責任者と連絡経路を施工前に決めます。どの調整が承諾済み範囲内か、材料種類や種子配合の変更にどの手続きが必要か、緊急時に誰へ連絡し、何を記録するかを施工計画に含めます。
第六に、品質基準を「見た目が同じ」「吹き付けられた」といった表現で済ませません。設計吹付厚、材料使用量、付着、耐侵食性、発生期待本数や播種量、植生成立、周辺環境との適合など、工事目的と設計図書に沿った確認項目を設定します。
変更前後の施工区分は、写真だけに頼らず、測点、展開図、施工日、配合番号、材料ロットを組み合わせて記録します。写真は有効です が、撮影位置や対象範囲が不明確では、配合境界や不具合範囲を特定できません。
材料不足への対応では、工期、在庫、品質を同時に見ます。施工を止めないことだけを優先すれば品質リスクが高まり、品質だけを論じて調達や工程を更新しなければ施工計画が破綻します。残施工量、支配材料、必要性能、変更範囲、手続きを一つの管理表で扱うと、判断がしやすくなります。
なお、法面緑化の材料・配合・管理値・手続きは、発注機関や工法によって異なります。一般論や他現場の標準配合を、そのまま当該工事へ転用せず、設計図書、特記仕様書、共通仕様書、施工管理基準、材料仕様書の最新版を確認してください。
まとめ 法面緑化の配合変更は数量管理と品質管理を一体化する
法面緑化の現場配合変更で材料不足と品質低下を避けるには、目の前の在庫だけで判断せず、設計条件と要求性能から逆算 して変更を管理することが大切です。最初に設計条件、変更目的、対象範囲を固定し、次に契約上の数量と社内の材料見込数量を分けたうえで、残施工量と使用可能在庫を再計算します。
そのうえで、不足材料の機能を分解し、代替や減量が、発芽・生育、養分、保水、付着、耐侵食性、施工性に与える影響を確認します。必要に応じて試験練りや小規模施工を行い、当該工事で必要な協議・承諾等、記録、作業員への周知を終えてから適用します。
施工開始後も、材料収支、面積当たり使用量、吹付厚、付着状態、天候後の変化、発芽・生育を追跡し、異常があれば早い段階で停止して見直します。変更配合の良し悪しは、材料名だけでなく、法面条件、施工時期、目標植生、使用機械、材料状態、作業方法を含めて評価する必要があります。
材料残量が合わない、代替材料の同等性を説明できない、変更手続きや確認項目が整理できない場合は、施工を進める前に、工法、設計厚、残施工範囲、在庫、施工環境、適用図書をそろえ、監 理・主任技術者、施工管理担当者、監督職員、設計者、材料供給元など当該工事の関係者へ確認してください。
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