目次
• 法面緑化で施工後の降雨確認が重要な理由
• 降雨後の確認時期と安全な点検計画
• 法面全体の色・凹凸・連続性を確認する
• 筋状の流れ跡と植生基盤の薄層化を確認する
• 法肩からの流入と上部排水の異常を確認する
• 谷部・くぼ地・構造物際への雨水集中を確認する
• 法尻の土砂堆積と排水施設の閉塞を確認する
• ネット・アンカー・端部の浮きやめくれを確認する
• 降雨量と施工条件を点検結果に結び付ける
• 初期流亡を発見したときの補修範囲の決め方
• 降雨確認を継続的な維持管理につなげる方法
• まとめ
法面緑化で施工後の降雨確認が重要な理由
法面緑化は、施工が完了した時点で品質が確定するものではありません。植生基盤材や種子、肥料、侵食防止材などが法面に定着し、植物の発芽と根系の発達が進むまでには一定の期間が必要です。施工直後から植生が十分に成立するまでの期間は、法面表面が降雨の影響を受けやすく、わずかな排水の偏りが初期流亡や局部的な侵食につながることがあります。
特に注意したいのが、施工後に初めてまとまった雨が降ったときです。乾燥状態では見つけにくかった凹凸や水みちが、実際の雨水によって明確になります。設計や施工時には問題がないように見えた場所でも、周辺地形、既設構造物、法肩の勾配、地山の起伏などが影響し、想定外の方向から雨水が流れ込む場合があります。
初期流亡は、法面全体が大きく崩れるような現象だけを指すわけではありません。表面の植生基盤材が数ミリ程度薄くなる状態、種子を含む表層だけが移動する状態、筋状の細い溝が形成される状態も、初期段階の異常として捉える必要があります。小さな変化であっても、そのまま次の降雨を受ければ流れが同じ場所に集中し、溝が深くなったり、周囲の基盤材まで巻き込んだりする可能性があります。
排水異常についても、側溝や集水ますが完全に詰まっている状態だけを確認すればよいわけではありません。排水施設へ入る手前で水があふれている、法面から流出した基盤材が排水溝の底に堆積している、排水口付近だけ流速が高くなっているといった兆候も重要です。排水能力そのものに問題がなくても、流入口の段差や周辺の仕上がりによって水が排水施設へ入らず、法面側へ回り込むことがあります。
施工後の降雨確認は、完成状態を形式的に確認するための巡回ではありません。雨水が実際にどこから入り、どこを通り、どこへ排出されたのかを現地で読み取る作業です。施工時の品質確認と維持管理の間をつなぐ重要な工程として位置付け、異常が小さい段階で記録し、必要な補修や排水改善へ反映することが求められます。
降雨後の確認時期と安全な点検計画
降雨確認は、雨が強く降っている最中に法面へ立ち入って行うものではありません。降雨中や降雨直後は、地山の緩み、落石、表層崩落、排水路からのあふれ、ぬかるみによる転倒などの危険があります。点検の実施時期は、法面の規模、勾配、地質、施工方法、降雨状況、現場の安全管理基準を踏まえて判断する必要があります。
まずは現場へ入る前に、降雨量や降雨継続時間、直前までの天候、周辺で発生した警報や注意情報を確認します。同じ降雨量でも、短時間に集中した雨と長時間続いた雨では、法面に現れる影響が異なります。短時間の強い雨では表面流による侵食が生じやすく、長雨では植生基盤材や地山の含水状態が高まり、浮きやずれが起こりやすくなることがあります。
現地到着後は、すぐに法面へ近づかず、まず安全な位置から全景を確認します。法肩、法尻、側方の地形、排水施設、周辺道路などを広く見渡し、落石、崩土、濁水、異常な水音、排水のあふれがないかを確認します。異常が疑われる場合は、点検を続けることよりも立入範囲を制限し、安全管理担当者や関係者へ状況を共有することが優先されます。
点検経路も事前に決めておくことが大切です。一般には、安全な外周から法面全体を確認し、法肩側の流入状況、法面中央部の流れ跡、法尻側の土砂堆積や排水状況へと視線を移します。ただし、急勾配法面や高所では、無理に接近せず、離れた位置からの目視や撮影を中心にします。必要に応じて、専門的な安全設備や点検方法を採用し、現場条件に合わない立入りを避けなければなりません。
施工後の初回降雨だけでなく、雨の強さが異なる複数回の降雨後に確認すると、水みちの再現性を把握しやすくなります。最初の弱い雨では異常が見られなくても、その後の強い雨で局部流亡が生じる場合があります。反対に、初回降雨で生じた軽微な筋流れが、その後の雨で拡大していないこともあります。毎回の点検結果を同じ位置、同じ方向から記録することで、変化の有無を客観的に比較できます。
1. 法面全体の色・凹凸・連続性を確認する
施工後の降雨確認では、最初から細かな箇所だけを探すのではなく、法面全体の見え方を確認します。全景を見ることで、植生基盤材の色むら、面の連続性、局部的なくぼみ、盛り上がり、表面の荒れなどを把握できます。近くで見ると小さな違いにしか見えない状態でも、離れた位置から見ると帯状や斑状の異常として認識できることがあります。
植生基盤材が均一に残っている部分は、施工時に近い色調と表面状態を保っていることが一般的です。一方、雨水で表層が流された部分は、周囲より色が薄い、地山の色が透けて見える、粗い材料だけが残るといった変化が現れることがあります。水分を多く含んでいるだけで色が濃く見える場合もあるため、色だけで流亡と断定せず、周囲の凹凸や流れ跡と合わせて判断します。
凹凸の確認では、施工前から存在していた地山形状と、降雨によって新たに生じた変化を区別することが重要です。施工時の写真や完成直後の記録があれば、同じ位置から見比べます。施工後に発生したくぼみには雨水が集まりやすく、次の降雨でさらに侵食が進む可能性があります。また、表面が盛り上がって見える部分は、基盤材の内部に水が入り込んで浮いている場合や、ネット下で材料が移動している場合も考えられます。
法面の連続性を見るときは、上から下まで同じ状態でつながっているかを確認します。法面中段だけに横方向の境界が見える場合は、施工区画の継ぎ目、吹付厚の違い、作業中断箇所などが降雨によって目立っている可能性があります。継ぎ目の上側に水がたまり、そこから下側へ流れ出している場合は、局部的な水みちの起点になりかねません。
全景確認では、法面をいくつかの区画に分けて記録すると、見落としを減らせます。法肩側、中央部、法尻側、左側、中央、右側など、現場に合った区分を決め、各区画の状態を同じ順序で確認します。異常箇所だけを撮影するのではなく、法面全体の中でどこに位置するのかが分かる写真も残しておくと、補修範囲の検討や次回点検で役立ちます。
全体の色や凹凸に異常が見られない場合でも、それだけで初期流亡がな いとは判断できません。細い水みちや端部のめくれは、全景では確認しにくいことがあります。全体確認は点検の入口として行い、その後に筋状流亡、法肩、谷部、法尻、固定部という順で詳細を確認することが重要です。
2. 筋状の流れ跡と植生基盤の薄層化を確認する
施工後の初期流亡で特に見落としやすいのが、細い筋状の流れ跡です。まとまった面積の基盤材が失われていなくても、雨水が集中した場所には細い溝や線状の変色が生じます。この段階で水みちを確認できれば、大きな侵食へ進む前に排水経路や表面状態を見直せます。
筋状の流れ跡は、法肩から法尻まで一本につながるとは限りません。法面上部の小さなくぼみから始まり、途中で消えたように見えた後、下部で再び現れることがあります。これは、表面を流れていた水が植生基盤材へ一時的に浸透し、別の弱い部分から再び表面へ出ている可能性を示します。流れ跡を部分的に見るのではなく、上流側と下流側をたどり、起点と終点を確認することが大切です。
植生基盤材の薄層化は、周囲との段差や表面粒子の違いから判断します。表面の細かい材料だけが流れ、繊維分や粗い材料が残っている場合は、種子や肥料を含む層が失われている可能性があります。見た目には基盤材が残っていても、発芽や初期生育に必要な条件が不均一になり、後日になって植生のむらとして表れることがあります。
筋流れの深さや幅だけで補修の要否を決めるのではなく、位置と再発可能性を考慮します。法面中央の単独の浅い筋と、法肩から繰り返し水が供給される筋では、今後の拡大リスクが異なります。浅い流れ跡であっても、上部に集水しやすい地形がある場合や、下部の排水施設まで連続している場合は、次の降雨で同じ経路に水が集まりやすいと考えられます。
流れ跡の周囲に小さな土砂だまりがある場合は、どこから材料が移動してきたのかを確認します。溝のすぐ下に少量の基盤材が堆積しているなら局部的な移動の可能性がありますが、法尻や排水溝まで材料が到達している場合は、想定より広い範囲で流亡が起きていることがあります。流出元と堆積先を対応させて記 録すると、失われた範囲を把握しやすくなります。
また、筋状の異常が雨水によるものか、施工時の吹付むらやホース跡などによるものかも見極める必要があります。雨水による筋には、上流から下流へ連続する方向性、細粒分の移動、下端の堆積、周囲の湿潤などが伴うことがあります。完成直後の写真と降雨後の写真を比較し、新たに現れた変化かどうかを確認することが有効です。
3. 法肩からの流入と上部排水の異常を確認する
法面緑化の初期流亡は、法面に直接降った雨だけで生じるとは限りません。法肩より上の地表、道路、造成面、構造物周辺などから流れ込む雨水が加わると、法面上部に大きな負担がかかります。そのため、法面表面だけでなく、法肩周辺の流入状況と上部排水の働きを確認する必要があります。
法肩では、上部から来た水が排水溝へ適切に入っているかを確認します。排水溝の手 前に段差や盛り上がりがあると、水が横へ流れたり、排水施設を越えて法面へ落ちたりすることがあります。施工時の資材、土砂、伐採物、落ち葉などが残っていると、本来の排水経路が変わる場合もあります。
法肩から法面へ水が流れ込んだ形跡は、上端部のえぐれ、植生基盤材の欠損、濁水跡、細粒分の堆積などから確認できます。法面上部にだけ流亡が集中している場合は、法肩排水が十分に機能していない可能性があります。単に欠損部分を補修しても、流入経路を改善しなければ、次の降雨で同じ場所が再び流されるおそれがあります。
上部排水溝については、土砂や落ち葉による閉塞だけでなく、水の流れ方を確認します。排水溝内に水が流れた跡があっても、途中であふれた形跡がないか、接続部で漏れていないか、排水先へ無理なく流れているかを見ます。継ぎ目や屈曲部の周辺に濁水跡や洗掘がある場合は、流れが局部的に乱れている可能性があります。
法肩部の植生基盤材やネットの端部処理も確認対象です。端部が 地山へ十分になじんでいないと、その隙間から水が入り込み、基盤材の裏側を流れることがあります。表面上は大きな流れ跡が見えなくても、端部の下側が空洞化し、後から浮きやめくれとして現れる場合があります。端部周辺の沈み、段差、湿潤の偏りにも注意します。
法肩の上部地形が広い集水域になっている場合は、施工範囲外からの流入も含めて確認します。隣接地の造成、仮設道路、資材置場、盛土形状などが変わると、施工時に想定していた排水方向が変化することがあります。法面緑化の施工品質だけでは解決できない流入であれば、周辺排水を含む対策を関係者と検討する必要があります。
4. 谷部・くぼ地・構造物際への雨水集中を確認する
法面の谷部やくぼ地は、平坦に見える部分よりも雨水が集まりやすい場所です。周囲から流れ込んだ水が集中すると、植生基盤材に作用する流速や水量が大きくなり、筋状流亡、洗掘、材料だまりなどが起こりやすくなります。施工後降雨確認では、法面全体を均一に見るだけでなく、地形的に水が集まりやすい箇所を重点的に確認します。
谷部では、上部から下部へ連続する水みちが形成されていないかを見ます。谷の中心に沿って表面が薄くなっている場合だけでなく、谷の片側に流れが偏っている場合もあります。吹付厚や地山の凹凸が左右で異なると、水は最も低い部分へ寄るため、見た目の谷中心と実際の流路が一致しないことがあります。
くぼ地では、水が一時的に滞留した跡を確認します。乾燥後で水そのものが残っていなくても、細かい土砂の輪郭、材料の変色、泥膜、倒伏した繊維などから滞水を推定できる場合があります。水がたまりやすい場所では、種子や基盤材が移動するだけでなく、乾燥と湿潤の差が大きくなり、発芽や生育のばらつきにつながる可能性があります。
擁壁、排水構造物、階段、吹付枠、既設コンクリートなどの構造物際も注意が必要です。構造物表面を伝った水が法面へ集中して落ちると、接触部の植生基盤材がえぐられることがあります。また、構造物と地山の境界に隙間がある場合は、水が内部へ入り込み、見えない位置で材料を動かす可能性があります。
構造物際では、雨水の入口と出口を意識して確認します。上部の隙間から水が入っている場合、下部や側方の別の場所から濁水が出ていることがあります。入口だけを塞ぐと内部に水が滞留する場合もあるため、補修に当たっては排水経路全体を把握することが重要です。現場条件によっては、緑化部分の補修だけでなく、構造物周辺の止水や導水方法を見直す必要があります。
谷部や構造物際の異常は、局部的であっても再発しやすい傾向があります。水が集まる地形そのものが変わらなければ、材料を充填するだけでは同じ流路が再形成される可能性があります。補修範囲を決める際は、流亡した部分に加えて、その上流側の集水状況と下流側の排水先まで確認します。
撮影時には、谷部の正面写真だけでなく、斜め方向や上流側からの写真も残すと、水の流れを把握しやすくなります。位置情報と撮影方向を記録し、次回も同じ位置から撮影すれば、溝の拡大、堆積量の増加、補修後の再発などを比較できます。
5. 法尻の土砂堆積と排水施設の閉塞を確認する
法面上で流亡が起きた場合、移動した植生基盤材や土砂は法尻へ集まりやすくなります。そのため、法面表面に大きな欠損が見当たらなくても、法尻の堆積状況を確認することで初期流亡を発見できることがあります。法尻は流出物の受け皿になるだけでなく、側溝や集水ますなどの排水施設が配置されることも多いため、重点的な確認が必要です。
法尻に堆積した材料は、施工時のこぼれや清掃不足によるものと、降雨で新たに流れてきたものを区別します。完成直後の清掃状況を記録しておけば、降雨後に増えた堆積物を判断しやすくなります。新しい堆積物は湿っていたり、細粒分が表面に集まっていたり、流れ方向に沿って細長く分布していたりすることがあります。
堆積物の位置から、流出元を推定することもできます。法尻の一部だけに材料が集まっている場 合は、その上方に筋流れや谷部がないかを確認します。広い範囲に薄く堆積している場合は、法面全体から表層の細粒分が移動している可能性があります。法面表面と法尻の状態を別々に記録するのではなく、上下の対応関係を見ながら点検します。
側溝では、完全閉塞の有無だけでなく、排水断面が狭くなっていないかを確認します。少量の基盤材や土砂でも、落ち葉や枝などと組み合わさると水の流れを妨げることがあります。流れが弱くなった場所へさらに土砂が沈殿し、次の降雨で閉塞が進む可能性もあります。
集水ますでは、流入口、内部、流出口の順に状態を確認します。流入口に材料が張り付いている、内部の底に土砂がたまっている、流出口周辺に逆流や越流の跡がある場合は、排水機能が低下している可能性があります。内部確認には転落や有害な環境などの危険が伴う場合があるため、現場の安全手順に従い、無理な接近や立入りを避けます。
法尻の排水が詰まると、法面から流れてきた水が滞留し、法尻部の植生基 盤材や地山を再び濡らすことがあります。下部からの浸食や軟化が進めば、法面上部の状態が良好でも下端から崩れが広がる可能性があります。水たまり、ぬかるみ、法尻部の沈下、基盤材の膨らみがないかも合わせて確認します。
堆積物を除去する場合は、清掃前に位置と量を記録しておくことが重要です。すぐに片付けてしまうと、流出元や異常の規模を後から検証できなくなります。全景、堆積物の近景、排水施設との位置関係を撮影したうえで、必要な清掃や応急対応へ移ります。
6. ネット・アンカー・端部の浮きやめくれを確認する
植生ネットや侵食防止材、固定具を使用している法面では、降雨後にネットの浮き、めくれ、たるみ、固定部の緩みがないかを確認します。施工直後は地山へ密着していたように見えても、雨水が流れ込むことで基盤材が移動し、ネットとの間に空隙が生じることがあります。
ネットの浮きは、表面の影、風による揺れ、周囲との高さの違いから確認できます。浮いている部分を無理に踏んだり押したりすると、内部の基盤材を動かす可能性があるため、まずは安全な位置から目視と撮影を行います。浮きがある場合は、その上側に水の侵入口がないか、下側に基盤材の流出跡がないかを確認します。
端部のめくれは、法肩、法尻、側端部、構造物との境界で発生しやすい異常です。端部が浮くと、そこから雨水や風が入り込み、めくれの範囲が徐々に広がることがあります。表面から見えるめくれが小さくても、ネットの下で基盤材が失われている場合があるため、周辺の沈みや空洞感にも注意します。
アンカーや固定ピンについては、抜け、浮き、傾き、周辺の洗掘を確認します。固定具そのものが残っていても、周囲の基盤材や地山が流されれば、十分な固定力を発揮できない場合があります。固定具の頭部周辺に円形のくぼみができている、固定具に沿って水が流れた跡がある、ネットが局部的に引っ張られているといった状態も記録します。
ネットの重ね部や施工区画の継ぎ目では、上側の材料が下側を適切に覆っているか、水を受ける向きになっていないかを確認します。継ぎ目が雨水を受け止める形になっていると、その部分から水が入り込み、ネット下を流れる可能性があります。降雨後に継ぎ目付近だけ湿潤が続いている場合や、下端から濁水が出た跡がある場合は注意が必要です。
固定部の異常を発見したときは、単純に固定具を追加すれば解決するとは限りません。内部の基盤材が失われている状態で表面だけを押さえると、空洞が残る場合があります。水の侵入口、基盤材の欠損範囲、地山の状態、既存固定具の効き方を確認し、必要に応じて材料の補充や端部処理のやり直しを含めて補修方法を検討します。
降雨量と施工条件を点検結果に結び付ける
施工後降雨確認の記録は、異常箇所の写真だけでは十分ではありません。いつ、どの程度の雨を受け、その時点で施工後何日が経過していたのかを整理することで、異常が生じた背景を評価しやすくなります。
記録には、降雨日、確認日、施工完了日、降雨の継続時間、雨の強さの傾向、確認時の天候、法面の湿潤状態などを含めます。正確な観測値が得られない場合でも、現場で確認できる範囲の情報を残します。ただし、離れた観測地点の数値を現地の降雨量として断定することは避け、参考情報として扱うことが大切です。
施工条件については、施工方法、使用した材料の一般的な区分、施工厚、施工区画、作業日ごとの範囲、施工中の天候、施工後の養生状況などを整理します。異常箇所が特定の施工日に集中している場合は、混練状態、吹付距離、地山の湿潤、作業中断などの影響を検討する手掛かりになります。
発芽前の法面と、ある程度植生が進んだ法面では、同じ降雨を受けても表面の反応が異なります。発芽前は基盤材そのものの保持状態を中心に確認し、発芽後は植物の倒伏、根元の洗掘、苗の流出、生育むらなども確認します。施工後の日数だけでなく、実際の発芽や生育状態を記録することが重要です。
点検結果は、異常なし、経過観察、軽微な補修が必要、早急な対応が必要といった区分で整理すると、関係者間で優先順位を共有しやすくなります。ただし、区分の基準は現場ごとの仕様、管理基準、法面の重要度、安全上の影響を踏まえて設定します。一律の幅や深さだけで判断すると、水みちの位置や再発リスクを見落とす可能性があります。
同じ箇所を複数回確認する場合は、撮影位置と方向をそろえます。写真には法面全体の位置が分かる遠景、異常範囲が分かる中景、表面状態を示す近景を組み合わせます。撮影日時や位置を後から確認できる状態にしておけば、変化量の把握や補修前後の比較が容易になります。
初期流亡を発見したときの補修範囲の決め方
初期流亡を発見した場合、目に見える欠損部だけを埋め戻すと、原因が残ったままになることがあります。補修範囲は、流亡した場所、雨水が流れ込んだ場所、材料が堆積した場所を一つの系統として捉えて決める必要があります。
まず、流れ跡を上流側へたどり、雨水の起点を確認します。法肩からの流入、谷部への集水、構造物からの落水、ネット端部への侵入などがあれば、補修前に流入対策を検討します。水の入口を改善せず、欠損部だけを補修しても、次の降雨で再び同じ場所が流される可能性があります。
次に、見た目では残っている周辺部分の健全性を確認します。流亡部の縁に浮き、ひび、空洞、薄層化がある場合は、欠損範囲より広い部分で付着や密着が低下している可能性があります。補修材を不安定な縁へ接続すると、境界部から再び剥離することがあるため、安定した部分まで範囲を広げる判断が必要です。
下流側では、流出した材料が法尻や排水施設に残っていないかを確認します。補修と同時に堆積物を除去し、排水断面を確保しなければ、次の雨で水があふれ、補修箇所へ影響する可能性があります。流出元の補修と排水先の清掃を別々の作業として扱わず、連続した対応として計画します。
補修後は、施工直後の状態を写真と記録に残します。その後の降雨で同じ位置を再確認し、補修材の流亡、境界部の段差、ネットの浮き、排水の変化がないかを確認します。補修したこと自体ではなく、原因が解消され、次の降雨でも安定していることを確かめるまでが一連の管理です。
異常が広範囲に及ぶ場合や、地山の変状、亀裂、崩落、湧水などが見られる場合は、緑化表面の補修だけで対応できないことがあります。法面の安定性や排水構造を含めた専門的な確認が必要になるため、現場の管理体制に従って関係者へ報告し、安易な応急処置だけで済ませないことが重要です。
降雨確認を継続的な維持管理につなげる方法
施工後の降雨確認は、一度実施して記録を保管するだけでは効果が限定されます。点検結果を次の点検、補修計画、維持管理へ引き継ぐ仕組みを作ることで、法面緑化の状態を継続的に 把握できます。
まず、法面ごとに管理単位を明確にします。法面番号、施工区画、起点と終点、法肩や法尻の位置、排水施設との関係を整理し、写真と記録を同じ単位で保存します。異常箇所には管理上の識別番号を付けると、補修指示や再点検時の伝達が容易になります。
点検記録には、異常の種類、位置、範囲、推定原因、緊急度、対応内容、次回確認時期を含めます。「流亡あり」だけでは、後から状態を再現できません。筋状、面状、端部、谷部、法尻堆積など、どのような形で異常が現れたのかを具体的に記録します。
経過観察とした箇所は、次の降雨後に必ず再確認できるよう管理します。軽微な異常は緊急性が低い一方、記録から外れると拡大を見逃しやすくなります。前回写真を現地で参照できるようにしておけば、流れ跡の延伸、幅の拡大、堆積量の増加などを判断しやすくなります。
点検データを蓄積すると、異常が発生しやすい場所の傾向が見えてきます。特定の谷部で繰り返し流亡する、同じ排水施設で土砂が堆積する、特定の施工区画だけ生育が遅れるといった傾向が分かれば、個別補修から恒久的な改善へ検討を進められます。
施工担当者、点検担当者、維持管理担当者が異なる場合は、写真だけでなく判断理由も共有します。現場を知らない担当者でも位置と状況を理解できるよう、全景と詳細写真、簡潔な所見、対応履歴をひも付けて管理します。口頭連絡だけに頼ると、点検時に確認した小さな兆候が後工程へ伝わらない可能性があります。
現地での記録には、携帯できるPhoneを活用すると効率的です。異常箇所の写真、撮影日時、位置、点検内容、対応状況をその場でまとめておけば、事務所へ戻った後の転記や写真整理を減らせます。法面全体の管理番号と位置情報を対応させることで、次回点検時にも同じ場所へ戻りやすくなります。
まとめ
法面緑化の施工後降雨確認では、法面表面に大きな崩れがないことだけを見て完了とするのではなく、雨水がどこから入り、どこを通り、どこへ排出されたのかを確認することが重要です。初期流亡や排水異常は、色むら、細い筋流れ、端部の浮き、法尻の少量の堆積といった小さな兆候から始まることがあります。
確認すべき主な項目は、法面全体の色と凹凸、筋状の流れ跡、法肩からの流入、谷部や構造物際への集中、法尻と排水施設の堆積、ネットや固定部の浮きです。これらを個別に見るだけでなく、上流から下流まで雨水の経路としてつなげて判断することで、異常の原因と再発可能性を把握しやすくなります。
点検は安全を最優先とし、降雨中や法面が不安定な状態で無理に立ち入らないことが前提です。降雨状況、施工後の日数、発芽状態、施工区画なども合わせて記録し、同じ位置から継続的に比較することで、軽微な変化を早期に捉えられます。
初期流亡を見つけた場合は、欠損部だけでなく、雨水の流入口、周辺の不安定部、下流側の堆積や排水閉塞まで確認して補修範囲を決めます。補修後も次の降雨で再点検し、水みちが解消されていることを確かめる必要があります。
現地写真、位置、点検所見、補修履歴をPhoneで一元的に記録できる運用を整えれば、担当者間の情報共有や経過比較が行いやすくなります。施工後の雨を単なる天候変化として捉えず、法面の弱点を見つける機会として活用することが、初期流亡の拡大防止と安定した法面緑化の維持につながります。
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