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法面の伸縮計値の急変を見逃さない監視5手順

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

目次

法面監視で伸縮計値の急変が重要視される理由

手順1 基準値と通常変動幅を明確にする

手順2 計測間隔と確認体制を現場条件に合わせる

手順3 急変を見つけるための判定基準を設定する

手順4 現地確認で計測値と法面状況を照合する

手順5 記録・共有・対応判断を一連の流れにする

伸縮計値の急変を見逃さないための運用上の注意点

まとめ 法面監視は数値確認から対応判断までを仕組みにする


法面監視で伸縮計値の急変が重要視される理由

法面の維持管理や施工中の安全管理では、目視点検だけでは把握しきれない変状を早期に捉えることが重要です。特に、切土法面、盛土法面、自然斜面に近接する道路や造成地では、降雨、地下水位の変化、地震、凍結融解、施工振動などによって、地盤内部や表層部の状態が短時間で変化することがあります。そのような変化を数値として把握する手段のひとつが伸縮計です。


伸縮計は、亀裂や段差をはさむ2点間の相対的な伸縮量を、連続的または定期的に計測する計器です。亀裂をまたぐように設置したり、変位が懸念される箇所に配置したりすることで、目に見える変状が拡大する前の兆候を把握しやすくなります。ただし、設置方向や計測対象によって捉えやすい変位は異なるため、伸縮計の値は設置目的と現地条件を踏まえて読む必要があります。


伸縮計値の急変が重要なのは、単なる数値の変化ではなく、法面の不安定化や変状の進行を示している可能性があるためです。もちろん、すべての急変が直ちに崩壊に直結するわけではありません。計器の固定不良、ケーブルや保護管への接触、温度変化、作業中の振動、動物や落石による接触など、計測値に影響を与える要因は複数あります。しかし、異常値の原因が計器側にあるのか、法面側にあるのかを判断するためにも、急変を早く検知し、現場状況と照合する体制が欠かせません。


実務担当者が注意すべき点は、伸縮計の値をただ記録するだけでは監視にならないということです。日々の変化量、累積変位、時間当たりの変位速度、降雨との関係、過去の変動傾向を合わせて見なければ、危険な兆候を見落とすおそれがあります。たとえば、累積変位そのものは小さくても、短時間で変位速度が上がっている場合は注意が必要です。反対に、累積変位がある程度大きくても、長期間ほぼ一定で推移している場合は、現地状況を踏まえた冷静な評価が求められます。


法面監視で重要なのは、急変を見つけることだけではありません。急変を見つけた後に、誰が確認し、どのように判断し、どの段階で通行規制、作業中止、立入制限、詳細調査、応急対策へ進むのかをあらかじめ決めておくことです。伸縮計は危険を知らせる入口であり、最終的な安全確保は運用体制によって左右されます。この記事では、法面の伸縮計値の急変を見逃さないために、実務で使いやすい5つの監視手順を順に解説します。


手順1 基準値と通常変動幅を明確にする

伸縮計による監視を始める際に最初に行うべきことは、基準値を明確にすることです。基準値とは、監視を開始する時点での初期値だけを意味するものではありません。設置直後のなじみ、温度変化による日変動、降雨時と晴天時の違い、施工中であれば作業工程による影響などを踏まえ、その現場における通常の変動幅を把握することが重要です。


設置したその日の値だけを基準にしてしまうと、計器の初期なじみや設置作業の影響を異常と誤認することがあります。特に、地盤にアンカーや固定部を設けて計測する場合、設置直後は固定部周辺が落ち着くまでわずかな変化が出ることがあります。また、法面の表層部は気温や日射、降雨による含水状態の変化を受けやすく、日中と夜間で微小な変動が生じることもあります。こうした通常変動を知らないまま監視を始めると、不要な警報が増え、現場が数値に慣れてしまい、本当に危険な急変への反応が遅れる原因になります。


基準値を設定する際は、伸縮計の設置位置、計測方向、対象とする亀裂や変状、法面の地質、勾配、排水状況、周辺構造物との関係を整理します。どの変状を監視するために設置したのかが曖昧なままだと、値が変化したときの意味も曖昧になります。たとえば、既存亀裂の開口を監視しているのか、すべり方向の変位を見ているのか、対策工の効果確認を目的としているのかによって、見るべき変化の方向や判断の重みは異なります。


通常変動幅を把握するには、一定期間の初期観測が有効です。可能であれば、晴天時、降雨時、降雨後、昼夜の温度差がある時間帯など、複数の条件で値の推移を確認します。施工中の現場では、掘削、盛土、法枠施工、排水工施工、重機走行などの工程と計測値を照合し、工事による一時的な影響がどの程度出るかを把握しておきます。維持管理中の法面であれば、季節変動や過去の点検記録と比較し、急変と通常のゆらぎを区別できる状態にしておくことが望ましいです。


基準値の管理で見落としやすいのは、計器交換や再設置を行った場合です。伸縮計本体を交換したり、固定部を補修したり、ケーブルや記録装置を変更したりすると、それ以前の値と単純に連続比較できないことがあります。この場合は、変更前後の値の差、交換理由、再設定した初期値、換算方法を記録し、後から見ても判断できるようにしておく必要があります。記録が不十分だと、数か月後に急変が疑われた際、実際の法面変位なのか、計器更新に伴う段差なのかが分からなくなります。


基準値と通常変動幅を明確にすることは、急変監視の土台です。異常を見つけるには、まず正常な状態を知らなければなりません。現場ごとの通常変動を把握し、関係者が同じ基準で数値を見られるようにしておくことで、伸縮計値の小さな違和感にも早く気づけるようになります。


手順2 計測間隔と確認体制を現場条件に合わせる

伸縮計値の急変を見逃さないためには、計測間隔の設定が重要です。どれほど精度の高い計器を設置していても、確認間隔が長すぎれば、急変が発生した時間帯を把握できず、対応が遅れる可能性があります。反対に、必要以上に短い間隔で計測し続けると、確認するデータ量が増えすぎ、実務担当者が重要な変化を見落とす原因になることもあります。大切なのは、法面のリスク、現場条件、監視目的に合わせて、無理なく継続できる計測間隔を設定することです。


一般的に、安定している法面の日常管理では、定期的な手動確認や一定時間ごとの自動記録で傾向を把握します。一方で、変状が進行している法面、豪雨が予想される期間、地震後、施工によって法面の安定性が一時的に変化する期間では、通常時よりも短い間隔で確認する必要があります。特に降雨時は、雨が降っている最中だけでなく、降雨後に地下水や間隙水圧の影響が遅れて表れることがあります。そのため、雨が止んだからといってすぐに監視を緩めるのではなく、降雨後の一定期間も変位の推移を見ることが重要です。


計測間隔を決める際は、伸縮計の値だけでなく、現場へのアクセス性も考慮します。山間部や道路沿いの高所法面では、現地確認に時間がかかることがあります。夜間や荒天時に現地へ近づくことが危険な場合もあります。このような現場では、遠隔で値を確認できる仕組みや、警報を受けた後の初動手順を整えておくことが有効です。ただし、遠隔監視を導入している場合でも、数値だけで判断を完結させるのではなく、必要に応じて現地確認や周辺状況の確認につなげる体制が求められます。


確認体制では、誰が、いつ、どの値を確認し、異常を見つけた場合に誰へ連絡するのかを明確にします。担当者個人の経験に依存した運用では、休日、夜間、担当者不在時に対応が遅れるおそれがあります。特に、法面災害のリスクが高まる大雨時や台風接近時は、通常勤務時間外に急変が発生することもあります。そのため、監視担当者、現場責任者、発注者、維持管理者、必要に応じて道路管理や施設管理に関わる担当者まで、連絡経路を事前に整理しておくことが重要です。


計測値の確認方法も統一しておく必要があります。たとえば、累積変位だけを見る担当者と、時間当たりの変位量を見る担当者が混在していると、同じデータを見ても判断が分かれることがあります。また、伸びを正の値、縮みを負の値として扱うのか、その逆なのかが共有されていないと、急変方向の解釈を誤る可能性があります。計測方向、符号の意味、単位、表示桁数、確認対象の期間を明確にし、誰が見ても同じ理解になるようにしておくことが大切です。


自動計測の場合は、データの欠測にも注意が必要です。通信不良、電源不足、記録装置の不具合、センサー接続部の異常などにより、値が更新されないことがあります。値が変化していないように見えても、実際には計測が止まっているだけというケースも考えられます。そのため、最新データの取得時刻、欠測の有無、電源状態、異常な固定値の継続などを確認する習慣が必要です。急変だけでなく、データが取れていない状態そのものも監視上の異常として扱うべきです。


計測間隔と確認体制は、法面監視の実効性を左右します。現場条件に合わない過剰な監視は続きませんが、緩すぎる監視では急変を捉えられません。通常時、注意時、警戒時の段階を設け、状況に応じて確認頻度を切り替えられる運用にすることで、現場負担を抑えながら安全性を高めることができます。


手順3 急変を見つけるための判定基準を設定する

伸縮計値の急変を確実に見つけるには、判定基準を事前に設定しておく必要があります。担当者がグラフを見て「何となく大きく動いた」と感じるだけでは、判断にばらつきが出ます。経験豊富な技術者であれば小さな変化から異常を察知できることもありますが、実務では複数の担当者が交代で確認することが多く、同じ基準で判断できる仕組みが不可欠です。


判定基準を設定する際は、累積変位、一定時間当たりの変位量、変位速度、変化方向、降雨量との関係を組み合わせて考えます。累積変位は、監視開始からどの程度動いたかを示すため、長期的な傾向を把握するのに役立ちます。しかし、急変の把握には、短時間でどれだけ値が変化したかを見ることが重要です。たとえば、数週間かけて数ミリ動いた場合と、数時間で同程度動いた場合では、法面の状態に対する警戒度は異なります。


変位速度は、急変を判断するうえで重要な指標の一つです。変位速度が上昇している場合、法面の変状が進行段階に入っている可能性があります。一定期間ごとの変化量を比較し、通常時に比べて明らかに速度が高まっている場合は、注意段階や警戒段階として扱うことが考えられます。ただし、具体的なしきい値は、法面の規模、地質、設置位置、監視目的、周辺への影響度によって変わります。全国一律の値をそのまま当てはめるのではなく、設計条件、過去の計測実績、専門技術者の判断を踏まえて現場ごとに設定することが大切です。


判定基準は、単一のしきい値だけに頼らないほうが実務的です。たとえば、短時間の変化量が一定値を超えた場合、累積変位が一定値に達した場合、変位速度が前日までの傾向から急に上がった場合、降雨後に変位が継続している場合など、複数の観点を組み合わせることで見逃しを減らせます。また、注意、警戒、緊急といった段階を設け、それぞれの段階で行う対応を決めておくと、異常発生時に迷いにくくなります。


注意段階では、計測値の再確認、グラフの確認、過去データとの比較、周辺の降雨状況や施工状況の確認を行います。警戒段階では、現地確認の実施、関係者への共有、立入範囲や作業範囲の見直しを検討します。緊急段階では、作業中止、通行規制、避難誘導、応急対策、専門技術者による詳細評価など、人的被害を防ぐための対応を優先します。このように、判定基準と対応行動をセットで決めておくことが重要です。


急変判定では、ノイズと本当の変位を区別する視点も必要です。伸縮計値には、瞬間的な乱れが生じることがあります。単発の異常値だけで過度に反応すると、現場の負担が大きくなります。しかし、単発と思われた異常値が、実は急変の始まりである可能性もあります。そのため、異常値を確認したら、直前直後のデータ、同じ法面に設置された他の計器、目視点検結果、降雨量、地震情報、施工履歴と照合することが大切です。複数の情報が同じ方向の異常を示している場合は、より高い警戒が必要です。


グラフ表示も急変検知に役立ちます。数値表だけを見ていると、変化の傾向に気づきにくいことがあります。時間軸に沿ってグラフ化すると、緩やかな増加、段階的な変化、突然の跳ね上がり、降雨後の遅れ変位などが視覚的に分かりやすくなります。特に、縦軸の縮尺が変わると急変の見え方が変わるため、確認用の表示条件をできるだけ統一しておくことも重要です。


判定基準は一度作って終わりではありません。監視を続ける中で、通常変動幅が明らかになったり、季節ごとの傾向が見えてきたり、対策工の施工によって法面状態が変わったりすることがあります。その場合は、基準を見直し、現場の実態に合うよう更新する必要があります。ただし、基準を変更した場合は、変更理由、変更日、変更前後の基準を記録し、関係者に共有しておかなければなりません。基準変更の履歴が残っていないと、後から判断の妥当性を確認できなくなります。


急変を見つけるための判定基準は、現場の安全判断を支える共通言語です。数値の意味を担当者間で統一し、どの段階で何をするかを明確にしておくことで、伸縮計値の変化を迅速な対応につなげられます。


手順4 現地確認で計測値と法面状況を照合する

伸縮計値に急変が見られた場合、次に重要なのは現地確認です。計測値は法面の状態を把握するための有力な情報ですが、数値だけで原因を断定することはできません。急変が法面の変状によるものなのか、計器や設置部の異常によるものなのか、周辺作業や外的要因によるものなのかを判断するには、現地の状況と照合する必要があります。


現地確認では、まず安全を確保することが最優先です。急変が確認された法面に不用意に近づくと、落石、表層崩壊、滑落、倒木、二次災害に巻き込まれる危険があります。特に、降雨中や降雨直後、地震後、夜間、視界不良時は、現地確認そのものが危険を伴います。確認に向かう前に、遠方からの目視、周辺道路や作業ヤードの状況、法面上部からの流下水、湧水、落石の有無を確認し、必要に応じて立入範囲を制限します。


法面の確認では、伸縮計を設置している亀裂や変状箇所だけでなく、その周辺を広く見ることが大切です。亀裂の開口、段差、沈下、はらみ出し、押し出し、湧水の増加、濁水の発生、小崩落、落石、植生の傾き、排水施設の詰まりなどは、法面の状態変化を示す手がかりになります。伸縮計値が急変しているにもかかわらず、設置箇所だけを見て異常なしと判断してしまうと、少し離れた場所で進行している変状を見落とす可能性があります。


計器本体と設置状態の確認も欠かせません。伸縮計の固定部に緩みがないか、測線がずれていないか、保護カバーやケーブルに損傷がないか、落石や枝、作業資材が接触していないかを確認します。手動計測の場合は、読み取り方法や記録ミスの可能性も確認します。自動計測の場合は、データ取得時刻、通信状態、電源状態、記録装置の状態を確認します。計測値が急に大きく変わった場合でも、固定部が動いた、ケーブルが引っ張られた、計器が外力を受けたといった理由で発生していることがあります。


ただし、計器異常の可能性があるからといって、法面側の異常を軽視してはいけません。実務では、計器の異常と法面の変状が同時に起きることもあります。たとえば、小崩落や落石によって計器が損傷した場合、その損傷自体が法面変状の結果である可能性があります。計器の不具合と判断する前に、なぜ不具合が生じたのかを確認する姿勢が必要です。


現地確認では、写真記録が非常に有効です。同じ位置、同じ方向、同じ範囲で定点写真を撮影しておくと、過去との比較がしやすくなります。亀裂幅、段差、湧水、崩落跡、排水施設の状態などは、数値だけでは伝わりにくいため、写真と説明をセットで残すことが重要です。また、確認時刻、天候、降雨状況、確認者、確認範囲、立入制限の有無も記録します。伸縮計値の急変時刻と現地確認時刻を対応させることで、後から変状の進行過程を振り返りやすくなります。


複数の計器を設置している現場では、他の計測値との関係も確認します。伸縮計のほかに、傾斜計、地下水位計、雨量計、目視点検記録などがある場合、それぞれの変化を照合することで判断精度が高まります。たとえば、伸縮計値の急変と同時に地下水位が上昇している場合、降雨による不安定化が疑われます。近接する複数の伸縮計が同じ方向に動いている場合は、局所的な計器異常ではなく、法面全体の変状として捉える必要があります。


現地確認の結果、法面変状の進行が疑われる場合は、監視強化や応急対応へ速やかに移ります。小規模な亀裂拡大であっても、降雨が続く見込みがある場合や、下方に道路、住宅、作業員の動線、重要施設がある場合は、リスクを低く見積もらないことが重要です。反対に、計器側の異常が明らかな場合でも、計測不能な状態を放置せず、仮復旧、代替計測、目視点検の強化などによって監視の空白をつくらないようにします。


伸縮計値の急変を現地状況と照合することは、数値を安全判断に変換する工程です。計測データ、目視情報、周辺条件を組み合わせて評価することで、誤警報への過剰対応を抑えながら、本当に危険な変状を見逃さない監視が可能になります。


手順5 記録・共有・対応判断を一連の流れにする

法面監視では、伸縮計値を確認して終わりではありません。急変を検知し、現地確認を行い、その結果を関係者へ共有し、対応を判断するまでが一連の監視業務です。この流れが途切れると、せっかく異常を見つけても安全確保につながらないことがあります。特に、複数の組織や担当者が関わる現場では、記録と共有の仕組みを整えておくことが欠かせません。


記録すべき内容は、計測値そのものだけではありません。急変を確認した日時、確認者、計測値の変化量、直近の変位速度、累積変位、降雨状況、地震の有無、施工状況、現地確認結果、写真、判断内容、実施した対応、次回確認予定まで残しておくことが望ましいです。記録が数値だけだと、後から見たときに、なぜその判断をしたのかが分からなくなります。判断過程を残すことで、次の点検や類似現場の管理にも活用できます。


共有では、情報の受け手に合わせて内容を整理することが大切です。現場担当者には、現在の危険度、立入制限、作業継続の可否、次に確認すべき点が必要です。管理者には、変位の傾向、周辺への影響、必要な判断事項が必要です。専門技術者には、計測データ、設置条件、地質条件、写真、過去の経緯など、評価に必要な情報をまとめて伝える必要があります。同じ情報でも、相手によって必要な粒度が異なるため、単にデータを送るだけでなく、要点を整理して共有することが重要です。


対応判断では、事前に決めた判定基準に沿って、監視継続、監視強化、現地立入制限、作業中止、通行規制、応急対策、詳細調査などを選択します。ここで重要なのは、対応を先送りしないことです。法面の変状は、条件が重なると短時間で進行することがあります。特に、降雨が継続している場合や、下方に人や車両が通る場所がある場合は、安全側の判断が求められます。対応の判断に迷う場合でも、少なくとも監視間隔を短くする、現地への立入を制限する、関係者へ注意喚起するなど、リスクを下げる行動を取ることが大切です。


一連の流れを円滑にするには、平常時から記録様式と共有ルールを整備しておく必要があります。急変が起きてから記録項目を考えたり、連絡先を探したりしていると、初動が遅れます。監視開始時点で、日常点検の記録様式、異常時の報告様式、連絡先、判断者、代替担当者、夜間休日の対応方法を決めておくと、緊急時にも落ち着いて行動できます。


また、対応後の振り返りも重要です。急変が発生した後、実際の対応が適切だったか、判定基準は現場に合っていたか、連絡は遅れなかったか、記録に不足はなかったかを確認します。誤警報だった場合でも、それを単なる失敗と捉えるのではなく、計器の設置方法、しきい値、確認手順を改善する機会として扱います。反対に、実際に変状が進行していた場合は、初期の数値変化、現地状況、対応時刻を整理し、今後の監視に活かすことが重要です。


記録、共有、対応判断を一体化することで、伸縮計は単なる計測機器ではなく、法面安全管理の判断材料として機能します。数値を見つける人、現場を確認する人、判断する人、対応する人が同じ情報を共有できる状態をつくることが、急変を見逃さない監視体制につながります。


伸縮計値の急変を見逃さないための運用上の注意点

伸縮計による法面監視を安定して続けるには、日常運用の品質を保つことが重要です。監視体制を整えたつもりでも、運用が形だけになると、急変を見逃すリスクが高まります。特に、長期間大きな変化がない現場では、担当者が数値確認に慣れてしまい、小さな異常を見落としやすくなります。法面監視では、変化がないことを確認する日常業務ほど丁寧に続ける必要があります。


まず注意したいのは、計測値の確認を単純作業にしないことです。毎日同じ時刻に同じような値が並んでいると、確認が流れ作業になりがちです。しかし、急変はいつも分かりやすい大きな変化として現れるとは限りません。最初はわずかな変位速度の上昇として現れ、その後、降雨や地下水の影響で急に進行することがあります。日々の確認では、前回値との差だけでなく、過去数日から数週間の傾向、降雨との関係、現地で見られた変状の有無を合わせて見る習慣が必要です。


次に、計器の維持管理を軽視しないことです。伸縮計は屋外の厳しい環境に設置されることが多く、雨水、泥、落石、枝葉、積雪、動物、作業機械の接触などの影響を受けます。保護が不十分な場合、計器本体やケーブルが損傷し、正確な値が得られなくなることがあります。定期的に設置状態を確認し、固定部の緩み、腐食、変形、ケーブルのたるみ、保護材の破損、記録装置の状態を点検することが必要です。計器が正常に機能していることを確認して初めて、計測値を信頼できます。


温度や気象条件の影響も考慮します。伸縮計の種類や設置方法によっては、温度変化による微小な伸縮が値に反映されることがあります。日射を受けやすい場所、寒暖差が大きい地域、凍結融解が起こる法面では、気象条件と計測値の関係を把握しておくことが大切です。ただし、温度影響と思われる変化であっても、変位が一方向に累積している場合や、降雨後に戻らない変化が出ている場合は注意が必要です。気象影響と判断する際にも、過去の傾向や現地状況との照合が欠かせません。


データ管理では、改ざんや上書きではなく、履歴を残す運用が重要です。誤入力や計器異常があった場合でも、元データを消してしまうと後から検証できなくなります。誤値と判断した場合は、その理由を記録し、補正値や除外判断の履歴を残します。法面監視のデータは、異常時の判断だけでなく、将来の補修計画、対策工の検討、説明資料にも利用されます。信頼できるデータとして扱うためには、誰が見ても経緯を追える管理が必要です。


担当者教育も重要です。伸縮計の読み方、グラフの見方、異常値の確認方法、現地確認時の注意点、連絡手順を担当者間で共有しておかないと、特定の人しか判断できない状態になります。人事異動や担当変更があっても監視品質を維持できるよう、手順書、記録例、過去の異常事例、判断基準を整理しておくことが望ましいです。法面監視は専門性の高い業務ですが、基本的な確認手順を標準化することで、見落としのリスクを下げられます。


さらに、伸縮計だけに頼りすぎないことも大切です。法面の不安定化は、必ずしも伸縮計の設置箇所だけに現れるとは限りません。設置箇所から離れた場所で新たな亀裂が発生したり、排水不良が進んだり、表層の小崩落が始まったりすることがあります。また、伸縮計は測線方向の相対変位を把握する計器であり、設置方向と異なる変位や、測線で挟んでいない変状を十分に捉えられない場合があります。伸縮計は有効な監視手段ですが、目視点検、雨量確認、排水施設点検、周辺地形の変化確認と組み合わせることで、より実効性の高い監視になります。


運用上の注意点を押さえることで、伸縮計監視は長期的に信頼できる仕組みになります。計器を設置しただけで安心するのではなく、値を見る人、現地を確認する人、記録を残す人、判断する人の行動がつながって初めて、急変を見逃さない体制が完成します。


まとめ 法面監視は数値確認から対応判断までを仕組みにする

法面の伸縮計値の急変を見逃さないためには、単に計器を設置して値を見るだけでは不十分です。まず、基準値と通常変動幅を明確にし、その現場でどの程度の変化が通常の範囲なのかを把握する必要があります。次に、法面のリスクや気象条件、施工状況に合わせて計測間隔と確認体制を設定し、急変が起きたときに早く気づける状態をつくります。


さらに、累積変位、時間当たりの変化量、変位速度、降雨との関係を踏まえた判定基準を設定し、注意、警戒、緊急といった段階ごとに取るべき行動を決めておくことが重要です。急変が確認された場合は、数値だけで判断せず、現地確認によって法面状況、計器状態、周辺環境を照合します。そのうえで、記録、共有、対応判断を一連の流れとして運用し、関係者が同じ情報をもとに安全側の判断を行えるようにします。


法面災害は、降雨や地震などをきっかけに短時間で進行することがあります。しかし、その前段階では、亀裂の拡大、湧水の変化、微小な変位、変位速度の上昇といった兆候が現れることもあります。伸縮計は、こうした兆候を数値として捉えるための重要な手段です。だからこそ、日常の監視では、値の大小だけでなく、変化の速さ、変化の継続性、現地状況との整合性を見ることが求められます。


実務で大切なのは、異常を完全に予測しようとすることではなく、異常の可能性に早く気づき、確認し、必要な対応へ移れる仕組みを持つことです。基準値の整理、確認頻度の設定、判定基準の明確化、現地確認、記録共有という5手順を継続的に運用することで、法面の安全管理は改善しやすくなります。


法面の伸縮計監視をこれから見直したい場合や、急変時の連絡体制、記録様式、監視基準の整備に不安がある場合は、まず現場条件と監視目的の整理から始めることが有効です。判断に迷う箇所や人的被害につながるおそれがある箇所では、発注者、管理者、設計者、地盤・斜面防災の専門技術者に相談し、現場に合った監視方法と対応基準を確認してください。


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