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法面工事の水抜き穴とは?斜面崩れのリスクを抑える3つの役割

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

法面工事で見かける水抜き穴は、法面内部や擁壁背面に入った水を外へ導く排水設備です。ただし、現場で「水抜き穴」と呼ばれるものには、吹付面や擁壁を貫通する短い水抜き孔、地山へ延ばす水平排水孔、地すべり対策で用いる水抜きボーリングなどがあり、目的や長さ、構造、排水対象は同じではありません。農林水産省の資料でも、水抜きボーリングは浅層地下水を集める施設として、導水パイプや孔口保護工、流末施設と一体で整理されています。


水は斜面の不安定化に関係する重要な要因ですが、水抜き穴を設ければ崩壊を必ず防げるわけではありません。効果を得るには、排水したい地下水や背面水へ孔を到達させ、孔口から側溝・集水ます・流末まで水を再浸透させずに導く必要があります。地質、地下水、施工条件、排水先、維持管理を一体で検討することが大切です。国土交通省の技術基準も、地下水排除工には間隙水圧の低下だけでなく、排出水を対象区域へ再浸透させない機能を求めています。([MLIT][1])


また、水抜き穴から水が出ていないことだけで安全とは判断できません。反対に、常時排水していることだけで異常とも判断できません。通常時と降雨後の排水量、濁り、孔口の状態、周辺のひび割れやはらみ、側溝の通水状況を継続して比較する必要があります。


この記事では、法面工事の実務担当者に向けて、水抜き穴の基本、斜面崩れのリスクを抑える3つの役割、設計・施工・維持管理の注意点を解説します。なお、以下は一般的な考え方です。個別現場の設計、追加削孔、清掃、補修は、適用される法令、発注者・施設管理者の基準、設計図書、地盤調査結果に基づいて判断してください。


目次

法面工事における水抜き穴とは

水抜き穴が必要になる理由

役割1 地下水圧を下げて斜面の安定性を保つ

役割2 法面背面の滞水を逃がして保護工の破損を防ぐ

役割3 排水経路を整えて長期的な地盤劣化を抑える

水抜き穴の仕組みと主な構成

設計で確認すべき地盤・水・配置条件

施工時に品質を左右するポイント

維持管理で確認したい詰まりと異常の兆候

水抜き穴だけでは対処できないケース

法面工事の水抜き穴に関するよくある疑問

まとめ


法面工事における水抜き穴とは

法面は、道路、造成地、河川施設などで切土や盛土によって形成される斜面を主に指します。自然のままの斜面は、一般に自然斜面として区別して扱われます。法面工事では、植生工、吹付工、法枠工、擁壁、地山補強土工、アンカー工、排水工などを、地形・地質・湧水・周辺条件に応じて組み合わせます。


現場用語としての「水抜き穴」には、主に次のような設備が含まれます。吹付コンクリートやモルタル吹付面、擁壁を貫通させ、背面の排水層や集水部から水を前面へ出す短い水抜き孔があります。小規模な湧水に対して地山へ穴あき管などを挿入する水平排水孔もあります。さらに、地すべり土塊などの浅層地下水を集めるため、横ボーリングで比較的長い孔を設ける水抜きボーリングがあります。自治体の技術資料でも、水平排水孔、吹付面の湧水処理、擁壁背面の排水は別の構造として示されています。([茨城県公式ホームページ][2])


見た目はいずれも孔口ですが、排水対象、孔長、角度、管径、有孔部の範囲、吸出し防止の方法、必要な流末処理は異なります。そのため、短い水抜き孔の説明を長い水抜きボーリングへ、そのまま当てはめることはできません。図面や竣工記録で、どの種類の設備かを確認することが第一歩です。


水抜き穴の基本的な考え方は、水の侵入を完全に止めることではなく、入った水を過度に滞留させず、管理された経路で排出することです。法肩からの表流水、地層境界や亀裂を通る地下水、盛土内の浸透水、擁壁背面の水は、それぞれ流れ方が異なります。水抜き穴は、そのうち地下水や背面水を扱う排水系統の一部です。


したがって、孔だけを見て良否を判断するのではなく、集水部、排水管、孔口、受け側の側溝・集水ます、流末までを連続した系統として確認します。孔口から出た水が法面へ再浸透したり、法尻を洗掘したり、道路や隣地へ流れ出したりすれば、新たな問題を生むおそれがあります。


水抜き穴が必要になる理由

斜面の安定性は、土や岩の強さだけで決まりません。地盤内の水圧が上昇すると、土粒子の骨格が実質的に負担する応力が小さくなり、地盤のせん断抵抗が低下する方向に働きます。水を含むことで土塊の単位体積重量が増えたり、地表や亀裂部で侵食が進んだりする場合もあります。


特に、長雨、集中豪雨、融雪などで地下水の供給量が増えると、すべり面付近の間隙水圧が上昇することがあります。国土交通省の地すべり防止施設に関する技術基準では、地下水排除工は浅層または深層の地下水を集め、すべり面に作用する間隙水圧の低下を図る施設として位置付けられています。([MLIT][1])


吹付工や擁壁などで法面表面を覆うと、雨滴や表流水による侵食を抑えられる一方、背面から供給される水の出口が不足する場合があります。排水層や水抜き孔が機能しなければ、局部的な背面水圧、漏水、浮き、はらみ、ひび割れ、剥離などにつながるおそれがあります。ただし、これらの変状は地山の風化、施工不良、材料劣化、凍結融解、斜面全体の変位などでも生じるため、排水不良だけを原因と決めつけることはできません。


水抜き穴の要否は、乾燥時の外観だけでは判断できません。平常時に湧水がなくても、雨期や融雪期に地下水位が上がることがあります。掘削後に地層境界や亀裂から新たな湧水が現れる場合もあります。過去の災害履歴、谷地形などの集水条件、上部の土地利用、既設排水路、降雨後の変化を含めて検討する必要があります。


なお、すべての法面に同じ形式・本数の水抜き穴が必要なわけではありません。湧水や地下水の影響が小さい法面もあれば、表面排水を優先すべき法面、暗渠排水や集水井など別の排水工が必要な法面もあります。目的と対象水を明確にして工法を選ぶことが重要です。


役割1 地下水圧を下げて斜面の安定性を保つ

第一の役割は、対象とする地下水を排出し、すべり面や弱層付近に作用する間隙水圧を低下させることです。間隙水圧が下がれば有効応力が増える方向に働き、一般には土のせん断抵抗を確保しやすくなります。ただし、実際の安定性は地質、すべり面、地下水分布、地震時の作用などにも左右されるため、排水量だけで安全性を判定することはできません。


重要なのは、水が集まる層、地層境界、亀裂帯などへ排水孔を適切に交差させることです。浅い位置に短い管を入れても、深い地下水へ届かなければ期待した効果は得にくくなります。反対に、長く削孔しても主要な水みちを外せば、排水量は限定されます。地質調査、地下水観測、ボーリング記録、施工中の湧水・くり粉の変化などを照合して対象層を設定します。


孔の本数や等間隔配置だけで効果は決まりません。透水性が低い地盤では地下水が孔まで移動しにくく、亀裂性岩盤では主要な亀裂に当たるかどうかで排水状況が変わります。国土交通省の基準も、地形、地質、土質、すべり面、地下水の分布・流動方向、供給経路などを踏まえて工種と配置を検討するよう示しています。


水抜き穴から継続的に水が出ている場合、排水機能が働いている可能性がある一方、背後から地下水が供給され続けていることも示します。平常時の排水量、降雨後に増加するまでの時間、濁りや沈殿物、複数孔の差を記録すると、状態変化を把握しやすくなります。


急な増水、濁りの発生、砂分の流出、孔口周辺の陥没などが同時に見られる場合は、水みちの変化や地盤材料の流出を疑う必要があります。反対に、以前流れていた孔が急に止まった場合は、地下水位の低下だけでなく、目詰まり、管の破損、孔口の埋没も候補になります。単独の現象ではなく、法面全体の変状と合わせて評価します。


また、降雨停止後も地下水位が時間差で上昇したり、高い状態が続いたりすることがあります。点検は豪雨中に接近して行うのではなく、安全が確保された後に、降雨量と経過時間を記録して実施します。


役割2 法面背面の滞水を逃がして保護工の破損を防ぐ

第二の役割は、吹付工、法枠工、擁壁などの背面に集まる水を排出し、局部的な水圧や漏水による負担を小さくすることです。短い水抜き孔は、背面に設けた排水層、集水マット、砕石層などと組み合わせて機能するのが基本で、孔だけが独立して水を集めるわけではありません。自治体の設計資料でも、吹付面の湧水処理や擁壁背面の排水層から水抜き孔へ導く構成が示されています。


吹付面の背面で水が滞ると、ひび割れや施工継ぎ目からの漏水、局部的なはらみ、浮き、剥離などが現れることがあります。法枠内では、枠内土砂の流出や湿潤の偏りが見られることもあります。ただし、同じ変状は地山の風化や押し出し、施工厚不足、付着不良、凍結融解でも生じます。


擁壁では、背面排水が低下すると水圧が作用するおそれがあります。壁面の漏水や泥水、ひび割れ、目地のずれ、前傾、周辺地盤の沈下などが見られる場合は、構造物の変状と排水系統の両方を調べます。水抜き孔が開いて見えても、背面の排水層が目詰まりしていれば十分に機能しない場合があります。


補修工事で既設孔を誤って塞ぐことにも注意が必要です。塗装、断面修復、吹付けの増し厚などを行う前に、既設孔の位置、方向、背面排水との接続、現在の機能を確認します。孔口を残すだけでよいのか、導水管や排水層も補修すべきかは、変状原因に応じて判断します。


静岡県の斜面施設ガイドラインは、排水孔以外の亀裂からの滲みや、背面地山の洗い出しによる土砂流出、寒冷地の凍結融解にも注意を求めています。したがって、水抜き穴の追加だけを先行させず、目視、打音、変位計測、背面状況の調査などを組み合わせることが重要です。([pref.shizuoka.jp][3])


役割3 排水経路を整えて長期的な地盤劣化を抑える

第三の役割は、法面内の水を管理された経路へ導き、再浸透、局部的な侵食、洗掘、細粒分の流出などを抑えることです。少量の水でも同じ場所を長期間流れ続ければ、亀裂や弱層へ流れが集中し、周辺地盤を緩める可能性があります。


ただし、水抜き孔を設けただけで土粒子の流出を防げるわけではありません。地盤条件に対して開口やストレーナーが粗すぎる場合、吸出し防止が不十分な場合、孔壁が不安定な場合には、濁水や土砂流出が生じるおそれがあります。反対に、目が細かすぎたり、析出物が付着したりすると、早期に目詰まりすることがあります。吸出し防止材、フィルター、ストレーナー、有孔部の仕様は、工法と地盤に応じて設計します。


排水口から濁水や砂粒が継続して出る場合は、単に「よく抜けている」と評価しません。孔口周辺の空洞、吹付面の浮き、法尻の土砂堆積、排水量の変化と合わせて、地盤材料の流出がないか確認します。斜面施設の点検資料でも、湧水に伴う洗い出しや土砂流出は注意すべき現象として示されています。([pref.shizuoka.jp][3])


寒冷地では、孔口や側溝の凍結、背面水の凍結融解が排水機能や保護工へ影響することがあります。地域の気象条件を踏まえ、孔口の納まり、導水経路、点検時期を計画します。


長期的な機能を保つには、法肩排水、小段排水、縦排水、法尻排水、暗渠排水、水抜き孔を役割ごとに整理し、最終的に安全な流末へつなげます。法肩では上方からの表流水を法面へ入れない、小段では集めた水を縦排水へ渡す、法尻では地下水と表流水を受けて下流へ流す、といった連続性が必要です。


排水量や水質の変化を観察しやすい孔口にしておけば、法面内部の変化を把握する手掛かりになります。ただし、孔口の観察は安定計算や地下水観測の代わりではありません。異常が疑われる場合は、追加調査や計測へつなげます。


水抜き穴の仕組みと主な構成

水抜き穴の構成は工法によって異なります。水抜きボーリングでは、地盤内へ設けたボーリング孔と保孔管、地下水を取り込むストレーナー部、集めた水を流末へ導く導水パイプ、孔口保護工、集水ます、流末施設などで構成される例があります。農林水産省の資料でも、これらを一体の施設として整理しています。


吹付面や擁壁の短い水抜き孔では、背面の透水層や集水材、吸出し防止材、水抜き管、孔口が主な構成になります。どの材料を使うか、管の全長を有孔にするか、一部を無孔の導水区間にするかは、標準図や設計図書によって異なります。


排水管は、原則として孔口へ自然流下できる線形・勾配を確保します。ただし、対象とする被圧地下水や工法によって削孔方向の考え方が異なる場合があるため、現場判断で角度を変更してはいけません。水抜きボーリングについては、地質・地下水条件に応じて位置、方向、長さを設定し、孔口を安定した地盤に設ける考え方が示されています。


孔壁が崩れたり、管が折れたり、継手が外れたりすると、通水断面や導水の連続性が損なわれます。管内に土砂や吹付材が入り込むことも閉塞の原因です。施工中は、管の挿入長、接続、固定、有孔部の位置、孔口の養生を管理します。


排出口の処理も重要です。管が法面内へ埋没していれば排水しにくくなり、過度に突出していれば外力で破損しやすくなります。排水が一点に落ちて法尻や側溝外を洗掘しないよう、受け部と導水経路を設けます。落ち葉、土砂、根、析出物がたまりやすい場所では、清掃・点検しやすい納まりにします。


水抜き穴は単独設備ではありません。上流側で集めた水を、途中で漏らさず、流末まで安全に運ぶ排水系統の一部です。排水先の能力や周辺への影響まで確認して、初めて機能が完結します。


設計で確認すべき地盤・水・配置条件

設計では、まず法面の成り立ちと地質を把握します。切土か盛土か、土質法面か岩盤法面か、風化の程度、亀裂や節理の方向、地層境界、透水性の差、過去の崩壊・補修履歴などを確認します。谷地形、沢埋め盛土、切盛境、傾斜地盤上の盛土などは、水が集まりやすい条件として注意が必要です。


次に、地下水と表流水を分けて調べます。平常時の湧水、降雨後の変化、季節変動、融雪、既設孔の排水量、湿潤箇所、上部の側溝・水路・舗装・建物・農地などを確認します。必要に応じて、ボーリング、地下水位観測、湧水量測定、水質確認などを行います。


配置は、等間隔に並べること自体を目的にしません。水が貯留し、斜面の安定や保護工へ影響していると考えられる位置を対象にします。地すべり対策の技術基準でも、地形・地質・地下水調査に基づいて、影響する地下水を排除できる位置へ施工する考え方が示されています。


岩盤では、孔が主要な亀裂と交差する方向を検討します。土砂地盤では、孔壁の安定性、細粒分の流出、施工可能長を考えます。削孔長や角度は、対象層へ到達すること、孔口へ排水できること、施工中に孔を保持できることのバランスで決めます。


排水先の能力も設計条件です。水抜き穴を増やしても、法尻側溝、集水ます、管路、下流施設の容量が不足すれば、越流や洗掘を起こすおそれがあります。排水先が道路、河川、民地、下水道などに関係する場合は、施設管理者との協議や必要な手続きを確認します。


地下水の排除によって周辺井戸、湧水利用、地盤沈下などへ影響する可能性がある場所では、周辺環境も検討対象です。国土交通省の基準も、地下水の生活利用を含む地域への影響や、維持管理性を考慮するよう示しています。


維持管理性は設計時に確保します。孔口を目視できるか、識別番号を付けられるか、流量を比較できるか、安全に近づけるか、清掃器具や孔内カメラを使用できるかを確認します。高所で近接点検が難しい場合は、遠方撮影や計測設備など代替手段を計画します。


最後に、適用する法令、発注者・施設管理者の基準、設計要領、標準図を確認します。孔径、間隔、材質などの標準値は用途や管理者によって異なるため、他現場の仕様をそのまま転用しないことが重要です。


施工時に品質を左右するポイント

施工前には、設計図書と掘削後の現地状況を照合します。事前調査と異なる地層、亀裂、軟弱部、湧水が現れた場合は、予定どおりに削孔を続けるのではなく、設計意図と変更の要否を確認します。発注者、設計者、施工者で情報を共有し、必要な承認・協議を行います。


削孔では、孔口位置、方向、角度、長さ、孔径を管理します。長い孔ほど、孔口の小さな角度誤差が先端位置へ影響します。削孔機械の据付、基準線、施工中の方向確認が重要です。くり粉の土質・岩質、湧水量、掘進抵抗の変化を記録すると、地層や水みちの推定に役立ちます。


孔壁が崩れやすい地盤では、削孔後の放置で閉塞することがあります。管を無理に押し込むと、折損、変形、ストレーナー部の損傷、挿入不足が起こるおそれがあります。管に目印を付けるなどして挿入長を確認し、継手や接続部の状態も記録します。


有孔部やストレーナー部の位置を誤ると、集水したい区間で水を取り込めない、または導水途中で水を地盤へ戻すおそれがあります。工場製品か現場加工かを問わず、管の仕様、開口位置、接続方向を施工前に照合します。


吹付工や法枠工と同時施工する場合は、管の固定と孔口の養生が重要です。吹付圧で管が動いたり、吹付材が管内へ入ったりすると、完成時から閉塞する可能性があります。施工中は必要な養生を行い、仕上げ後に設計どおり開放されていることを確認します。


完成時は、外観だけでなく、設計図書や施工計画に定められた方法で、挿入長、孔口、管内閉塞、排水経路、流末との接続を確認します。すべての孔から完成直後に水が出るとは限らないため、排水の有無だけを合否判定にしません。


施工写真と記録には、孔番号、位置、方向、削孔長、管の仕様、有孔区間、湧水状況、孔口、集水ます、流末を残します。将来の点検や補修で構造を確認できるよう、竣工図へ反映することが重要です。


維持管理で確認したい詰まりと異常の兆候

水抜き穴は、経年により目詰まり、腐食、破損、孔口の埋没、導水管の損傷が起こることがあります。孔口には土砂、落ち葉、植物の根、析出物などがたまり、集水ますや流末施設も閉塞します。農林水産省の機能保全資料では、水抜きボーリングについて、目詰まり、破損、埋没、流量、孔内状況、集水ます・流末の土砂堆積などが点検項目に挙げられています。([農林水産省][4])


点検では、各孔の通常状態を把握して変化を比較します。晴天時に流れる孔、降雨後だけ流れる孔、季節によって変わる孔があるため、一回の観察だけでは評価しにくいからです。孔番号を付け、同じ位置から写真を撮り、直前の降雨量と経過時間を記録します。


注意したい変化は、排水量の急増・急減、濁り、砂分、赤褐色などの析出、孔口周辺の陥没、別の場所からの新しい漏水です。濁りが一時的か継続的か、降雨と対応しているかを確認し、周辺のひび割れ、段差、はらみ、土砂堆積と合わせて評価します。


排水が止まった場合も、直ちに安全とは判断できません。地下水位が下がった可能性のほか、孔内の閉塞、管の折損、孔口の埋没、背面排水層の目詰まりが考えられます。周辺に新しい湿潤部や漏水が現れていないか確認します。


清掃は、設備の種類、管径、長さ、材質、閉塞原因、地盤条件を確認してから行います。棒を強く押し込む、高圧水を一律に使用するなどの自己判断は避けます。農林水産省の手引きでは、圧力水による洗浄について、固結度の低い地質では孔壁崩壊や土粒子流出を助長する場合があり、地山に合わせた水圧管理が必要とされています。([農林水産省][4])


清掃や補修を実施した場合は、前後の排水量、地下水位、降雨、排出された閉塞物を記録します。排水量が増えただけでは効果を断定できないため、地下水位や法面変状の推移も確認します。


点検対象は水抜き穴だけではありません。法肩側溝、小段側溝、縦排水、法尻側溝、集水ます、流末まで確認します。受け側が閉塞していれば、孔口が開いていても排水系統全体としては機能しません。


豪雨中や直後、落石・崩壊の兆候がある法面へ安易に接近しないことも重要です。必要に応じて立入規制を行い、遠方観察や計測機器を用い、施設管理者と専門技術者の判断を仰ぎます。


水抜き穴だけでは対処できないケース

水抜き穴は地下水や背面水を扱う抑制的な対策ですが、すべての変状を解決できるわけではありません。既に明瞭なすべり面が形成され、斜面全体が移動している場合は、排水だけで必要な安定性を確保できないことがあります。排土、押え盛土、アンカー、杭など、地形変更や抑止力を利用する工法との組み合わせを検討します。地すべり対策は、抑制工と抑止工を組み合わせる場合があると整理されています。([茨城県公式ホームページ][2])


地表水が大量に流入している場合も、水抜き穴の追加だけでは不十分です。法肩側溝の破損、上部水路からの漏水、舗装面からの集中流入があるなら、地下へ入る前に表流水を遮断・導水する対策を優先します。


湧水を伴う細砂、緩い盛土、崩れやすい風化岩では、安易な削孔が土砂流出の経路になる可能性があります。施工中に濁水や土砂流出が増えた場合は作業を継続せず、孔壁の安定、吸出し防止、工法の適否を再確認します。


法面上部の開口亀裂、段差、沈下、法尻のはらみ出し、擁壁の傾斜などが進行している場合は、活動中の地すべりや盛土変状が疑われます。水抜き穴の清掃・追加を先行させず、変位計測、地質調査、地下水観測などで変状範囲と原因を把握します。


排水先を確保できない場所でも、水抜き穴だけを増やすことはできません。排出水が法面へ再浸透したり、隣地や道路へ流れたり、下流施設をあふれさせたりしないよう、流末まで計画する必要があります。地下水利用や周辺地盤への影響が懸念される場合も、影響検討が必要です。


緊急性が高い兆候として、亀裂や段差が短期間で拡大する、濁水・土砂流出が急増する、落石や土砂落下が続く、擁壁の傾きや法尻のはらみが進む、といった現象があります。このような場合は、現場へ近づいて孔を清掃するのではなく、立入範囲を制限し、道路管理者、自治体、施設管理者などへ連絡して専門的な調査につなげてください。


法面工事の水抜き穴に関するよくある疑問

水抜き穴から水が出ていなければ、法面は安全なのでしょうか。必ずしも安全とはいえません。地下水位が低い場合もありますが、孔が水みちに届いていない、孔内が詰まっている、管が破損している、別の場所へ水が回っている可能性もあります。過去の排水状況、降雨、周辺の湿潤・ひび割れと合わせて判断します。


常に水が出ている水抜き穴は異常なのでしょうか。恒常的な地下水を排出している場合、晴天時も水が出ることがあります。常時排水だけで異常とは断定できません。ただし、排水量が増え続ける、濁る、砂を含む、周辺が陥没するといった変化があれば調査が必要です。


水抜き穴は多いほど安全なのでしょうか。単純に本数を増やせばよいわけではありません。対象地下水へ届かなければ効果は限定的で、地盤によっては土砂流出の経路を増やすおそれがあります。排水先の容量不足による越流や洗掘も考えられます。


既設の穴が詰まっていたら、棒を差し込んで清掃してもよいのでしょうか。構造や閉塞原因が不明なまま強く突くと、管を破損したり、閉塞物を奥へ押し込んだりする可能性があります。まず竣工図や孔内状況を確認し、設備と地盤に合った方法を選びます。


水抜き穴の間隔に一律の基準はあるのでしょうか。用途や管理者ごとに標準的な配置例はありますが、すべての法面に共通する最適間隔はありません。法面高さ、地質、地下水位、透水性、保護工、対象層、孔長、流末条件に応じて設計します。


吹付面にひび割れがある場合、水抜き穴を追加すれば直るのでしょうか。背面水圧が主因なら排水改善が有効な場合がありますが、地山の変位、付着不良、材料劣化、凍結融解など別の原因もあります。ひび割れの幅、方向、段差、進行性、漏水、浮きの範囲を調べて対策を選びます。


水抜き穴の点検は雨の日に行うべきでしょうか。晴天時と降雨後の状態を比較すると有用ですが、豪雨中や直後の近接点検は危険です。安全が確保された時点で、降雨量と経過時間を記録して確認します。固定カメラ、遠方撮影、流量計、水位計などの活用も検討します。


新設工事で見落としやすい点は何でしょうか。孔そのものだけでなく、排水先、流末容量、孔番号と記録、点検・清掃へのアクセスを見落とさないことです。完成時に排水できても、側溝が詰まりやすい、流末が不明確、孔口へ近づけない納まりでは長期機能を維持しにくくなります。


まとめ

法面工事の水抜き穴は、法面内部や構造物背面の水を管理された経路で排出する設備です。主な役割は、対象地下水を排出して間隙水圧の低下を図ること、吹付工や擁壁の背面にたまる水を逃がすこと、排出水を側溝・集水ます・流末へ導いて再浸透や洗掘などのリスクを抑えることの3つです。


ただし、「水抜き穴」には短い水抜き孔、水平排水孔、水抜きボーリングなどがあり、構造と目的は同一ではありません。孔の本数や排水量だけで安全性を判断せず、地質、地下水、対象層、施工記録、孔口から流末までの排水系統を確認する必要があります。


完成後は、目詰まり、破損、埋没、濁水、土砂流出、排水量の急変、周辺のひび割れ・段差・はらみを継続的に点検します。清掃や追加削孔は、地盤を乱したり土砂流出を助長したりする場合があるため、設備の構造と地盤条件を確認したうえで実施します。


法面に進行性の亀裂、濁水の急増、落石・土砂落下、擁壁の傾斜などが見られる場合は、外観だけで安全と判断せず、現場へ不用意に接近しないでください。既設図面、点検記録、降雨後の写真を整理し、施設管理者や地盤・法面の専門技術者へ相談することが重要です。


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