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法面工事で急傾斜地に指定された?最初に確認する3点

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

目次

急傾斜地に指定されたとき最初に整理すること

似た名称の区域を混同しない

確認1|指定された区域の正式名称と範囲

確認2|予定する法面工事に必要な許可と協議

確認3|現地条件と工事範囲の安全性

指定区域の確認に必要な資料

現地調査で確認したい斜面と排水の状態

急傾斜地における法面工法の考え方

見積りと発注条件で確認すべき事項

着工前に整える施工計画と近隣対応

危険な変状が見つかった場合の初動

法面工事後も指定が自動的に解除されるとは限らない

まとめ|区域・手続き・現地条件の順で確認する


急傾斜地に指定されたとき最初に整理すること

法面工事を検討している土地について、自治体から「急傾斜地に指定されています」と案内されたり、公開されている区域図に敷地が含まれていたりすると、工事そのものができないのではないかと不安になる実務担当者は少なくありません。


しかし、急傾斜地に関係する区域へ指定されているからといって、あらゆる工事が一律に禁止されるとは限りません。重要なのは、どの法令に基づく何という区域なのか、計画している法面工事がどのような行為に該当するのか、工事によって斜面の安全性や周辺環境へどのような影響が生じるのかを順番に確認することです。


特に注意したいのは、「急傾斜地」という言葉が、斜面の形状を表す一般的な表現として使われる場合と、法令に基づく指定区域を説明する言葉として使われる場合があることです。行政窓口や不動産関係者から口頭で説明を受けただけでは、正式な区域区分まで判別できないことがあります。


法面工事の計画を進めるときは、最初に確認する事項を三つに整理すると判断しやすくなります。


第一は、指定された区域の正式名称と、敷地にかかっている正確な範囲です。第二は、切土、盛土、掘削、排水施設の設置、樹木の伐採など、予定している工事に必要な許可や事前協議です。第三は、斜面の地形、地質、地下水、既存構造物、周辺住宅などを踏まえた工事範囲と安全性です。


この三点を曖昧にしたまま設計や見積りを進めると、工法を決めた後に許可条件が判明したり、施工範囲を変更する必要が生じたりするおそれがあります。急傾斜地に関係する法面工事では、工事費や工程を検討する前に、区域と手続きの確認を進めることが重要です。


似た名称の区域を混同しない

急傾斜地に関係する代表的な指定には、「急傾斜地崩壊危険区域」と「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」があります。名称は似ていますが、根拠となる法律や指定の目的、工事に対する規制内容は同じではありません。


急傾斜地崩壊危険区域は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律に基づき、関係市町村長の意見を聴いたうえで都道府県知事が指定する区域です。法律上の急傾斜地は傾斜度が30度以上の土地とされ、崩壊のおそれがある急傾斜地に加え、その崩壊を助長または誘発するおそれがないよう一定の行為を制限する必要がある隣接地も区域に含まれる場合があります。([国土交通省][1])


急傾斜地崩壊危険区域では、水の浸透を助長する行為、一定の施設や工作物の設置・改造、のり切り、切土、掘削、盛土、立木竹の伐採、土石の採取や集積などについて、都道府県知事の許可が必要となる場合があります。ただし、非常災害のために必要な応急措置や政令で定める行為などには例外があるため、具体的な工事が許可対象となるかは都道府県の担当部署へ確認する必要があります。許可に関する申請方法や必要書類は、都道府県の条例や規則などに基づいて運用されます。([国土交通省][1])


一方、土砂災害警戒区域は、急傾斜地の崩壊、土石流または地滑りが発生した場合に、住民などの生命や身体へ危害が生じるおそれがあり、警戒避難体制を特に整備すべき区域です。


土砂災害特別警戒区域は、その中でも建築物が損壊し、住民などへ著しい危害が生じるおそれがある区域です。区域内では、住宅や防災上の配慮を要する人が利用する一定の施設などの建築を予定する特定開発行為について許可が必要となる場合があり、居室を有する建築物には構造上の規制が関係します。すべての開発行為が一律に許可対象となるわけではないため、予定建築物の用途や工事内容を示して確認することが大切です。


さらに、計画地によっては、盛土等に伴う災害を防止するための規制区域、建築基準に関する災害危険区域、砂防関係の指定区域、保安林、河川区域、道路区域などが重なっていることがあります。盛土や切土を伴う法面工事では、急傾斜地に関する手続きだけを確認しても十分とは限りません。


盛土規制法では、土地の用途にかかわらず、都道府県知事等が規制区域を指定し、区域内で行う一定規模以上の盛土、切土や土石の堆積などを許可または届出の対象とする仕組みが設けられています。対象となる規模や手続きは工事内容と区域区分によって異なるため、所在地を管轄する自治体で確認します。([国土交通省][2])


したがって、「急傾斜地だから工事ができるか」という一つの問いだけで判断するのではなく、指定区域を重ねて確認し、それぞれの担当部署に必要な手続きを照会することが大切です。


確認1|指定された区域の正式名称と範囲

最初に確認する一点目は、指定の正式名称と区域の範囲です。


行政窓口から「急傾斜地に入っています」と説明された場合は、それが急傾斜地崩壊危険区域なのか、土砂災害警戒区域なのか、土砂災害特別警戒区域なのかを確認します。複数の区域が重複している場合もあるため、一つの名称を確認しただけで調査を終えないことが重要です。


確認時には、区域名だけでなく、指定年月日、告示番号、区域番号、自然現象の種類、区域図の作成年月なども記録します。区域図が更新されている可能性を考え、過去に取得した資料だけに頼らず、計画時点で有効な情報を自治体に確認します。


公開されているハザードマップは、区域の概況を把握するうえで役立ちます。ただし、画面上で敷地が区域内か区域外か判断しにくい場合や、区域線が建物、法面、道路、境界付近を通っている場合は、公開図だけで工事可否を決めるべきではありません。


工事計画では、土地の所有境界と指定区域の境界を区別する必要があります。指定区域の線は、必ずしも土地の筆界や道路境界に沿っているわけではありません。一つの敷地の一部だけが区域内となっていることもあれば、斜面そのものだけでなく、斜面上部や下部の土地が隣接地として含まれていることもあります。


区域図を確認するときは、法面の上端、下端、計画する掘削範囲、盛土範囲、仮設道路、重機の設置場所、資材置場、排水先まで重ねて考えます。完成後の構造物だけが区域外であっても、施工中の掘削や仮設設備が区域内に入れば、許可や協議が必要になる可能性があるためです。


敷地境界付近で区域線が不明確な場合は、測量図、地積測量図、現況平面図、縦横断図などを用意し、自治体の担当部署へ照会します。必要に応じて現地測量を行い、指定区域と工事範囲の位置関係を確認できる図面を作成します。


この段階で確認したいのは、単に「敷地が区域に入っているか」ではありません。「工事のどの部分が、どの指定区域に入り、どの行為が規制対象になる可能性があるか」を整理することが目的です。


また、指定区域に入っていることと、行政による対策工事が直ちに実施されることは同じではありません。公共事業として対策される条件、土地所有者が行う工事の扱い、既存施設の維持管理主体などは、区域や自治体によって異なります。行政が施工すると思い込まず、対象斜面の所有者、管理者、工事主体を確認しておく必要があります。


確認2|予定する法面工事に必要な許可と協議

二点目は、計画している工事内容を具体化し、必要な許可と事前協議を確認することです。


急傾斜地崩壊危険区域では、のり切り、切土、掘削、盛土などが行為制限の対象に含まれます。一般的な法面整形や小規模な補修であっても、内容によっては手続きが必要です。「敷地内の工事だから自由にできる」「崩壊を防ぐための工事だから許可は不要」と自己判断せず、担当部署へ確認します。


法面工事には、斜面を削る作業だけでなく、排水溝の設置、集水ますの設置、排水管の埋設、基礎の掘削、補強材の施工、吹付けに伴う下地処理、樹木の伐採、仮設足場の設置などが含まれます。斜面へ直接手を加えないように見える工事でも、水の流れを変えたり、土に荷重を加えたりする場合は、崩壊を助長または誘発するおそれがないか確認が必要です。


行政へ相談するときは、「法面を補修したい」という抽象的な説明だけでは、必要な手続きを判断しにくくなります。工事目的、施工位置、掘削深さ、切土・盛土の高さ、施工面積、使用する材料、排水方法、仮設計画、重機の種類、工事期間などを整理して伝えることが大切です。


計画初期の段階では、確定した設計図がなくても事前相談は可能です。まず位置図、現況写真、土地の公図や測量図、概略平面図、断面のスケッチなどを用意し、担当部署から必要な調査、設計条件、申請図書、審査の流れなどを確認します。その内容を設計と見積りへ反映させます。


急傾斜地に関する担当部署と、盛土等の規制、建築確認、開発許可、道路占用、河川、森林などの担当部署が分かれていることもあります。一つの窓口で「問題ありません」と言われても、その回答がほかの法令まで含んでいるとは限りません。どの法令について、どの部署から、どのような回答を得たのかを記録する必要があります。


許可申請が必要な場合は、申請から許可までに必要な期間を工程へ組み込みます。行政との協議で設計変更を求められる可能性もあるため、許可条件が固まる前に施工会社との契約内容を確定しすぎないことが重要です。


工事を急ぐあまり、許可や協議が完了する前に伐採、掘削、資材搬入などへ着手すると、工事停止や是正を求められるおそれがあります。準備工事と本工事の境界も自己判断せず、どの作業から手続きが必要となるかを担当部署に確認します。


既存の法面保護施設を補修する場合は、その施設の所有者と管理者も調べます。行政が設置した施設、道路管理者が管理する施設、土地所有者が設置した施設などでは、工事の進め方が異なります。既存施設へ穴をあけたり、部材を取り付けたり、排水経路を変更したりする場合は、管理者の承諾や別の手続きが必要になることがあります。


行政との協議内容は、電話だけで終わらせず、相談日、部署名、担当者、提出資料、回答内容、追加条件を記録します。設計者、施工会社、土地所有者の間でも共有し、工事直前になって条件の認識が食い違わないようにします。


確認3|現地条件と工事範囲の安全性

三点目は、現地条件を調べ、工事範囲と施工方法が安全性を損なわないか確認することです。


区域指定を確認して許可の見通しが立っても、現地調査を行わなければ適切な法面工法は決められません。急傾斜地では、目に見える表面だけでなく、斜面内部の地質、風化の程度、地下水、湧水、過去の盛土、既存施設の状態などが安定性に影響します。


まず、斜面の高さ、勾配、延長、凹凸、上部と下部の土地利用を確認します。法面上部に住宅、駐車場、道路、擁壁、水路などがある場合は、それらの荷重や排水が斜面へ与える影響を考えなければなりません。斜面下部に住宅、通路、駐車場、公共施設などがある場合は、施工中の落石、土砂流出、資材落下への対策が必要です。


斜面に亀裂、段差、はらみ出し、局所的な崩落、浮石、転石、樹木の傾きなどがないか確認します。既存の吹付け面にひび割れ、剥離、空洞の疑いがある場合や、擁壁に傾き、目地の開き、漏水がある場合は、表面補修だけで対応できるとは限りません。


水の状態は、急傾斜地の法面工事で特に重要です。斜面からの湧水、湿った部分、降雨後だけ水が出る箇所、上部から流れ込む雨水、排水溝の詰まり、破損した排水管、水が集中する地形などを調べます。


法面の表面を保護しても、背面に水がたまれば、土圧や水圧の増加によって変状につながることがあります。そのため、表面保護と排水対策は切り離さずに検討します。ただし、排水先を変更した結果、隣地や道路へ水が集中する計画になってはなりません。集めた水をどこへ流し、流末に必要な能力があるかまで確認する必要があります。


地質については、土砂、風化岩、岩盤、過去の盛土などの区分を確認します。同じ勾配の斜面でも、地質や亀裂の方向、地下水の状態によって適した工法は異なります。既存資料だけで判断できない場合は、調査地点や深さを検討したうえで、必要な地盤調査や試験を行います。


施工時の安全性も設計段階から確認します。完成後に安定する工法であっても、施工途中で斜面を大きく切り開く計画では、作業中の崩壊リスクが高まることがあります。掘削する順序、一度に露出させる面積、仮設排水、土留め、作業員の退避経路、重機の配置などを含めて施工計画を立てます。


急傾斜地では、重機を斜面上部へ載せることによる荷重や振動にも注意が必要です。作業ヤードが狭い場合は、小型機械の使用、人力作業、仮設構台、離れた位置からの施工などを検討します。施工性だけを優先して重機を近づけると、斜面の安定や既存構造物に影響するおそれがあります。


工事範囲は、目に見える損傷部分だけで決めないことも重要です。小さな崩落の周囲に緩んだ土砂が残っている場合や、上部の排水不良が原因となっている場合は、崩れた部分だけを埋め戻しても再発する可能性があります。原因を確認し、必要な範囲で対策することが求められます。


一方で、指定区域全体を一律に施工する必要があるとも限りません。必要以上に広い切土や伐採を行うと、植生や表土が失われ、雨水の流れが変化することがあります。現地調査と安定性の検討に基づき、必要な対策範囲を設定することが大切です。


指定区域の確認に必要な資料

区域と工事の関係を整理するには、複数の資料を組み合わせて確認します。


最初に用意したいのは、自治体が公表している指定区域図と告示関係資料です。画面上の区域表示だけでなく、区域名称、区域番号、指定年月日、告示番号、自然現象の種類などが分かる資料を取得します。


次に、土地の位置を確認するための案内図、公図、土地の登記事項、境界に関する図面、現況測量図などを用意します。土地の所有者と工事発注者が異なる場合は、工事を行う権限や承諾の範囲も確認します。


現況測量図では、斜面上端と下端、勾配の変化点、既存擁壁、排水施設、建物、道路、境界標、樹木、電柱、埋設物の位置などを記録します。法面工事の設計では平面的な位置だけでなく、高さ関係が重要になるため、縦断図や横断図を作成できる測量情報が必要です。


既存の設計図、施工記録、点検記録、災害履歴などが残っている場合は、それらも確認します。過去に補修を繰り返している箇所では、表面に現れている変状とは別の原因が残っている可能性があります。


周辺の排水計画を把握するため、側溝、集水ます、排水管、雨水流末などの資料も確認します。図面上に排水施設が記載されていても、現地で埋没、閉塞、破損していることがあるため、資料と現況の照合が必要です。


行政へ相談するときは、これらの資料を一度にすべてそろえなければならないとは限りません。まず最低限の位置図、区域図、現況写真、概略工事図を提出し、追加で必要となる資料を確認すると効率的です。


ただし、最終的な許可申請や設計確認では、平面図、断面図、構造図、排水計画図、施工計画、安定性に関する検討資料などを求められることがあります。事前相談の段階で、必要図書と作成者に求められる条件を確認しておくと、後からの手戻りを抑えられます。


現地調査で確認したい斜面と排水の状態

現地調査は、晴天時に一度見るだけでは十分でない場合があります。特に水の影響が疑われる斜面では、降雨後の状態を安全な範囲で確認すると、平常時には見えない湧水や表面流を把握できることがあります。


斜面上部では、雨水が法肩へ集中していないか確認します。屋根の雨どい、駐車場、道路、舗装面、水路などから流れた水が一か所へ集まり、斜面へ流れ込んでいることがあります。法肩付近に亀裂や沈下がある場合は、水が斜面内部へ入り込む経路になっている可能性があります。


斜面中央部では、表面の洗掘、土砂の流出、植生の抜け、吹付け面の変色、漏水跡などを確認します。水が流れた筋が複数ある場合は、降雨時の流れを想定して排水計画を検討します。


斜面下部では、土砂の堆積、側溝の閉塞、基礎周辺の洗掘、水たまりなどを確認します。下部に擁壁がある場合は、水抜き穴の状態、漏水、ひび割れ、傾き、目地の開き、背面土の流出なども見ます。


法面に樹木がある場合は、樹木があること自体を直ちに危険と判断するのではなく、根元の土砂流出、倒木のおそれ、幹の傾き、枯損、風による揺れの影響などを確認します。無計画な伐採は、根による表土保持を失わせたり、法面を露出させたりすることがあるため、伐採の範囲と時期を慎重に決めます。


既存の法面保護工がある場合は、表面だけでなく端部や継ぎ目を確認します。構造物の上端から水が入り込んでいないか、下端が洗掘されていないか、周囲の土砂と段差が生じていないかを見ることが重要です。


また、斜面の近くに水道管、排水管、貯水設備などがある場合は、漏水の有無も確認します。長期間の漏水が斜面内部へ影響することがあるため、原因が疑われる設備は管理者と連携して調査します。


現地調査では写真を多く撮るだけでなく、撮影位置と方向を記録します。法面全体、上部、中央部、下部、排水施設、変状箇所を一定の順序で撮影すると、関係者が状況を共有しやすくなります。


変状箇所は近景だけでなく、周囲との位置関係が分かる中景や全景も残します。ひび割れの幅、段差、範囲などを継続的に確認する場合は、同じ位置と方向から撮影できる基準を設けます。


急傾斜地における法面工法の考え方

急傾斜地の法面工法は、見た目を整えるためではなく、想定される崩壊原因に対応するために選定します。


表面の浸食が主な課題であれば、表土や植生を保護し、雨滴や表面流による土砂流出を抑える方法が検討されます。ただし、急勾配、日照不足、乾燥、湧水などにより植物が定着しにくい場合は、維持管理まで含めた検討が必要です。


表層の小規模な崩落が想定される場合は、斜面表面を被覆し、土砂の移動を抑える方法が候補になります。しかし、斜面内部のすべりや地下水が原因である場合、表面を覆うだけでは十分な効果を得られない可能性があります。


岩盤斜面では、浮石や亀裂の状態を確認し、落石や岩塊の抜け落ちに対応する必要があります。表面保護、固定、受け止める施設などを組み合わせることがありますが、想定する岩塊の大きさや移動経路を踏まえて設計します。


地下水や湧水が斜面の不安定化に関係している場合は、排水対策を検討します。ただし、排水設備は設置すれば終わりではありません。目詰まりや破損によって機能が低下することを前提に、点検と清掃が可能な構造や配置を考える必要があります。


斜面の安定性を内部から高める方法を採用する場合は、地質、想定するすべり面、施工方向、定着条件などを調査します。地中へ部材を施工する工法は、埋設物や隣接地への影響も確認しなければなりません。


法面の下部に擁壁などを設置する案では、基礎地盤、背面排水、土圧、施工時の掘削、既存構造物との取り合いを検討します。急傾斜地では擁壁を設置するための掘削自体が斜面へ影響することがあるため、完成形だけでなく施工段階の安全性が重要です。


工法を一つに決め打ちするのではなく、排水、表面保護、斜面補強、落石対策などを組み合わせる考え方も必要です。どの工法にも適用条件と維持管理上の注意があるため、現地条件を調べずに名称や過去事例だけで選ばないようにします。


また、区域指定の解除だけを目的に工法を決めることは避けるべきです。工事によって地形や安全性が変わっても、区域の見直しや解除は行政による確認と手続きが必要です。まず人命、周辺施設、土地利用の安全性を確保する対策を検討し、その結果として区域の扱いを行政へ確認する順序が基本です。


見積りと発注条件で確認すべき事項

急傾斜地の法面工事では、見積金額だけを比較して施工会社を決めると、工事開始後の追加や範囲変更が発生しやすくなります。


まず、各社へ同じ現況資料と工事条件を提示します。区域図、測量図、現況写真、調査結果、行政との協議内容、想定工法、施工範囲などが異なる状態で見積りを依頼すると、金額の差が工法の違いなのか、計上範囲の違いなのか判断できません。


見積書では、直接的な法面工だけでなく、仮設工、伐採、残土処分、排水処理、足場、重機の搬入、交通誘導、近隣養生、完成後の清掃などが含まれているか確認します。


急傾斜地では、施工中の安全対策が費用と工程に大きく影響します。墜落や転落への対策、落石防止、斜面下部への立入防止、仮設排水、降雨時の養生などが見積りに含まれているか確認が必要です。


申請図書や施工計画書の作成を誰が担当するのかも明確にします。設計者、申請者、施工会社の役割が曖昧だと、行政から修正を求められた際に対応が止まることがあります。


許可条件によって工法や施工範囲が変わる可能性がある場合は、契約時点で変更の扱いを定めます。追加工事が必要となる条件、数量の確認方法、変更承認の手順、写真記録の方法などを取り決めておくと、工事中の認識違いを減らせます。


施工実績を確認するときは、単に法面工事の件数を見るだけでなく、急傾斜地、狭い進入路、住宅近接地、湧水のある斜面など、計画地と似た条件への対応経験を確認します。


また、事故や変状が起きた場合の連絡体制、降雨時の対応、工事保険の対象範囲、完成後の点検や補修の条件も確認します。完成直後の見た目だけでなく、長期的な維持管理を考えた発注条件が必要です。


着工前に整える施工計画と近隣対応

急傾斜地で安全に法面工事を行うためには、設計図だけでなく、現場条件を反映した施工計画が欠かせません。


施工計画では、工事の順序と一日に施工する範囲を明確にします。斜面を広い範囲で同時に露出させると、降雨時の浸食や崩落リスクが高まることがあります。段階的に施工し、その日の作業終了時に必要な養生を行える計画とします。


天候管理の基準も定めます。降雨が予想される場合の作業中止判断、資材や掘削面の養生、側溝や仮設排水の点検、作業員の退避方法などを事前に決めます。


法面下部に道路や住宅がある場合は、落下物や土砂流出を防ぐ仮設設備を検討します。施工範囲への第三者の立入りを防止し、通行者がいる場所では誘導方法を決めます。


資材置場や残土の仮置場も重要です。斜面上部へ土砂や資材を集中して置くと、荷重の増加や排水阻害につながることがあります。置場の位置と保管量を施工計画へ明記します。


排水については、既存の水路を工事中に塞がないようにします。施工に伴って一時的に水の流れを変える場合は、下流側の容量や隣地への影響を確認します。


近隣への説明では、工事期間、作業時間、騒音や振動が生じる作業、車両の出入り、通行規制、安全対策、緊急連絡先などを伝えます。法面下部の住宅や施設には、工事内容だけでなく、落石や土砂流出を防ぐためにどのような対策を行うか説明すると理解を得やすくなります。


工事前には、近隣の建物、塀、舗装、側溝などの現況を写真で記録します。工事後にひび割れや沈下について相談を受けた際、施工前の状態を確認できる資料になります。


工事中は、設計図どおりに施工できているかだけでなく、新たな湧水、亀裂、土質の変化、想定外の構造物などが現れていないか確認します。異常が見つかった場合は、そのまま施工を続けず、設計者や発注者へ報告して対応を検討します。


危険な変状が見つかった場合の初動

法面に新しい亀裂、大きな段差、土砂の流出、落石、異常な湧水、構造物の傾きなどが見つかった場合は、通常の見積りや補修検討よりも安全確保を優先します。


まず、危険が想定される斜面の上下へ不用意に近づかないようにします。法面下部に人や車両が入る場所がある場合は、管理者や関係者と連携して立入りを制限します。


道路、住宅、公共施設などへ影響するおそれがあるときは、土地所有者だけで判断せず、自治体や施設管理者へ連絡します。落石や崩落が進行している場合、個人で応急作業を行うとかえって危険になることがあります。


異常箇所を記録するときも、安全な位置から全体状況を撮影します。崩れた土砂の上へ乗ったり、亀裂の近くへ近づいたりしないようにします。


大雨の最中や直後は、斜面内部に多くの水が含まれ、変状が進行する可能性があります。見た目が落ち着いていても安全とは限りません。気象情報と自治体からの避難に関する情報を確認し、人命を優先して行動します。


緊急的に雨水の流入を減らす必要がある場合でも、作業員が危険な斜面へ入らなければならない方法は避けます。応急措置の内容は、斜面の状態や周辺への影響を踏まえて専門家や行政と検討します。


法面工事後も指定が自動的に解除されるとは限らない

法面工事によって斜面が補強されたとしても、急傾斜地に関係する指定が自動的に解除されるわけではありません。


土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域は、対策工事の実施や地形の変更などによって指定の事由がなくなったと行政が認めた場合に、所定の手続きを経て全部または一部が解除されることがあります。工事の完了と同時に土地所有者の判断で区域外として扱うことはできません。


区域の解除や変更を見込む場合は、設計段階から自治体へ相談し、どのような調査、設計、施工記録、完成図書が必要か確認します。完成後に初めて解除について相談すると、必要な施工中写真や品質記録が残っていないことがあります。


また、一部の法面を補修しても、周辺に別の崩壊原因が残っていれば、区域全体の評価が変わらないことがあります。対策施設の維持管理体制も確認事項となり得るため、構造物を設置しただけで解除されるとは考えないほうが安全です。


工事完了後は、完成図、施工写真、材料や品質に関する記録、排水施設の位置、点検方法などを整理します。土地所有者や管理者が変わっても維持管理を継続できるように、記録を引き継げる状態にしておくことが大切です。


定期点検では、法面表面のひび割れ、剥離、沈下、湧水、排水施設の詰まり、植生の状態、落石防止設備の変形などを確認します。大雨、地震、台風などの後には、通常点検とは別に臨時点検を行うことも検討します。


法面工事は完成した時点で終わりではありません。排水施設を清掃し、異常を早期に把握し、必要な補修を行う維持管理まで含めて安全性を保つ必要があります。


まとめ|区域・手続き・現地条件の順で確認する

法面工事の計画地が急傾斜地に関係する区域へ指定されている場合、最初に確認することは三点です。


一点目は、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域など、指定の正式名称と範囲です。敷地全体が含まれるのか、一部だけなのか、完成後の構造物だけでなく仮設や搬入経路まで含めて確認します。


二点目は、予定する法面工事に必要な許可と行政協議です。切土、盛土、掘削、伐採、排水施設の設置など、具体的な行為を整理し、複数の法令や担当部署が関係しないか確認します。


三点目は、斜面の地形、地質、地下水、排水、既存構造物、周辺住宅などを踏まえた工事範囲と安全性です。表面に見える損傷だけで工法を決めず、変状の原因と施工中の危険まで調べます。


この三点を先に整理すれば、行政協議、設計、見積り、施工計画を同じ前提で進めやすくなります。反対に、区域の扱いを曖昧にしたまま工法や発注先を決めると、許可条件による設計変更や工程の遅れにつながる可能性があります。


現地確認では、斜面の状態を写真だけでなく、位置、高さ、方向と結び付けて記録することが重要です。法面全体、亀裂、湧水、排水施設、既存構造物などをスマートフォンや測量機器などで記録し、関係者が同じ現地情報を確認できる状態にしておけば、行政相談、設計検討、施工管理、完成後の点検まで一貫した情報管理につなげられます。


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