法面に雨裂が見つかると、「表面が少し削れただけなので放置してもよいのではないか」と判断してしまうことがあります。しかし、雨裂は雨水が特定の経路に集中し、法面表面の土砂を浸食していることを示す現象です。浅く細い雨裂であっても、降雨のたびに水が同じ場所を流れ続ければ、幅や深さが拡大し、植生の流失、表層崩壊、排水施設の損傷などにつながるおそれがあります。
一方で、雨裂が発生したからといって、すべての法面が直ちに崩壊するわけではありません。重要なのは、雨裂を埋め戻すことだけで済ませず、どこから水が流入し、なぜその場所に水が集中し、法面を構成する土や保護工がどのような状態になっているかを確認することです。
この記事では、法面工事後または供用中の法面に雨裂ができたとき、実務担当者が優先して確認したい4つの原因を解説します。現地調査の進め方、応急対応で注意する点、再発を防ぐための法面工事の考え方まで整理します。
目次
• 法面にできる雨裂とは何か
• 雨裂を見つけた直後に確認すべきこと
• 原因1|法肩や周辺地盤から雨水が流れ込んでいる
• 原因2|排水施設の不足や詰まりで水が集中している
• 原因3|法面表層の整形や保護が不十分になっている
• 原因4|法面の勾配や土質が浸食を受けやすい
• 雨裂の危険度を判断する主な視点
• 雨裂を埋めるだけでは再発を防げない理由
• 雨裂が見つかったときの応急対応
• 再発を防ぐ法面工事の進め方
• 維持管理で雨裂の拡大を早期に捉える方法
• 法面工事を依頼する前に整理したい情報
• まとめ
法面にできる雨裂とは何か
雨裂とは、法面を流れる雨水によって表面の土砂が削られ、細い溝状または筋状の浸食が生じた状態を指します。降雨時に法面の広い範囲を薄く流れていた水が、地表のわずかな凹凸や軟弱な部分に集まり、同じ経路を繰り返し流れることで形成されます。
発生初期の雨裂は、表面に浅い筋が見える程度の場合があります。しかし、その溝に水が集中すると流速が上がり、周囲の土粒子がさらに運ばれます。雨裂の下流側に削られた土砂が堆積していたり、法尻の排水路に泥がたまっていたりする場合は、現在も浸食が進行している可能性があります。
雨裂は、切土法面でも盛土法面でも発生します。特に土で構成された法面、植生が十分に成立していない法面、表面排水が計画どおりに機能していない法面では注意が必要です。施工直後の法面だけでなく、完成から時間が経過した法面でも、排水路の詰まり、植生の衰退、周辺土地利用の変化などによって新たに雨裂が生じることがあります。
また、雨裂と地盤の亀裂は見た目が似ていることがあります。雨水で表面が削られた溝なのか、法面内部の変形によって地盤が開いた亀裂なのかでは、必要な対応が大きく異なります。段差を伴う亀裂、法肩に沿って連続する割れ目、亀裂の上下で地盤の高さが異なる状態が見られる場合は、単なる表面浸食と決めつけず、法面全体の変状として確認する必要があります。
雨裂を見つけた直後に確認すべきこと
雨裂を見つけたときは、すぐに土を入れて表面を平らにするのではなく、最初に現状を記録することが重要です。雨裂の位置、長さ、幅、深さ、上流側と下流側の状況を写真や簡単な測定記録として残します。補修後は元の形状が分からなくなるため、原因調査に必要な情報を先に確保しなければなりません。
確認時には、雨裂の上端がどこにつながっているかをたどります。法肩の排水路、道路、駐車場、屋根の雨樋、造成地、未舗装地などから流れてきた水が法面へ落ちていないかを見ます。法面の途中だけを見るのではなく、その水がどこで発生し、どこへ流れているかを一連の経路として把握することが大切です。
雨裂の下端も確認します。削られた土砂が法尻にたまっている場合、排水路を閉塞させている可能性があります。排水路の流下能力が低下すると、別の場所から水があふれ、新しい雨裂ができることがあります。雨裂そのものと、周辺の排水施設を同時に確認する必要があります。
さらに、直近の降雨状況も整理します。一度の強い雨で急に発生したのか、数回の降雨で徐々に深くなったのかによって、想定される原因や進行性が異なります。以前の点検写真と比較できる場合は、発生時期や拡大速度を把握しやすくなります。
調査のために法面へ立ち入る際は、足元の土 砂が緩んでいないかにも注意が必要です。急勾配の法面や降雨直後の法面では、表面が滑りやすくなっています。法肩から身を乗り出したり、雨裂の内部を無理に歩いたりせず、安全を確保できる範囲から確認します。
原因1|法肩や周辺地盤から雨水が流れ込んでいる
雨裂が発生する代表的な原因の一つが、法面の外から雨水が流れ込んでいることです。本来、法面の上部に降った雨や周辺から集まる水は、法肩排水路などで受け止め、法面表面へ直接流さないように処理することが基本です。しかし、排水施設が設けられていない場合や、周辺地盤の勾配が法面方向を向いている場合には、水が法肩を越えて法面へ流入します。
特に注意したいのは、法面工事後に周辺の土地利用が変わったケースです。法面上部が舗装されたり、建物や駐車場が整備されたりすると、地中へ浸透していた雨水が地表を流れやすくなります。その結果、法面へ到達する水量が施工時の想定より増えることがあります。
屋根の雨水、道路の側溝からあふれた水、敷地内の排水、洗浄水などが局所的に法肩へ流れているケースもあります。流入量がそれほど多く見えなくても、出口が一点に集中していれば、その直下に深い雨裂を形成することがあります。
現地では、雨裂の上端から法肩へ向かって確認し、地表に水が流れた跡がないかを見ます。土の表面が洗われている場所、枯れ葉や細かな枝が線状に集まっている場所、泥が付着した場所は、水の経路を把握する手がかりになります。乾燥時には分かりにくいため、降雨中または雨が弱まった直後に、安全な場所から水の流れを観察すると原因を特定しやすくなります。
法肩付近に盛土の沈下や局部的なくぼみがあると、水がそこに集まって法面へ流れ出します。施工後の沈下によって、当初は排水路側へ向いていた勾配が逆向きになることもあります。排水路の有無だけでなく、周辺地盤の高さや勾配が適切に保たれているかを確認する必要があります。
対策では、雨裂ができた位置だけを補修するのではなく、法面へ入る前に水を受け止める考え方が重要です。法肩排水の追加や修正、周辺地盤の整形、流入口の分散、集水箇所から安全な排水先までの導水などを検討します。流入元を残したまま表面を埋め戻しても、次の降雨で同じ場所が再び削られる可能性があります。
原因2|排水施設の不足や詰まりで水が集中している
法面の周辺に排水施設が設けられていても、それが十分に機能していなければ雨裂は発生します。法肩排水路、縦排水路、小段排水路、法尻排水路などは、水を集めて安全に流すための施設です。しかし、土砂や落ち葉による詰まり、接続部の段差、破損、沈下、勾配不良などがあると、水が途中からあふれて法面へ流れ出します。
排水路の詰まりは、見た目以上に影響が大きい場合があります。排水路の一部に土砂がたまると、その上流側で水位が上がり、低い箇所から越流します。越流した水が一点に集中すれば、排水路の直下に雨裂が形成されます。雨裂の上端付近に排水 路がある場合は、排水路内だけでなく、その継ぎ目や周囲の地盤も確認します。
縦排水路の接続部も注意が必要です。法肩排水路から縦排水路へ水を落とす部分に隙間や段差があると、水が構造物の外側へ回り込み、周囲の土を削ることがあります。排水路の裏側が洗掘されると、表面からは小さな雨裂に見えても、内部に空洞ができている可能性があります。
小段が設けられた法面では、小段上の排水状態を確認します。小段は斜面を分割し、点検や排水のために設けられますが、表面の勾配が不適切だったり、小段排水路が詰まったりすると、水が小段に滞留します。滞留した水が低い場所から下段へ流れ落ち、雨裂を発生させることがあります。
排水施設の大きさが現状の水量に合っていないケースも考えられます。周辺の舗装範囲が増えた、上流側の排水系統が変更された、以前とは異なる場所から水が集まるようになったなど、完成後の条件変化によって流入量が増えるためです。
確認時には、排水路の入口から出口までを連続して見ます。途中だけがきれいでも、下流側の閉塞によって水が逆流することがあります。また、排水先の水路が満水になり、法面側の排水が流れにくくなっていないかも確認します。
対策としては、土砂や落ち葉の除去だけで改善する場合もありますが、繰り返し詰まる場所では構造的な原因を検討する必要があります。周辺から土砂が流入しやすい、維持管理のために近づきにくい、排水勾配が不足している、集水量が一部へ偏っているといった問題があれば、清掃だけでは再発を防げません。
原因3|法面表層の整形や保護が不十分になっている
法面表層の状態も雨裂の発生に大きく関係します。盛土法面では、表層が緩いまま残っていると、雨水によって土粒子が移動しやすくなります。施工時に使用した土の性質が場所によって異なる場合や、法面整形後の表面が乱されている場合も、浸食が局部 的に進むことがあります。
ただし、法面は平坦な盛土面と同じ方法で一律に強く締め固めればよいわけではありません。法面の勾配、土質、施工方法、採用する表面保護工との組み合わせを考慮する必要があります。表面だけが硬く、その下に緩い層が残っていると、雨水が入り込んだ際に表層が浮いたり、まとまって剥がれたりすることがあります。
植生によって法面を保護する計画では、植物が十分に定着するまでの期間が特に重要です。施工直後は根が発達しておらず、表面の土を保持する力がまだ弱いため、強い雨を受けると種子や基盤材、表土が流されることがあります。発芽していても植生が疎らな場所では、裸地部分へ水が集中し、雨裂が発生しやすくなります。
日当たり、乾燥、土壌の性質、湧水、野生動物の踏み荒らしなどによって、植生の成立にばらつきが生じることもあります。法面全体を遠くから見ると緑化されているように見えても、近くで確認すると植生が途切れ、土が露出している箇所があります。雨裂がその 裸地を通っている場合は、表面保護の連続性が失われている可能性があります。
法面表面に設けた浸食防止材がめくれている、固定部が外れている、継ぎ目が開いているといった状態も確認対象です。材料の下へ水が入り込むと、見えない位置で土砂が流失することがあります。表面材が残っていても、その下に空洞が生じている場合があるため、周囲の沈みや浮きにも注意します。
また、施工後に人や車両、動物が法面へ進入し、表面に踏み跡やわだちを作ると、そのくぼみが水みちになります。点検用の通路から外れた場所に繰り返し人が入ることで、植生が失われ、雨裂へ発展するケースもあります。
補修では、雨裂へ土を充填するだけでなく、周辺の緩んだ表土や不安定な部分を確認し、必要な範囲を整形します。そのうえで、土質や勾配、降雨条件に適した表面保護を連続して施工することが重要です。部分補修の境界が新たな水みちにならないよう、既存部分との接続にも配慮します。
原因4|法面の勾配や土質が浸食を受けやすい
雨裂の発生には、法面そのものの勾配や土質も関係します。一般に、斜面が急になるほど雨水の流速が高まりやすく、表面の土砂を削る力も大きくなります。ただし、勾配だけで危険度を判断することはできません。同じ勾配でも、土質、法長、排水状態、表面保護の有無によって浸食の進み方は異なります。
法長が長い法面では、上部から流れた水が下方へ向かうにつれて集まりやすくなります。法面の途中に水を受ける施設がない場合、下部ほど流量と流速が増え、深い雨裂が生じることがあります。長い法面で上から下まで連続する雨裂がある場合は、表面補修だけでなく、水を途中で分けて処理する必要がないかを検討します。
土質については、細かな粒子を多く含む土、砂分が多く結合力の小さい土、粒度が不均一な土など、さまざまな条件で浸食が起こります。乾燥時には硬く見える土で も、水を含むと強度が低下し、流れによって崩れやすくなる場合があります。反対に、水が地中へ浸透しにくい表面では、地表流が増えて雨裂が生じることもあります。
盛土材の品質や施工状態が場所ごとに異なると、特定の部分だけが選択的に削られます。雨裂の側面に異なる色や粒の土が現れている場合、土層の違いや施工層の境界が影響している可能性があります。
切土法面では、地層の境界や風化した部分に沿って水が流れることがあります。表面の雨裂だけでなく、法面途中から水がしみ出している場合は、地下水や浸透水の影響も考える必要があります。湧水が土砂を洗い出している状態では、表面排水だけを整えても改善しないことがあります。
法面の一部にへこみや不陸があると、その部分が水を集める地形になります。設計上は一定勾配であっても、施工時の仕上がりや完成後の変形によって、局部的な谷地形ができることがあります。複数の細い雨裂が途中で合流して一本の深い溝になっている場合は、法面形状によって 水が集中している可能性があります。
対策を検討するときは、雨裂のある一点だけでなく、法面全体の勾配、法長、小段の配置、土質、湧水、表面保護を総合的に確認します。急勾配や長大法面では、表面を補修するだけでなく、排水経路の分割や法面保護の強化など、複数の対策を組み合わせることが必要になる場合があります。
雨裂の危険度を判断する主な視点
雨裂を発見したときは、見た目の大きさだけで危険度を判断しないことが重要です。浅く見える雨裂でも、法肩から法尻まで長く続いていれば、多量の水が繰り返し流れている可能性があります。一方で、局部的な浅い浸食で、流入水がすでに止められている場合は、比較的限定的な補修で対応できることもあります。
最初に確認したいのは、雨裂が拡大しているかどうかです。過去の写真と比べて幅や深さが増えている、降雨ごとに下流へ伸びている、周辺の植生が流されている場合は、進行性があると考えられます。測定位置を決めて記録しておくと、その後の変化を比較しやすくなります。
次に、雨裂周辺の土が緩んでいないかを確認します。雨裂の両側がえぐられている、上部が張り出している、周囲に小さな陥没がある、表面が容易に崩れそうに見える場合は、見えている溝より広い範囲で土砂が失われている可能性があります。不安定な箇所へ手を触れたり、雨裂の近くへ立ち入ったりせず、安全な位置から確認します。
法面全体に亀裂、段差、膨らみ、沈下がないかも重要です。法肩に連続した亀裂がある、法面中腹が膨らんでいる、法尻が押し出されているといった変状は、表面浸食とは異なる地盤変形の兆候である可能性があります。このような場合は、雨裂だけを補修して経過を見るのではなく、専門的な調査を検討する必要があります。
雨裂の下方に道路、建物、駐車場、通路、設備などがある場合は、被害を受ける対象も考慮します。雨裂が小さく ても、土砂が流出した際に人や車両へ影響する場所では、早めの立入制限や応急対策が必要です。
排水施設の損傷や空洞も危険度を高めます。排水路の下が洗掘されている、構造物が沈下している、水が裏側へ回っている場合は、雨裂の補修だけでは対応できません。排水施設の支持状態や周辺地盤まで確認します。
また、天候の見通しも判断材料になります。雨裂を発見した直後に再び強い雨が予想される場合、短期間で浸食が進む可能性があります。恒久対策がすぐに実施できない場合でも、流入水を減らす、危険区域への立入りを制限するなど、次の降雨に備えた対応が必要です。
雨裂を埋めるだけでは再発を防げない理由
雨裂ができた場所へ土を入れ、表面を平らに戻すと、一時的には改善したように見えます。しかし、雨水が集中する原因を残したままでは、埋め戻した部分が再び水みちになる可能性が高くなります。
雨裂は周囲より低い溝になっているため、水が集まりやすい状態です。埋め戻し後に十分な整形や表面保護を行わなければ、充填した土が雨で流されます。特に、周囲と異なる性質の土を使った場合や、表面だけを軽くならした場合は、境界部分から浸食が始まることがあります。
また、雨裂の底部や側面に緩んだ土が残っていると、充填材と既存地盤がなじまず、内部に隙間ができることがあります。表面は閉じていても、雨水が内部へ入り、見えない位置で土砂が流出する可能性があります。
排水路の越流や法肩からの流入が原因であれば、雨裂を埋めた直後から同じ場所に水が流れます。補修材が固まる前や植生が成立する前に雨を受ければ、再び削られてしまいます。補修の順序としては、先に水の流入経路を改善し、その後に雨裂周辺を復旧することが基本です。
部分的な補修によって法面表面に段差ができることも避けなければなりません。補修範囲の上端にわずかな段差が残ると、そこへ水が当たり、補修部の端から新しい浸食が始まります。既存の法面と滑らかにつなぎ、雨水が局所的に集まらない形状へ整える必要があります。
再発防止には、原因の除去、雨裂部分の安定化、表面保護、排水施設の確認を一体として実施することが重要です。補修後も一度で完了と考えず、降雨後に水の流れと補修部の状態を確認します。
雨裂が見つかったときの応急対応
雨裂を発見しても、調査や恒久工事をすぐに実施できない場合があります。その場合は、被害の拡大を抑えるための応急対応を検討します。ただし、応急対応は現場条件に合わせて行い、作業者が不安定な法面へ無理に立ち入らないことが前提です。
優先すべきなのは、法面へ流れ込む水を減らすことです。法肩や上流側で水の流れを安全な排水路へ導ける場合は、仮の導水措置によって雨裂への流入を抑えます。ただし、流れを別の場所へ移した結果、新たな浸食や浸水を起こさないよう、排水先まで確認する必要があります。
排水路が土砂や落ち葉で詰まっている場合は、安全に作業できる範囲で閉塞物を除去します。除去した土砂を排水路の近くへ仮置きすると、次の雨で再び流入するため、雨水の影響を受けにくい場所へ移動します。
雨裂へ直接雨が入り込むのを抑えるために表面を保護する場合は、保護材が風や流水で外れないよう固定方法を検討します。単に上から覆うだけでは、覆いの下に水が回り込み、状況を確認しにくくなることがあります。法肩側から水が入らず、下流側へ安全に抜ける形状とすることが重要です。
雨裂の下方に人や車両が立ち入る場所がある場合は、必要に応じて立入範囲を制限します。土砂が流出する可能性のある方向を確認し、雨裂の直 下だけでなく、流出土砂が到達し得る範囲を考慮します。
応急対応後は、実施内容と日時を記録します。どこを清掃したか、どの経路へ水を導いたか、補修前の雨裂がどの程度だったかを残しておけば、恒久対策を検討する際に役立ちます。応急処置によって雨裂が見えなくなった場合でも、元の位置を特定できる記録が必要です。
再発を防ぐ法面工事の進め方
雨裂の再発を防ぐには、原因調査から設計、施工、完成後の確認までを一連の流れとして考える必要があります。表面保護だけを強くしても、排水計画が不十分であれば別の位置に雨裂が生じます。反対に、排水施設を追加しても、その周辺の土が緩んでいたり、出口で洗掘が起きたりすれば問題は残ります。
最初に、集水範囲を確認します。法面へ直接降る雨だけでなく、法肩より上の地盤、道路、建物、舗装面などから流れ込む水を把握します。乾燥時の現地形状だけでなく、降雨時にどの方向へ水が動くかを考えることが重要です。
次に、集めた水をどこへ流すかを決めます。排水路を設けても、出口が不安定な斜面や未整備地へ向いていれば、別の場所で浸食を起こします。入口から出口まで連続した排水経路を計画し、接続部や落差部で水が外へ漏れないようにします。
法面表面については、土質、勾配、法長、日照、湧水などに応じた保護方法を選びます。植生による保護が適する場所でも、成立までに時間がかかるため、その期間の浸食防止を考える必要があります。植生が育ちにくい場所や水が集中しやすい場所では、別の保護方法との組み合わせを検討します。
雨裂部分の復旧では、緩んだ土や空洞を残さないことが重要です。浸食された範囲を確認し、必要に応じて不安定な部分を除去したうえで、周辺となじむように復旧します。表面の仕上がりは、くぼみや段差を残さず、水が一点へ集まらない形状とします。
施工中の排水管理も欠かせません。法面工事が完了する前に雨を受けると、未保護の表面に雨裂が発生することがあります。施工範囲を必要以上に広く裸地のまま残さず、天候を確認しながら段階的に仕上げることが重要です。
完成時には、晴天時の外観確認だけでなく、可能であれば降雨後の排水状況を確認します。水が排水路へ入らず法面へ流れていないか、接続部から漏れていないか、法尻に水や土砂がたまっていないかを見ます。完成直後に問題がなくても、植生が成立するまでの期間や大雨後には重点的な点検が必要です。
維持管理で雨裂の拡大を早期に捉える方法
雨裂は小さいうちに発見できれば、原因を特定しやすく、対応範囲も限定できる可能性があります。そのため、法面工事後の維持管理では、定期点検に加えて、雨の後に状態を確認することが重要です。
点検では、雨裂の有無だけでなく、水が流れた痕跡を探します。表面の土が薄く削られている、植生が倒れている、細かな土砂が法尻にたまっている、排水路に新しい泥が入っているといった変化は、雨裂が形成される前段階の場合があります。
同じ位置から写真を撮影すると、法面表面の変化を比較しやすくなります。撮影位置、向き、範囲をそろえ、雨裂の近くに大きさを比較できる目印を写します。ただし、法面へ目印を打ち込むことで表面を傷めないよう注意が必要です。
雨裂が確認された場合は、上端と下端、途中の代表的な位置で幅や深さを測ります。測定点を決めておけば、次回点検時に拡大の有無を判断できます。大きさだけでなく、周辺の植生、湧水、排水施設の状態も一緒に記録します。
点検時期としては、梅雨や台風など降雨が多い時期の前後、強い雨の後、排水施設の清掃前後、法面周辺 で工事や土地利用変更が行われた後などが重要です。冬季の凍結や融解が起こる地域では、季節変化によって表面が緩み、その後の雨で雨裂が発生することもあります。
維持管理では、排水路の清掃を単なる定例作業とせず、どこに土砂がたまりやすいかを記録します。同じ箇所が繰り返し詰まる場合は、その上流側で浸食が起きている可能性があります。清掃で回収した土砂の量や種類も、法面の状態を把握する手がかりになります。
周辺で新たな舗装や建築、造成が行われた場合は、法面への流入水が変わっていないかを確認します。法面本体に手を加えていなくても、上流側の環境変化によって雨裂が発生するためです。
法面工事を依頼する前に整理したい情報
雨裂の補修や法面工事を専門業者へ相談する際は、現地写真だけでなく、発生状況を整理して伝えると調査が進みやすくなります。雨裂を初めて確認した日、直前の降雨、過去に同じ場所を補修した履歴、雨裂が拡大しているかどうかをまとめます。
写真は、雨裂の近景だけでなく、法面全体、法肩、法尻、排水施設、周辺地盤が分かるものを用意します。近くから撮った写真だけでは、雨水がどこから流れてきたかを判断しにくいためです。
法面の高さ、長さ、勾配、施工時期、切土か盛土か、表面保護の種類などが分かれば整理します。設計図、施工記録、完成時の写真、過去の点検記録が残っている場合は、現状との比較に役立ちます。
雨の日に確認した水の流れも重要な情報です。法肩から水が越えていた、排水路からあふれていた、法面途中から水がしみ出していたなど、現地で確認した事実を記録します。危険な場所へ近づいて動画や写真を撮る必要はありませんが、安全な位置から把握できる範囲で残します。
補修を依頼するときは、雨裂を埋める作業だけでなく、原因調査と再発防止策を含めて相談することが重要です。現地確認では、排水経路、土質、法面形状、表面保護、周辺環境を一体として見てもらいます。
また、施工後の点検方法も事前に確認します。補修直後の完成状態だけでなく、降雨後にどこを確認するか、排水路をどの程度の頻度で清掃するか、植生が成立しなかった場合にどう対応するかを整理しておくと、再発を早期に発見できます。
現場情報を正確に共有するには、位置と状況をひも付けて記録することが有効です。雨裂の上端、下端、排水路の詰まり、湧水、土砂堆積などを現地写真と位置情報で整理できれば、関係者間で対象箇所を取り違えるリスクを減らせます。
まとめ
法面工事後に雨裂ができる主な原因は、法肩や周辺地盤 からの雨水流入、排水施設の不足や詰まり、法面表層の整形や保護が適切でないこと、法面の勾配や土質による浸食の受けやすさです。実際の現場では、一つの原因だけではなく、複数の条件が重なって雨裂が発生していることも少なくありません。
雨裂を見つけたときは、すぐに埋めて見えなくするのではなく、発生位置や大きさを記録し、水がどこから入り、どこへ流れているかを確認することが重要です。排水路の越流、法肩のくぼみ、植生の欠損、湧水、土砂の堆積などを法面全体で調査します。
雨裂が深くなっている、降雨ごとに拡大している、法面に亀裂や段差がある、排水施設の周辺に空洞がある、下方に道路や建物がある場合は、表面だけの補修で済ませず、早めに専門的な確認を行う必要があります。
再発防止では、法面へ流れ込む水を減らし、集めた水を安全な場所まで確実に流し、法面表面を現場条件に合った方法で保護します。補修後も降雨時と降雨後の点検を続け、同じ場所に水が集中していないかを確認すること が大切です。
法面は範囲が広いため、雨裂の位置や排水施設との関係を記録だけで共有すると、確認箇所を取り違えることがあります。現地写真、位置情報、測定結果をひも付けて整理すれば、雨裂の発生位置や経過を関係者間で共有しやすくなり、調査、補修計画、施工後の維持管理に活用できます。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

