法面工事では、斜面を切り取る作業、不安定な土砂を撤去する作業、法面を所定の勾配に整える作業などによって、多量の土砂が発生することがあります。工事計画では法面保護工の種類、施工範囲、重機配置、安全対策に目が向きやすいものの、掘削した土をどこで利用し、どこへ搬出し、どのような条件で受け入れてもらうかも、工事費と工期を左右する重要な要素です。
残土処分の条件を十分に確認しないまま着工すると、想定より発生土量が増える、予定していた受入先へ搬入できない、車両が現場まで進入できないといった問題が生じる可能性があります。発生土にコンクリート片、金属くず、廃プラスチック類、木くずなどが混入した場合は、単なる土砂とは別の区分や処理が必要になることもあります。
ただし、法面工事で掘削した土砂が、すべて産業廃棄物になるわけではありません。国土交通省は、建設工事から搬出される通常の土砂である建設発生土を、廃棄物処理法上の廃棄物には該当しないものとして整理しています。一方、建設汚泥や、工事に伴って発生したコンクリート塊、金属くず、木くずなどは、性状や発生状況に応じて廃棄物として適正に処理する必要があります。([国土交通省][1])
そのため、見積書に「産廃処分」「残土処分」と一括して記載されていても、実際には通常の建設発生土、建設汚泥、撤去材、伐採・抜根に伴う発生物などを区分して確認しなければなりません。名称だけで判断すると、契約範囲や処理責任を誤解するおそれがあります。
残土処分費の増加を防ぐには、発生土量、土質と混入物、搬出経路と受入先という三つの条件を着工前に整理することが重要です。本記事では、法面工事を発注する担当者や施工管理を行う実務担当者に向けて、残土処分で注意したいポイントを解説します。
目次
• 法面工事で残土処分費が増える主な理由
• 建設発生土と産業廃棄物の違いを理解する
• 注意点1 発生土量を着工前に把握する
• 注意点2 土質と混入物による処分条件を確認する
• 注意点3 搬出経路と受入先を事前に確保する
• 法面工事の見積書で確認したい残土処分の範囲
• 現場内で土を再利用するときの注意点
• 雨天や湧水で残土処分費が増える仕組み
• 工事中に発生土量を管理する方法
• 想定外の土や埋設物が見つかったときの対応
• 発注者と施工会社で事前に決めておく事項
• まとめ 残土処分は数量・土質・搬出条件で管理する
法面工事で残土処分費が増える主な理由
法面工事の残土処分費は、掘削した土の量だけで決まるものではありません。発生した土の性状、含水状態、異 物の有無、積込み方法、運搬距離、使用できる車両、受入先の条件、現場内での再利用量などが関係します。
設計図面に掘削数量が示されていても、実際の法面には凹凸があります。表面から確認できなかった緩い土層、亀裂、浮石、風化した岩、不安定な盛土などが施工中に見つかれば、安全確保のために追加で撤去することがあります。その結果、設計時の想定より発生土量が増える可能性があります。
法面表面を整形する計画であっても、施工時に崩れやすい部分が連続して見つかると、当初想定した範囲より深く掘削しなければならない場合があります。長期間風雨にさらされた斜面や、過去に小規模な崩落を繰り返した斜面では、外観だけで安定した地山の位置を確定することが難しいためです。
掘削した土は、地山の締まった状態からほぐされることで体積が変化します。図面上の地山体積と、仮置き時や車両積込み時の体積は一致しないことがあります。体積変化を考慮せずに車両台数を計画すると、想定より多くの搬出回数が 必要になる可能性があります。
含水状態も費用に影響します。雨水や湧水を多く含んだ土は重量が増え、車両の積載重量によって一度に積める体積が小さくなることがあります。粘性の高い土はバケットや荷台へ付着しやすく、積込み、荷下ろし、車輪洗浄、道路清掃に時間を要することもあります。
発生土に草木、根株、コンクリート片、金属片、廃プラスチック類などが混ざると、受入先の基準に適合しない場合があります。分別、仮置き、積替え、別の搬出先への運搬が必要になれば、工程と費用が増えます。廃棄物が混在する土は、見た目だけで通常の建設発生土と判断せず、発生状況と内容物を確認することが重要です。
搬出経路による影響もあります。大型車両が法面付近まで進入できなければ、小型車両で仮置き場所まで運び、そこで大型車両に積み替える小運搬が必要です。狭い道路や急勾配の道路しかない現場では、一日に搬出できる量が限られ、掘削工程にも影響します。
さらに、予定していた受入先が工事期間中に利用できないこともあります。受入可能量、土質条件、含水状態、岩塊の寸法、営業時間、天候などによって搬入できなければ、代替先を探さなければなりません。運搬距離が延びれば、一台当たりの往復時間が増え、必要な車両台数や工期も変わります。
残土処分費を管理するには、処分量だけでなく、掘削、分別、仮置き、積込み、小運搬、場外運搬、受入までの一連の作業を確認する必要があります。
建設発生土と産業廃棄物の違いを理解する
法面工事で発生する土を扱う際は、建設発生土と産業廃棄物を混同しないことが重要です。建設工事から搬出される通常の土砂は、一般に建設発生土として扱われ、廃棄物処理法上の廃棄物には該当しません。条件が整えば、現場内や他工事で利用できる可能性があります。([国土交通省][1])
一方、建設工事に伴って発生したコンクリート塊、金属くず、廃プラスチック類、木くず、建設汚泥などは、産業廃棄物として扱われる場合があります。建設工事に伴う廃棄物については、原則として発注者から直接工事を請け負う元請業者が排出事業者となり、適正処理の責任を負います。([環境省][2])
法面に既設の保護工がある場合は、撤去時にコンクリート片、金網、鋼材、排水材などが発生します。撤去物と掘削土を同じ場所へ積み上げると、後から分ける作業が難しくなります。工事開始前に仮置き場所を区分し、発生段階から混ぜない施工手順を決めることが重要です。
伐採や抜根を伴う工事では、枝葉、幹、根株なども発生します。これらの法令上の区分や受入条件は、発生工程、事業内容、地域の運用、処理先の条件によって確認が必要です。土が付着した根株を土砂と一体のまま搬出できるとは限らないため、伐採、抜根、表土剥ぎ、法面掘削の順序を検討します。
建設汚泥の区分にも注意が必要です。環境省の指針では、建設工事の掘削に伴って排出されるもののうち、含水率が高く、粒子が微細で泥状のものは建設汚泥として扱われます。判定は発生工程と排出時の性状を踏まえて行うため、単に雨で湿った掘削土を一律に建設汚泥と判断することも、反対に泥状物を通常の残土として扱うことも適切ではありません。区分が不明な場合は、元請業者、処理業者、発注者、必要に応じて所管行政へ確認します。([環境省][2])
過去に工場、倉庫、資材置場、廃棄物保管場所などとして利用されていた土地では、土の色、臭い、埋設物にも注意が必要です。油のような臭い、不自然な変色、灰状の物質、予期しない容器や廃材などが見つかった場合は、汚染の有無を外観だけで断定せず、通常の土と区分して作業を止め、発注者や専門家と対応を協議します。
受入先ごとに土砂の受入基準が異なる点にも注意が必要です。ある受入先で受け入れられた土が、別の受入先でも同じ条件で受け入れられるとは限りません。粒径、含水状態、草木の混入、岩塊の寸法、コンクリート片の有無、土質区分などが確認項目になることがあります。
見積書に「残土処分一式」と記載されている場合でも、通常の掘削土だけが対象で、岩塊、伐採・抜根材、既設構造物の撤去物、建設汚泥、異常土などは別途になっている可能性があります。契約前に、何を通常の建設発生土として見込み、何を別区分として扱うかを確認する必要があります。
法面工事では、土だからすべて同じ受入先へ運べる、土に混ざっているから一緒に処理できると判断しないことが大切です。発生工程、性状、混入物、受入条件を確認し、区分に応じた管理を行いましょう。
注意点1 発生土量を着工前に把握する
残土処分で最初に注意したいのは、発生土量の見積精度を高めることです。法面は平坦な敷地より形状が複雑であり、測量方法や計算条件によって数量差が生じやすい場所です。
法面の上部と下部だけを測定し、全体を一様な斜面として計算すると、途中の凹凸、張り出し、浸食溝、過去の崩落跡を見落とす可能性があります。延長の長い法面では複数の断面を設定し、形状が変化する位置では測点を追加します。
既存図面がある場合でも、現況と一致しているかを確認します。図面作成後に浸食や小規模崩落が進んでいれば、実際の地形は変化しています。古い図面だけで数量を確定すると、着工後に差が生じる可能性があります。
掘削量を算出するときは、施工前の地形と完成後の計画形状との差を確認します。法面本体だけでなく、法肩、法尻、小段、排水溝、法枠や擁壁の基礎、仮設道路、作業ヤードなどに伴う掘削も確認します。
不安定土砂の撤去範囲は、着工前に完全には確定できないことがあります。そのため、設計数量とは別に、追加掘削が発生する条件と、その数量を確認する方法を決めておくことが大切です。現地で危険箇所が見つかった場合に、誰が範囲を確認し、どの記録を残し、どの手順で追加費用を協議するかを整理します。
法面整形の工程でも土砂は発生します。突出部を削り、計画勾配へ整えるため、外観から想定した量より多くなることがあります。浮石除去、表面清掃、小段や排水施設の施工に伴う土砂も搬出対象になる可能性があります。
車両台数を計画するときは、図面から算出した地山数量を荷台容量で単純に割るだけでは不十分です。掘削後のほぐれ、土質、含水状態、一台当たりの実積載量を考慮します。土砂の密度や水分によっては、荷台容積に余裕があっても積載重量の上限に達することがあります。
表土は、下層の土と分けて数量を把握する方法が有効です。植生基盤などに利用できる表土がある場合でも、根や廃材、異なる土質の土と混ぜると利用しにくくなります。再利用の可能性がある土は、掘削初期から区分して管理します。
現場内で利用する量も整理します。掘削量の全量を場外搬出する前提にせず、埋戻し、法尻の整地、植生基盤、仮設盛土などへ利用できる土があるかを検討します。ただし、用途に適さない土を無理に使用すると、沈下、ぬかるみ、排水不良、斜面不安定化などの原因になるため、設計条件と土質の確認が必要です。
数量管理では、掘削量、現場内利用量、仮置き量、場外搬出量を分けて考えます。これらを一つの数量として扱うと、工事中に土がどこへ移動したか分からなくなります。
着工前には、数量計算の根拠を記録します。測点の位置、断面間隔、計画勾配、掘削範囲、表土厚、使用した図面、計算方法などを残します。工事後に数量差が生じても、計算条件が分かれば原因を確認できます。
施工中に追加掘削が必要になった場合は、可能な範囲で掘削前後の写真と測量結果を記録します。安全上、直ちに撤去しなければならな い状況では、作業を優先しつつ、位置、延長、幅、深さ、発見時の状況をできるだけ早く記録します。
発生土量の把握は、残土処分費を抑えるためだけではありません。必要な車両台数、仮置き面積、受入先の能力、工期、安全な作業動線を計画するための基礎になります。
注意点2 土質と混入物による処分条件を確認する
二つ目の注意点は、土質と混入物によって搬出条件が変わることです。同じ体積の土でも、乾いた砂質土、水分を含んだ粘性土、岩塊を含む土、草木や撤去材が混ざった土では、積込み、運搬、受入の条件が異なります。
砂質土は比較的積込みやすい場合がありますが、乾燥すると飛散しやすくなります。運搬中に荷台から土砂が飛散しないよう、荷姿や覆いを確認し、現場内や周辺道路への影響を防ぐ必要があります。
粘性土は水を含むと重くなり、重機のバケットや車両の荷台へ付着しやすくなります。荷下ろしに時間がかかるほか、タイヤに付着した土が道路へ持ち出されやすくなります。車輪洗浄や道路清掃が必要になれば、搬出に付随する作業も増えます。
法面から湧水が出ている場合や降雨後は、掘削土が短時間で高含水状態になることがあります。受入先によっては、水が滴る状態や著しく軟らかい土を受け入れないことがあります。水切り、排水、仮置き、安定処理などが必要になる場合は、適用条件と法令上の区分を確認します。
高含水の土がすべて建設汚泥になるわけではありませんが、掘削工法や排出時の性状によって建設汚泥に該当することがあります。現場判断だけで通常土砂として搬出せず、受入先への事前説明と区分確認を行います。建設汚泥に該当する場合は、通常の建設発生土とは異なる処理体系が必要です。([環境省][2])
岩を多く含む法面では、大きな石や岩塊が発生します。受入先が定める寸法を超える場合は、現場内で小割りや選別が必要になることがあります。大型の岩塊を通常土砂と同じ車両へ積むと、荷台を傷めたり、積載効率が低下したりする可能性があります。
法面表面の植生を撤去する工事では、草、枝、根などが土へ混入しやすくなります。伐採・抜根材を先に区分し、表土を分けてから掘削へ進むなど、施工順序を工夫します。発生物の区分が不明な場合は、処理先と事前に確認します。
既設の法面保護工を撤去するときは、コンクリート片、金属製の網、鋼材、排水管、樹脂材などを土と混ぜないようにします。撤去工と掘削工を同時に進める場合は、作業員と重機運転者が分別方法と仮置き場所を共有します。
狭い現場では仮置き場所が限られます。それでも、通常の土、岩塊、再利用予定土、撤去材、伐採・抜根材、異常が疑われる土を可能な範囲で区分します。区画表示や日報への記載を行うことで、誤混入や 誤搬出を防ぎやすくなります。
地中から古い基礎、排水管、コンクリート片、金属片、容器、廃材などが見つかった場合は、そのまま掘削を続けて通常土と混ぜないようにします。重機で細かく砕く前に作業を止め、発見位置と状態を記録します。
土の色や臭いが周囲と異なる場合も注意が必要です。油のような臭い、不自然な着色、灰状の物質などが確認された場合は、汚染の有無を現場で断定せず、通常土と区分し、発注者や専門家へ報告します。必要な調査や分析の要否を協議してから搬出方法を決めます。
過去の土地利用を調べることも、想定外の発生物を減らす方法です。以前の造成、建物、埋戻し、資材保管などの履歴が分かれば、埋設物や異なる土層の存在を予測できる場合があります。
必要に応じて、着工前に試掘や土質確認を行います。法面全体を完全に把握することは難しくても、代表地点で地層、含水状態、岩塊、表土、埋設物の有無を確認すれば、重機、仮置き、搬出方法を検討しやすくなります。
受入先には、予定数量だけでなく、土質、含水状態、岩塊の有無、草木や撤去材の混入状況、発生場所などを伝えます。工事途中で性状が変わった場合は、当初の確認だけで済ませず、改めて受入可否を確認します。
受入条件に合わない土を無理に搬出すると、搬入拒否、持戻り、積替え、別施設への再運搬などの手戻りが生じます。適切な分別は、処理の適正化だけでなく、利用可能な土を確保し、不要な搬出を減らすためにも有効です。
注意点3 搬出経路と受入先を事前に確保する
三つ目の注意点は、搬出経路と受入先を着工前に確保することです。掘削作業が順調でも、車両が積込み場所まで入れない、受入先が土を受け入れない、一日の受入可能量が不足するという状況になれば、工事は進みません。
最初に、現場入口から積込み場所までの道路条件を確認します。道路幅員、勾配、曲がり角、路肩、舗装状態、橋梁や埋設構造物の制限、上空の電線、構造物との離隔、車両の転回場所などを調べ、使用予定車両が安全に通行できるか判断します。
法面工事は山間部や道路沿いで行われることが多く、転回場所が不足する場合があります。長距離の後退運行は、接触、脱輪、転落の危険を高めます。転回場所、誘導員、車両の進入順序、待機場所まで含めて計画します。
大型車両が直接進入できない場合は、小型車両で仮置き場所まで運ぶ小運搬が必要です。さらに大型車両へ積み替える場合は、積替え用重機、仮置き場所、粉じんや泥水対策、作業時間が追加で必要になります。
見積時には、どの大きさの車両が法面付近まで入れる前提なのかを確認します。現地確認をせずに大型車両への直接積込みを想定すると、着工後に施工計画と見積条件を変更しなければならない可能性があります。
公道を使用する場合は、土砂の飛散や道路汚損を防ぐ対策が必要です。荷台の管理、車輪洗浄、現場出入口の清掃、必要に応じた道路清掃を施工計画へ含めます。住宅地を通行する場合は、通学時間、通勤時間、生活道路の混雑、騒音や振動への配慮も必要です。
車両の待機場所も事前に決めます。現場内に待機場所がないからといって周辺道路へ車両を並べると、交通の妨げや近隣トラブルにつながります。積込み時間に合わせて入場させる運行管理が必要です。
受入先については、所在地だけでなく、受入可能な土質、粒径、含水状態、混入物、岩塊寸法、受入時間、一日当たりの受入可能量、休業日、必要書類などを確認します。
予定発生量を工事期間内に受け入れられるかも重要です。受入能力が搬出計画より小さい場合、現場に土が滞留し、作業場所や安全な動線を圧迫します。
受入先までの運搬時間は、地図上の距離だけでは判断できません。道路幅員、信号、渋滞、時間帯別の交通量、積込みと荷下ろしの待ち時間を考慮し、車両一台が一日に何往復できるかを検討します。
受入先が一時的に利用できなくなる可能性も考えます。悪天候、受入上限、場内作業、土質不適合などで搬入できない場合に備え、代替先、仮置き方法、掘削量の調整方法を検討します。
仮置き場所を設ける場合は、斜面の安定性と排水に注意します。法肩や斜面上部へ大量の土を積み上げると、地盤へ荷重が加わり、法面の安定性へ影響する可能性があります。法尻付近への仮置きは、排水経路や作業動線を塞ぐことがあります。
建設発生土については、対象となる工事で再生資源利用促進計画の作成、搬出先の適正確認、受領書等による確認、実施状況の記録保存などが求められます。また、2024年6月からは制度対象となる元請業者に、一定の場合を除き最終搬出先まで確認する仕組みが導入されています。適用の有無や必要書類は工事規模、搬出先、契約条件などによって確認してください。([国土交通省][3])
搬出先は、単に空き地や土を置ける場所ではなく、法令、許可・届出、土地所有者の同意、受入条件などを確認した適正な場所である必要があります。ストックヤードを利用する場合も、登録の有無だけで全ての確認が完了するわけではないため、契約条件と搬出記録を整理します。
搬出計画は掘削工程と一体で作成します。掘削速度が搬出速度を上回れば、現場内に土がたまります。反対に搬出車両が多すぎれば、現場入口や積込み場所で待機が発生します。
適切な車両台数は、掘削能力、積込み時間、小運搬時間、場外運搬時間、受入先での待ち時間、荷下ろし時間から検討します。工事開始後も実際の運行状況を確認し、必要に応じて台数や時間帯を調整します。
法面工事の見積書で確認したい残土処分の範囲
法面工事の見積書を確認するときは、「残土処分一式」という記載だけで内容を判断しないことが重要です。一式表記では、数量、土質、運搬距離、受入先、付帯作業、法令上の区分などの前提が分かりにくいためです。
まず、掘削数量と場外搬出数量を確認します。掘削した全量を場外へ運ぶ計画なのか、一部を現場内で利用するのか、表土や岩塊を別管理するのかを明確にします。
通常の建設発生土、岩塊、伐採・抜根材、既設構造物の撤去物、建設汚泥、廃棄物混じり土などが、どのように区分されて いるかも確認します。通常土だけを前提とする見積では、異物や泥状物が見つかった際に追加作業となる可能性があります。
積込み作業の範囲も重要です。掘削重機が直接車両へ積み込むのか、一度仮置きし、別の重機で積み直すのかによって必要な作業が変わります。
小運搬や積替えが必要な現場では、その工程、距離、使用車両、必要重機が見積に含まれているかを確認します。大型車両が入れる前提で作成された見積は、狭い現場へそのまま適用できません。
搬出先と運搬条件も確認します。どの受入先を想定しているのか、運搬距離と所要時間はどの程度か、搬出先が変更された場合に費用や工期をどのように扱うかを整理します。
土の状態に関する前提も必要です。乾いた通常土だけを想定しているのか、高含水土、岩塊、表土、異物混じり土を含むのかによって作業内容が異なります。
車輪洗浄、道路清掃、誘導員、交通規制、仮設道路補修、仮置き場の養生、排水対策などの付帯作業が含まれているかも確認します。残土搬出は積込みと運搬だけで完了するとは限りません。
数量の精算方法についても事前に決めます。設計数量を基準とするのか、施工前後の測量で確認するのか、受入先の受領記録や計量記録を用いるのか、車両台数を補助資料とするのかを明確にします。
搬出台数だけで管理すると、一台当たりの積載量によって数量差が出ます。車両の大きさ、土質、含水状態、重量制限が異なるため、台数だけでは正確な体積や重量を把握できない場合があります。車両記録、受入記録、計量結果、測量結果、施工日報を組み合わせて確認する方法が有効です。
追加費用が発生する条件も確認します。不安定土砂の追加撤去、予期しない岩盤、埋設物、異常が疑われる土、建設汚泥、受入先変更、運搬経路変更などが発生した場合の扱いを決めます。
追加作業を行う前の承認手順も重要です。現場担当者だけで判断して作業を進めると、工事後に必要性や数量を確認できないことがあります。ただし、崩落のおそれがあるなど直ちに安全措置が必要な場合は、安全を優先し、事後速やかに写真、測量、日報で記録する手順を決めておきます。
複数の見積書を比較する場合は、合計額だけでなく、掘削数量、搬出数量、土質、車両条件、運搬距離、受入先、処理区分、付帯作業の前提をそろえて確認します。前提が異なる見積を単純に比較すると、着工後の追加費用を見落とす可能性があります。
現場内で土を再利用するときの注意点
場外へ搬出する土を減らす方法として、現場内で の利用があります。法尻の整地、埋戻し、植生基盤、仮設道路、仮設盛土などに使用できれば、搬出量を抑えられる可能性があります。
ただし、掘削した土はどこにでも使用できるわけではありません。用途に応じて、粒度、締固めやすさ、含水状態、排水性、有機物や異物の混入、強度、将来の沈下などを確認する必要があります。
水分の多い粘性土を仮設道路へ使用すると、車両走行によってぬかるみやわだちが生じる可能性があります。締固めに適さない土を埋戻しへ使えば、施工後に沈下するおそれがあります。
草木や根を多く含む表土は、構造物周辺の埋戻しには適さない場合があります。一方で、植生を行う場所では利用できることがあります。土の性状と使用目的を合わせることが重要です。
再利用する場合は、必要量と使用時期を確認します。掘削直後に使用場所が準備できていなければ仮置きが必要です。仮置き中に雨水を含んで土質が悪化すると、当初予定した用途へ使えなくなる可能性があります。
再利用予定土は、搬出予定土や撤去材と分けて管理します。良質な土へ異物や別区分の土を混ぜると、利用可否の再確認や選別が必要になり、結果として搬出量が増えることがあります。
現場内利用であっても、法面の安定性、排水、周辺地盤への影響を考慮します。法肩へ大量に盛土する、排水経路へ土を置く、十分な締固めを行わないといった施工は、法面の安全性を低下させるおそれがあります。
施工会社だけで利用場所を決めず、設計条件と施工目的を確認します。必要に応じて発注者や設計者と協議し、使用場所、数量、品質条件、施工方法を記録します。
廃棄物が混入した土や汚染が疑われる土は、現場内利用によって問題が解消するわけではありません。安易に埋め戻したり盛土へ使用したりせず、法令上の区分と安全性を確認します。
再利用量を記録することも重要です。掘削量と搬出量だけを比較すると、再利用した土の行き先が分かりません。どの場所へ、どの程度、どのような目的で使用したかを施工記録へ残します。
雨天や湧水で残土処分費が増える仕組み
法面工事では、天候や地下水が残土処分に影響します。雨によって土が水を含むと重量が増え、積込みや運搬の効率が低下することがあります。
乾いた状態であれば一台に積めた土でも、高含水状態になると積載重量の関係で量を減らさなければならない場合があります。その結果、同じ地山数量でも搬出台数が増えることがあります。
粘性土は雨水を含むと軟らかくなり、重機の走行や積込みが難しくなります。仮設道路が傷み、敷鉄板の追加、砕石補修、排水改善などが必要になる場合もあります。
車両のタイヤや荷台へ土が付着し、周辺道路を汚す可能性も高くなります。車輪洗浄や道路清掃に時間がかかれば、一日の搬出回数が減ります。
受入先が高含水土を受け入れない場合は、現場で水切りや仮置きを行うことがあります。仮置き期間が生じると、工期と作業場所へ影響します。安定処理材などを使用する場合は、設計上の適否、環境安全性、受入条件、法令上の取扱いを事前に確認します。
法面から湧水が出ている場合は、雨天でなくても掘削土が湿った状態になります。掘削部へ水が流れ込まないよう、仮排水、集水、導水、ポンプ排水などを検討します。ただし、排水先や濁水処理も含め、周辺環境へ影響を与えない計画が必 要です。
法肩から流入する雨水も管理します。斜面上部の水が掘削面や仮置き土へ流れ込むと、土の状態が急速に悪化し、表面浸食や土砂流出を招く可能性があります。
雨天前には、掘削範囲、仮置き場所、排水経路、養生状況を確認します。必要に応じて土の表面を覆い、雨水の直接流入を抑えます。仮置き土を長期間むき出しにしないことも大切です。
降雨予報と搬出計画を合わせ、雨の前に搬出する土、現場に残す土、再利用予定土を整理します。天候による影響を完全になくすことはできませんが、排水、養生、仮置き方法を事前に準備することで、土質悪化と手戻りを減らせます。
工事中に発生土量を管理する方法
残土処分費の増加を防ぐには、着工前の見積だけでなく、工事中の数量管理が必要です。掘削が進むにつれて、計画数量と実績の差を確認します。
工事前には法面全体の形状を測量し、写真を撮影します。法肩、法尻、崩落箇所、湧水、既設構造物、仮置き予定地、搬出経路も記録します。
掘削中は、地層が変わった位置、岩盤が現れた位置、不安定土砂を追加撤去した位置、異物が見つかった位置、湧水が増えた位置などを記録します。
写真は撮影するだけでなく、撮影位置と方向が分かるように管理します。似た景色が連続する法面では、後から場所を特定できないことがあります。測点、区画番号、法面番号などと関連付けて保存します。
追加掘削を行う場合は、可能な範囲で掘削前後の形状を測定します。延長、幅、深さだけでなく、撮影位置と測点を記録し、必要に応じて三次元測量などで形状差を確認します。
搬出時には、日付、車両、積載した土の区分、発生場所、搬出先、受領記録の有無などを記録します。土質や区分ごとに搬出先が異なる場合は、記録も分けます。
受入先から受領書、計量票、搬入記録などが得られる場合は、現場側の搬出記録と照合します。制度対象工事では、必要な受領書や最終搬出先確認の記録を保存します。([国土交通省][4])
計画より搬出台数が多い場合は、追加掘削、土のほぐれ、含水量増加、一台当たり積載量の低下、積替え、再利用量の減少などの原因を確認します。
工事完了後にまとめて集計するのではなく、施工途中で定期的に確認することが重要です。早い段階で数量超過を把握すれば、受入先、車両、仮置き、工程、契約協議 を調整できます。
現場内で利用した土や仮置きしている土の数量も管理します。掘削量、利用量、場外搬出量、仮置き量の関係が大きく矛盾していないかを確認します。
定例打合せでは、残土数量、搬出状況、受入先の残容量、異常土の有無、今後の見込みを共有します。計画を超える可能性がある場合は、原因と予測数量を早めに報告します。
数量管理は、必要な追加作業を否定するためではなく、その根拠を明確にするために行います。安全上必要な追加掘削であっても、記録があれば関係者が状況を理解しやすくなります。
想定外の土や埋設物が見つかったときの対応
法面を掘削すると、図面や事前調査では分からなかった土や埋設物が見つかることがあります。その場合は、通常土と混ぜず、発見状況を記録して対応を協議することが基本です。
古いコンクリート、排水管、金属片、木材、容器、廃材などが見つかった場合は、発見位置を記録し、周辺の掘削方法を見直します。
重機で一気に掘り進めると、埋設物が細かく砕けて土へ混ざり、分別範囲が広がる可能性があります。安全を確認したうえで作業を止め、分別方法、仮置き場所、処理区分を検討します。
土の色や臭いが周囲と異なる場合も同様です。異常が疑われる範囲を区画し、通常土から離して仮置きします。外観や臭いだけで汚染の有無を確定せず、必要な調査や分析を専門家と協議します。
発見時には、全景と近景の写真を撮影し、位置、深さ、範囲、周辺地形を記録します。誰が、いつ、どの工程で発見したかも施工日報へ残します。
処理方法が確認できるまでは、自己判断で通常の残土受入先へ搬出しないことが重要です。受入先の基準に適合しない可能性があり、持戻りや不適正処理につながるおそれがあります。
発注者、設計者、元請業者、処理業者などの関係者で情報を共有し、必要に応じて所管行政や専門家へ相談します。廃棄物該当性や汚染の有無は、現場の呼称だけで決めず、発生状況と性状に基づいて確認します。
異常が疑われる土を一時保管する場合は、雨水の流入、周辺への流出、通常土との混合を防ぎます。区画と表示を設け、勝手に移動や搬出が行われないよう管理します。
想定外の発生物は工期や費用へ影響します。しかし、工事を止めたくないという理由で通常土へ混ぜると、処理範囲が拡大し、より大きな手戻りが発生する可能性があります。
発見時の連絡手順を着工前に決めておけば、現場で判断が遅れにくくなります。緊急連絡先、写真の共有方法、仮置き場所、確認者、作業再開の承認者を確認しておきましょう。
発注者と施工会社で事前に決めておく事項
残土処分を円滑に進めるには、発注者と施工会社の役割を明確にする必要があります。誰が受入先を選定し、誰が土質を確認し、誰が数量を確認し、誰が追加作業を承認するかを決めます。
受入先を発注者が指定する場合は、発生予定量と土質を受け入れられるかを確認します。施工会社が選定する場合は、受入条件、搬出経路、運搬距離、必要書類を発注者へ共有します。
建設発生土の搬出先確認や、産業廃棄物の処理責任を混同しないことも重要です。建設発生土と建設廃棄物では、適用される制度、契約、記録、受入先が異なります。建設廃棄物については、原則として元請業者が排出事業者として処理責任を負うため、発注者が処分先を示す場合でも責任関係を契約上明確にします。([環境省][2])
見積数量を超えた場合の確認方法も決めます。施工前後の測量、受領記録、計量票、搬出台数、日報など、何を根拠に数量を確認するかを明確にします。
追加掘削が必要になった場合は、原則として施工前に範囲を確認します。ただし、崩落のおそれがあり安全を優先して撤去する場合は、直後に写真、測量、日報で記録し、速やかに関係者へ報告します。
土質が想定と異なった場合の対応も整理します。高含水土、岩塊、異物混じり土、建設汚泥の可能性があるもの、汚染が疑われる土などが見つかったとき、誰へ連絡し、どこへ仮置きし、誰が区分を確認するかを決めます。
仮置き場所の使用範囲と管理責任も確認します。雨水対策、流出防止、立入防止、区画表示、排水、搬出順序などを誰が管理するかを明確にします。
現場内利用を行う場合は、使用場所、数量、品質条件、施工方法を確認します。施工会社の判断だけで利用せず、設計上の適否と周辺環境への影響を確認します。
搬出車両が住宅地を通る場合は、近隣への周知方法も決めます。工事期間、運行時間、交通誘導、道路清掃、問い合わせ先などを事前に共有することで、トラブルを防ぎやすくなります。
工事中は、残土数量、搬出状況、受入先の稼働状況、追加掘削、異物の発見状況を定期的に共有します。数量が増えそうな兆候が出た時点で協議し、工事完了直前まで報告を遅らせないことが重要です。
発注者と施工会社が同じ前提と記録を共有することで、必要な追加作業を早く判断でき、工期と費用への影響を抑えやすくなります。
まとめ 残土処分は数量・土質・搬出条件で管理する
法面工事で残土処分費が増える主な原因は、発生土量の見込み違い、土質や混入物による受入条件の変化、搬出経路や受入先の計画不足です。
一つ目の注意点は、発生土量の見積精度を高めることです。法面の凹凸、地形変化、追加掘削の可能性を考慮し、掘削量、現場内利用量、仮置き量、場外搬出量を分けて計画します。
二つ目の注意点は、土質と混入物を確認することです。法面工事で発生する通常の土砂がすべて産業廃棄物になるわけではありません。一方で、建設汚泥、コンクリート塊、金属くず、廃プラスチック類、木くずなどは、発生状況と性状に応じて適正な区分と処理が必要です。([国土交通省][1])
三つ目の注意点は、搬出経路と受入先を事前に確保することです。使用できる車両、積替えの有無、運搬時間、受入可能量、土質条件、必要書類を確認し、掘削工程と搬出工程を一致させます。制度対象工事では、搬出先の確認や記録保存などの要件も確認します。([国土交通省][4])
見積書では、残土処分の数量だけでなく、積込み、小運搬、積替え、場外運搬、受入、仮置き、排水、道路清掃、分別、記録管理の範囲を確認します。数量増加や土質変更が発生したときの協議方法も決めておくことが重要です。
工事中は、施工前後の形状、追加掘削、土質、搬出台数、受入状況、現場内利用量を記録します。計画との差を定期的に確認すれば、残土量の増加を早い段階で把握できます。
法面は似た景色が連続し、写真だけでは位置や掘削範囲を後から特定しにくい現場です。現場写真を測点や位置情報と関連付け、測量結果、搬出記録、受領記録とまとめて管理すると、追加掘削の根拠確認や数量整理を行いやすくなります。
残土処分を法面工事の付随作業として扱うのではなく、数量、土質、法令上の区分、搬出条件を管理する主要工程として計画し、安全で手戻りの少ない工事につなげましょう。
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