top of page

法面工事の足場設置は必要?安全費を見極める3条件

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均7分45秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

法面工事では、斜面上で作業するからといって、すべての現場で同じ足場を設けるわけではありません。一方で、「作業員が斜面に立てる」「短時間で終わる」といった理由だけで足場や作業床を省略すると、墜落・滑落、工具や資材の落下、不安定な姿勢による施工不良、緊急時の救出困難などを見落とすおそれがあります。


実務で大切なのは、足場が必要か不要かを先に決めることではなく、各工程で安全な作業位置を確保できるかを確認し、そのために必要な仮設設備と運用費を見積もることです。足場、昇降設備、手すり等、墜落制止用器具、落下物対策、点検、立入管理は、完成後に残らないものでも、工事を安全かつ安定して進めるための施工条件に含まれます。


この記事では、法面工事で足場設置の必要性を見極めるために、作業高さと墜落・滑落時の影響、作業姿勢と資機材の扱い、足場自体を安全に設置・維持できるかという3条件から整理します。さらに、安全関連費の内訳、足場を設けない場合の代替措置、見積もりと施工計画で確認したい点まで解説します。


目次

法面工事の足場設置は一律では決まらない

条件1 作業高さと墜落時の結果で判断する

条件2 作業姿勢・作業時間・資機材の扱いで判断する

条件3 足場そのものを安全に設置・維持できるかで判断する

法面工事の安全費に含める項目を分解する

足場を設けない場合の代替措置を検討する

見積もりと施工計画で確認したい実務ポイント

現地調査から足場判断までの進め方

法面工事の足場設置で起こりやすい誤解

まとめ


法面工事の足場設置は一律では決まらない

法面工事における足場の要否は、斜面の勾配や高さだけでは決まりません。同じ法面でも、法尻から手の届く範囲で確認する工程と、斜面中央で両手を使って削孔や金網設置を続ける工程では、必要な作業環境が異なります。地山の締まり具合、湿潤状態、浮石、湧水、施工中の掘削や振動、上下作業の有無によっても危険は変化します。


労働安全衛生規則では、高さが2メートル以上の箇所で、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれがある作業を行う場合、足場を組み立てるなどの方法によって作業床を設けることが原則です。作業床の設置が困難な場合は、防網を張り、要求性能墜落制止用器具を使用させるなど、墜落による危険を防ぐ措置が必要です。したがって、法令上の検討対象は特定の足場形式だけではなく、安全な作業床と墜落防止機能をどう確保するかです。([労働局所在地一覧][1])


高さが2メートル未満であっても、危険がないとは限りません。斜面では、滑り始めると法尻まで停止できないことがあり、途中の転石、切株、排水構造物、機械、資材などへの衝突で被害が大きくなる可能性があります。法肩、狭い小段、濡れた地山、段差付近では、手すり等、親綱、安全な通路、立入管理などを組み合わせ、現場条件に応じて危険を下げる必要があります。


足場を採用する判断と、採用する足場形式の判断は分けて考えます。足場を使用する箇所で幅が1メートル以上ある場合は、原則として本足場を使用するルールが設けられていますが、幅の確認位置や例外の適用は現場の障害物、施工対象、足場配置などによって異なります。また、足場の点検では点検者をあらかじめ指名し、組立て、一部解体、変更後などの点検では点検者氏名を記録・保存することが求められます。適用関係は個別の仮設計画と最新の法令・行政資料で確認することが重要です。([労働局所在地一覧][2])


現場全体に同じ足場を連続して設ける必要がない場合もあります。削孔区間に限って作業床を設ける、材料受け渡し部にステージを設ける、昇降経路と施工位置を分離するなど、工程と危険箇所に合わせた部分的な対策が適することもあります。ただし、足場のない区間へ移動する経路や、資材を運ぶ動線まで含めて安全性が連続していなければなりません。


条件1 作業高さと墜落時の結果で判断する

1つ目の条件は、作業位置の高さと、墜落・滑落した場合の到達範囲です。法面では、作業員の足元が地山に接していても、その下方に長い斜面が続いていれば、姿勢を崩した後に大きく滑落する可能性があります。水平な作業床での高所作業と異なり、斜面では足元の高さだけでなく、滑り始めた後にどこへ到達するかまで想定します。


最初に確認したいのは、法肩、法尻、小段、擁壁上端、排水溝の端部など、明確な段差や端部がある場所です。後退しながら作業する工程、資材によって足元の視界が遮られる工程、機械や工具の反力を受ける工程では、通常の移動時より転落可能性が高まります。作業床を設ける場合は、立てる幅だけでなく、端部からの墜落を防ぐ囲い、手すり等、資材の落下を抑える設備、安全に出入りできる昇降経路まで一体で検討します。


次に、連続斜面での滑落距離を見ます。途中に小段があっても、幅が狭い、表面に土砂が堆積している、排水で濡れている、縁に停止を助ける構造がない場合は、滑落を確実に止められるとは限りません。反対に、作業位置が低く、十分な幅と安定性のある作業帯を確保でき、施工面へ近づいても身体が転落方向へ出ない工程では、全面足場以外の方法で安全を確保できる可能性があります。


判断では、墜落や滑落の起こりやすさだけでなく、発生した場合の結果も評価します。落下先が地面であっても、転石、鉄筋、切株、排水施設、重機、資材置場があれば、負傷の程度が大きくなるおそれがあります。道路、住宅、鉄道、河川、供用中施設に面する法面では、作業員だけでなく第三者へ工具、資材、土砂が落下する危険も確認します。この場合、安全関連費には作業床だけでなく、落下防止設備、立入区域、監視、交通誘導、養生、資材固定なども含めます。


天候は、同じ高さと勾配でも危険度を変えます。乾燥時には歩ける地山でも、降雨後は表面が滑りやすくなり、湧水や雨水の集中によって足場脚部の支持条件が変わることがあります。高さ2メートル以上の箇所で、強風、大雨、大雪等の悪天候により危険が予想される場合には、作業を中止する規定があります。足場についても、悪天候後など所定の場合は作業開始前の点検と異常箇所の補修が必要です。([労働局所在地一覧][3])


実務では、「2メートル以上か未満か」だけで機械的に判断しないことが重要です。2メートル以上で墜落危険がある場合は作業床の設置を原則として検討し、設置が困難な場合には法令に適合する代替措置を具体化します。2メートル未満でも、滑落距離、端部、落下先、作業姿勢、第三者への影響が大きい場合は、作業床や同等の安全設備を計画します。


条件2 作業姿勢・作業時間・資機材の扱いで判断する

2つ目の条件は、作業員がどの姿勢で、どのくらいの時間、何を扱うかです。法面工事では、目視点検、測量、伐採、清掃、削孔、金網設置、吹付け、型枠、排水施設の施工や補修など、工種によって身体への負担と姿勢の安定性が異なります。足場の要否を場所だけで決めると、実際の動作に合わない安全計画になりやすいため、施工手順を動作単位で確認します。


両手を使う作業では、身体を支えるために手を使えない時間が増えます。工具を施工面へ押し付ける、ボルトを締める、資材を保持する、ホースを操作する、仕上がりを確認しながら施工する場面では、足元が不安定だと小さな反力でも姿勢を崩す可能性があります。斜面に対して横向きになる作業、上半身をひねる作業、肩より高い位置へ手を伸ばす作業では、重心が支持範囲から外れやすくなります。


作業床があれば、足幅を確保しやすく、施工面との距離を一定に保ちやすくなります。ただし、作業床を工具や材料の仮置き場所として使う場合は、通路幅と最大積載荷重を守り、資材が転がる、偏って載る、手すり付近に積み上がるといった状態を防がなければなりません。作業床を設けたことで新たな落下物危険が生じないよう、置き方と固定方法まで決めます。


作業時間も重要です。数分の確認と、同じ位置で長時間反復する施工では、疲労の蓄積が異なります。開始直後には安定していても、足首、膝、腰に負担がかかり続けると踏ん張りが利きにくくなり、工具の取り落としや移動時のつまずきにつながる可能性があります。無理な姿勢は施工精度にも影響するため、安全と品質の両面から作業床の有効性を評価します。


資機材の重量、長さ、形状も判断材料です。長尺材、巻物、ホース、配線、削孔機械などは、斜面上で引っ掛かりやすく、作業員の動きを制限します。重量物の受け渡しでは、受け手が身体を施工面から離して荷重を受けるため、重心が転倒方向へ移ることがあります。材料を持ったまま斜面を昇降する計画はできるだけ避け、揚重方法、搬送経路、荷受け場所、仮置き場所を設定します。


施工範囲が横方向に長い場合は、区間移動の方法を確認します。墜落制止用器具を使用していても、移動のたびに接続を外す、ロープが施工物に絡む、障害物をまたぐといった運用では、保護機能が途切れるおそれがあります。連続した足場で安全な通路を確保する案と、必要箇所だけに作業床を設けて別の方法で移動する案を比較し、接続の切替えや資材搬送を含めて評価します。


上下作業の有無も見逃せません。上段の作業員が落とした小石や工具は、斜面を転がりながら下段へ到達することがあります。足場があっても、上下の作業床が同じ方向に重なり、落下物を受け止める設備がなければ危険は残ります。工程を分ける、下方を立入禁止にする、落下防止設備を設ける、工具や資材を固定するなどの対策を組み合わせます。


つまり、作業姿勢、作業時間、資機材の条件が厳しいほど、安定した作業床の必要性は高くなります。「斜面を歩けるか」ではなく、「予定する動作を、疲労や施工中の変化を考慮して安全に繰り返せるか」を基準にすると、見積もり段階の判断が現場実態に近づきます。


条件3 足場そのものを安全に設置・維持できるかで判断する

3つ目の条件は、足場を設ければ自動的に安全になるわけではなく、足場自体を安全に設置、使用、点検、変更、解体できるかという点です。法面は平地と異なり、地盤面が傾斜し、凹凸があり、地山の強度や含水状態も場所ごとに変わります。支持部を設けるための掘削や整形が法面の表層を緩めたり、排水経路を変えたりする可能性もあります。


最初に確認するのは支持条件です。軟弱な地山、締固めが不十分な盛土、崩積土、湧水箇所、法尻の排水溝周辺では、脚部の沈下や滑動を防ぐ構造と施工方法を検討します。設置時に安定していても、降雨、掘削、振動、資材荷重、施工の進行によって条件が変化することがあります。排水を塞がないこと、雨水を脚部へ集中させないこと、上方からの落石や土砂が足場へ衝突しないことも重要です。


次に、施工面と作業床の位置関係を確認します。作業床が施工面から遠すぎると、作業員が身を乗り出しやすくなります。近すぎると、吹付け材や掘削土が堆積し、通路を狭める可能性があります。施工の進行で法面形状が変わる工事では、当初は適切だった離れが途中で不適切になることもあります。足場の変更を想定する場合は、変更中の墜落防止、立入管理、変更後の点検まで施工計画に含めます。


組立てと解体の危険も評価します。完成した足場上の作業が安全でも、組立て作業員が不安定な斜面を移動しながら部材を運び、固定前の部材を扱うなら、別の墜落防止計画が必要です。狭い搬入路では、人力運搬中の転倒、部材落下、道路へのはみ出し、既設構造物との接触も起こり得ます。安全関連費には、組立て・解体時の親綱等、要求性能墜落制止用器具、作業指揮、立入管理、揚重、場内小運搬を含めます。


足場は設置後の点検と維持管理が欠かせません。国土交通省の土木工事安全施工技術指針では、足場等の作業床について点検者を指名し、日常の作業開始前や必要に応じて点検し、工事の進捗や現場条件の変化に応じて安全を確保する考え方が示されています。法令上必要な点検時期と記録に加え、契約図書、施工計画、発注者の基準に沿った日常管理を行うことが重要です。


法面の上方に未処理の地山が残る場合は、浮石、倒木、伐採材、施工中に剥離した土砂が足場へ落下する可能性を確認します。先行除去、落下物防護、監視、作業順序の変更などを検討します。足場にネットやシート類を設ける場合は、飛来落下対策だけでなく風の影響も増えるため、固定方法、巻上げや撤去の基準、悪天候時の対応を計画します。


足場を安全に成立させるための仮設工事が大きくなる場合は、別の施工方法も比較します。ただし、費用を抑えることだけを先に置いて、必要な作業床や墜落防止措置を省略することはできません。足場案と代替案について、搬入、組立て、使用、変更、解体、搬出までの全工程で危険がどのように変わるかを比較し、法令と現場条件に適合する方法を選びます。


法面工事の安全費に含める項目を分解する

法面工事の安全関連費を見極めるには、「足場一式」という大きなくくりだけで判断しないことが重要です。一式表示では、どの設備や作業が含まれているか分からず、着工後に必要な対策が追加となることがあります。事前調査、計画・設計、設置、運用、変更、撤去という時間軸で分解すると、見積もりの漏れを見つけやすくなります。


事前調査では、法面形状、勾配、高低差、小段幅、施工面までの距離、地山の状態、湧水、排水、浮石、立木、既設構造物、搬入路、周辺道路、第三者動線などを確認します。図面だけでは微細な凹凸や障害物を把握しにくいため、現地写真、測量結果、位置情報などを用いて、足場の支持位置と施工範囲を照合します。


計画・設計段階では、足場形式、支持方法、作業床の位置、昇降設備、囲い、手すり等、最大積載荷重、施工時荷重、風の影響、地山変化への対応を検討します。区間ごとに安全設備を変える場合は、設備の切替部や足場が途切れる箇所の安全性も確認します。必要に応じて、落下物防護、第三者防護、交通規制、照明、通信、緊急退避経路も計画します。


設置費には、足場部材だけでなく、搬入、荷下ろし、場内運搬、斜面上への揚重、支持部の整形、組立て中の墜落防止、立入管理、完成時の点検などが含まれます。狭小地では車両が施工箇所へ近づけず、小運搬が増えることがあります。道路沿いでは交通誘導や規制が必要になる場合もあります。項目名が足場費か安全費かにかかわらず、必要な作業が見積もりに反映されていることが大切です。


運用費には、日常確認、法令や計画に基づく点検、悪天候後の確認、施工進行に伴う変更、清掃、堆積土砂の除去、緩みや沈下への対応、手すり等の復旧、資材置場の管理などがあります。工期が延びれば、足場の使用期間だけでなく点検や維持管理の回数も増えます。吹付け材や土砂が作業床へ堆積する工種では、通路を確保する清掃計画が必要です。


撤去費には、解体前の確認、完成した法面保護工を傷つけない手順、解体中の墜落防止、部材の荷下ろしと搬出、支持部の復旧、残材や仮固定物の撤去などが含まれます。法面保護工が完成した後は、施工前より足場部材を動かしにくくなる場合があるため、組立て前から撤去順序を検討します。


足場以外の安全関連費も区別します。安全な昇降路、親綱等、要求性能墜落制止用器具、落下物防護、監視員、誘導員、交通規制、立入柵、保護具、教育、作業計画、点検記録、救助手順、通信手段などです。足場を設けたから他の対策が不要になるわけではなく、現場の危険源に応じて設備と管理を組み合わせます。


見積もりでは、削減額だけでなく、事故、手戻り、施工中断、追加仮設、品質低下の可能性を含めて比較します。安定した作業床によって施工姿勢、資材受け渡し、品質確認が改善する場合もあります。安全関連費は、施工方法を現場で成立させるための費用として整理することが重要です。


足場を設けない場合の代替措置を検討する

足場を設けない場合は、単に「足場なし」とするのではなく、別の方法で必要な安全水準を確保できるかを確認します。代替措置には、危険が集中する場所だけに作業床を設ける方法、斜面上の身体保持と墜落防止を組み合わせる方法、機械化によって作業員を危険箇所へ近づけない方法、施工順序を変更して安全な位置から作業する方法などがあります。


部分的な作業床は、材料受け渡し部、機械操作部、長時間作業する位置、法肩や構造物端部などに設けます。全面足場より範囲を抑えられる可能性がありますが、作業床までの移動経路が危険であれば対策として不十分です。昇降、横移動、工具運搬、緊急退避まで安全性が連続するように計画します。


斜面で親綱等を使用する作業では、支持物の強度、固定方法、ロープの擦れや切断、接続位置、墜落距離、作業員の教育、点検、救助方法を確認します。国土交通省の指針では、墜落のおそれのある人力による法面整形作業等で親綱と要求性能墜落制止用器具を使用し、斜面を昇降する場合は安全な昇降設備を設ける考え方が示されています。


作業方法が労働安全衛生規則上のロープ高所作業に該当する場合は、メインロープとは別のライフライン、事前調査、作業計画、作業指揮者、作業開始前点検、保護帽、特別教育などの要件を満たす必要があります。一般的な親綱使用とロープ高所作業を混同せず、実際の身体保持方法と作業方法に基づいて適用を確認します。([あんぜんサイト][4])


機械化も選択肢ですが、機械を設置する地盤の安定、作業半径、転倒危険、架空線や構造物との干渉、運転者と作業員の連絡、立入区域を確認します。高所へ届く機械を使っても、施工面へ近づく作業員が残る場合は、その工程に必要な墜落防止対策を別に計画します。機械の導入で足場範囲が減っても、搬入路整備、設置面造成、誘導、監視などが増えることがあります。


施工順序の変更では、掘削前の安定した位置から施工する、上部から危険源を除去する、上下作業を分離する、先に安全な作業帯を確保するなどを検討します。ただし、設計条件、法面の安定性、品質、周辺構造物への影響を確認し、必要な協議を行ったうえで施工計画へ反映します。


代替案を比較するときは、墜落防止だけでなく、作業員の疲労、資材落下、工具操作、避難、救助、第三者災害、悪天候後の再開、施工品質まで含めます。足場より簡単に見える方法でも、専門作業員、教育、点検、監視、救助体制、天候による作業制限が増えれば、工程と費用への影響は大きくなる可能性があります。


最終的には、足場案と代替案について、どの危険をどの設備と管理で低減するかを同じ基準で比較します。「経験者だから大丈夫」「短時間だから不要」「保護具を着けるから足場はいらない」といった説明ではなく、作業床を設けない理由と代替措置の成立条件を施工計画やリスク評価に残すことが重要です。


見積もりと施工計画で確認したい実務ポイント

見積もり段階では、足場の数量だけでなく、前提条件を明確にします。法面延長、施工高さ、足場幅、設置期間だけを記載しても、支持部の処理、搬入、昇降設備、墜落防止、落下物対策、点検、変更、交通規制が含まれているか分かりません。発注者と施工者で想定範囲が異なると、着工後に追加対策や工程変更が発生します。


まず、見積もりの対象範囲を施工区画と対応させます。法面全体のうち、どの区間で作業床を使用し、どこを別の方法で施工するのかを平面と断面で確認します。作業床の高さと施工面の関係、昇降口、荷受け場所、資材置場、立入禁止区域も示すと、数量だけでは分からない運用が見えます。現地条件が未確定なら、どの条件が変わると追加対策が必要になるかを明記します。


次に、安全対策の役割分担を確認します。足場の設置、交通規制、周辺施設との調整などを複数の関係者が分担する場合でも、現場では対策が連続して機能しなければなりません。誰が計画し、誰が設置し、誰が点検し、異常時に誰が使用停止を判断するかを整理します。複数の施工会社が同じ足場を使用する場合は、使用範囲、資材置場、変更手続き、点検結果の共有方法も決めます。


施工計画には、足場の組立てから解体までの手順を記載します。組立て前の地山確認、支持部の処理、部材搬入、組立て中の墜落防止、完成時の確認、日常管理、悪天候後の点検、施工進行に伴う変更、解体順序、搬出までを含めます。上方からの落下物が想定される場合は、危険源の除去、防護設備、上下作業の分離などを明確にします。


工程表では、足場設置と解体に必要な期間を本体工事の前後へ確保します。足場の組立てや解体を本体作業と無理に重ねると、作業員と資材が集中し、混在作業の危険が高まりやすくなります。悪天候で足場工が遅れる場合や、再点検が必要になる場合も想定し、安全設備の工程を余白ではなく工事を成立させる工程として扱います。


見積もり比較では、総額だけでなく含まれる対策の差を確認します。一方には昇降設備、点検、落下防止が含まれ、他方には部材と組立てだけが含まれている場合、単純な金額比較はできません。足場を使用しない案も、親綱等、支持設備、専門作業員、監視、教育、点検、救助計画まで含め、同じ安全水準を満たす案同士で評価します。


現場条件が設計時と異なった場合の変更手続きも決めます。地山が想定より軟らかい、湧水がある、支持位置が確保できない、法面形状が図面と異なる場合に、現場作業員の工夫だけで続行するのは危険です。作業を止める条件、報告先、再検討の方法、追加費用と工程の協議方法を事前に定めておくと、安全と契約の両面で混乱を減らせます。


現地調査から足場判断までの進め方

足場判断は、現地調査、作業分解、危険評価、対策比較、施工計画の順で進めると整理しやすくなります。最初に足場形式を決めて現場へ当てはめるのではなく、施工に必要な動作と現場条件から必要な作業環境を導くことがポイントです。


現地調査では、法面の全景だけでなく、法肩、法尻、小段、排水施設、既設構造物、浮石、湧水、植生、搬入路、周辺道路、隣接地を連続的に記録します。写真は撮影位置と向きをそろえ、高低差や大きさが分かる対象を入れます。作業員が立つ位置、資材を置く位置、機械を設置する位置、緊急時に退避する位置も確認します。


次に、工種を作業単位へ分けます。伐採、清掃、危険物除去、測量、削孔、資材設置、吹付け、排水処理、仕上げ、検査、足場解体などの工程ごとに、作業人数、姿勢、工具、資材、所要時間、移動方向を整理します。同じ区間でも工程によって危険が変わるため、作業床が必要な期間や範囲を絞り込める場合があります。


危険評価では、墜落・滑落、落下物、地山崩壊、機械接触、資材運搬、第三者影響、悪天候、救助困難を確認します。それぞれについて、発生の可能性と結果の大きさを考え、優先して除去または低減すべき危険を決めます。危険箇所を図面や三次元記録上に示すと、関係者が同じ位置を見ながら協議しやすくなります。


対策比較では、連続した足場、部分的な作業床、昇降設備、親綱等、機械化、施工順序の変更を組み合わせます。各案について、設置時、使用時、変更時、解体時の危険と必要人員を比較します。安全性が同程度であれば、工程、施工品質、周辺影響、点検や維持管理のしやすさを含めて選定します。


施工開始前には、現場責任者、足場の計画・施工担当者、法面工事の作業責任者、発注者側担当者などが、施工範囲と安全設備を照合します。図面どおりに設置できない箇所を早期に見つけ、変更が必要なら作業開始前に協議します。組立て後は、昇降経路、使用禁止箇所、資材置場、最大積載荷重、点検結果、悪天候時の対応を作業員へ周知します。


工事中は、法面形状、地山、排水、足場支持部、施工面との距離が変わっていないかを継続的に確認します。安全設備は完成時に一度確認すれば終わるものではありません。現場の変化に合わせて、作業床の位置、手すり等、立入区域、落下物対策を見直し、その理由と対応を記録します。


法面工事の足場設置で起こりやすい誤解

よくある誤解の1つは、「斜面に立てる作業員なら足場は不要」という考え方です。歩行できることと、工具を使いながら安定した姿勢で作業できることは異なります。施工中は視線が施工面へ向き、足元への注意が低下しやすくなります。資材の受け渡しや機械の反力が加われば、移動時にはなかった危険が生じます。


次の誤解は、「墜落制止用器具を着ければ作業床の代わりになる」という考え方です。要求性能墜落制止用器具は重要な対策ですが、装着するだけで安全が確保されるわけではありません。取付設備の強度、接続位置、墜落距離、振られ、ロープの損傷、特別教育の要否、救助方法まで成立させる必要があります。作業床を設けるべき条件と、設置が困難な場合の代替措置を区別して検討します。


「短時間だから足場はいらない」という誤解もあります。作業時間が短ければ危険にさらされる時間は減りますが、一回の動作で墜落する可能性は残ります。短時間作業では全面足場以外の方法を選べる場合がありますが、作業位置、姿勢、工具、滑落先、移動経路を確認したうえで代替措置を決めます。


「足場を組めば安全対策は完了」という考え方も危険です。足場の支持部が沈下する、作業床へ土砂が堆積する、手すり等が施工の都合で外される、昇降口が塞がる、資材が過剰に置かれるなど、使用中に状態は変化します。点検、清掃、補修、変更管理、使用ルールの周知がなければ、安全性を維持できません。


「見積書に足場一式があるから必要な対策は含まれている」という誤解もあります。一式の範囲は契約や会社によって異なります。搬入、支持部整形、昇降設備、点検、悪天候後の確認、落下物防護、交通規制、解体時の墜落防止などが別項目になる場合があります。見積もりの内訳と除外事項を確認し、施工計画の安全対策と一致させます。


最後に、「前回と似た法面だから同じ足場でよい」という誤解があります。法面は、降雨、風化、植生、湧水、補修履歴、周辺工事によって状態が変わります。図面上の形状が似ていても、支持地盤、搬入条件、第三者動線が異なれば、適切な仮設計画も変わります。過去の施工実績は参考にしつつ、今回の現地条件で再評価することが必要です。


まとめ

法面工事の足場設置は、斜面だから一律に必要、あるいは斜面を歩けるから不要と決めるものではありません。判断の中心は、安全な作業床と墜落防止機能をどの方法で確保するかです。そのうえで、条件1として作業高さと墜落・滑落時の影響、条件2として作業姿勢、作業時間、資機材の扱い、条件3として足場自体を安全に設置・維持・解体できるかを確認します。


高さが2メートル以上で墜落危険がある作業では、足場を組み立てるなどの方法による作業床の設置が原則です。作業床の設置が困難な場合は、法令に適合する代替措置を講じます。足場を採用する場合も、支持条件、施工面との距離、昇降、落下物、点検、悪天候後の確認、組立て・解体時の安全まで含めて計画します。


安全関連費は、足場部材と組立てだけではありません。現地調査、仮設計画、搬入、支持部の処理、作業床、手すり等、昇降設備、墜落防止、落下物対策、点検、記録、清掃、変更、解体、交通規制、監視、救助計画などを分解して見積もることで、必要性と比較条件が明確になります。足場を設けない案も、同じ安全水準を確保するための設備、人員、教育、点検を含めて比較します。


現場判断の精度を高めるには、施工前から施工中までの記録が欠かせません。法面形状、施工範囲、高低差、小段、排水、障害物、搬入経路、作業位置を現地で記録し、関係者が同じ情報を共有できる状態にします。紙の図面と口頭説明だけに頼らず、現場条件と安全設備の対応関係を記録することが、過不足のない安全関連費と施工計画につながります。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page