目次
• 一人で測設が求められる背景
• 従来の測設作業と非効率なポイント
• 一人測設を可能にする最新技術の登場
• スマホRTK「LRTK」による一人測設のメリット
• 一人測設が当たり前になる未来へ
• FAQ
一人で測設が求められる背景
「もし測量や測設作業がたった一人でできたら…」――建設現場でそんな夢のような場面が現実味を帯びています。これまで、測量や測設作業といえば最低2人以上で行うのが当たり前でした。例えば1人が測量機を操作し、もう1人がスタッフ(標尺)やプリズムを持って測点に立つ、といった二人一組の光景が長年常識でした。しかし近年、一人で測量・測設を完結できるスタイルが注目を集めています。その背景には建設業界全体の人手不足と効率化ニーズの高まりがあります。
日本の土木・建設業界では深刻な人材不足が叫ばれています。高齢化により熟練の測量技術者が次々と定年を迎える一方、若手の入職者は減少傾向にあり、測量・測設を担える人材の確保が課題となっています。同時に、働き方改革や生産性向上の要請から少ない人員で現場を回す必要性が高まっています。こうした状況では、「一人でできる作業」は現場運営の鍵です。当然ながら測量・測設作業も例外ではなく、一人で測設を行える手法が求められるようになってきました。一人で測設が可能になれば、人員配置の自由度が大きく向上し、他の重要な作業へ人手を振り向けることができます。またチーム全体としても、測量待ちで工事が中断する時間が減り、必要なときにすぐ測定できる環境はプロジェクトの円滑化に直結します。つまり、一人で測設を実現することは単なる省人化に留まらず、現場全体の生産性と柔軟性を底上げする鍵になるのです。
従来の測設作業と非効率なポイント
測設とは、設計図上の位置・高さを実際の現場に正確に写し取る作業です。建物の基礎 位置や橋梁の杭芯(くいしん)位置を現地でマーキングしたり、建物の基準線(墨出し線)を引いたりする工程で、工事の品質を左右する重要な役割を担います。高い精度が要求されるため、従来の測設は専門の測量チームが細心の注意を払いながら実施してきました。しかし、そのやり方にはいくつかの非効率なポイントがありました。
第一に、人手が複数必要なことです。典型的にはトータルステーション(TS)という光学測量機を使い、測量士がTSを操作しながら、別の作業員がプリズムを持って移動する手順になります。杭の位置出しでは、TSオペレーターが角度と距離を測りつつ指示し、補助者が指示された地点に杭やマーキングを行う、といった流れです。このように最低2人がかりでないと測設できないため、人員のやりくりに手間がかかりがちでした。特に広い現場であちこち測設する場合、逐一声を掛け合いながらポイントを出す必要があり、作業に時間がかかる傾向がありました。
第二に、機材のセットアップに時間がかかることです。トータルステーションを使う場合、三脚据え付けから始まり、水平を出し、既知の基準点に機械を合致させるといった準備が必要です。測設する場所が増えればその都度三脚を据え直し、後方交会(バックサイト)のやり直しをする必要があり、段取りに時間を取られました。また、TSで測れる範囲には視通(見通し)の制約もあります。測りたい点とTSとの間に障害物(資材の山や重機など)があると測定できず、機械を移動させたり測定手順を工夫したりと余計な手間が発生しました。
第三に、データ記録がアナログになりがちな点です。従来は現場で測った結果を地面や杭にマーキングするだけで、座標値などのデータは機械内や手書きメモに残す程度でした。後で図面に起こしたり他の機器で活用する際には手入力が必要で、ヒューマンエラーや時間ロスの原因となりました。以上のように、高精度を実現できるトータルステーション測設も柔軟性や効率面では課題があり、「測設作業=手間のかかるもの」というイメージにつながっていたのです。
一人測設を可能にする最新技術の登場
こうした測設作業の常識を変えつつあるのが、近年の技術革新です。人力や従来機材に頼っていた測量・測設の世界に、新しいアプローチが登場しました。その一つが自動追尾式のトータルステーションです。最新のTSにはロボットのようにプリズムを自動で追尾して測距・測角するモデルがあり、これを使えばオペレーター1人でもプリズムを持って歩きながら測設することが可能になりました。ただし、自動追尾型TSは機器が高価で操作習熟にも時間がかかるため、誰もがすぐ導入できるものではありません。
他にも、ドローンを使った写真測量や地上レーザースキャナーによる3D点群測量など、人が直接測らなくても地形データを取得できる手法も普及してきました。これらは測量そのものを省力化する革新的な方法ですが、主に地形計測や出来形管理に活用されるもので、杭打ちや墨出しといった測設作業にはあまり向いていません。またドローンは天候や飛行禁止区域などの制約もあり、常に現場で自由に使えるわけではないという課題もあります。
その中で特に注目されているのが、人工衛星を活用したGNSS測位技術による一人測設です。GNSS(全球測位衛星システム)を使った測量の一種であるRTK測量は、一人測設を可能にする強力な手段となっています。RTK(Real Time Kinematic)とは、衛星からの測位信号に基地局から配信される補正情報をリアルタイムに組み合わせて、数センチメートルの精度で位置を特定できる技術です。このRTK方式を用いれば、重たい光学機器を据え付けなくても、現場を動き回りながら一人で高精度な座標を測定できます。広い敷地内の離れたポイントでも視通の心配がなく、受信機を携行して歩くだけで必要な位置を測れてしまうのが大きな利点です。
最新技術の登場によって、「測量・測設は大掛かりな機材と複数人のチームで行うもの」という固定観念が崩れ始めています。その象徴とも言えるのが、ポケットサイズのRTK-GNSS受信機の登場です。手のひらに収まる小型機器を使って、誰もがどこでも精密測位できる時代が目 前に迫っています。そしてまさに、このコンセプトを具現化した製品が「LRTK」です。次に、スマートフォンを活用した簡易RTKシステムであるLRTKがどのように一人測設を実現し、現場の常識を塗り替えつつあるかを見てみましょう。
スマホRTK「LRTK」による一人測設のメリット
LRTKは東京工業大学発のスタートアップ企業によって開発された、手軽に扱えるRTK-GNSS測位システムです。名刺サイズほどの小型受信機をスマートフォンに装着し、専用のアプリで操作することで、専門知識がなくても誰でもセンチメートル級測位が行えるよう設計されています。これまで測量技能者だけの仕事と思われていた測設作業も、LRTKを使えば直感的な操作でこなすことが可能です。まさに「いつでもどこでも測れるツール」として現場で静かな革命を起こしつつあります。
では、LRTKを活用した一人測設には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。主なポイント をまとめてみます。
• 高精度な測位: RTK方式により誤差数センチ程度の高精度測位が可能です。従来の単独GPS測位とは一線を画する精度で、杭位置出しや基準線の墨出しにも十分対応できます。
• 機動力と携帯性: ポケットに収まる薄型軽量デバイス(重量約125g)なので、広い現場内を歩き回っても負担になりません。三脚や重機を抱えて斜面を上り下り…といった苦労も不要で、狭所や起伏の多い場所でも一人で楽に測設できます。
• 操作の簡単さ: スマホの専用アプリはシンプルなUIで直感的に扱えます。測りたい点でボタンをタップするだけで座標記録完了、という手軽さで、複雑な設定や計算は自動化されています。特別なスキルがなくてもすぐ使い始められます。
• オールインワン機能: 1台でポイント測量から範囲測量、さらには誘導機能による杭打ち位置出しまで幅広く対応します。写真計測やARによる現場シミュレーション、測定データからの距離・面積・体積計算など、多彩な機能を備えており、これ一つで現場の計測ニーズを網羅できます。
• クラウド連携: 測定したデータはスマホからワンタップでクラウドにアップロード可能です。いちいち事務所に戻って手作業で図面に転記…といった無駄を省き、離れたオフィスともリアルタイムで情報共有できます。測設結果をすぐ共有できるため、関係者全員で現況を把握しながら施工を進められます。
• 低コストで1人1台: 専用測量機器としては非常にリーズナブルな価格設定のため、「高価だから1現場に1台限り」といった制約を破り、作業員一人ひとりがLRTKを携行できる時代が現実になりつつあります。新人からベテランまで全員が自分の端末で測定できれば、待ち時間の削減や作業の属人化解消にもつながります。
以上のメリットにより、LRTKは測設作業のハードルを一気に下げる

