CIM入門：今さら聞けない基本用語・仕組み・使い方｜LRTK

近年、建設業界で CIM という言葉を耳にする機会が増えています。国土交通省も i-Construction（アイ・コンストラクション）の一環として導入を推進しており、今や業界の重要キーワードとなっています。しかし「聞いたことはあるけれど正直よく分からない」「今さら人に聞きづらい…」という方もいるのではないでしょうか。本記事では CIMの基本用語や仕組み、そして具体的な使い方 について、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。

CIMとは何か？BIMとの違いと背景

CIM（Construction Information Modeling/Management、コンストラクション・インフォメーション・モデリング／マネジメント） とは、建設・土木分野において 3次元モデル（3Dモデル）を活用し、関連する様々な情報を一元管理する手法 のことです。簡単に言えば、図面や施工情報などを デジタルな3Dモデルにまとめて活用する 取り組みです。

元々、建築分野では BIM（Building Information Modeling/Management） と呼ばれる3D活用手法が先行して普及していました。CIMはこの建築分野のBIMの考え方を土木分野に応用したもので、2012年に国土交通省が建設業務の効率化を目的に提唱した概念 です。その後試行を経て導入が進められ、2023年度からは国交省直轄の土木工事でBIM/CIMの原則適用が開始 されるなど、今や公共事業でもCIM活用が標準となりつつあります。

では BIMとCIMの違い は何でしょうか。基本的な考え方は共通していますが、対象とする分野が異なります。

• BIM：ビルや住宅など主に建築物を対象とする（建築分野向けの3D情報モデル）

• CIM：道路・橋梁・ダム・トンネルなど主に土木構造物を対象とする（インフラ分野向けの3D情報モデル）

要するに、どちらも「3次元モデルを活用する」という意味 ですが、建築ならBIM、土木ならCIMと呼び分けていると考えるとよいでしょう。海外では建設全般で「BIM」という用語に包括されることも多く、日本でも「BIM/CIM」とセットで呼ばれることがあります。

CIMの仕組みと特徴：3Dモデル＋属性情報で可視化と効率化

CIMのキーワードは 「3次元モデル」と「属性情報」 です。国土交通省のBIM/CIMポータルサイトによれば、CIMで扱う 3Dモデル とは「対象物の形状を立体的に表現した情報」、属性情報 とは「3Dモデルに付加される部材や施工履歴などの各種情報」を指します【※】。この 3次元モデルと属性情報を組み合わせたものがCIMモデル です。

従来、建設業界では平面的な 2次元図面 を用いて設計・施工を進めてきました。2D図面は作成しやすい反面、完成形を頭の中で立体的に想像するには経験が必要で、図面の読み取りミスや関係者間の認識ズレが生じやすいという課題がありました。また紙の図面では情報共有にも手間がかかり、生産性が上がりにくい一因となっていました。

CIMを導入すると、3Dモデル上で情報を直感的に共有・検討できる ようになります。デジタルな3D空間に部材や構造物の詳細情報を紐付けていくことで、関係者全員が同じ立体イメージを持ちやすくなり、設計ミスの防止や施工品質の向上につながります。例えば、3Dモデル上で設備や構造の干渉（ぶつかり）を事前にチェックできるため、後から「現場で部材が合わない」といった手戻りを減らすことができます。さらに紙図面では難しかった 工事内容の可視化 が容易になるため、専門知識のない人にも計画を説明しやすくなる利点もあります。

また、CIMは単なる3Dモデリングではなく「情報を活用する仕組み」である点が特徴です。3Dモデルに紐付いた属性データを活用することで、数量計算やコスト見積もりを自動化 したり、進捗や履歴をデジタルに記録・共有 したりと、様々な業務効率化が実現します。CIMの導入によって、建設プロジェクト全体の作業フローを見直し、従来とは異なるアプローチで効率向上を図ることが可能になります。

特に注目される考え方として、「フロントローディング」 と 「コンカレントエンジニアリング」 というキーワードがあります。フロントローディングとは、プロジェクトの早い段階（上流工程）に労力を集中させて問題を潰す手法 のことで、CIMを使って設計段階で詳細なシミュレーションや検証を行うことで、後工程の手戻りを最小化できます。例えば仮設計画や施工手順を3D上で検討し、安全性・効率性を考慮した最適案を事前に決めておけば、施工段階でのトラブルが減り全体の効率が上がります。

一方コンカレントエンジニアリングは、設計・施工など異なる工程を並行して進める手法 を指します。CIMにより設計データを関係者がリアルタイムで共有できるため、設計中に施工担当者の意見を取り入れたり、設計変更をすぐ施工計画に反映したりと、部門横断的な同時進行がしやすくなります。その結果、意思決定のスピードが上がり、工期短縮や品質向上につながります。

このように CIMは「3Dモデル＋情報活用」によって可視化と効率化を両立する仕組み と言えます。では具体的にどのように現場で活用されるのか、次に見ていきましょう。

※参考：国土交通省 BIM/CIMポータルサイト「初めてのBIM/CIM」より

CIMの活用シーン：設計・施工・維持管理でどう使う？

CIMは建設プロジェクトのあらゆる段階で活用できます。主な 使い方・活用シーン を段階別に見てみましょう。

• 設計段階：3Dモデルにより関係者間の 合意形成が迅速化 します。平面図だけでは伝わりにくい完成イメージも共有しやすく、設計者と発注者・施主との認識合わせがスムーズです。また、地形を含む3D設計データから自動で土量を算出したり、モデルから材料数量を積算して 正確な数量・コスト見積もり を行うことも可能です。さらに、3Dモデルを用いることで地元住民への説明も視覚的に行え、理解と協力を得やすくなる効果があります。

• 施工段階：施工現場でもCIMは威力を発揮します。例えば 工事手順や進捗を3Dで可視化 でき、現場全員が共通の認識を持って作業できます。設計変更が生じた場合もモデルデータを更新すれば 即座に全員で最新情報を共有 でき、伝達漏れを防ぎます。ICT施工機械（マシンガイダンス・マシンコントロール）にCIMモデルを取り込めば、自動制御による高精度な施工が可能となり作業効率と精度が向上します。また、ドローンや地上型レーザースキャナーで取得した 点群データ（3次元計測データ） と設計モデルを比較して出来形をチェックすることで、品質管理や検査を効率化することもできます。さらに危険箇所を事前に3D上で把握して対策を講じるなど、安全管理面でもCIMは有用です。

• 維持管理段階：完成後の維持管理にもCIMは役立ちます。構造物ごとのCIMモデルに、検査結果や補修履歴といった情報を 属性情報として蓄積 していけば、過去の経緯を一元管理できます。例えば 点検記録をモデル上に紐付け て残しておけば、経年劣化の様子が直感的に把握でき、次回の点検計画や補修計画の立案に役立ちます。また、台帳や図面を引っ張り出さなくてもモデルから必要な情報を検索できるため、災害発生時など いざというとき迅速に正確な情報を取り出せる のも大きなメリットです。データが一元化されていることで、複数部署や関係機関間での情報共有もスムーズになり、社会インフラの効率的な維持管理に寄与します。

以上のように、CIMは設計・施工・維持管理それぞれのフェーズで 生産性向上と品質向上 に直結するさまざまな効果を発揮します。では実際にCIMを導入するには何から始めれば良いのでしょうか。最後に、そのポイントを見てみましょう。

CIM導入のステップ：初めて取り組む際のポイント

CIMは非常に有益な手法ですが、初めて導入する企業にとってはいきなり全てを置き換えるのは難しいものです。国土交通省もガイドラインで段階的な導入を推奨しています。以下に CIM導入の一般的なステップ を示します。

• 現状分析と目標設定：自社の業務課題を洗い出し、CIM導入によって解決したい問題や達成したい目標を明確にします。「設計ミスを減らしたい」「工事の手戻りをなくしたい」など具体的な目標設定が重要です。

• 人材育成：3D CADやBIM/CIMソフトを扱える人材を育てます。社内研修や外部セミナー受講を通じて、3次元モデリングやデータ活用のスキルを持つ人材を確保しましょう。

• 環境整備：CIMに必要なハード・ソフトを準備します。高性能なPCやタブレット、3Dモデリングソフトウェア、点群データ取得用の機器など、目的に応じたツールを導入します。また社内のデータ共有基盤（クラウドストレージ等）も整備しましょう。

• 小規模プロジェクトで試行：いきなり大規模案件で始めず、まずは小さなプロジェクトで試験的にCIMを導入してみます。実際に3Dモデルを作成し各工程で活用してみることで、効果や課題が見えてきます。

• 効果検証と改善：試行導入の結果を検証し、うまくいった点や課題となった点を整理します。関係者からフィードバックを集め、運用フローやツール選定に改善を加えます。

• 本格導入：準備が整ったら全社的・本格的にCIMを導入します。標準業務フローに組み込み、社内規程に盛り込むなどして定着を図ります。必要に応じてガイドラインを整備し、継続的に人材育成・技術検証も行いましょう。

段階を踏んで導入することで、CIM初心者の企業でも無理なく移行を進めることができます。社内で経験を積みつつ、徐々に適用範囲を広げていくことが成功のポイントです。

まとめ：CIMで建設DXを加速しよう

CIM（コンストラクション・インフォメーション・モデリング/マネジメント） は、建設業界のデジタルトランスフォーメーションを牽引する重要な技術です。3次元モデルと関連情報を組み合わせて活用することで、設計・施工・維持管理の各段階で 生産性向上と品質向上 が期待できます。フロントローディングやコンカレントエンジニアリングといった考え方も取り入れながら、プロジェクト全体の効率化や働き方改革につなげられる点で、CIMの効果は計り知れません。

国土交通省もCIM普及に力を入れており、今後ますます業界標準として定着していくでしょう。業界の潮流に乗り遅れないためにも、これからの建設企業にとってCIMへの対応は避けて通れない課題と言えます。「まだ導入していない」という企業も、できる部分から少しずつCIMに取り組んでみる価値は大いにあります。

もっとも、「いざCIMを始めよう」として壁になるのが 現場のデジタルデータ化 です。CIMを活用するには、まず現場の正確な3次元データ（地形や構造物の形状、座標など）を取得する必要があります。しかし従来は高価な測量機器や専門技術者が必要で、ハードルが高い面もありました。そこで注目したいのが スマートフォンを使った新しい測量手法 です。

例えば LRTK は、スマホに小型の高精度GNSS受信機を取り付けることで 誰でも簡単にセンチメートル級の測位ができる ようにした次世代ツールです。専門の測量機を扱ったことがない人でも直感的に操作でき、一人で手軽に現場の測量や出来形計測が行えます。地形の高低差や構造物の位置座標を短時間で取得してクラウドにアップロードできるため、社内でデータをすぐ共有しCIMモデルに反映することも容易です。従来は手間だった 点群データの取得 や 出来形管理 も、LRTKを活用すればスマホひとつで完結できます。また、設計時に作成した3Dモデルデータをスマホ上のAR（拡張現実）機能で現地に重ねて表示することも可能で、杭打ち位置のマーキングなど デジタルと現場をつなぐ 活用も実現します。

このように LRTKによる簡易測量 を取り入れれば、CIMに必要な現場のデジタル情報を安価かつ効率的に手に入れることができます。「まずは試しに現場の3D化をやってみたい」という場合にも最適なアプローチでしょう。CIMの導入ハードルをぐっと下げてくれる頼もしいツールと言えます。

建設現場の未来は間違いなくデジタル化とともにあります。CIMを活用して業務のスマート化を図ることが、これからの競争力強化に直結するでしょう。ぜひ自社でもCIMにチャレンジしてみてください。そして LRTK など最新技術も積極的に取り入れながら、現場DXの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

[※ 国土交通省 BIM/CIMポータルサイト](https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimindex.html)｜[LRTK公式サイト](https://www.lrtk.lefixea.com)