CIM導入で何が変わる？成功事例とメリット｜LRTK公式

近年、建設業界ではデジタルトランスフォーメーション（DX）が急務となっており、その中心技術の一つとしてCIM（コンストラクション・インフォメーション・モデリング/マネジメント）が注目されています。特に土木分野はDXの余地が大きいとされ、CIMを活用した業務改革への期待が高まっています。実際、国土交通省は2016年に「i-Construction」という政策を打ち出し、ICTやCIMの活用によって建設現場の生産性向上を図る取り組みを本格化させました。また、令和5年（2023年）度からは公共工事におけるBIM/CIM活用が原則義務化され、今後は地方自治体や民間工事にも適用範囲が拡大されていく方針です。こうした背景の中、「CIMを導入すると何が変わるのか？」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。本記事では、CIM導入によって変わる業務内容や得られるメリットを解説し、実際の成功事例を紹介します。

CIMとは何か？

CIMとは「コンストラクション・インフォメーション・モデリング/マネジメント」の略で、土木工事における3次元モデル活用の手法です。ダム・橋梁・道路などのインフラ構造物を3Dモデル化し、そのモデルに測量データや設計情報、資材・コスト、工期など様々な属性情報を紐づけて、一元的に管理・活用します。建築分野で普及しているBIM（ビルディング・インフォメーション・モデリング）が建築物を対象とするのに対し、CIMは土木分野を対象としており、地形や地質などより広範な情報も扱う点が特徴です。なお、国内では2018年頃から建築・土木をあわせ「BIM/CIM」と一括りに呼ぶことも一般的になっています。

CIM導入で何が変わる？

従来の土木プロジェクトとCIM導入後のプロジェクトでは、業務の進め方や成果物に大きな変化が生まれます。ここではCIMを導入することで具体的に何が変わるのか、主なポイントを見ていきましょう。

• 設計・計画段階での事前検証: CIMでは計画段階から完成形を精密な3Dモデルで可視化できます。そのため、従来は施工段階まで気づけなかった設計ミスや干渉（衝突）を事前に発見し、早期に対策を講じることが可能です。例えば橋梁の設計で周辺地形との干渉をシミュレーションしたり、道路計画で周辺環境への影響をチェックしたりと、完成前にデジタル空間上で様々な検証が行えます。これにより「作ってみたら合わない」といった手戻りが減り、結果として工期短縮やコスト増加抑制につながります。

• 情報の一元管理と自動化: 3Dモデルに関連情報を一元的に集約することで、設計から施工、維持管理まで一貫したデータ利用ができます。例えば設計変更が生じた際には、モデル上の数量やコスト情報も自動更新されます。従来は変更のたびに図面を修正し、積算担当者が数量を拾い直す必要がありましたが、CIM環境ではその手間が大幅に削減されます。また、モデル上で不整合な変更があればシステムが即座にエラー検出してくれるため、人的ミスの見逃し防止にも効果的です。このように情報のデジタル集約と自動化が進むことで、業務全体の効率が飛躍的に向上します。

• 現場管理・コミュニケーションの効率化: CIM導入により、工事関係者間で常に最新の情報を共有できるようになります。クラウドを介して現場とオフィス、発注者と受注者、設計者と施工者といった多方面のメンバーが同じモデルを参照し、リアルタイムに意見交換や調整が可能です。これまでメールや紙図面で逐次行っていたやり取りが、デジタルモデル上でスピーディに行えるため、コミュニケーションロスが減少します。現場での出来形（施工結果）や進捗状況もモデルに反映して共有すれば、離れた場所からでも施工管理が可能となり、意思決定の迅速化につながります。

• 地域住民や非専門家への説明容易化: 土木プロジェクトでは、地元住民や関係機関への事業説明も重要なプロセスです。CIMの3Dモデルを活用すれば、専門知識のない方にも視覚的に計画内容を伝えやすくなります。例えば、ある河川改修事業ではCIMモデルを用いて住民説明を行ったところ、従来は理解を得るのに数日かかっていたものが1日程度で合意形成に至ったという成功例があります。立体的な完成イメージを示すことで、文字や図面だけでは伝わりにくかった工事の必要性や安全対策についても直感的に理解してもらえるようになり、周辺ステークホルダーとの合意形成がスムーズになります。

• 維持管理・資産管理の高度化: 施工後の維持管理段階においても、CIMは威力を発揮します。完成した構造物の3Dモデルに検査結果や補修履歴などを継続的に記録していけば、その構造物のデジタル台帳として長期間活用できます。従来は紙の台帳や図面をめくって過去の記録を探す手間がありましたが、モデル上で必要な情報を紐付けておけば検索も容易です。例えばトンネル点検の結果をモデルに反映させて劣化箇所を色分け表示する、といった使い方も可能です。これによりインフラ資産の維持管理業務が効率化され、ライフサイクルコストの最適化や点検・補修計画の高度化にもつながります。

以上のように、CIMを導入すると計画から施工、維持管理まであらゆる段階で従来にはないデジタルな業務展開が可能となり、結果として品質と生産性の両面で飛躍的な向上が期待できます。

CIM導入のメリット

CIMの活用によって得られる具体的なメリットを、改めて整理してみましょう。

• 業務効率化・生産性向上: 3Dモデルによる事前検討や情報自動化により、ムダな手戻り作業や人的な処理が減ります。設計変更への迅速な対応、数量計算の自動化、重複業務の排除など、プロジェクト全体の生産性が向上します。実際にCIM導入により特定業務の作業時間が80%削減されたケースもあり、少人数でも効率良く業務を進められるようになります。

• コスト削減: 業務効率が上がることは直接的にコスト削減につながります。早期の問題発見による手戻り削減や、過剰設計・過剰施工の防止、最適な工程計画による無駄な待ち時間削減などで、トータルのプロジェクトコストを抑制できます。また、少ない人員で管理できるようになることで人件費削減効果も期待できます。

• 品質向上・リスク低減: デジタル上で綿密なシミュレーションとチェックを行うことで、施工品質のばらつきを減らし、設計ミスや施工不良のリスクを大幅に低減できます。品質管理データをモデルに統合することで検査精度が上がり、全体の品質向上につながります。結果として安全性も高まり、完成物に対する信頼性が上昇します。

• 情報共有とコミュニケーション向上: モデルを介して関係者全員が同じ情報をリアルタイムに共有できるため、伝達ミスや情報ギャップが減少します。現場と本社間、設計部門と施工部門間などの連携がスムーズになり、意思決定のスピードが上がります。また発注者や協力会社との透明性ある情報共有がプロジェクトの信頼性を高め、顧客満足度の向上にも寄与します。

• 維持管理の効率化: 引き渡し後もCIMモデルをデジタルアセットとして活用することで、長期的な維持管理が効率的になります。構造物の検査履歴や修繕履歴をモデルに蓄積しておけば、担当者が代わっても過去の状況をすぐ把握できるため、計画的なメンテナンスが可能です。維持管理に要する時間やコストの低減、延いてはインフラ資産の長寿命化にも貢献します。

• 競争力・受注力の向上: 国土交通省がBIM/CIM活用を推進しているように、今やCIM対応は公共事業の入札において大きなポイントとなっています。CIMを導入している企業は、発注者からの信頼度や評価が高まり、受注機会の拡大につながります。また、自社のDXに積極的に取り組んでいる姿勢を示すことで、人材採用や異業種との協業においても有利に働くでしょう。

CIM導入の成功事例

実際にCIMを導入することでどのような成果が得られるのか、国内大手ゼネコン（総合建設会社）の事例を見てみます。先進的にCIMを活用したプロジェクトからは、多くの学びと示唆が得られます。

竹中工務店の事例：杭工事設計の効率化

大手建設会社の竹中工務店では、杭基礎工事にCIMを取り入れ、独自の設計・施工管理システム「ANAGO（アナゴ）」を開発しました。従来、杭基礎の設計では限られたボーリング調査データをもとに設計者が支持層の深度分布図を作成し、数多くの杭一本一本の長さを決定していました。しかし、杭の本数に対して地盤調査データが不足しがちで、地盤の3次元形状を正確に推定することは困難でした。結果として、施工段階で設計時の想定と異なる地盤状況が見つかるたびに杭の設計を見直し、再製作する手間が発生していたのです。

竹中工務店の「ANAGO」は、ボーリング調査結果や実際の杭施工時に取得されるデータを適宜3Dモデル（CIMモデル）に反映し、可視化する仕組みです。これにより設計と施工の情報が一元化され、杭長の最適化と設計作業時間の大幅短縮を実現しました。同社の発表によれば、このシステム活用により杭設計に要する作業時間が約80%削減され、設計担当者の省力化（省人化）にもつながったといいます。CIMによって設計と現場のギャップを埋め、効率的かつ柔軟な施工対応が可能になった好例と言えるでしょう。

大林組の事例：品質管理データの統合

ゼネコン大手の大林組では、CIM導入によって施工から維持管理まで一貫した情報提供を顧客（発注者）に対して実現しています。具体的には、施工段階で発生する各工程の品質管理データや検査データをCIMモデル上に統合しました。従来は工程ごとに別々に管理していた品質データを一元化したことで、施工管理の効率化と品質確保の両立を果たしています。例えば、鉄筋工事やコンクリート打設といった各作業の検査結果をモデルに紐付けて蓄積することで、後からでも容易に品質履歴を追跡・確認できるようになりました。

さらに、完成後の維持管理においてもモデルに蓄積された情報が活用されています。引き渡し後、オーナーや維持管理担当者はCIMデータから構造物の詳細情報をいつでも引き出せるため、点検計画の立案や補修工事の実施判断がスムーズになります。大林組の事例では、CIMにより維持管理の効率化も実現し、顧客に対して長期的なメリット（例えば迅速な対応やライフサイクルコストの低減）を提供できたと報告されています。CIM活用が施工中だけでなくアフターサービス面でも価値を生んだ好例です。

鹿島建設の事例：ダム工事の一元管理

スーパーゼネコンの一角である鹿島建設は、ダム建設プロジェクトにおいてCIMを核とした一元管理システムを開発・導入しました。巨大な土木構造物であるダムの施工では、設計図書・施工計画・現場測量データなど膨大な情報を扱います。鹿島建設のシステムでは、それらをCIMモデル上で統合管理し、施工情報を常に可視化できるようにしました。その結果、施工計画の最適化や品質向上につながり、プロジェクト全体のマネジメント精度が飛躍的に向上しました。

例えば、地質条件の変化に応じて掘削・打設計画をモデル上で即座に調整し、関係者間で共有できるため、無駄のない工程管理が可能となりました。また、この一元管理システムは完成後の維持管理フェーズにも引き継がれ、点検や補修の情報を同じモデル上で扱えるように設計されています。これによって、ダム引き渡し後の維持管理業務においても省力化が達成され、オーナーである自治体などの負担軽減にも寄与しました。鹿島建設の事例は、大規模インフラ工事におけるCIMの有効性を示すとともに、施工者だけでなく事業主体（発注者側）にも恩恵をもたらすことを証明しています。

まとめ

CIMの導入によって、土木プロジェクトの進め方は設計から施工、引き渡し後まで大きく変革し、業界に多大なメリットをもたらします。効率化や品質向上はもちろん、デジタルデータを駆使した高度なマネジメントにより、これまで見えなかった問題が見える化され、適切な判断が迅速に行えるようになります。また、BIM/CIMの原則義務化に象徴されるように、今やCIMは「導入すれば差別化」ではなく「導入していて当たり前」の時代へ移行しつつあります。遅かれ早かれCIM対応が必要になる中、できるだけ早期に準備を進めることが、自社の競争力維持・向上の鍵となるでしょう。

CIM導入で何が変わるのかを見てきましたが、その変化とメリットは計り知れないものがあります。まさにCIMは建設プロジェクトの常識を塗り替える存在と言えるでしょう。もし自社のプロジェクトでCIM活用に踏み出そうとお考えであれば、まずは身近な部分からデジタル化を進めてみてください。現場の情報をデジタルに記録・活用することから始めるのがおすすめです。例えばLRTKが提供する簡易測量ソリューションを使えば、これまで専門知識や高価な機材が必要だった測量作業を、スマートフォンと小型デバイスで誰でも手軽に行うことができます。LRTK端末（高精度GNSS受信機）をスマホに装着し専用アプリを使うことで、1人でも現場のポイント測量や出来形記録をセンチメートル精度で取得可能です。こうして取得した高精度な現況データをCIMモデルに取り込めば、現場の「今」を正確に反映したデジタルモデルが構築できます。小さな取り組みからでもデジタルの利点を実感し、CIM活用への手応えをつかむことができるでしょう。

もしCIMの導入にご関心があれば、LRTKの簡易測量サービスについて詳しく知りたい方は、ぜひ[こちら](https://www.lrtk.lefixea.com)からお問い合わせください。現場DXの頼れるパートナーとして、皆様のCIM導入をサポートいたします。未来の建設現場づくりを、ぜひ私たちと一緒に進めていきましょう。現場DXを一緒に加速していきましょう！