top of page

紙図面から卒業!LRTKのAR座標ナビでスマート逆打ち

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均4分30秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

建設現場で「逆打ち」を行う施工管理者・測量士の皆さん、いまだに紙の図面を片手に現場で座標を追いかけていませんか?紙図面に頼った位置出し作業は手間も多く、わずかな誤差が大きな手戻りにつながるリスクもはらんでいます。そこで注目したいのが、スマートフォンとRTK技術を活用したLRTKのAR座標ナビです。LRTKを使えば、設計座標による誘導をAR表示で直感的に行え、紙図面に卒業して効率化・精度向上・安全性向上を同時に実現できるのです。本記事では逆打ち工法の概要から従来手法の課題、そしてLRTKによるスマート逆打ちの具体的なメリットまで詳しく解説します。


逆打ち工法とは何か?

まず逆打ち工法(さかうちこうほう)とは何かを簡単におさらいしましょう。逆打ち工法は、地下階を持つ建造物の施工で採用される特殊な工法の一つです。通常は地下部分を掘削して基礎から上へ順に構築していきますが、それに対して逆打ち工法では上から下へ向かって地下構造物を造っていく点が特徴です。具体的には、最初に地上部分や1階床板を施工し、それを支えにしながら地下の掘削と構築を順次進めていきます。手順が通常と逆になるため「逆打ち」と呼ばれ、1960年代から都市部のビル建設などで活用されてきました。


逆打ち工法のメリットは工期短縮安全性の向上にあります。地上と地下の工事を並行して進められるため大幅な工期短縮が可能で、1階床が蓋となり騒音や粉塵を抑えつつ上部構造を支保工(仮の支え)として安全に地下掘削を行えます。一方でデメリットとして、地下作業の空間が手狭になることや、上下の構造を後施工で一体化させる難しさが挙げられます。そのため逆打ち工法では限られた空間でいかに正確に測量・位置出しを行うかが重要なポイントとなります。地上床を先に施工してしまうため、地下柱や壁の位置を後から正確に出す「逆打ち」作業には高度な測量管理が求められるのです。


従来の逆打ち作業と紙図面依存の課題

逆打ち工法に限らず、施工現場で設計図の座標をもとに位置出し(墨出しや杭打ち位置のマーキング)を行う作業は昔から人の手に頼ってきました。従来は施工管理者や測量士が紙の図面に記載された座標値を読み取り、巻尺やトータルステーションなどを使って現場で測点を割り出し、地面や構造体に印を付けて位置を示します。しかしこのアナログな方法には以下のような課題が存在します。


狭小空間での測量が困難: 逆打ち工法では地下の作業空間が狭く、天井(上階床)がある状況で従来測量を行うのは容易ではありません。視通しが悪く機器の設置も制限されるため、位置出し作業に時間がかかります。

複数人作業による非効率: 測量機器を使った杭位置出しは通常2人1組以上で行います。1人がスタッフ棒を持ちもう1人が機器を操作するといった具合で、人手と手順が多く工数増大につながります。

紙図面の読み取りミス: 図面上の座標値を書き写す際のケアレスミスや、現場での寸法読み違いなど人為的な誤差が発生しがちです。特に複雑な座標や桁数の多い数値を扱う場合、わずかなミスが位置ずれを招いてしまいます。

マーキングミスと手戻り: 手作業の墨出しでは、誤って違う位置に印を付けてしまうケースもあります。施工後にずれが発覚すれば、コンクリートの打ち直しや構造物の再設置といった大きな手戻りが生じ、工期・コストへの影響は深刻です。

安全面のリスク: 測量のために作業員が重機の近くや法面の下など危険な場所に立ち入る必要があることも課題です。逆打ちでは地下ピット内での作業が増えるため、上部からの落下物や転倒など安全管理上の懸念も高まります。


以上のように、紙図面と手作業による逆打ちの位置出し作業は効率面でも精度面でも限界があり、現場の安全にも影響を及ぼしていました。「図面どおり」に施工すること自体が難易度の高いチャレンジだったと言えるでしょう。では、これらの課題をどう解決できるのでしょうか?その答えとして登場したのがLRTKのAR座標ナビによるデジタルな逆打ち作業です。


LRTKのAR座標ナビとは?

LRTK(エルアールティーケー)は、レフィクシア株式会社が開発した小型RTK-GNSS受信機をスマートフォンに装着して使う新世代の測位システムです。これに専用アプリを組み合わせることで、センチメートル級の高精度測位とAR(拡張現実)による座標誘導を実現しています。従来は専門の測量機器や経験が必要だった精密な位置出し作業を、スマホひとつで誰でも直感的に行えるようにするのがLRTKのAR座標ナビ機能です。その仕組みと特長を順に見てみましょう。


RTK技術によるセンチメートル級測位

LRTK最大の特長は、GNSS測位にRTK(Real Time Kinematic)技術を用いることで、測位誤差を数センチ以内に抑えている点です。通常のGPS測位は誤差が数メートル生じますが、RTKでは基地局と移動局のデータ差分をリアルタイム補正することで格段に精度を高めます。LRTKはこのRTK補正情報をインターネット経由で受信することで、スマホ上で常に高精度な現在座標を取得可能です。例えば空が開けた屋外でLRTKを起動すれば、約30秒ほどでRTKの「固定解(Fix)」が得られ、平面位置で±1〜2cm程度の精度が確保されます。これにより設計図上の座標と現場で測定する自分の位置とのズレをほぼ解消でき、紙図面を見ながらメジャーを引くのとは比べ物にならない精度で位置出しが行えます。


高精度なRTK測位に支えられているため、LRTKの座標ナビは“ズレない”誘導が可能です。狙ったターゲット座標に対し、GNSSで測った自分の現在位置を逐次比較しながら誘導するため、従来のように「測量点からテープを伸ばして◯m」といったやり方よりも確実です。逆打ち工法で重要な柱位置や芯出しのポイントも、RTKのセンチ精度で捉えることで構造全体のズレを防ぎ、後工程の精度不良リスクを大幅に低減できます。


AR表示で直感的に位置誘導

LRTKが他の測位システムと一線を画すポイントが、このAR表示による座標誘導です。スマホの画面を通じて、目的の位置を視覚的に示してくれるため、熟練者でなくても直感的に正確な場所へ誘導されます。具体的には、LRTKアプリ上で目標の座標値を選択すると、画面に矢印と距離がリアルタイム表示され「あと東に12cm」「北に8cm」などと案内されます。作業者はスマホを持ってその矢印の方向に進むだけで目標地点に近づき、距離表示がゼロ付近になれば目的の座標に到達です。従来は測量士が計測・指示していた位置合わせ作業が、スマホ画面の指示に従うだけで完了してしまいます。


さらに、目標地点に着近すると画面上に仮想の杭(AR杭)