AR施工支援で逆打ちが簡単に！LRTK導入で広がる現場DX

イントロダクション： 建設現場の生産性向上やミス削減を目指した「現場DX（デジタルトランスフォーメーション）」が近年注目を集めています。その中でも、AR（拡張現実）による施工支援は、大きな可能性を秘めた最新技術です。例えば、従来は人手と経験に頼っていた「逆打ち」作業（測量データを基に現場に構造物の位置を出す作業）も、ARと高精度測位技術を組み合わせることで格段に容易になります。しかも、今や特別な高額機材を使わずスマホと小型デバイスの組み合わせでこうした高精度ARを実現できるようになっています。 また、慢性的な人手不足やベテラン技術者の高齢化といった課題も抱える中、測量や墨出しといった作業をデジタル技術で効率化するニーズが高まっています。本記事では、AR施工支援ツール「LRTK」を導入することで、逆打ち施工がどのように簡単になり、現場DXが広がるのかを解説します。

逆打ちとは？従来施工での課題

「逆打ち」とは、設計図や測量データ上の座標を現地に正確に位置出しする作業のことです。建物の配置や構造物の施工位置を決定する重要な工程であり、一度誤れば取り返しのつかない重大なミスにつながります。そのため、逆打ちには高度な測量技術と多大な労力が割かれてきました。逆打ち作業が正確かつ迅速に行えるかどうかは、その後の施工全体の成否に直結するといっても過言ではありません。

しかし、従来の逆打ち施工には以下のような課題がありました。

• 専門技術者と機材が必要: トータルステーション等の測量機器を使った逆打ちは、測量士など専門技術者のスキルに依存していました。高価な機材のセッティングや操作が必要で、現場担当者自身が気軽に行えるものではありませんでした。

• 作業に時間と人手がかかる: 逆打ちには通常、2人以上の作業員が必要です（例：一人が測量機を操作し、もう一人がプリズムや標尺を持って位置を出す）。基準点からテープやチェーンで測り出す墨出しでは長い距離の測定や角度確認に時間を要し、天候や現場状況に左右されやすい問題もありました。

• 複雑な計算とミスのリスク: 座標計算やトラバース計算など、正確な位置出しには綿密な計算が不可欠です。一昔前は手計算が主流で、計算ミスがあれば位置ズレにつながりました。近年はCADやソフトで自動計算できるものの、それでも人為ミスや機器の読み違いによる誤差リスクはゼロではありません。

• 特殊な現場条件での困難: 急斜面や足場の悪い場所、あるいは硬いコンクリートで杭が打てない箇所など、物理的な制約で印を付けにくい現場もあります。従来法ではこうした場所で正確に位置出しするのは難しく、やむなく近似位置で妥協するケースもありました。

以上のように、逆打ちには従来多くの手間とリスクが伴っていました。

AR施工支援がもたらす逆打ち作業の革新

上記の課題を解決する切り札として期待されているのが、AR施工支援です。AR技術を活用すれば、タブレットやスマートフォン越しに現実の風景にデジタルな設計情報を重ねて表示できるため、図面上の点を実際の現場で“見える化”できます。

具体的には、AR対応の施工支援アプリを使うと、カメラを通した現場映像に仮想の目印やモデルを表示できます。逆打ち作業においては、従来紙の図面と測量機で行っていた位置出しを、ARのガイドに従って行えるようになります。例えば、設計上の杭打ち位置や構造物の基礎位置に、スマホの画面上で仮想の杭やマーキングを投影し、その場所まで誘導してくれる機能があります。作業者は画面上に示された矢印やターゲットマーカーの方向に歩くだけで、目的のポイントに到達できます。言い換えれば、熟練の測量員がいなくても、若手の担当者がスマホ片手に現場へ向かい、画面の指示通りに動くだけで正しい位置にマーキングできるということです。

AR施工支援の利点は、直感的な理解と作業の簡素化にあります。数字や図面上の座標を追わなくても、現地で見る景色に直接「ここに杭を打つ」「この線に沿って掘削する」といった指示が表示されるため、経験の浅いスタッフでも迷わず作業できます。さらに、ARなら実物の杭を打ち込めない場所でも仮想の杭（AR杭）を表示できるため、急傾斜地や舗装上など従来印を付けにくかった場所での位置出しも可能になります。実際、急峻な法面の補強工事でもLRTKのAR杭機能を活用し、安全な位置から仮想杭を投影して所定箇所をマーキングした例があります。物理的に杭が打てない環境下でも、ARならではの方法で逆打ち作業を実現できるのです。これにより、逆打ち作業の自由度と正確さが飛躍的に向上します。

ただし、ARによる施工支援を精度良く行うには位置情報の高精度化が不可欠です。通常のGPSでは誤差が数メートル生じるため、これでは仮想杭の位置が実際と大きくずれてしまい実用になりません。そこでカギとなるのがRTK（リアルタイムキネマティック）測位技術です。RTKは基地局と移動局でGNSS測位の誤差をリアルタイムに補正し、数センチ以下の誤差に抑える仕組みです。従来はドローン測量やマシンガイダンスで活用が進んできた技術ですが、最近では超小型化により作業員が直接携行できるようになりました。ARとRTKを組み合わせることで、デジタル情報を現実空間にピタリと一致させることが可能となり、まさに逆打ち作業のDXを実現できます。なお、AR技術は逆打ち以外にも鉄筋の配筋チェックや地下埋設物の可視化など、様々な施工場面で活用が広がっています。

LRTKとは？スマホで使えるRTK×ARツール

こうしたRTK×ARによる施工DXを現場で手軽に実践できるソリューションがLRTKです。LRTKは、超小型のRTK-GNSS受信機と専用アプリ、そしてクラウドサービスから構成されるツールで、スマートフォンやタブレットと組み合わせて使用します。具体的には、iPhoneやiPadの背面にパチッと装着できる手のひらサイズのGNSSアンテナデバイスと、直感的に操作できるスマホアプリがセットになっています。これ一台をスマホに取り付けるだけで、通常は数百万円クラスの測量機器が必要だったセンチメートル級測位とAR表示が誰にでも可能になります。

LRTKを使えば、現場監督から職人まで1人1台のスマホで高精度な位置出し・計測が行えるようになります。煩雑な初期設定やケーブル接続も不要で、デバイスを装着しアプリを起動すれば自動で高精度測位がスタートします。高精度の衛星測位を支えるために、LRTKは日本の準天頂衛星システム（みちびき）が配信する補強信号や、インターネット経由の基地局ネットワーク（ネットワーク型RTK）に対応しており、山間部や通信圏外の現場でも安定してセンチ級測位が可能です。内蔵バッテリーで電源も長時間駆動でき、まさにポケットに入る万能測量機と言えるでしょう。また、LRTKはカメラやセンサーを駆使した3D点群スキャン機能も備えており、現地で盛土量を計算したり出来形の3次元記録を取得するといった高度な活用も可能です。 なおLRTKシリーズには、このスマホ装着型「Phone」のほか、ヘルメット取付型や現場据え置き型のプロモデルも用意されており、用途に応じて選択可能です。すでに多数の建設会社で導入が進んでおり、現場の新たな必須ツールになりつつあります。

逆打ち施工を効率化するLRTKの4つの強み

LRTKを導入することで、逆打ち作業を含む現場施工管理に次のような強み・メリットがもたらされます。

• センチメートル級のRTK測位で精度確保: LRTKは誤差数センチ～数ミリの高精度な位置測位を実現します。実際の検証では、単独測位で10～20mm程度の誤差が、測位データを平均化することで8mm以下にまで収まるケースも報告されています。これにより、AR上に表示される仮想の杭や設計モデルの位置が現実と食い違う心配がありません。常に正確なグローバル座標でポイントを示せるため、逆打ちの位置出しや出来形管理の精度が飛躍的に向上します。

• ARナビゲーション機能で直感サポート: 専用アプリのAR機能により、設計図上の点やラインを現地映像に投影し、作業者を所定の位置に誘導できます。矢印やターゲット表示で次の設置箇所まで案内してくれるため、熟練者でなくとも迷わず正確に杭打ちや墨出しが行えます。作業者が移動しても、自分の位置をGNSSで常に補正しているため、ARの表示がずれにくく安定している点も大きな特徴です。また、3Dモデルをそのまま現場に重ねて表示し、完成イメージを関係者と共有するといった使い方も可能です。

• スマホ操作で誰でも簡単: LRTKは日常使い慣れたスマートフォンで動作するため、特別な研修を受けなくても直感的に扱えます。また、手元の既存スマホを活用できるため専用機器を新規に揃える必要がなく、低コストで現場に普及させやすいという利点もあります。アプリ上のボタンを押すだけで測点の記録や写真撮影ができ、タップ操作で設計データのダウンロードやAR表示も自在です。専門の測量チームに頼らずとも、現場の担当者自らがその場で必要な測位・確認作業を完結できるようになります。

• クラウド連携で現場DX推進: LRTKで取得した座標データや点群、撮影写真などは、自動でクラウドにアップロードされ、オフィスのPCや他の端末と即時に共有されます。現場で位置出しした点の座標はそのままクラウド上の地図にプロットされ、事務所にいながらリアルタイムに進捗把握が可能です。逆に設計担当者が最新のBIM/CIMモデルをクラウドに用意すれば、現場側ですぐにダウンロードしてAR表示し施工に反映できます。権限管理や履歴管理の機能も備わっており、データの改ざん防止や安全な情報共有も安心です。例えば、写真には撮影位置の座標やカメラの向きが自動記録されるため、後日同じアングルで比較点検するといった用途にも活用できます。このようにクラウドを介したデータ一元化によって、現場とオフィスが常に同期し、判断のスピードアップと手戻り削減に繋がっています。

LRTK導入がもたらす効果と現場DXの広がり

LRTKを現場に導入することで、逆打ち作業そのものの効率化・高度化はもちろん、周辺業務も含めた多方面での効果が期待できます。実際にLRTKを導入した現場からは、「測量待ちが解消されて工期短縮に繋がった」「若手だけで墨出しが完了できた」「設計変更にも即応できた」といった喜びの声が上がっています。

以下に主な効果をまとめます。

• 作業効率の大幅向上: 一人でも測量・位置出し作業が可能になるため、人員待ちや段取りの時間が減り、施工サイクルがスピードアップします。例えば、従来半日を要した墨出しがわずか1時間程度で完了します。熟練者の手が空くことで他の重要業務にリソースを充てられ、人手不足の解消にも寄与します。

• 精度と品質の向上: 常に正確な位置情報に基づいて施工できるため、ミスによる手戻りややり直しが激減します。出来形のばらつきが減り、品質検査もスムーズになります。また、設計通りに施工できていることをデータで示せるため、検査や発注者確認もスムーズになり、信頼性の高い品質管理が可能です。誤差蓄積を気にせずに済むため、安心して施工を進められます。

• 安全性の改善: 危険な場所での測量作業時間を短縮でき、作業員の負担とリスクを減らします。例えば車道脇や傾斜地での墨出しも短時間で済ませられるため、交通事故や転落事故のリスク低減につながります。

• データ活用と情報共有の促進: 現場で得た測量データや写真がそのまま電子データで蓄積されるため、報告書作成や出来形管理資料の作成が簡素化します。クラウド上で過去の施工データや点検記録と照合することで、将来的なメンテナンス計画にも役立ちます。また、帳票類のペーパーレス化にもつながります。現場と本社・発注者間で情報を即共有できることで、意思決定のスピードが上がり、現場DXがさらに加速します。

• 技術継承と人材育成への寄与: 直感的なAR支援により、若手や未経験者でも要点を理解しながら作業を進められるため、OJT（現場教育）の質が向上します。ベテランの「勘と経験」に頼っていた部分をデジタルツールで可視化することで、属人化の解消と技術の平準化にもつながります。

まとめ：逆打ちDXで現場が変わる

逆打ち作業のデジタル化は、建設現場DXの入口とも言える取り組みです。LRTKのようなRTK対応のAR施工支援ツールを導入すれば、これまで煩雑だった位置出し作業が劇的に簡素化され、誰でも正確に行えるようになります。これは単に一工程の効率化に留まらず、施工全体の生産性向上と品質確保に直結し、ひいては企業の競争力強化にも寄与するでしょう。これは国土交通省が推進するi-Construction（ICT施工）の潮流にも合致しており、今後ますます普及が進むでしょう。

今や多くの現場で“一人一台のスマホで測量”という新しいスタイルが現実のものとなりつつあります。実際、SNS上でもLRTKを活用した一人測量の報告が数多く見られ、その精度と利便性に対する驚きの声が広がっています。ARとRTKの力で「現場をそのまま図面にし、図面をそのまま現場に持ち込む」感覚を体験できるLRTKは、現場DXを推進する心強いパートナーです。今後はARグラス一体型のソリューションなども登場が予想されますが、現時点ではスマホ＋小型RTKデバイスという手軽さと精度を兼ね備えた組み合わせが最も実用的です。逆打ちが簡単になることで生まれた余裕を、他の付加価値業務に振り向けることもでき、結果として現場全体のDXが一層広がっていきます。

従来の常識にとらわれないデジタル施工管理へと一歩踏み出し、AR施工支援による逆打ちDXをぜひ体感してみてください。現場の未来が大きく変わるはずです。