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海外プロジェクトでのRTK運用の課題と解決策

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

海外での建設・測量プロジェクトにおいて、RTK(リアルタイムキネマティック)測位は施工精度や効率を左右する重要な技術です。日本国内では電子基準点網(CORS)やVRS方式のネットワーク型RTKサービスが整備され、安定したセンチメートル級測位が比較的容易に利用できます。しかし、海外の現場では日本ほど通信インフラが整っておらず不安定なケースが多々あり、同じようにRTKを運用しようとしても様々な壁に直面します。本記事では、海外プロジェクトでRTK測位を活用する際によく直面する課題と、その解決策について詳しく解説します。通信環境の制約への対処方法を中心に、基地局設置のポイントや代替技術、機材の選定、さらには新たな測位ソリューションまで、包括的に紹介します。


通信インフラ未整備によるRTK運用上の課題

海外の地方部や新興国のプロジェクト現場では、通信環境の未整備や不安定さがRTK運用の大きな障害となります。具体的な課題として、以下のような点が挙げられます。


ネットワーク型RTK(VRS)が利用できない地域: 日本ではVRS(バーチャル基準点)方式の補正サービスを使えば、自前で基地局を用意せずにRTK測位が可能です。しかし海外では、国によっては全国的なGNSS基準局ネットワークが整備されておらず、公共や民間のVRS補正サービスが利用できない地域も少なくありません。そのため現地でRTKを使うには自前で基地局を設置する以外に方法がない状況が生じます。

基地局の設置・運用の難しさ: 自前で基地局を用意する場合、まず既知点となる基準点座標の確保が課題です。信頼できる既知座標が無ければ、高精度な測位は困難になります。さらに基地局用GNSS受信機の設置場所の確保や機材の運搬・設置も手間がかかります。現場が都市部から離れた僻地であれば、基地局の安定稼働に必要な電源の確保(長時間稼働には外部バッテリーやソーラーパネルが必要になる場合も)、盗難防止策、現地スタッフによる機器管理なども考慮しなければなりません。また、基地局と移動局の距離が長くなると精度が低下するため、広範囲の測量では適切な配置や複数設置も検討が必要です。

ローカル無線通信の制約: 基地局を設置した場合、移動局(ローバー)との間でRTK補正情報を伝送する通信手段が必要です。一般的にはUHF帯などを使った特定小電力無線やデジタル簡易無線による電波通信、もしくは携帯電話網を利用したインターネット経由のNtrip配信などがあります。しかし各国で電波利用の法律・規制は異なり, 日本で使用している無線機器や周波数帯がそのまま海外で使えない場合があります。例えば、国によってはRTK用の無線送信には許可やライセンスが必要だったり、使用可能な周波数帯が限定されていたりします。無線が許可されたとしても、届く範囲にも限界があり、地形や障害物によっては通信が不安定になります。現地で無線通信が難しければ、インターネット経由で補正データを送るしかありませんが、そもそも携帯通信が圏外であればそれも叶いません。

データ通信量・回線品質の問題: 仮に現地で携帯データ通信(モバイルネットワーク)が利用できても、通信品質やコストの問題があります。RTKはリアルタイムで毎秒ごとに補正データを送り続ける必要があるため、安定して低遅延の通信回線が求められます。山岳地帯や途上国のインフラ未整備地域では、通信速度が遅かったり電波が断続的に途切れたりして、RTKの「固定解(Fix解)」が維持できなくなることがあります。頻繁に解が浮いたり(Float解になったり)失陸すれば、測位作業に大きな支障をきたします。また海外ローミングや現地SIMを利用する場合、データ通信量に応じた料金や上限が設定されていることがあり、長時間のRTK運用でコスト増大や速度制限にかかるリスクもあります。


以上のように、海外では通信インフラの未整備・不安定さから「補正情報をリアルタイムに届ける」というRTKの前提条件自体が満たしにくく、国内と同じ手法が通用しない場面に直面しやすいのです。


通信依存度を下げるための代替技術

通信環境が整っていない地域で高精度測位を行うには、リアルタイム通信への依存を減らす技術や運用を活用することが有効です。海外の現場で役立つ、通信不要または通信量の少ない測位ソリューションとして次のような方法があります。


SBAS(衛星航法補強システム)の活用: SBASは静止軌道の衛星から広域に渡って測位補強信号を提供するシステムで、代表的なものに北米のWAASや欧州のEGNOS、日本のみちびきによるMSASなどがあります。SBAS信号を受信することで、単独測位よりも誤差を大幅に低減でき、数メートルから1メートル未満程度の精度向上が見込めます。RTKほどのセンチメートル精度には及びませんが、通信インフラがない環境でも無料で利用可能な衛星配信の補正情報として有用です。高精度を要求されない予備測量や機械誘導の概略位置決めなどではSBASで代替できる場合もあります。

準天頂衛星によるCLASの活用: 日本が運用する準天頂衛星システム(QZSS)のみちびきでは、センチメータ級測位補強サービス(CLAS)が提供されています。CLASは日本国内向けのサービスですが、アジア・オセアニアの一部地域でもみちびきの衛星補強信号を受信できる場合があります【※】。CLAS対応のGNSS受信機を用いれば、地上のインターネットや無線通信に頼らず衛星から直接センチメートル級補正情報を受信し、高精度測位が可能です。例えば、日本の建設企業が東南アジアで測量を行うケースでは、現地に基準局網が少なく通信網も脆弱なため、みちびきの高精度補強信号(CLASや実証中のMADOCAなど)を活用して精度検証が行われた事例もあります。CLAS単独でRTK並みの精度を得るには受信機側の対応や測位演算時間も必要ですが、少なくとも通信圏外での測位手段として非常に心強い選択肢となります。

PPK(ポストプロセスキネマティック)の利用: 測位結果をリアルタイムで得る必要がないのであれば、事後解析による高精度測位(PPK)も有効です。PPKでは、移動局で観測したGNSS生データを記録しておき、後から基地局データと組み合わせて補正演算することで高精度な測位解を得ます。現地では通信が不要なため、補正情報をリアルタイム伝送できない環境でもフル精度の結果を得ることができます。例えば一日の測量作業後に事務所でデータを処理すれば、リアルタイムRTKと同等のセンチメートル級測位結果を算出可能です。欠点としては現場で即座に座標がわからないため、その場で位置出しや機械制御を行う用途には使えないものの、基準点測量や出来形管理の検証などリアルタイム性を要しない業務にはPPKで十分に対応できます。また基地局側もデータさえ記録しておけばよいため、通信が不安定な場合のバックアップ策としてPPK用にログを取っておく運用も考えられます。


*(※注:CLASは日本周辺向けサービスであり、受信範囲には限りがあります。海外の適用地域では電離層モデルの差異などもあり精度や可用性は日本国内ほど保証されない点に留意が必要です。)*


海外でRTKを確実に運用するための準備と対策

上記のような代替策も踏まえ、海外プロジェクトでRTK測位を運用する際には事前の入念な計画と対策が欠かせません。以下に、現地でのRTK運用を円滑にするための主な準備事項と対処法をまとめます。


現地の通信事情と法規制の確認: プロジェクトの準備段階で、現地の通信インフラ状況を調査しましょう。携帯電話ネットワークのカバレッジやインターネット回線の有無、使用可能な周波数帯などを事前に把握します。あわせて、RTK用無線機器の持ち込み・使用に関する現地法規制も確認が必要です。国によっては無線送信機器の免許取得が必要だったり、電波出力や帯域に制限があります。必要であれば現地の通信当局への許可申請や、合法的に使える無線モデムの調達を行います。通信手段については複数のオプションを用意するのが安全策です(例:現地SIMによるインターネット接続+許可取得済みの無線機を両方準備するなど)。

基地局と通信手段の事前準備: VRSが使えない地域では、自前の基地局を運用する計画を立てます。日本から高精度GNSS受信機を持ち込む場合は、事前に現地で動作周波数の設定変更が必要か確認します(無線モデム内蔵型の場合など)。基地局に使用する予定の三脚やポール、電源装置についても現地で調達困難なものは日本から持参します。基準点座標をどう確保するかも重要です。既知の測量基準点が近くにない場合、長時間の静的観測を行い事後計算(PPP解析など)で基準局の座標を決定する方法があります。あるいは現地測量士に依頼して既知点を設置してもらうことも検討しましょう。通信方法についても、基地局とローバー間で用いる無線の電波到達距離をテストしたり、インターネット経由の場合はNtripサーバの設定を現地入り前に検証したりします。衛星電話やオフライン環境下での運用も視野に入れ、最悪通信が途絶しても測位作業を継続できるバックアップ策(前述のPPK運用や別途ハンディGPSでの測位など)を用意しておくと安心です。

GNSS機材の選定と設定: 海外での使用を踏まえて、GNSS受信機やアンテナはマルチGNSS・マルチ周波数対応の高性能なものを選びましょう。GPSだけでなくGLONASS・Galileo・BeiDouなど多くの衛星を捕捉できる機種であれば、電波遮蔽がある環境でも衛星数を確保しやすくなります。さらにL1/L2の他にL5やL6帯など新しい周波数に対応した受信機であれば、SBASやCLASといった衛星補強信号の受信も可能です。将来的な運用拡張も見据えて、これら最新技術に対応した機材を選ぶ価値は高いでしょう。また、受信機には現地の測地系への変換機能や座標出力設定も備わっているか確認してください(国ごとに測地系や座標系が異なるため)。現場に持ち込む前に最新ファームウェア適用や設定のチェックを行い、必要なアクセサリ類(測量用ポール、気泡水準器、ケーブル類、予備バッテリー等)も不足なく揃えておきます。

運用体制と人員のスキル向上: 技術的な備えと同時に、現地でRTKを運用する人員の体制づくりも重要です。日本から派遣する測量技術者には、使用機材だけでなく現地の通信環境や言語への適応力も求められます。事前にシミュレーション訓練を行い、基地局設営からトラブルシューティングまで一通り実践できるようにしておきます。また現地採用のスタッフや協力会社の技術者にも、可能であればRTK運用の基本を教育し、サポート要員になってもらうと心強いでしょう。さらに、日々の測位結果を日本本社と共有したり技術支援を仰げるよう、クラウドを使ったデータ共有基盤やリモートサポート体制を整えておくと、海外で孤立せずに品質管理ができます。定期的な点検とフォローアップも欠かさず、問題発生時には迅速に原因究明と対策を実行できるチーム体制を構築しておきましょう。


上記のような事前準備と対策を講じておけば、通信インフラが万全でない海外の現場でもRTK測位を可能な限り安定して運用できます。言い換えれば、「日本と同じやり方が難しいなら、それに見合った手間と創意工夫でカバーする」ことが重要なのです。


スマホ+小型GNSS受信機で実現するLRTK簡易測量

最後に、近年登場した新しいソリューションとしてスマートフォンと小型GNSS受信機を組み合わせたRTK測位について紹介します。これは日本のスタートアップ企業が開発した「LRTK」と呼ばれるコンセプトで、スマホに装着する手のひらサイズのRTK-GNSS受信機を用いることで、誰でも手軽にセンチメートル級測量ができるようにしたものです。スマホ側の通信機能や処理能力と、外付けGNSS受信機の高精度測位機能を融合することで、海外展開においても現場のハードルを下げる現実的な解決策として注目されています。LRTKのようなソリューションには、海外で直面しがちな課題を解決に導く次のようなメリットがあります。


機動性と手軽さ: スマホ+小型受信機という組み合わせは非常にコンパクトで軽量です。専用の測量機を持ち歩く必要がなく、受信機をスマホに装着するだけで準備完了です。現場を移動しながらの測点観測も片手でこなせ、機材設置の時間と手間を大幅に削減できます。海外の広い現場や複数地点を転々とする調査でも、携行性の高さが強みになります。

通信環境への柔軟な対応: 小型GNSS受信機側で高精度補正情報を取得できる仕組みがあり、通信インフラへの依存度を下げられます。例えば日本向けのLRTK端末ではみちびきのCLAS信号を直接受信できるモデルが提供されており、携帯圏外の場所でも単独でセンチメートル精度を出せます。海外でも携帯ネットワークが利用できる地域ではスマホの通信を使ったネットワークRTKに切り替えることも可能で、このように状況に応じてオフライン/オンライン双方で運用できる柔軟性を備えています。

低コストでの普及: 従来のRTK測量機材に比べ、スマホを活用するLRTKシステムは導入コストを抑えられる傾向にあります。高精度GNSS受信機部分が小型化・低価格化してきたことで、「一人一台」を配備しても予算的な負担が小さく、現場スタッフ全員が必要なときにいつでも測量できる環境を整えやすくなります。特に海外展開では機材を大量に持ち込むことが難しい場合もありますが、スマホとポケットサイズ受信機であれば人数分を手軽に用意して持参することも現実的です。

データ利活用とDX効果: スマホと連携することで、現場で取得した高精度な位置情報を即座にクラウドにアップロードしたり、共有したりできる点も見逃せません。測位データやその場で撮影した写真・メモをクラウド経由で日本のオフィスと共有すれば、離れた海外現場の状況をリアルタイムに把握・指示することができます。またスマホアプリ上で取得データをもとに拡張現実(AR)による位置誘導や確認を行う機能も実装可能で、従来は専門機器が必要だった点群計測や杭打ち位置出しなども簡易にこなせるようになります。こうしたデジタルトランスフォーメーション(DX)の効果によって、海外の現場管理・施工管理の精度と効率を飛躍的に向上させることが期待できます。


このようにLRTK式のスマホ測量は、通信インフラの問題で悩まされてきた海外RTK運用に対する新たな解決策となり得ます。実際に日本国内では、山間部の工事現場や災害対応の現場で携帯圏外でもLRTKデバイスが威力を発揮した例が報告されています。海外でも今後、対応衛星サービスさえ整えば同様のアプローチで通信環境に左右されない測位が可能になるでしょう。何より、現場技術者が日常的に使い慣れたスマホをプラットフォームにすることで技術の民主化が進み、熟練者でなくとも精度の高い測量が行える点は大きな利点です。


まとめ

海外プロジェクトでのRTK運用は、日本国内とは異なる様々なチャレンジが伴います。最大のハードルである通信インフラの未整備という問題に対しては、入念な事前準備と代替技術の活用で乗り越えることが可能です。基地局設営や無線通信の工夫、SBAS・CLAS・PPKなど通信依存度の低い手法の併用によって、通信環境に制約がある地域でも徐々に安定した高精度測位が実現できるでしょう。そして、新世代のスマホ+小型GNSS受信機によるLRTKのようなソリューションは、海外展開におけるRTK測位の在り方を大きく変える潜在力を秘めています。低コストかつフレキシブルなRTK運用が可能になれば、従来は精度面で妥協していた海外の現場でも、測量・施工の品質向上が期待できます。ぜひ自社の海外プロジェクトにもこれらの対策と新技術導入を前向きに検討し、通信インフラの壁を乗り越えた効率的なRTK運用体制を築いてください。これまで困難だった場所でも、確かな測位技術がプロジェクト成功の力強い支えとなるはずです。


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LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

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