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初めてのRTK GPS導入完全ガイド:費用・手順から現場適用のコツまで

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この記事は平均10分30秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

目次

はじめに

RTK GPSとは?(高精度測位の概要)

RTK GPS導入のメリット

導入に必要な機材と準備

自前基地局方式 vs ネットワークRTK方式

導入にかかる費用

RTK GPS導入の手順(ステップ解説)

RTK GPSの現場適用のコツ

導入時の法的要件・注意点

LRTKによる簡易測量(新しいアプローチ)

FAQ


はじめに

建設測量や土木工事の現場では、従来のGPSによる測位では数メートルの誤差が生じてしまい、精度が不十分なケースがあります。そんな課題を解決する技術として注目されているのがRTK GPS測位です。RTK(Real Time Kinematic)を利用すれば、2台のGNSS受信機(基準局と移動局)による相対測位で誤差要因を打ち消し、数センチメートル以内の高精度な位置測定が可能になります。高精度な位置情報が現場で即座に得られることで、測量作業の効率化や施工管理の精密さ向上につながり、スマート施工(i-Construction)や精密農業など幅広い分野で活用が進んでいます。


本記事では、RTK GPSを初めて導入する方に向けて、基本的な仕組みから必要な機材、導入手順、費用、現場での活用ポイント、そして法的な注意点までを総合的に解説します。記事の後半では、従来の方法より手軽に高精度測位を実現できる新しいソリューションであるLRTKについても紹介します。初級~中級の測量担当者の方にとって、RTK GPS導入の具体的なイメージづくりに役立つ完全ガイドとなっています。


RTK GPSとは?(高精度測位の概要)

RTK GPS(リアルタイムキネマティック測位)とは、基準局(ベースステーション)と移動局(ローバー)の2台のGNSS受信機を使い、リアルタイムで位置を高精度に算出する測位方式です。単独のGPS測位では衛星信号の誤差により5~10m程度の位置ズレが発生しますが、RTKでは基準局を既知の正確な座標地点に設置し、そこが受信する衛星データとの誤差を算出して補正情報を生成します。この補正情報を移動局に送信し、移動局側で自分の測位結果に補正を適用することで、誤差要因を打ち消したセンチメートル級の精度を実現できます。


RTK測位のポイントは、両方の受信機が同じ衛星からの信号を受信しているため共通の誤差(衛星の時計誤差や電離層・対流圏の影響など)を相殺できる点にあります。結果として、相対測位により通常のGPSでは得られない高精度な位置座標をリアルタイムで算出できる仕組みです。言い換えれば、リアルタイムの差分補正GPSとも表現できます。


RTK GPS導入のメリット

RTK GPSを導入することで得られるメリットを整理してみましょう。


センチメートル級の高精度: 従来はミリ単位の精度を得るには長時間の静的観測やトータルステーションによる測量が必要でしたが、RTKなら短時間で数cm以内の精度を確保できます。境界測量や出来形管理など精度が求められる場面で威力を発揮します。

即時に位置を取得: リアルタイムで補正が行われるため、現地で測りたい点に移動局を持って行くだけでその場で座標が得られます。観測後にオフィスで計算するといった手間がなく、現場で即座に結果を確認できます。

効率的な作業と省力化: RTK測量は原理的に視通(測点間の直線視界)を必要としません。トータルステーションのように測点間の見通しや反射プリズムの設置を考慮する必要がなく、GNSS信号さえ受かれば障害物越しでも測定可能です。そのため、複雑な地形や構造物がある現場でも測量が容易になります。また、一人で移動局を持って歩くだけで測点を取得できるため1人測量も可能となり、人員削減や作業時間短縮につながります。

安全性の向上: 測量対象が道路上や高所の場合でも、GNSSであれば離れた場所から測位できるため危険な場所への立ち入りを減らせます。高所にターゲットを設置する必要がないなど、安全面のメリットもあります。

デジタル連携が容易: GNSS受信機とコントローラー(データ収集端末)が取得する座標データは、測量CADやGISへの取り込みがスムーズです。紙の野帳に手書きで記録する手法と比べ、データの直接入力によるヒューマンエラー削減や即時の図面化が可能になり、施工のデジタル管理に直結します。


以上のように、RTK GPSの導入は精度・速度・効率の面で大きな利点があります。特に国土交通省が推進するi-Construction(ICTを活用した建設生産性向上)の流れも追い風となり、高精度GNSS測量の需要は今後ますます高まるでしょう。


導入に必要な機材と準備

RTK GPSを運用するためには、いくつかの機材と事前準備が必要です。以下に基本的な要素を挙げます。


GNSS受信機(基地局用と移動局用): 高精度測位に対応したGNSS受信機が最低2台必要です。両受信機共にRTKに適したデュアル周波数以上の機種(L1/L2やL5対応など)で、GPSだけでなくGLONASSやGalileo、みちびき(QZSS)などマルチGNSSに対応していることが望ましいです。一般的な測量用GNSSアンテナもそれぞれに用意します。

基準局の固定用具: 基準局となる受信機は、既知の点にしっかり固定して設置します。専用の三脚やポール、ブラケットなどで動かないよう据え付け、アンテナ高(地面からアンテナ中心までの高さ)を正確に測定して記録します。

移動局の携行用具: 移動局側は、作業員が持ち運びながら各測点を測ります。一般的には高さ2m程度の測量用ポールにGNSSアンテナを取り付け、ポール下部には気泡管(水準器)を備えて常に垂直を保てるようにします。場合によっては移動局を背負子や車載に据えるケースもありますが、多くは手持ちのポールスタイルです。

通信手段(補正情報伝送): 基準局で計算した補正情報をリアルタイムに移動局へ届ける通信手段が必要です。代表的なのは無線モデムまたはインターネット経由のNTRIP通信です。無線の場合、UHF帯の業務用無線機や免許不要の特定小電力無線(920MHz帯)などを用いて、基準局⇔移動局間で直接電波を飛ばします。NTRIP方式では、基準局をインターネットに接続して補正データを配信し、移動局は携帯電話回線などでネット経由でそのデータを受信します。NTRIPを利用する場合は、データ配信サーバー(NTRIPキャスター)のアドレスやログイン情報などが必要になるため、あらかじめ補正情報サービスの契約とアカウント取得を済ませておきます。

電源・バッテリー類: GNSS受信機や無線機を動作させる電源も用意します。現場では携行できるバッテリーが主流で、バッテリー残量が不足すると測量続行が困難になるため容量に余裕を持たせます。移動局用には携帯端末(スマートフォンやタブレット等)も使う場合、そちらの充電も確保します。

既知点座標の把握: 基準局を設置する地点の正確な緯度・経度・高さ(標高または楕円体高)の値が必要です。公共測量であれば国土地理院の基準点(例えば電子基準点や三角点)の座標値を用います。任意の地点に設置する場合は、事前に長時間の静的測位や別のRTK測位でその座標を決めておくか、測量後に既知点へ平行移動(ローカライゼーション)する前提で概略値を設定します。


以上が基本的な準備物です。簡単に言えば、「基準局用GNSS受信機+移動局用GNSS受信機」「両局を繋ぐ通信手段」「基準局の正確な座標情報」の三点セットがRTK測量開始の要件となります。


自前基地局方式 vs ネットワークRTK方式

RTKによる補正情報の入手方法には、大きく分けて以下の二通りがあります。


自前に基準局を設置して運用する方式(自前基地局RTK)

既存の基準点ネットワークを利用して補正情報を受け取る方式(ネットワークRTK)


それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較してみましょう。


● 自前基地局方式の特徴: 現場やその近隣に自分たちで基準局用GNSS受信機を設置し、無線で移動局に補正情報を送信する方法です。例として、工事現場で自前RTKを行う場合、現地の既知点(四等三角点など)に1台目の受信機を固定し、作業者は2台目の受信機(移動局)を持って測量します。メリットとして、基準局と移動局を直接通信で繋ぐため外部の通信インフラに依存しない点が挙げられます。山間部や携帯電話圏外の現場でも、無線の届く範囲内であればRTK測位を継続できます。また、一度自社で基準局を導入してしまえば外部サービスの利用料が不要になり、長期的に頻繁にRTK測量を行う場合はコスト面で有利になる場合もあります。複数の移動局を同時運用する際も、1つの基準局からまとめて補正情報を送れるため、台数分の追加費用が掛からないのも強みです。さらに、基準局を既知点に設置することで、常に安定した精度で測位でき、基準局と移動局の距離(基線長)を短く保てるため誤差が小さく高精度を維持できます。デメリットとしては、初期導入のハードルが高い点が挙げられます。基準局用の受信機・アンテナ、無線機器、三脚・固定具、バッテリーなど一式の機材を揃える必要があり初期投資が大きくなります。また、機材のセットアップや基準点の管理など専門知識も要求されるため、機器に不慣れな方には導入時の手間を感じるでしょう。さらに、免許制の無線を用いる場合は無線局の申請や免許取得も必要です。移動範囲が広域に及ぶ場合は基準局1台ではカバーしきれず、逐次据え直す手間も発生します。


● ネットワークRTK方式の特徴: 国土地理院などの電子基準点ネットワークや民間のVRSサービスなど、既設の基準局網からインターネット経由で補正情報を受け取る方法です。メリットとして、必要な機材が移動局側の受信機のみと最小限で済み、現地でのセットアップが簡単です。初めてRTKを使う場合や測量機器の扱いに不慣れな方でも導入しやすい方式と言えます。電源を入れてサービスに接続すればすぐに補正情報が得られる手軽さから、短時間で終わる測量やスポット的な高精度測位には特に有効です。また、携帯電話の電波が届くエリアであれば広範囲に移動しながらでも継続して補正を受け取れるため、移動しながらの測量や複数現場を渡り歩く業務にも適しています。デメリットとして、外部サービスを利用するためのランニングコストが発生する点があります。多くの場合、ネットワーク型RTKサービスは月額料金や利用ライセンス料がかかり、長期間利用し続けるとコスト累積が大きくなります。特に複数台の受信機を同時に使う場合、それぞれに契約が必要なケースもあり、台数が増えるほど費用負担も増えがちです。また、サービス提供エリアの制約も留意が必要です。日本国内では全国をカバーする基準点ネットワークサービスがありますが、地域によっては一部対応していない場所もあります(離島や海外では利用可能なネットワークRTKが限定的な場合も)。さらに、サービス事業者によって基準にしている測地系(座標系)や高さ系が異なることがあり、得られた座標を業務で使う座標系に合わせるための変換作業が必要になる場合もあります。外部サービスに依存する都合上、サーバーメンテナンス等で一時的に利用できないリスクや、通信圏外では使えないといった制約も挙げられるでしょう。


● 初めて導入するならどちらが手軽?: 一般的に、初期導入の簡単さという点ではネットワークRTK方式に軍配が上がります。機材が少なく設定もシンプルなため、特に「まずは試してみたい」という初心者にはネットワーク型が手軽です。一方で、通信環境に左右されずどこでも使えるという気楽さでは自前基地局方式が優れています。山奥など通信インフラが無い環境では自前基準局を用意するしかなく、この場合は自前方式が唯一の解決策です。また、毎日のように同じ現場で測量を行う場合には、初めに基準局を設置してしまえばその後は自前の安定した基準で繰り返し使えるため、長期的には自前方式の方が「楽」に感じられる場合もあります。結論として、現在の主流は「最初はネットワークRTKで手軽に始め、必要に応じて自前基準局も検討する」という二段構えです。まずサービスを活用してノウハウを蓄積し、利用頻度が増えてコスト面や運用メリットが見込める段階で自前基地局を導入する、という流れが合理的でしょう。


導入にかかる費用

RTK GPS導入時の費用は、選択する方式や機器構成によって大きく異なります。ここではおおまかなコストの目安を解説します。


機材購入費: 従来型の測量用GNSS機器(有名メーカー製のデュアル周波数受信機セットなど)は、基地局・移動局一式で数百万円規模の初期投資となることが一般的でした。高性能なアンテナやコントローラー(データ収集機)、無線モデム類まで含めると相応の高額です。しかし近年は、低コストなGNSSチップや簡易型の高精度受信機も登場しており、比較的手頃な価格帯(数十万円程度から)で導入できる機材も増えてきました。例えば移動局のみでネットワークRTKを利用する場合、高精度GNSS受信機1台と対応アプリ等を揃える費用だけで済み、100万円以下で収まるケースもあります。逆に自前でフルセットを揃える場合は、受信機2台分+周辺機器で200~300万円以上の規模を見込んでおく必要があります。

通信環境の費用: ネットワークRTK方式を取る場合、補正情報サービスの利用料が発生します。こちらは提供会社や契約内容によりますが、月額数千円から数万円程度が目安です。例えば年間契約で数十万円といったコスト感のサービスもあり、長期間利用し続けるとトータルの費用負担が蓄積します。一方、自前基地局方式で無線通信を使う場合は外部サービス料は不要ですが、免許申請が必要な無線機器を使う場合は無線局免許の取得費用や機器のメンテナンスコストがかかります。免許不要の特定小電力無線であれば維持費はほぼかかりませんが、届く範囲が限定的です。

教育・導入支援費用: 新しい測量機器を導入する際には、操作研修や技術者への教育コストも考慮されます。メーカーや販売店による講習を受けたり、試行期間を設けて習熟する期間も必要でしょう。社内研修の時間や、場合によってはマニュアル整備の手間も発生します。このような目に見えないコストも計画に含めておくと安心です。

トータルコスト比較: 長期的な視点では、自前基地局方式は初期費用こそ高いものの、頻繁に測量する組織では外部サービス料を支払い続けるより安くつく場合があります。逆に、スポット的・短期的なプロジェクトが中心であれば、高額な機材を購入するよりもネットワークRTKサービスを利用した方がコスト効率が良いでしょう。要は運用状況に応じた費用対効果で選択することが重要です。近年はスマートフォンを活用した低コストのRTKソリューション(後述のLRTKなど)も登場し、高精度測位の初期費用は確実に下がってきています。


※なお、この記事では具体的な商品名や価格の記載は控えていますが、各社から様々な価格帯のRTK対応機器が提供されています。導入に当たっては複数の選択肢を比較検討し、自社のニーズに合った機材とサービスを選ぶようにしましょう。


RTK GPS導入の手順(ステップ解説)

ここでは、RTK測量を始めるまでの一般的な流れをステップ形式で解説します。実際の機器や環境によって細部は異なりますが、導入の全体像を把握する参考にしてください。


基準局の設置・準備 RTK測位を開始する第一歩は、基準局となるGNSS受信機を現地に設置することです。基準点とする場所を選び(三角点や既知点があれば理想的)、受信機のアンテナを三脚などでしっかり固定します。アンテナ高を測定して入力し、基準局モードの設定を行います。続いて、その地点の正確な座標値を受信機またはソフトウェアに登録します。公共座標系の値が分かっている場合はその値を入力し、分からない場合は一旦概略値で設定して後でローカライズ調整することも可能です。基準局をインターネット接続する場合は、SIMカードやモバイルルーターでオンラインにし、NTRIP配信サーバーの情報(アドレス、ポート、マウントポイント、ログインID/PW)を設定して補正データ配信を開始します。無線で補正を飛ばす場合は、送信機側の周波数チャンネルや出力を設定し、移動局と連絡が取れる状態にします。基準局の衛星受信状態(受信衛星数やDOP値)も確認し、安定してデータを取得できていることをモニターします。

移動局の起動・接続 次に、移動局となるGNSS受信機を起動し、基準局からの補正情報を受信する設定を行います。移動局受信機もアンテナをポールに取り付け、必要ならアンテナ高を設定します。NTRIP方式の場合、基準局と同じキャスター情報を移動局側にも設定し、クライアント(Client)モードで接続します。移動局側の受信機または接続しているタブレット等で、補正データの受信状況を確認します(「Connected」等の表示や差分情報の受信インジケータが出る)。無線方式の場合は、移動局側の無線機を起動して基準局と同じチャンネルで受信待機させます。適切に設定できていれば、移動局受信機に次第に基準局からの補正が届き始めます。

RTK解(Fix解)の確立確認 補正データが移動局に届くようになったら、受信機が算出する解のステータスを確認します。最初は補正が無い状態のためSingle(単独測位)ですが、補正適用後しばらくするとFloat(浮動解)となり、最終的にFixed(固定解)へと解が収束します。固定解(Fix)とは、キャリア位相の整数解決がなされた状態で、センチメートル級の精度に到達したことを意味します。通常、空が広く開けた環境であれば数十秒~数分程度でFixになることが多いです。移動局の受信機やアプリ画面で「FIX」表示や精度指標(標準偏差)が良好な値になっていることを確認しましょう。解が安定して固定状態を維持できるかどうかが、RTK測位が正常に機能しているかを判断する重要なポイントです。

測点の測定作業 RTK固定解を得られたら、いよいよ目的の測点を測量していきます。移動局を持って測りたい各地点へ移動し、ポイントごとに座標を取得します。具体的な手順としては、測点の位置にアンテナ(ポール先端)を据えて静止し、数秒間その場で安定させます。十分に位置が安定したら、データコレクタやアプリの「観測開始」「ポイント記録」等のボタンを押してその点の座標を記録します。多くの機器では、数秒間の平均測位値を自動で計算して保存したり、瞬時値をそのまま記録したり選択できます。重要な点は常にポールを鉛直に保つことです。ポールが傾くとその分だけ座標に誤差が生じるため、測定時は気泡管を確認し垂直を維持します(最近では傾斜補正機能付きの受信機もあり、ある程度の傾きは自動補正されますが、基本的には垂直に立てるのが原則です)。複数の測点を巡測する際は、事前にポイント名や番号をリストアップしておき、現場で記録する際に名称と紐付けると整理が容易です。場合によってはアプリに測点リストをインポートし、選択しながら測ることで、後からどの点がどの座標か混乱しないようにすると良いでしょう。

結果の確認・保存 全ての必要な点の測量が終わったら、取得データの確認と保存を行います。まず、現場で可能であれば既知の基準点を改めて測定し、出てきた座標と本来の既知座標を比較してみます。測量の最初または最後に既知点を測ることで、システムの精度にズレがないか検証できます(数cm以内の誤差に収まっていれば良好です)。万一大きな差がある場合は、基準局座標の入力ミスや測地系の違いなどを疑い、設定を見直します。問題なければ、収集した全ての点のデータを安全に保存します。データコレクタを使用している場合は内部メモリに座標リストが保存されているはずなので、バックアップを取るかクラウド同期しておくと安心です。最後に機材の電源をオフにし、機器を撤収します。屋外作業後はバッテリーの充電や機器の清掃・点検も忘れず行いましょう。


以上がRTK測量の一連の手順です。初めての導入時には、各ステップで不明点が出てくるかもしれませんが、基本の流れを把握しておけば現場で落ち着いて対処できるはずです。


RTK GPSの現場適用のコツ

RTK測量を現場でスムーズに行うためのコツや注意点をいくつか紹介します。高精度を維持しトラブルを防ぐために、以下のポイントに気を付けましょう。


測位環境の確保: GNSS信号は上空の見通しが悪いと受信衛星数が減ったりマルチパス(反射)による誤差が発生したりします。基準局・移動局ともにできるだけ周囲を開けた場所に設置・測定することが肝心です。建物の谷間や樹木が繁茂した場所では固定解取得に時間がかかったり精度が不安定になるので、必要なら測点位置を少しずらす、測定時間帯を変える(衛星配置の良い時間を選ぶ)といった工夫をしましょう。特に高さ方向の精度は電離層の影響などで得にくい面があるため、余裕を持った観測が大事です。

基準局と移動局の距離: 基準局から離れすぎると、両局で共通の誤差要因であっても局所的な大気の違いなどで補正に残差が出やすくなります。一般に基線長は短いほど精度が良好です。数km程度以内であればほぼ誤差数cmに収まりますが、10km以上離れると固定解になるまで時間がかかったり安定度が下がる傾向があります。ネットワークRTKの場合は仮想基準点との距離が影響します。広範囲を測量する際は、必要に応じて現場の中心付近に自前基準局を据え直すか、エリアを分割して測ることも検討しましょう。

座標系と高さ系の取扱い: RTKで得られる座標は、基準局に設定した座標系に依存します。基準局に日本測地系(JGD2011など)の座標を入力していれば結果も日本測地系になりますが、仮にWGS84系の値を入れていればそのままの系で結果が出ます。納品や設計で要求される座標系・標高系と一致しているか常に確認しましょう。ネットワークRTKサービス利用時も、提供される座標が何系か(世界測地系の平面直角座標系○系 など)把握し、必要なら測点データに変換を施します。またGNSSで得られる高さは基本的に楕円体高であり、標高(正高、高さ基準)に換算するにはジオイドモデルによる変換が必要です。測量成果として標高が必要な場合は、国土地理院のジオイド高データを使って変換するか、基準点の既知標高と合わせ込む等の処理を行います。

機器の安定運用: GNSS受信機や無線機器のバッテリー残量には常に気を配りましょう。長時間の測量では予備バッテリーを携行し、寒冷地ではバッテリー容量低下に注意が必要です。機器のファームウェアやソフトウェアも最新版にアップデートしておくことで、既知の不具合を回避できます。測位中に受信機を不用意に動かしたりアンテナ周囲に人が立ちすぎると精度に影響することもありますので、測定中は安定保持を心がけます。

通信トラブルへの対処: NTRIP経由で補正を受ける場合は、現場の携帯電波状況にも注意します。圏外に入ると補正データが途切れ、解がFloatに戻ってしまいます。山間部ではポケットWi-Fiやスマホを高所に置いたり、場合によっては別キャリアのSIMカードを用意するなど電波確保に工夫が必要です。無線通信でも、見通し距離が遠すぎたり間に障害物があると通信切れが生じます。免許不要の特定小電力無線は出力が微弱なため実用上は見通し約1kmが限度です。範囲が広がる場合は中継器の設置や、出力の大きいデジタル簡易無線(要免許)に切り替えることも検討します。また、電波干渉にも留意しましょう。同じ周波数帯を使う他の機器が近くにあるとノイズ源になります。無線のチャンネル変更や、NTRIPであればテザリング方式をWi-FiからUSB接続に変えるなどで安定するケースもあります。

精度検証とトラブルシューティング: 現場に出る前に、機材一式の動作確認やテスト測位を行っておくことをおすすめします。特に導入初期には、既知点でRTK測位してみて誤差を確認するなど精度検証を実施しましょう。現場で「なかなか固定解にならない」「補正データを受信できない」といったトラブルに遭遇した場合、落ち着いて原因を切り分けることが大切です。衛星の受信状況が悪くないか(上空が開けた場所に移動する)、補正情報がちゃんと届いているか(移動局側でRTCМ受信の表示をチェック)、基準局と移動局で設定している測位システムや周波数が一致しているか、基準局座標の入力ミスはないか、など順番に確認します。それでも解決しない場合、一度機器を再起動して基準局→移動局の順で立ち上げ直すと改善することもあります。どうしても難しい場合は時間帯を変えて衛星配置条件が良くなるのを待つ、別の基準点データ(別サービス)に切り替えてみるなども有効です。典型的なトラブル例と対策については、後述のFAQでもQ&A形式で触れていますので参考にしてください。


導入時の法的要件・注意点

RTK GPSを導入・運用する際には、関連する法令や制度にも注意が必要です。以下、主なポイントを挙げます。


測量法と公共測量: 日本において測量業務は「測量法」に基づいて規制・運用されています。一般的な民間企業内での測量作業には特別な許可は要りませんが、国や自治体が成果を受け取る公共測量(例えば地図作成や公共事業に伴う測量)を実施する場合は、測量業者登録や測量士の配置、作業規程の遵守などが求められます。GNSSを用いた公共測量では、国土地理院が定めるガイドラインに沿って作業を行う必要があります。その一環として、使用するGNSS機器が国土地理院長の性能検定を受けた機種(いわゆる「1級GNSS測量機」に登録された機器)であることが推奨されます。ただし、これはあくまで公共測量等で高い信頼性が要求される場合の基準であり、一般の民間測量や工事現場の出来形管理などでは必ずしも1級機器でなければならないという訳ではありません。重要なのは、用途に応じて必要な精度と信頼性を満たす機器・手法を用いることです。社内利用の測量であっても、公式な図面や境界確定に関わる場合は測量士など有資格者の監督の下で行うことが望ましいでしょう。

周波数帯と電波法の遵守: 基準局から補正情報を飛ばすために無線通信を利用する場合、使用する無線機器が電波法上適法であることを確認する必要があります。日本では特定小電力無線(出力10mW以下の920MHz帯など)は免許不要で誰でも使用できますが、通信距離に限界があります。より遠距離に飛ばすための高出力無線(例えば351MHz帯のデジタル簡易無線や、UHF帯の1W以上の業務局など)を使う場合は、所管の総合通信局への免許申請が必要となります。無線局免許を取得するには無線従事者の資格が要る場合もありますので、自社にそのような知見がない場合は免許不要の通信手段(携帯回線や特小無線)を選ぶのが無難です。また、機器は技術基準適合証明(技適)を取得したものを使用し、不法無線局と見なされないようにしましょう。

測量成果の取り扱い: RTK GPSで取得した測量成果を公式な用途(登記や公共工事の納品成果)に使用する際は、その精度や手法が適切であるか自己点検する必要があります。例えば地籍調査や土地境界確定の測量では、ミリ単位の厳密さが要求されるため、GNSS測量だけでなくトータルステーション等と組み合わせて成果を検証することが一般的です。また、電子納品を行う場合は求められるデータ形式(国土地理院のSIMA形式など)に沿って座標を整理する必要があります。RTK導入後も、従来の測量知識や法規を軽視せず、道具が変われど測量の基本は維持することが大切です。

認証や基準適合: 前述の1級GNSS測量機のように、公的な機器認証がありますが、例えば最新のスマートフォン連携型GNSS受信機などは必ずしもこうした登録を受けていないことがあります。これはそれら機器の精度が不足しているという意味ではなく、登録に伴うコストや需要を考えてメーカーが申請していないだけの場合もあります。実際、未登録の簡易GNSS機器でも検証したら1級機器に匹敵する精度を持つ例もあります。ただし、公共測量に使う場合は原則登録機種を使うことが求められるため、公式業務では留意してください。一般の工事測量や出来形確認程度であれば、未登録機でも社内検証の上で十分活用可能です。


以上のように、RTK GPS導入には技術面だけでなく法令順守や制度面での配慮も必要です。幸い、多くの場合は常識的な範囲で注意を払えば問題なく運用できますが、もし不安があれば測量士等の専門家に相談しながら進めると安心です。


LRTKによる簡易測量(新しいアプローチ)

上記まで見てきたように、RTK測位を利用するには「自前の基準局を設置する」「外部のネットワークRTKサービスと契約する」という選択肢が一般的です。しかし近年、これらの手間をさらに削減し、より手軽に高精度測位を実現する新しいアプローチも登場しています。その一つがLRTKと呼ばれるシステムです。LRTKはスマートフォン連携型の測位ソリューションで、特殊な測量機器や複雑な設定を極力省き、「誰でも簡単にcm級測位を扱える」ことを目指して開発されています。


LRTKでは専用の小型GNSS受信機とスマホアプリを組み合わせることで、RTK並みの高精度測位を驚くほどシンプルな手順で実現します。例えば、スマートフォンにアタッチメントで装着した受信機を片手に持ち、測りたい点でアプリ上のボタンを押すだけで、その地点の高精度な座標を取得できるという仕組みです。通常の単独GPSでは到底実現できない高さ方向の測位も可能で、その精度は水平方向で±1~2cm程度、垂直方向でも数センチ以内という本格的な測量レベルに達しています。それでいて操作は非常に直感的で、従来型のRTK機器のような煩雑な設定や現場での調整作業もほとんど不要です。


従来のRTKと異なり、LRTKユーザーは自前の基地局を用意したり外部の補正サービスと契約したりする必要がありません。クラウド上の補正データや複数地点からの測位情報を活用した独自アルゴリズムによって、単独の受信機でもセンチ級精度を出せる技術が背景にあります。さらに、取得した座標データはその場で日本の基準座標系に自動変換され地図上に表示されるなど、測位後の座標処理・管理もクラウドサービスで自動化されています。つまり、スマホとLRTKデバイスさえあれば専門の測量技術者でなくとも手軽に精密測量ができてしまうという画期的なシステムなのです。


LRTKは、自前基地局方式とネットワークRTK方式双方の煩わしさを解消する第三の選択肢とも言えます。必要な機材は極めてコンパクトで持ち運びが容易、通信環境を自分で用意する心配もなく、現場では測位ボタンを押すだけで結果が得られる手軽さは従来方式にはない魅力です。もちろん、現場条件や用途によって最適な測位方法は変わりますが、「もっと気軽に高精度測量を試してみたい」「専門外だけれど高精度の位置出しが必要」という方にとって、LRTKは非常に有力なソリューションとなるでしょう。最新技術の力によって、センチメートル級測位がより身近なものになってきているのを感じられるはずです。


FAQ

Q: RTKと通常のGPS測位の違いは何ですか? A: 通常の単独GPS(GNSS)測位では、衛星からの信号のみで位置を算出するため約5~10m程度の誤差が生じます。これに対し、RTK測位では基準局からの補正情報を利用して誤差要因を打ち消し、数センチメートル以内の高精度で位置特定が可能です。つまりRTKは、通常のGPSに比べて飛躍的に測位精度が高いという点が最大の違いです。


Q: RTK測量ではどのくらいの精度が得られますか? A: 適切な環境で運用されたRTK測量では、水平位置は概ね±1~3cm以内、高さ方向でも±3~5cm程度の精度が期待できます。ただし、精度は基準局からの距離や衛星の受信状況に影響されます。基線距離が長くなるほど若干誤差が大きくなったり、周囲に遮蔽物が多いと精度が低下する場合もあります。十分に空が開けた環境で基準局に近い範囲で運用すれば、ほぼ2cm程度の誤差に収まると考えてよいでしょう。測位精度を安定して確保するためには、衛星数を増やすマルチGNSS対応機やマルチ周波数受信機を使うことも有効です。


Q: RTK測量システムの導入費用はどのくらいですか? A: 導入費用は機器構成や方式によって幅があります。高性能な測量用GNSS受信機を基地局・移動局セットで揃える場合は数百万円規模になることもあります。一方、ネットワークRTKを利用して移動局用受信機だけ購入する場合は、数十万~100万円程度で始められるケースもあります。さらに、スマホを活用した簡易RTK機器などは初期コストを大幅に抑えており、より安価に導入可能です。ランニングコストとしては、ネットワーク型を使う場合に月額数千円~数万円のサービス利用料がかかります。自前基地局方式ならサービス料は不要ですが、無線免許の費用や機器メンテナンス費がかかる場合があります。総じて、用途と予算に応じて最適な組み合わせを選ぶことが重要です。最近は低コスト機器が増えているため、以前より導入のハードルは下がっています。


Q: ネットワーク型RTKを利用するには何が必要ですか? A: ネットワークRTKを使うには、RTK対応のGNSS受信機(移動局側)とインターネット接続手段が必要です。具体的には、GNSS受信機本体とアンテナに加えて、補正情報サービスに接続するための通信端末(内蔵SIM対応の受信機やテザリング可能なスマホなど)が用意できればOKです。事前にネットワークRTK配信サービス提供会社と契約を結び、ログインIDやサーバー情報、使用座標系の設定などを受信機または専用アプリに登録しておきます。あとは現場で受信機と通信端末の電源を入れ、サービスに接続すれば補正データの受信が開始されます。言い換えれば、受信機1台と通信環境さえあればネットワークRTKは運用できるため、従来方式より機材が少なくて済みます。


Q: 自前で基準局を設置するメリットはありますか? A: はい、特定の条件下では自前基準局の設置に大きなメリットがあります。例えば、携帯通信圏外の山間部などでもRTK測位が可能になること、長期的に見てサービス利用料を払い続けずに済むためトータルコストを削減できること、さらに自社で基準局の座標や運用を管理できるため安定した精度保証が得られること、などが主な利点です。複数の移動局を運用する際にも追加費用なく同時利用できる強みがあります。ただし、自前基準局方式は前述のとおり初期導入コストや機材運用の手間もかかります。そのため、誰にでも無条件で勧められる方法ではありません。現場環境や利用頻度を考慮し、メリットがデメリットを上回る場合に採用を検討すると良いでしょう。最初はネットワーク型で始め、頻繁に使うようになってから自前方式を導入するステップを踏むのもおすすめです。


Q: RTK測量を行うのに資格や許可は必要ですか? A: 機器の操作自体に特別な国家資格は必要ありません。 一般の測量士でなくともRTK機器を購入・使用することは可能です。ただし、測量成果を公式な用途に使う場合(公共測量や地籍調査など)には、測量士または測量士補の管理下で作業を行い測量業者登録をしていることが前提となります。また、無線局を開設する場合は無線従事者資格や免許申請が必要になるケースがあります。例えば出力1W以上の無線機を使って補正情報を飛ばすときは「無線従事者資格 + 開設申請」が必要になります。一方、特定小電力無線やインターネット通信のみを使う場合は免許や資格は不要です。まとめると、民間内で試験的・自主的にRTKを使うだけなら特段の許可は要りませんが、公共性の高い測量業務で活用する際は既存の測量法規に沿った手続きを踏む必要がある、ということになります。


Q: LRTKとはどのような測位方法ですか? A: LRTKは従来のRTKとは発想が異なり、単独の小型GNSS受信機とスマートフォンだけでcm級の高精度測位を可能にした新しい測位システムです。ユーザー自身が基地局を設置する必要がなく、難しい通信設定なども意識せずに利用できます。独自のアルゴリズムとクラウド技術の組み合わせにより、スマホでボタンを押すだけという簡単操作でRTK並みの精度が得られる点が最大の特徴です。いわば「誰でも手軽に使えるRTK測位サービス」のようなもので、従来のRTKに比べて導入・運用のハードルが大幅に下がっています。そのため専門外の方でも扱いやすく、現場での測量作業をよりシンプルにしてくれるでしょう。従来方式との精度差はほとんどなく、LRTKを活用することで高精度測量がより身近なものとなります。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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