目次
• はじめに:建設現場における高精度測位の重要性
• 従来の測量作業の課題
• RTK GNSSとは?リアルタイム補正で実現するセンチメートル精度
• RTK GNSS導入による現場効率化のメリット
• RTK GNSSの活用シーン(測量・墨出し・出来形管理)
• まとめ:高精度測位技術で生産性向上を実現
• FAQ
はじめに:建設現場における高精度測位の重要性
近年、建設業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せ、施工現場のデジタル化が大きなテーマとなっています。慢性的な人手不足や技術者の高齢化、「きつい・危険・汚い」という3K職場環境の課題に対応するため、国土交通省も2025年までに建設現場の生産性を2割向上させる目標を掲げ、*i-Construction* と呼ばれるICT技術の活用を推進しています。これに伴い、測量や施工管理のプロセスに最新技術を導入し、作業効率と安全性を向上させることが重要な課題となっています。
特に土木工事現場では、あらゆる工程で「位置」の情報が欠かせません。現況の地形測量、構造物の位置出し(墨出し)や丁張設置、施工後の出来形確認など、正確な座標測位が品質と効率を左右します。しかし従来の測量手法では、高精度な測定に時間と人手がかかり、現場全体をカバーするには大きな負担となっていました。そこで注目されるのが、GNSS(全球測位衛星システム)を利用した高精度測位技術です。本記事では、RTK GNSSによるセンチメートル級測位がどのように現場作業を劇的に効率化するか、その仕組みと活用事例を解説します。
従来の測量作業の課題
従来の建設現場における測量では、光学式のトータルステーションやレベル(測量用水平器)などを用いるのが一般的でした。これらの機器は高い精度で距離や高低差を測定できますが、据え付けや視通確保に手間がかかり、計測には通常2人以上の作業員が必要でした。1人が機器を操作し、もう1人がプリズムやスタッフ(標尺)を持って目標点に立つという体制が求められ、広い現場で多くの点を測るには莫大な時間と労力を要したのです。また、山間部の急斜面や交通量の多い道路脇での測量作業は転落や二次災害の危険を伴い、悪条件下で重い機材を運搬・設置する負担も大きな問題でした。
加えて、従来法では測量データの記録や図面化も手作業に頼る部分が多く、現場とオフィス間での情報共有にタイムラグが生じがちでした。紙の野帳に記入した数値を持ち帰って表計算ソフトに入力し直すなど非効率な作業も多く、リアルタイムでの進捗把握や品質チェックが難しい状況でした。このように、「人員負担が大きい」「作業に時間がかかる」「安全リスクがある」「データ活用が遅れる」といった課題を抱える従来の測量に対し、新たな解決策として期待されているのがRTK GNSSによる高精度測位なのです。
RTK GNSSとは?リアルタイム補正で実現するセンチメートル精度
RTK GNSS(Real-Time Kinematic GNSS)とは、衛星測位の誤差要因をリアルタイムに補正することで、平面位置で±1~2cm程度、高さ方向でも±3cm程度の誤差に抑えられる高精度測位技術です。通常のGPSをはじめとするGNSS測位では、大気圏の影響や衛星軌道誤差などにより数メートルの誤差が発生します。これに対し、RTK方式では既知の正確な座標値を持つ基準局(ベースステーション)と移動局(ローバー)の両方で同時にGNSS衛星信号を受信し、両者の観測データの差分から誤差を補 正します。その結果、衛星測位だけでトータルステーションにも匹敵する精度を実現できるのです。
RTK測位を利用することで、広い現場でも基準局を起点とした統一座標で測量でき、測点間の精度ムラや誤差の蓄積が起きにくいという利点があります。従来は数百メートルごとに機器を据え直して測っていたような場合でも、RTK GNSSなら移動しながら途切れることなく位置測定が可能です。ただし従来型のRTKシステムでは、自前で基地局を設置するか、移動局でインターネット経由の補正情報(例:VRS=バーチャル基準点サービス)を受信する必要があり、利用範囲も基地局から半径数km~20km程度に限定されました。
近年では、RTKの進化形として「ネットワーク型RTK」や「PPP-RTK」と呼ばれる方式も登場しています。日本では準天頂衛星みちびきによる「CLAS(センチメータ級測位補強サービス)」がその代表例で、専用のGNSS受信機があれば基地局なしでも衛星から直接補強信号を受け取り、リアルタイムにセンチ級測位が可能です。こうした技術の進歩により、高精度測位はますます手軽に利用できるものとなってきました。
RTK GNSS導入による現場効率化のメリット
RTK GNSSを現場に導入すると、従来の方法では実現できなかった様々な効率化効果が得られます。主なメリットを以下にまとめます。
• 省人化と一人作業の実現:高精度GNSS受信機を搭載した端末さえあれば、これまで2人1組で行っていた測量や丁張作業を1人で完結できます。複数の作業員がそれぞれGNSS端末を持って並行して測量すれば、広い範囲を短時間でカバーでき、人員不足の現場でも対応可能です。専門の測量士が不在でも、施工管理技士や職人が自ら必要な測量・出来形確認を行えるようになり、外部の測量業者に依頼するコストや日程調整も削減できます。
• 作業時間の大幅短縮:RTKによる迅速な測位では、目標点の座標取得が数秒程度で完了します。重機や三脚の据え付け、視通の確保といった前準備も不要で、測りたい場所に移動してアンテナをかざし、ボタンを押すだけで即座に精密な測定が可能です。従来は半日以上かかっていた現況測量や墨出し作業も格段にスピードアップし、重機オペレーターが待機する時間や作業中断も減らせます。結果として工期短縮と生産性向上に直結します。
• 測位精度・施工品質の向上:センチメートル級の精度によって、杭打ち位置のズレや仕上がり高さの誤差を最小限に抑えられます。従来は人の目視や経験に頼っていた微妙なずれも、RTK GNSSなら数cmの違いまで検出可能です。測量結果をその場でデジタルに確認できるため、施工ミスや測り間違いを事前に防ぎ、手戻り作業の削減や品質不良の防止につながります。出来形管理(施工後の検測)においても、設計値との差異を即時に把握できるため検査合格率の向上が期待できます。
• データ共有と現場DXの促進:RTK GNSSで取得した測量データはデジタル形式で即時に保存・共有できます。タブレットやクラウドサービスと連携すれば、現場で測った点群データや座標情報をリアルタイムで事務所と共有し、進捗を見える化することも容易です。紙の野帳を持ち帰って手入力する手間がなくなり、その場で報告書用の図面や帳票を作成するといったことも可能です。また、GNSSに拡張現実(AR)技術を組み合わせることで、スマホの画面上に設計図や完成イメージを重ねて表示し、関係者全員で直感的に情報共有することもできます。これらによりコミュニケーションロスを防ぎ、合意形成のスピードアップにも寄与します。
• 安全性の向上:測量・計測作業における危険な場所への立ち入りを減らせるのも大きな利点です。例えば、高速道路脇での基準点測量や法面(のりめん)の傾斜確認でも、離れた安全な場所からGNSSでポイントを測定したり、ドローンと組み合わせて状況を把握したりできます。作業員が長時間危険箇所に留まる必要がなくなるため、二次災害のリスク低減につながります。また、測量そのものの所要時間短縮により、高所作業や重機周辺での作業時間も減らせます。DX化による効率化は、安全管理の向上にも直結するのです。
RTK GNSSの活用シーン(測量・墨出し・出来形管理)
では、RTK GNSSの導入によって具体的に現場作業がどのように変わるのか、主な活用シーンを見てみましょう。
測量作業の効率化:一人で迅速・広範囲に現況把握
従来、現況測量や出来形計測ではトータルステーションによる精密測定が主流でしたが、これには熟練のオペレーターと補助者の2名が必要でした。また、測点間に建物や樹木などの障害物があると、機器を据え直したり中継点を設けたりといった手間も発生していました。RTK GNSSを活用すれば、原則として1人で広範囲の測量をこなすことが可能です。
VRSなどのネットワーク型補正サービスを利用すればローバー機(移動局)単体で測位できるため、重い機材の持ち運びも最小限で済みます。測りたいポイントに移動してアンテナ付き端末を構え、ボタンをタップするだけで数秒で座標を取得できるため、大量の測点を短時間で効率よく測定できます。例えば、従来は2人がかりで半日かかっていた敷地全体の現況測量が、RTK GNSSなら1人で数時間以内に完了するといった具合です。さらに、全ての点が同一基準で測られるため敷地内の相対精度も高く、後でデータを統合して図面化する際にも整合性が保ちやすくなります。
墨出し・丁張設置の革新:ARで直感的に位置出し
道路の中心線や構造物の設置位置を現地に示す「墨出し」や丁張(基準となる杭の設置)作業でも、RTK GNSSが革命をもたらします。従来は測量チームが図面上の座標をもと に計算し、現場に仮設の杭やチョークでマーキングして位置を示していました。これには経験と勘が要求され、位置の伝達ミスが起きるリスクもありました。
RTK GNSSを使えば、デジタル上の設計データと現実の位置を高精度に結び付けることができます。例えば、専用アプリ上で指定した座標に対してAR技術で「仮想の杭」や「ライン」をスマホ画面に表示し、作業員は画面を見ながら現地で正確な位置にマーキングできます。熟練技術者でなくとも、誰でも直感的に所定の位置を特定できるため、手戻りややり直しの減少につながります。
また、重機オペレーターにとっても、運転席のタブレット上で自分の現在位置と設計ラインとのズレをリアルタイムに確認できれば、わざわざ降車して測量結果を待つ必要がなくなり作業が途切れません。RTK GNSSと建機の連携により、施工と測量の一体化が進み、効率的な施工が可能となります。
出来形管理の高度化:即時検測と品質保証
構造物完成後の出来形管理(所定の形状・寸法に仕上がっているかの検測)にもRTK GNSSは威力を発揮します。例えば盛土工事で所定の高さ・勾配になっているか確認する場合、従来は完成後に測量班がポイントごとに高さを計測し、設計値との差を後から照合していました。
RTK GNSSを使えば、施工担当者自身が仕上げ段階で随時出来形を計測し、その場で設計データと比較して確認できます。スマホやタブレット上で設計モデルと照らし合わせながら不足や超過をリアルタイムに把握できるため、必要に応じて即座に手直しが可能です。出来形図書の作成においても、測定データが最初から電子化されているため後処理が効率化し、迅速に検査書類を整備できます。RTK GNSSの活用によって、出来形管理は事後チェックからリアルタイムの継続的な品質管理へと変貌しつつあります。
まとめ:高精度測位技術で生産性向上を実現
ここまで見てきたように、RTK GNSSによるセンチメートル級の高精度測位は、土木工事現場の様々な作業を効率化し、安全性と品質を同時に向上させる革新的な技術です。従来の常識では考えられなかった一人測量やリアルタイムの出来形管理が可能になり、DX時代の新たな現場スタイルが実現し始めています。高精度GNSSの技術基盤は年々進化し、専用機器も小型・安価になってきたことで、今やスマートフォンを使って誰でも精密な測量ができる時代が到来しました。
こうした中で登場した LRTK は、スマホに装着して使える小型のRTK GNSS受信機で、専門の測量知識がなくても簡単にセンチ級測位を行えるソリューションとして注目されています。重さわずか数百グラムの端末をスマホに取り付け、専用アプリを起動するだけで、数十秒で初期化が完了して高精度測位が始まります。複雑な設定は不要で現場に着いてすぐ使える手軽さは、まさに「いつでもどこでも誰でも測量」のコンセプトを体現したツールと言えるでしょう。
さらに、日本のCLAS補強信号に対応しているため通信圏外の山間部でも単独で測位可能であり、内蔵バッテリーで長時間稼働するなど現場での使い勝手も追求されています。もし皆さんの現場でも、RTK GNSSによる効率化と省人化を実現したいとお考えでしたら、こうした最新技術を積極的に活用してみてはいかがでしょうか。LRTKを活用した簡易測量を取り入れることで、これまでにないスピードと精度で土木施工の生産性 が劇的に向上するはずです。
FAQ
Q: RTK GNSSを利用するにはどんな機材や準備が必要ですか? A: RTK GNSS測位を行うには、センチメートル級対応のGNSS受信機と、その受信機が受け取る補正情報が必要です。補正情報は、自前の基地局を設置するか、インターネットを通じて提供される基準点サービス(例:VRS)を利用する方法があります。最近では、日本の「みちびき(QZSS)」が配信するCLAS信号を利用すれば、単体の受信機のみで補正を受けて測位することも可能です。現場では受信機を測りたいポイントに据えて固定し(またはポールや三脚で保持し)、コントローラーとなる端末(スマホやタブレットなど)で測位データを取得・記録します。専用のRTK対応アプリやソフトウェアを使うことで、補正情報の受信や座標計算が自動的に行われ、リアルタイムに高精度の位置座標が得られます。
Q: RTK GNSS測量はどの程度の精度が期待できますか?通常のGPSとは何が違うのでしょうか? A: RTK GNSSでは、平面的に約1~2cm、高さ方向で3cm程度の精度が期待できます。通常のスマートフォン内蔵GPSや単独測位では数mの誤差が生じますが、RTKでは基準局との相対測位により誤差要因が取り除かれるため、桁違いに精密な測定が可能です。例えば、従来は10m近い誤差があった場所でも、RTKを使えば数cm以内の誤差に収まります。これは、従来の光学測量機器であるトータルステーションに匹敵する精度であり、土木工事の位置出しや出来形確認に十分な精度と言えます。
Q: GNSS測量は天候や環境の影響を受けますか?屋内や森林などでも使えるのでしょうか? A: GNSS測位は基本的に上空の衛星からの電波を受信するため、アンテナが空を見通せない環境では測位が不安定になります。雨や雪そのものは測位精度に直接大きな影響を与えませんが、森林の中やトンネル、建物の近くなどでは衛星信号が遮られたりマルチパス(反射)による誤差が発生しやすく、精度が低下することがあります。RTK GNSSを利用する場合も、なるべく開けた場所で使用するのが理想です。ただし、一時的に測位が不安定になっても、再び衛星を捉えれば自動的に高精度測位に復帰します。また、トンネル内や屋内など衛星が受信できない場所では、GNSSではなくトータルステーションや地上レーザースキャナ、あるいは高精度な慣性航法装置など別の技術との併用が必要になります。
Q: RTK GNSSを現場に導入するには高額な費用がかかるのでしょうか? A: 従来型の測量用GNSS機器は数百万円クラスのものも多く、中小の現場が導入するにはハードルが高いものでした。しかし近年は技術革新とコストダウンが進み、安価でコンパクトな高精度GNSS受信機が登場しています。例えばスマートフォンと組み合わせて利用できるLRTKのような製品であれば、専用の大型機材を購入するよりはるかに低コストで運用できます。初期導入費用だけでなく、外部業者への測量依頼を減らせることでトータルコストの削減にもつながります。また、専門教育を受けた測量士でなくとも扱える直感的なシステムが増えており、研修コストや習熟時間の面でも導入しやすくなっています。
Q: LRTKとは何ですか?どのように現場で活用できるのでしょうか? A: LRTKは、小型のRTK GNSS受信機とスマートフォン用アプリから構成される測位システムで、スマホをセンチメートル精度の測量機器に変身させることができます。具体的には、iPhoneやiPadの背面に装着する受信機デバイスと、測量専用のアプリ(LRTKアプリ)を用いて、高精度測位や点群計測、ARによる設計情報の表示などを行えます。LRTKは日本の衛星補強信号CLASに対応しているため、携帯電波が届かない現場でも単独で高精度測位が可能です。現場では、一脚やポールにスマホごと取り付けて地面のポイントを測ったり、歩きながら面的な測量をしたりといった使い方がされています。従来は専門機器が必要だった作業を、LRTKなら手軽なスマホ操作で誰でも実施できるため、測量の省力化・省人化に大いに寄与します。今後さらに機能拡充が進めば、LRTKは現場の新たなスタンダードツールの一つになっていくでしょう。**
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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