RTK測位では「Float解(浮動解)」と「Fix解(固定解)」という2つの測位状態が存在します。皆さんはこの2つの違いを正しく説明できるでしょうか。この2つの違いはRTKの測位精度や信頼性に直結する重要なポイントです。本記事では、RTKにおけるFloat解とFix解の違いについて、精度の差や発生する原因、そしてその見分け方を中心に3分程度でわかりやすく解説します。
目次
• RTKとは?
• Fixed解(固定解)とは?
• Float解(浮動解)とは?
• Float解とFix解の精度の違い
• Float解になる原因
• Float解とFix解の見分け方
• LRTKで手軽に高精度測位を実現
RTKとは?
RTK(Real Time Kinematicの略)とは、GNSS(衛星測位システム)を用いてリアルタイムに高精度な測位を行う手法です。一般的 なGPS単独測位では数メートルの誤差が生じますが、RTKでは基準局(基地局)と移動局の2台のGNSS受信機を使い、基地局側で測位誤差を計算して移動局に補正情報として送信することで、その誤差をセンチメートル単位まで打ち消すことができます。基準局を既知の正確な座標地点に設置し、移動局が観測地点で受信した衛星信号に補正を適用することで、リアルタイムに高精度な位置座標を得られるのがRTKの特徴です。こうした手法により衛星の軌道誤差や時計誤差、大気による遅延など共通の誤差要因が相殺され、通常は数メートルあった測位ズレが数センチまで小さくなります。なお、RTKのように搬送波位相を用いる高精度測位は、コード測位に基づく従来の差分GPS(DGPS)より格段に精度が高く(DGPSでは誤差がせいぜい数十cm程度)、センチ級測位を実現できる点が画期的です。
RTK測位を利用するには、基準局と移動局、それらをつなぐ通信手段(無線やインターネット)が必要ですが、条件が整えば数センチ以内の極めて精密な測位が可能です【例えば、基準局との距離が近く衛星の見通しが良好な環境では、水平方向で約1~2cm、高さ方向で数センチ程度の誤差に収まります】。このようなセンチメートル級の精度が得られることから、RTKは土木測量、建設機械の誘導、農業、自動運転やドローン測位など、誤差を極力抑えたい幅広い分野で活用が広がっています。なお、近年では公共・民間の基準局ネットワークを活 用し、自前で基地局を設置しなくても補正情報が受け取れるネットワーク型RTK(VRS方式など)も普及してきています。具体的には、携帯通信網を利用したインターネット配信(Ntrip)によりローバー付近に仮想基準点を設定するVRS(Virtual Reference Station)方式などが各地で提供されています。これにより専用の基地局を用意しなくてもセンチ級測位が可能となり、RTKはさらに身近な技術になりつつあります。
Fixed解(固定解)とは?
Fixed解(固定解)とは、RTK測位において衛星信号の搬送波位相に含まれる未知の整数値バイアス(いわゆる整数アンビギュイティ)が正しく解決された状態のことです。平たく言えば、衛星から受信機までの距離に含まれる電波の波数(波長の整数個分)がピタッと特定できた段階であり、このときRTK本来の最高精度が発揮されます。Fixed解が得られると、平面位置で数センチ以内、鉛直方向でも数センチ〜十数センチ程度の誤差に収まる非常に精密な測位が可能です。
RTKでは測位開始直後はまだこの整数バイアスが解ききれておらず解が不安定ですが、現在のマルチGNSS対応RTKシス テムであれば良好な環境下で数十秒~数分程度でFixed解に到達するのが一般的です。一定時間衛星データを蓄積して演算を続けることでやがて正しい組み合わせが見つかります。そして一度アンビギュイティが整数に解決されれば、その解を「Fix(固定)」として確定し、以降は大きな電波途絶がない限り高精度な位置測定を維持できます。多くのGNSS受信機や測量アプリでは、RTKが固定解に達するとステータス表示が「FIXED」や「FIX」(固定済み)となり、センチ級精度が確保されたことを示します。RTKを用いる作業では、このFix状態を得ることが一つの目標となります。
なお、古い単一周波数(L1帯のみ)のGNSS機では固定解になるまで時間がかかったり、長距離ではFix維持が難しい傾向がありますが、最新のマルチ周波・マルチGNSS対応機器を使えば初期化までの時間短縮や長距離での安定性向上が期待できます。
Float解(浮動解)とは?
Float解(浮動解)とは、RTK測位においてまだ整数バイアスの解決に至っていない途中段階の解を指します。補正データは受け取って適用しているものの、搬送波の波数が未 確定のため精度が完全には安定していません。測位開始直後や衛星信号状態が不十分なときにまず得られるのがこのFloat解です。精度は単独測位よりは向上しますが、それでも概ね±0.5~1m程度の誤差範囲に留まります(参考までに、補正のない単独測位では誤差が±数m以上に達します)。センチメートル級のFix解と比べるとなお大きなズレが生じる可能性があり【いわゆる“デシメートル級”の精度で、固定解ほど信頼できる状態ではありません】、厳密な測量や機械制御にはFloat解のままでは不十分です。そのためRTK利用時はできるだけ早くFloat解からFix解へと収束させる必要があります。なお、数十センチ程度の誤差を許容できる用途(例:農業分野の自動走行や一般的なナビゲーション)では、Float解でも実用に足りるケースもあります。ちなみに「Float」という名称は、整数で固定された解(Fix)に対し、まだ実数値(浮動小数点)で解を求めていることに由来します。
Float解とFix解の精度の違い
先述の通り、Fix解とFloat解では得られる測位精度に大きな開きがあります。Fix解であれば水平方向で数センチ以内という誤差に収まるのに対し、Float解では誤差が数十センチ~1m程度発生する可能性があります。この差は現場で得られる測位結果の信頼性を大きく左右します。例えば土地境界の設置 や構造物の正確な位置出しといった高精度を要求される作業で、もしFloat解のまま測位結果を使ってしまうと、数十センチのずれが生じて重大なミスにつながりかねません。実際、RTKの状態がFloatのまま測量を進めてしまい、後から大きな誤差に気付いて測り直しとなった例も報告されています。
一方で、精度要求がさほど厳しくない場面では、短時間で得られるFloat解を活用して作業を進めたほうが効率的なケースもありえます。しかしその場合でも、得られた結果に大きめの誤差が含まれる点は認識しておく必要があります。基本的にはRTKで正確な成果を得るには、FloatからFixに切り替わるのを待ってから測位結果を利用するのが安全策です。高精度を要する測位では、解がFixed状態になっていることを確認して初めて結果を採用すべきだと言えるでしょう。
そのためRTK測位を行う際は、結果を採用する前に解がFixed状態になっていることを確認することが極めて重要です。Fix解が得られて初めてRTKのセンチメートル級精度が保証され、安心して測位結果を利用できると言えます。逆にFloat解の間はまだ精度が安定していない予備段階ですので、焦らずに測位エンジンがFixに収束するのを待つ必要があります。一度Fixを得ても、何らかの要因で再びFloat解に戻ってしまうこともありますが、その際も慌てずに原因を確認し、再度Fixed解になるのを待ってから作業を再開することが肝要です。FloatとFixの状態を見極めて適切に対処することが、RTKを正しく運用する上での基本と言えるでしょう。
Float解になる原因
通常、空が開けていて十分な数の衛星が見えていれば、RTK開始から数十秒~数分程度でFix状態に入るものです。もし5分以上経ってもFixにならない場合は、何らかの要因で解の収束が妨げられている可能性が高いでしょう。RTK測位でいつまでもFloat解のままFixしない場合、典型的に考えられる主な原因は次の通りです。
• 衛星受信環境の不良:上空の視界が狭かったり、周囲に建物や樹木があると衛星信号が遮られて受信できる衛星数が不足します。また、壁面や地面で反射した電波(マルチパス)を拾ってしまうと誤差が増大し、RTKエンジンが整数バイアスを収束できずFloat解のままになる場合があります。
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