目次
• RTK ARとは?
• 従来技術と高精度AR測位が必要とされる理由
• RTK ARが現場にもたらすメリット
• 現場でのRTK AR活用事例
• LRTKによる簡易測量
• FAQ
RTK ARとは?
近年、建設業界では現場のデジタル化(いわゆる建設DX)が加速し、図面や3Dモデルの現場活用にも注目が集まっています。特にAR(拡張現実)技術は、完成イメージの共有や作業ナビゲーションに役立つとして期待されています。しかし従来のARでは位置のズレが課題でした。そこで登場したのがRTK ARです。
RTK ARとは、RTK(Real Time Kinematic)と呼ばれる衛星測位技術と、AR(拡張現実)技術を組み合わせることで、現実空間上に高精度な位置合わせでデジタル情報を重ねて表示する手法です。RTKはリアルタイムキネマティックとも呼ばれ、GNSS衛星からの信号を利用してセンチメートル級の測位精度を得る技術です。一方、ARはカメラ越しに見た現実の映像にCGなどのデジタル情報を重ねる技術で すが、通常のスマートフォン単体のGPSでは誤差が大きく、ARオブジェクトの位置が現実と数メートルずれてしまうことが課題でした。そこでRTKによる高精度測位をARに活用することで、誤差数センチ程度の精度で仮想オブジェクトを現実空間に配置できるようにしたのがRTK ARです。
RTK ARでは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末にRTK対応のGNSS受信機を組み合わせて使用します。従来のGPS測位が誤差5〜10m程度で高度(高さ)の計測も困難であったのに対し、RTK-GNSSでは水平±1〜2cm、垂直方向でも±3cm程度の精度で位置を特定できます。この高精度な絶対座標が得られることで、AR上に表示する3Dモデルや案内マーカーを実際の工事座標系にピタリと一致させることが可能になります。例えば、設計図の3Dモデルにあらかじめ測量で取得した座標を付与しておけば、現場でそのモデルをAR表示した際に、まるでそこに実物が存在しているかのように正確な位置で表示されます。RTK ARにより、デジタルデータと現実空間との位置合わせが飛躍的に向上しました。
従来技術と高精度AR測位が必要とされる理由
なぜRTK ARのような高精度のAR測位が求められるようになったのでしょうか。その背景には、従来の技術で生じていた課題があります。
まず、建設や測量の現場ではこれまでトータルステーションやGPS測量機器といった専門機材を用いて位置出しや墨出しを行ってきました。トータルステーションはミリ単位の精度で測量できますが、機器が大型かつ重量で、操作には2人以上の人手と高度な訓練が必要です。また定期的な校正やメンテナンスも不可欠でした。一方、一般的なGNSS測位(いわゆるGPS測定)は手軽ですが、前述のように誤差が数メートルもあり、高さ方向の情報も取得できません。結果として、例えば図面上の計画位置を現地に出す際には、大まかな位置合わせしかできず、細かな調整に結局手作業や熟練の勘が必要でした。
また、従来のAR技術にも制約がありました。スマートフォン単体のARアプリでは、デバイス内蔵のGPSや慣性センサの精度限界から、表示される3Dモデルが現実の位置とずれてしまい、「ここにあるはずのものがAR上ではあそこに見える」といった状況が発生しがちでした。マーカーを地面に設置してそれを基準にAR表示を校正する方法もありますが、毎回基準合わせの手間がかかりますし、広範囲の現場では現実的ではありません。要するに、通常のARでは位置合わせの精度が不足しており、建設現場のように正確さが求められる用途には不向きだったのです。
こうした課題を解決するために登場したのがRTK ARです。高精度な測位により、デジタル情報を現実空間にずれなく重ね合わせることが可能になり、現場での様々な作業やコミュニケーションの質を飛躍的に高めています。
また、建設業界では将来的な人手不足や技能承継の課題も指摘されており、誰でも扱えるデジタルツールによる作業効率化が強く求められています。RTK ARは、こうしたニーズにも応えるソリューションとして期待されています。
RTK ARが現場にもたらすメリット
RTK ARを導入することで、現場には以下のような多くのメリットがもたらされます。
• 精度向上:センチメートル単位の位置精度でAR表示ができるため、仮想モデルやガイドマーカーを実際の位置に正確に配置できます。図面と現場との食い違いや、AR表示のズレによるミスを大幅に削減できます。
• 効率化:重機や人手による従来の測量・墨出し作業の一部をデジタル化でき、一人でも位置出し作業がこなせます。例えば、広い現場で多数のポイントを確認する際も、RTK AR対応デバイスを持って歩くだけで次々と位置を確認でき、作業時間が短縮されます。従来は測量担当者が位置出しを行い、その後に施工担当者が作業に取り掛かるという段取りでしたが、RTK ARでは作業者自身が即座に必要なポイントを把握できるため、待ち時間やコミュニケーション上のロスも減らせます。
• 合意形成の容易化:完成イメージや設置位置をその場で共有できるため、発注者や関係者との認識合わせがスムーズになります。図面だけでは伝わりにくかった完成後の姿も、ARで実際の景色に重ねて見せることで、一目で共有できます。この結果、手戻り(やり直し)の発生を抑える効果も期待できます。
• 安全性の向上:事前に取得した地下埋設物の位置や危険エリアをARで可視化すれば、作業者は現地で目に見えない危険を直感的に把握できます。誤って埋設管を掘り当ててしまう事故や、立入禁止区域への侵入を防ぐことができます。
• コスト削減:高精度機器や外部の専門測量チームに頼らずに自社スタッフで対応できる範囲が広がるため、測量機器のレンタル費用や人件費の削減につながります。また、前述のミス削減や手戻り防止によって、ムダな工事のやり直し費用も抑制できます。
• 情報共有の迅速化:デジタルで取得した測位データやARの画面キャプチャをその場でクラウドにアップロードし、遠く離れたオフィスの技術者や関係者とも即座に共有できます。現場での状況報告や検査・承認プロセスがスピードアップし、全体の効率向上につながります。
現場でのRTK AR活用事例
では、実際にRTK ARが現場にもたらした革新的な活用例をいくつか見てみましょう。
設計モデルのAR表示による合意形成
ある土木工事の現場では、完成予定の構造物モデル(BIM/CIMモデル)をRTK ARで現地に投影し、発注者との打ち合わせに活用しました。タブレットの画面越しに実際の風景に重ねて完成イメージを見ることで、図面だけでは伝わりにくかった出来上がり像を誰もが直感的に理解できます。例えば、河川護岸工事の仕上がり高さや形状をその場で示せば、発注者は完成後の様子を事前に確認でき、追加の要望や懸念点を早期に共有できます。施工者側にとっても、着工前に認識のズレをなくせるため、施工途中での手戻りが発生しにくくなります。このように、RTK ARによる正確な完成モデルの共有は、関係者全員の合意形成を格段に容易にしました。
埋設物の可視化による安全管理の革新
別の事例では、道路工事に先立って地中の埋設管やケーブル類をRTK ARで可視化し、作業計画に役立てました 。事前に試掘や探査で把握しておいた埋設物の位置情報をデジタルデータ化し、それを現場でAR表示することで、作業員は地面の下に何がどこに埋まっているかをリアルタイムに把握できます。例えば、過去の工事で埋設した管線のデータをLidarスキャンなどで取得しておけば、舗装の上からでもRTK ARでその経路を可視化できます。掘削時に誤って管を損傷するリスクを低減でき、安全対策として大きな効果を発揮します。現場監督者もタブレットをかざすだけで埋設物の位置を確認できるため、危険個所を事前にマークしたり迂回措置を講じたりといった判断が的確に行えます。さらに、一度取得してクラウド上に蓄積した埋設物の位置データは、将来ほかの工事を行う際にも正確な情報として共有できます。これにより、長期的な安全管理にも役立ちます。
杭打ち・墨出し作業の効率化と精度向上
建築現場での杭打ちや設備の設置位置出し(墨出し)作業にもRTK ARは革新をもたらしています。従来は測量担当者が図面上の座標をもとに現場で位置を割り出し、杭やチョークでマーキングしていました。広い現場や多数のポイントがある場合、この作業は時間と人手がかかりました。RTK ARを用いれば、あらかじめ設定した設置位置にAR上でマーカーやガイドが表示されるため、作業者はそれを見ながら直接ポイントに 杭を打ち込んだり線を引いたりできます。例えば、信号柱の基礎を設置する際に、所定の位置が画面上に示されるので、測量の専門家でなくとも正確に機材を据え付けられます。実際に、ある現場ではRTK AR対応デバイスを使って一人で杭打ち位置の誘導を行い、短時間で全てのポイントにマーキングを完了した例もあります。RTK ARによって、位置出し作業はスピーディーかつ高精度になり、人為的な測り間違いも減少します。
出来形管理への応用
施工完了後の出来形管理(施工結果の検証)にもRTK ARは威力を発揮します。従来、出来形の確認はメジャーや測量機で寸法を測ったり、完了図と現場を目視で比べたりする必要がありました。RTK ARを使えば、完成した構造物に対して設計データをその場で重ね合わせ、仕上がりの状態を確認できます。例えば、道路の盛土工事で設計の高さ通りに仕上がっているかをARで確認し、もし一部で設計モデルからはみ出して表示される箇所があれば、その場で追加の整地が必要だと判断できます。写真を撮影すれば、AR表示による施工前後の比較記録として残すことも可能です。図面と照合する手間を減らし、現場検査の効率と確実性を高めるツールとしてRTK ARが活用されています。
LRTKによる簡易測量
RTK ARの利点を手軽に享受できるソリューションとして注目されているのがLRTKです。現在では一部の自治体や建設会社でも導入が始まっており、その手軽さから現場の新たな標準ツールになりつつあります。LRTKは、スマートフォンに取り付ける小型のRTK-GNSS受信機と専用アプリから構成されており、誰でも簡単にセンチメートル級の測位とAR表示を実現できる簡易測量システムです。
従来、センチメートル級の測位を行おうとすると高価なGNSS機器や大型の装置が必要でした。しかしLRTKでは、重量わずか数百グラム程度のポケットサイズ受信機をスマートフォンやタブレットに装着するだけで、本格的な測量機に早変わりします。専門の研修を受けた測量技術者でなくても、現場担当者自身が機器を持ち歩いて1人で測量や位置確認が可能になります。取得した点の座標データには自動的に緯度・経度・高さが付与され、アプリ上でリアルタイムに地図上へプロットされます。さらにワンタップでクラウドにデータ共有できるため、現場で集めた情報をオフィスにいるチームと即座 に共有することも容易です。
LRTKはAR機能も備えており、事前にアップロードした設計3Dデータを現地で開くだけで、位置合わせの手間なくその場に投影できます。これはまさにRTK ARの手法を手軽に活用できるもので、現場の誰もが直感的にデジタル情報を扱えるようになります。例えば、複雑な構造物の配置確認も、LRTKの画面を覗けば一目瞭然です。また、点群スキャン機能を使って現況をスキャンし、そのデータを基にARで施工前後を比較するといった使い方も可能です。LRTKによる簡易測量は、高精度な測位とAR表示をオールインワンで提供することで、現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を力強く後押ししています。
LRTKの活用により、これまで専門家に任せていた測量・位置出し作業を自社スタッフで容易に行えるようになります。その結果、現場の生産性向上やコスト削減に大きく寄与するでしょう。高精度AR測位技術は、今後ますます建設現場の新たな当たり前となっていくと期待されています。さらなる高精度AR技術の発展により、建設現場の作業スタイルは一段と進化していくでしょう。
FAQ
Q. 通常のスマートフォンのARとRTK ARの違いは何ですか? A. 通常のスマートフォンだけを使ったARでは、GPSの誤差(数メートル単位)やセンサーのドリフトにより、ARオブジェクトの位置が現実とずれてしまうことがよくあります。これに対し、RTK ARは高精度なRTK-GNSS測位によって、誤差を数センチ程度まで抑えた位置合わせが可能です。そのため、建設や測量のように正確な位置が求められる用途でも、ARを実用的な形で活用できます。
Q. RTK ARを利用するにはどんな機材や準備が必要ですか? A. 基本的には、RTKに対応したGNSS受信機と、それを接続できるスマートフォン・タブレット、および専用のアプリケーションが必要です。GNSS受信機は衛星補正情報(例:基地局からの補正電波やインターネット経由の補正データ)を受信できるものを用います。最近ではスマートデバイスに装着できる小型受信機と使いやすいアプリがセットになった製品(例えばLRTKのようなソリューション)も登場しており、専門知識がなくても手軽に導入できます。
Q. RTK ARで実現できる測位の精度はどれくらいですか? A. 環境にもよりますが、概ね水平位置で±1〜2cm程度、高さ方向で±3cm程度の精度が得られます。静止した状態で一定時間測位値を平均化すれば、1cm未満の誤差に収まることも可能です。これは従来の単独測位GPSと比べて格段に高精度であり、そのおかげでAR表示もほぼ現実と見分けがつかない位置精度で行えます。
Q. 屋内や衛星信号が途切れる場所でもRTK ARは使えますか? A. RTK ARは基本的にGNSS衛星からの信号を利用するため、屋内やトンネル内など衛星が捉えられない環境では精度を発揮できません。こうした場所でARを使う場合は、あらかじめ基準点となる位置を現場で設定しておき、その相対位置でAR表示を行うなど工夫が必要です。ただし完全な屋内ではRTKによる高精度測位は難しいため、RTK ARの活用シーンは主に屋外の開けた場所となります。
Q. 機械の操作や設定は難しくありませんか? A. いいえ、RTK AR対応のシステムは現場の非専門者でも使いやすいよう設計されています。例えばLRTKの場合、スマホに受信機を付けてボタンを押すだけで測点の記録やAR表示が可能で、複雑な座標計算は全てアプリが自動で行ってくれます。初めて使う方でも、簡単な講習やマニュアルに沿って操作するだけで、すぐに現場で活用できるでしょう。
Q. RTKの補正情報を受信するにはインターネット接続が必要ですか? A. RTK方式では高精度な測位を行うため、基準局からの誤差補正データをリアルタイムで受信する必要があります。多くの場合、携帯電話のデータ通信などを用いてインターネット経由でこれらの補正情報を取得します。あるいは自前で移動式の基準局(GNSS基地局)を設置し、無線通信で補正データをやり取りする方法もあります。日本国内では、衛星を利用したセンチメートル級の補強信号(例えば準天頂衛星システム由来の信号)を受信できるサービスも提供されています。現場の環境に応じて、インターネットまたは専用の無線・衛星通信を組み合わせることでRTK ARを安定して運用できます。
Q. RTK ARはどの ような現場や分野で活用できますか? A. 主に屋外の測量・建設・土木の現場で効果を発揮します。例えば、土木工事における造成や道路工事の計画確認、建築工事での基礎位置のチェックや設備レイアウト確認、インフラ保守における埋設管の位置把握、さらには災害復旧現場での被災状況の記録など、空間上の正確な位置情報が求められる幅広いシーンでRTK ARは役立ちます。地形や構造物を伴う現場作業全般に応用できるため、今後ますます多様な分野で活用が広がるでしょう。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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