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データムの違いを解説:NAD83 / WGS84で点が合わない理由

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

RTK測量(リアルタイムキネマティック測位)は、GPSを用いた高精度測位技術です。数センチの誤差で位置を測定できるため、測量や土木で広く活用されています。しかし、「RTKで測量したのに座標が合わない」といった経験はないでしょうか?


その原因の一つとして挙げられるのが測地系(データム)の違いです。本記事では、初心者〜中級者の方にも分かりやすいように、測地系とは何か、なぜ測地系の違いで座標にズレが生じるのかを解説し、特にNAD83とWGS84という代表的な測地系の違いに焦点を当てて説明します。また、RTK測量で測地系の違いによるトラブルを防ぐ方法や、スマートフォンベースの簡易RTK測量システムLRTKを紹介し、測地系設定ミスを防ぐ仕組みやそのメリットについても触れます。


目次

測地系とは何か?

測地系が異なるとなぜ座標がズレるのか?

NAD83とWGS84の違い

測地系の違いがRTK測量に与える影響

測地系の違いによる座標ズレへの対処法

スマホRTKシステム「LRTK」で測地系ミスを防ぐ

FAQ(よくある質問)


測地系とは何か?

測地系(そくちけい)とは、地球上の位置を表すための基準となる座標体系のことです。簡単にいえば、「地球をどのような形でモデル化し、どの地点を基準(原点)として緯度・経度・高さを定めるか」というルールが測地系です。地球は完全な球ではなく赤道方向に少し膨らんだ楕円体(回転楕円体)に近い形をしています。そこで測地系では、まず地球楕円体と呼ばれる数学的な形(楕円体の大きさや扁平率)を定義し、その楕円体上での基準となる地点を決めます。こうして定められた基準に従って、世界中の地点の緯度・経度・高さが決まります。


例えば、日本の現行の測地系であるJGD2011(日本測地系2011)は、GRS80という地球楕円体を採用し、日本国内の観測網を基に定められた測地系です。一方で、アメリカ国防総省が運用するWGS84(World Geodetic System 1984)は、WGS84楕円体を採用した世界共通の測地系です。いずれも「世界測地系」と呼ばれ、地球全体を一つの座標系で表現するものですが、それぞれ楕円体のパラメータや基準点の取り方に若干の違いがあります。


重要なのは、一つの地点であっても使う測地系が違えば、緯度や経度などの数値が少し異なってしまうことです。測地系は位置情報の「ものさし」のようなもので、ものさしが違えば測った値も変わるのと同じです。そのため、地図やGPS機器で使われている測地系が何かを意識することが正確な測位には欠かせません。


測地系が異なるとなぜ座標がズレるのか?

異なる測地系では、地球を近似する楕円体の形状や大きさ、そして基準とする原点の位置が異なります。この違いが、同じ地点を測っても測地系ごとに座標値(緯度・経度・高さ)がズレてしまう原因です。


具体的にイメージしてみましょう。ある地点Aが地球上にあるとします。この地点Aの座標を測る際、測地系Xでは「地球楕円体X」と原点Xに基づいて計算しますが、測地系Yでは「地球楕円体Y」と原点Yに基づいて計算します。もし楕円体XとYで地球の形の仮定が違ったり、原点の位置がずれていたりすれば、地点Aの緯度・経度の値はXとYで異なる結果になります。


身近なたとえで言えば、地図の描き方の違いのようなものです。一つの町の地図でも、ある地図は「町役場」を基準に通りの位置を記したり、別の地図は「駅」を基準に測って記していたら、同じ建物でも座標の値(位置の表し方)が変わってしまうでしょう。測地系の違いもこれと似ており、「地球の中心をどこに置くか」「地球の形をどのような楕円体で近似するか」の違いによって生じます。


測地系の違いによるズレの典型例として、日本でかつて使われていた「東京測地系」と現在の「世界測地系(JGD2011など)」の差があります。東京測地系(旧測地系)は日本独自の測地系で、現在の世界測地系とは基準が大きく異なっていました。このため、同じ地点でも東京測地系と世界測地系では緯度・経度が約400メートルもずれていたのです。これは極端な例ですが、測地系が異なるとこれほど大きな差が生じる場合もあることを示しています。


NAD83とWGS84の違い

測地系の具体例として、北米で使われているNAD83(North American Datum 1983)と世界的に使われるWGS84(World Geodetic System 1984)の違いについて見てみましょう。NAD83とWGS84はいずれも地球中心を原点とする世界測地系の一種ですが、微妙な差異があります。


NAD83(北米測地系1983):


主に北米大陸で利用されている測地系です。1980年代に従来のNAD27から改訂され、地球中心を原点とした座標系(地心座標系)になりました。

GRS80という地球楕円体を採用しています。この楕円体は地球の長半径や扁平率の値が定義されており、NAD83はそれを基に緯度経度を算出します。

NAD83は北アメリカ大陸のプレートに固定された座標系と言われます。つまり、北米プレート上では時間が経過しても緯度経度がほぼ不変になるように定められています(実際にはNAD83も細かな改訂が重ねられていますが、基本理念としてプレート固定型です)。


WGS84(世界測地系1984):


GPSや地図サービスで世界的に標準となっている測地系です。アメリカ国防総省が策定し、全世界を一つの座標系でカバーする目的で作られました。

WGS84楕円体を採用しており、その長半径の値等はGRS80楕円体と非常に近いですが、扁平率などにごくわずかな差があります。実質的には楕円体の形状はほぼ同じと考えて差し支えありません。

WGS84は地球全体をカバーする地球座標系(地心直交座標系)に基づいており、国際地球基準座標系(ITRF)にも整合するよう何度か改訂されています。地球全体を対象としているため、各大陸のプレート運動に伴い、同じ地点の緯度経度が時間とともに変化する特徴があります。


では、NAD83とWGS84で具体的にどの程度座標が違うのでしょうか。結論から言えば、両者の差は数十センチから場所によっては1〜2メートル程度と言われています。特に北米大陸上では、NAD83は北米プレートに固定されているため、1984年以降プレートが移動した分だけWGS84とのずれが蓄積しています。例えば米国本土では、NAD83と最新のWGS84との間で1メートル前後の差が生じている地点もあります。この差は測量の精度としては無視できない大きさです。RTK測量のように数センチの精度を求める場面では、1メートルのズレは重大な誤差となってしまいます。


加えて、NAD83とWGS84は基本的な考え方は似ているものの、座標変換(ダトム変換)を正確に行おうとすると7つのパラメータによる厳密な変換式が必要になります。専門のGISソフトウェアや測量ソフトでは、これらのパラメータを使ってNAD83とWGS84の座標を相互に変換できますが、手作業で行うのは現実的ではありません。そのため、現場では最初から目的の測地系で測位することが一般的な対策となります。


測地系の違いがRTK測量に与える影響

では、こうした測地系の違いが実際のRTK測量にどのような影響を与えるのでしょうか。RTK測量では、基準局(ベースステーション)と移動局(ローバー)の両方が同じ基準座標系上で測位していることが理想です。もし基準局がWGS84座標で自分の位置を認識し、移動局がNAD83座標系で結果を解釈していたら、両者の間で座標に一貫性がなくなり、正しい測位結果が得られません。


例えば、ある地点の真の位置がWGS84で緯度経度(φ,λ)だとします。基準局がそのWGS84座標を基に補正情報を送ってきても、移動局がその補正結果をNAD83の座標系で解釈した場合、移動局が得る緯度経度は真の位置とは1メートル程度ずれた値になってしまう可能性があります。これは、基準局と移動局で前提としている地図の基準(測地系)が食い違っているために起こる現象です。


RTK測量では通常、基準局の座標値をあらかじめ既知点などで設定するか、ネットワーク型RTK(VRS方式など)の場合はシステムが基準局に相当する位置を仮想的に生成します。この際に重要なのが、その基準となる座標値がどの測地系によるものかという点です。日本国内であれば、多くのRTKサービスや電子基準点はJGD2011(世界測地系)に基づく座標を提供します。一方、米国などNAD83を公式に使う地域では、基準局の座標がNAD83系で与えられる場合があります。ユーザーの受信機(ローバー)は、受け取った補正情報や基準局座標を基に自位置を計算しますが、その受信機側の設定が基準局と同じ測地系になっていないと、結果として得られる座標がずれてしまうのです。


高精度な測位を行う上で、数十センチの違いでも無視できません。特に公共測量や土木工事で既存の図面座標と照合する場合、測地系が異なると計画値と実測値が合わず、大きなトラブルとなりえます。場合によっては「なぜか常に○○方向に1mずれている」という現象に気付かず作業を進めてしまい、後から原因を調べると測地系の設定ミスだった、といった事例もあります。RTK測量においては、機器やソフトの設定画面で測地系(座標系)の項目を確認し、適切なものを選ぶことが基本中の基本となります。


測地系の違いによる座標ズレへの対処法

現場で「座標が合わない!」という事態を防ぐために、測地系の違いに起因する問題への対処法をいくつか押さえておきましょう。


使用する測地系を統一する: 基準局と移動局、あるいは使用するGNSSサービスの座標系を統一することが最も重要です。例えば、日本でRTK測量を行う場合は、基本的にJGD2011(世界測地系)に統一します。米国であればプロジェクトがNAD83を要求しているなら、基準局もローバーもNAD83に揃えます。機器によっては設定でWGS84やNAD83など選べるので、測量開始前に必ず確認しましょう。

既知点で検証する: 測量現場に既知の基準点(座標があらかじめわかっている点)がある場合、作業前に一度RTKでその点を測ってみて、座標が合致するか確認します。もし既知点と測定結果が数十センチ以上ずれるようなら、測地系の設定ミスを疑ってください。事前のワンチェックで致命的なズレに早めに気付くことができます。

座標変換ツールを活用する: 万一異なる測地系のデータを扱う必要が出た場合、国土地理院の提供する変換ソフトやGISソフトの座標変換機能を使いましょう。手作業で計算するのは困難ですが、ソフトウェアならNAD83⇔WGS84や東京測地系⇔世界測地系のような変換も精度良く行えます。ただし、変換したデータを用いる際も、何の測地系に変換したのかを明示しておくことが大切です。

測地系の知識をチームで共有する: 測量士だけでなく、現場のチーム全体で基本的な測地系の知識を共有しておくことも大切です。測量結果を後から別の部署や外部業者が利用する際、測地系の違いを理解していないとデータの解釈を誤る恐れがあります。「このプロジェクトの座標は全て世界測地系(JGD2011)です」などと明記し、周知徹底しておきましょう。


以上の対策を講じることで、測地系の違いによる座標ズレを未然に防ぎ、RTK測量を安心して行うことができます。せっかく高精度のRTKを使っていても、測地系の設定ミス一つで台無しになってしまうため、基本的な注意として心に留めておきましょう。


スマホRTKシステム「LRTK」で測地系ミスを防ぐ

最後に、初心者でも扱いやすいスマートフォンベースのRTK測量システム「LRTK」を紹介します。LRTKはスマホに小型のRTK-GNSS受信機を取り付けて使用する次世代の測量機で、誰でも手軽にセンチメートル級測位が行えることを目指した製品です。このLRTKには、測地系の設定ミスを防ぐ工夫や、測量作業を簡素化するメリットが備わっています。


LRTKでの測地系自動対応: LRTKの専用アプリでは、測位した地点の座標を自動で所定の測地系に変換・表示する機能があります。例えば、日本国内で利用する場合、LRTKは内部で取得したWGS84の測位データを日本の公式座標系であるJGD2011の値に自動変換し、ユーザーに提示します。これにより、ユーザーがいちいち測地系を意識して設定する必要がなく、世界測地系(JGD2011)に統一された座標を常に得ることができます。また、必要に応じてアプリ上でWGS84の緯度経度やジオイド高を確認したり、日本の平面直角座標系の値を表示したりすることもワンタッチで可能です。難しい座標変換の知識がなくても、LRTKが自動で適切な測地系の値を算出してくれるため、初心者でも測地系の違いによるミスを心配せずに済みます。


簡易測量としてのメリット: LRTKはスマートフォンと連携することで、従来の高価で複雑な測量機器を使わずに高精度測位を実現します。重さわずか数百グラムの受信機とスマホさえあれば、現場で位置出しや測量が完結します。アプリの画面上で「測定」ボタンを押すだけで緯度・経度・高さが記録され、データはクラウドに即共有されます。難解な設定項目を極力減らしたUI設計となっており、測地系の選択ミスだけでなく、測量手順自体のミスも起こりにくくなっています。誰でも簡単に使えるポケットサイズの万能測量機という触れ込み通り、現場での扱いやすさは抜群です。


このように、LRTKのようなスマホRTKシステムを活用すれば、測地系の違いによる座標ズレを意識せずに高精度測位が可能となります。初心者にとって難しい専門知識をシステム側でカバーしてくれるため、安心してRTK測量を始められるでしょう。


FAQ(よくある質問)

Q. 測地系が違うと具体的にどれくらい座標がズレますか? A. 測地系によりますが、有名な例では日本の旧測地系(東京測地系)と世界測地系では約400mものズレが生じます。一方、NAD83とWGS84のように比較的近い測地系同士でも、北米では1m前後の差が出ることがあります。数センチの精度が要求されるRTK測量では、1mの違いも無視できません。


Q. WGS84とJGD2011(日本測地系2011)は同じものですか? A. 厳密には別の測地系ですが、実用上ほぼ同一と考えて差し支えありません。JGD2011は日本の世界測地系で、WGS84とほぼ同じ地球中心座標系を使っています。両者の楕円体の形状はわずかに異なりますが、一般的なGPS測位の範囲では違いを意識しなくてもよいレベルです。日本国内でGPSを使う場合、JGD2011を採用しておけば問題ないでしょう。


Q. RTK測量を始めるには、どの測地系を使えばいいですか? A. 基本的には世界測地系を用いるのが無難です。世界測地系とはWGS84やそれと互換性のあるJGD2011などを指します。市販のGNSS受信機やサービスはデフォルトで世界測地系を採用していることが多いです。ただし、国や地域、プロジェクトによってはNAD83など別の測地系が指定される場合もあるため、指示に従ってください。


Q. 基準局と移動局で測地系が違っていてもRTKは動作しますか? A. システム上は解(フィックス)が得られることもありますが、結果の座標は正しくありません。基準局から送られる補正データは、その基準局の座標系に基づいたものです。ローバー(移動局)が別の測地系で結果を解釈すると、数十センチ〜数メートルのズレが生じます。正確な測位結果を得るには、基準局と移動局で測地系を一致させる必要があります。


Q. スマホで本当にセンチメートル級の測量ができるのですか? A. はい、可能です。LRTKのように高精度GNSS受信機をスマホに取り付け、ネットワーク型のRTK補正情報を用いることで、従来の専用測量機と同等の精度を実現できます。実際にLRTKでは、単独測位で得られる緯度経度を平均化することで数ミリメートル単位の精度にまで高めることもできています。従来は専門機器が必要だった高精度測位が、スマホと小型デバイスで実現できる時代になりました。


Q. 測地系の違いに気をつけるべき場面は? A. 新旧地図の比較や、外国の測量データを扱う場合などは特に注意が必要です。例えば昔の地形図に描かれた点をGPSで測る場合、地図が東京測地系で描かれていれば世界測地系の座標とは大きくズレます。また海外で測量データを扱う際、欧米ではNAD83やETRS89(ヨーロッパの測地系)など地域独自の測地系が使われていることがあります。常にデータの出所と使用測地系を確認し、必要なら適切に変換してから利用しましょう。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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