目次
• 樹木下でのRTK測量はなぜ難しいのか
• 樹冠によるGNSS信号への影響
• マルチパス誤差とは何か
• 樹木下で高精度測位を行うための対策
• マルチGNSSや最新技術の活用
• LRTKで実現する簡易RTK測量
• FAQ
樹木下でのRTK測量はなぜ難しいのか
GNSS測量が普及したとはいえ、森林の中では「位置がなかなか確定しない…」と悩んだ経験を持つ方も多いでしょう。樹木が生い茂る森林内でRTK測量を行おうとすると、オープンスカイ(見通しの良い空)の下での測量に比べて大きな困難に直面します。RTK(リアルタイムキネマティック)測位は、理論上は数センチの高精度で位置を特定できる技術ですが、その性能を引き出すには複数のGNSS衛星から強力で安定した信号を受信する必要があります。樹木の下では、枝葉が空を覆い衛星信号を遮断・減衰させてしまうため、受信できる衛星の数が減り、信号も弱くなりがちです。その結果、平地であれば得られるはずのcm級の精度が達成できなかったり、そもそも測位自体が不安定になるケースもあります。
さらに、森林環境ではマルチパス誤差という問題も顕著になります。木の幹や地表面で衛星信号が反射し、複数経路で受信機に届くことで測位データに誤差を生じさせる現象です。このような要因が重なることで、森林内でのRTK測量は非常にチャレンジングになります。しかし、問題点を正しく理解し対策を講じれば、困難な環境下でも精度向上の余地があります。以下では、樹冠による影響とマルチパス誤差について詳しく解説し、それらの誤差を抑える対策や最新技術の活用方法について紹介します。
樹冠によるGNSS信号への影響
樹木の枝葉(樹冠)はGNSS衛星からの電波を遮蔽し、測位精度に大きな影響を与えます。葉や枝に含まれる水分は特に電波を吸収・減衰させるため、茂った樹冠の下では衛星信号の強度(SNR)が大幅に低下します。受信衛星数の減少と信号強度の低下はRTK測位にとって致命的です。RTKでは一般に5個以上の衛星が安定受信できていないと固定解(Fix解)が得にくく、4個以下に落ち込むと位置を計 算できなくなる恐れがあります。樹木下では視界が狭まり衛星の視認数が減るだけでなく、受信できても信号が弱くノイズが増えるため、測位解がフロート解(Float解)に留まったり、精度が劣化しやすくなります。
また、衛星の配置(ジオメトリ)も樹冠下では偏りがちです。空が部分的にしか開けていない環境では、見える衛星がある特定の方向に集中してしまい、位置計算上の幾何学的なバランス(DOP値)が悪化します。その結果、東西方向や南北方向など特定の方向に大きな誤差が生じやすくなることがあります。例えば、日本では上空に準天頂衛星を含む複数の衛星が存在しますが、森林の中では頭上の狭い隙間からその一部しか捉えられず、理想的な測位が難しくなるのです。
樹冠による影響を和らげるには、可能であれば空が見通せる場所や時間帯を選ぶことが有効です。例えば、木々の葉が少ない冬季に測量を行ったり、一日の中で衛星配置が良い時間(衛星が高仰角に多くなる時間帯)を狙うと、受信条件が幾分改善します。また、雨天時は葉が濡れて電波の減衰がさらに大きくなるため、雨や霧の日の測量は避けるか、どうしても必要な場合は通常以上に時間をかけて安定する瞬間を待つなどの対応が必要です。
実際、樹木下でRTK移動局を用いた実験では、6個以上の衛星を常時確保できた場合はほぼ公称どおりの精度(数cm以内)に収まりましたが、5個以下に減ると誤差が顕著に増加したとの報告もあります。Fix解を維持できる割合(Fix率)も、比較的条件の良い森林環境で約93%と高く保てた例がある一方、さらなる遮蔽環境では大きく低下します。いかに多くの衛星を継続的に捕捉できるかが、樹木下で精度を維持する鍵と言えるでしょう。
マルチパス誤差とは何か
マルチパス誤差とは、衛星からの信号が地面や周囲の物体(建物、岩、樹木の幹など)で反射・散乱し、複数の経路を通って受信機に届くことで生じる測位誤差です。本来、GNSS受信機は各衛星からの直接信号を受信して距離を測定しますが、反射波が混入すると受信機は誤った距離を計算してしまいます。例えば、ある衛星信号が地表や木の幹で反射して遠回りして届いた場合、直射の信号と比較 して到達に時間差が生じます。この時間差は測距計算では余分な距離に相当するため、結果として数センチから場合によっては数十センチの位置ずれを引き起こす可能性があります。
RTK測位では搬送波位相を利用するためコード測位より高精度ですが、それでも強いマルチパスが発生すると整数アンビギュイティの解決を妨げ、固定解が得られにくくなったり、最悪の場合誤った固定解を得てしまうリスクもあります。一度誤った固定解(誤FIX)が出ると、その座標は大きく逸脱するため非常に危険です。幸い近年の受信機は高度なマルチパス低減アルゴリズムを搭載しており、以前よりは影響が抑えられていますが、それでも森林のような環境では無視できない誤差要因です。 (都市部のビル街ほど極端ではないにせよ、森林内の地形や幹による反射もRTK精度に影響を及ぼします。)
マルチパス誤差は、測量者の工夫である程度軽減可能です。まず、アンテナの設置位置を工夫しましょう。アンテナをできるだけ開けた場所や高い位置に据えることで、地面からの反射波を受けにくくできます。例えば、ポールを伸ばしてアンテナ高さを上げたり、アンテナの下に金属製のグ ラウンドプレーン(反射板)を取り付けると、低仰角からの不要な反射波を遮断しやすくなります。また、測点の周囲に反射源(鉄柵や車両、大きな岩など)がある場合は、可能な範囲でそれらから離れて観測することで反射の影響を減らせます。
観測上のテクニックとしては、一定時間静止して測定を行うことも有効です。マルチパス誤差は時間とともに変動するため、短時間の瞬間値ではなく数十秒~数分にわたりデータを取って平均をとれば、誤差が相殺され精度が向上します。RTKのリアルタイム測位でも、急がずに数秒間Fix解が安定するのを待ってから測点を記録することで、飛び値を避け信頼性を高めることができます。
樹木下で高精度測位を行うための対策
以上の樹冠による遮蔽とマルチパスの問題を踏まえ、森林内でRTK測量を行う際には以下のような対策を組み合わせて精度確保に努めます。
• 高性能アンテナの使用: マルチパス対策が施された測量用GNSSアンテナを使用しましょう。チョークリングアンテナや大きめのグラウンドプレーン付きアンテナは反射波を抑制し、信号対雑音比(SNR)を向上させます。ローバー側は持ち運びとの兼ね合いになりますが、できるだけ性能の良いアンテナを選ぶことが大切です。
• アンテナの高さ確保: アンテナはできるだけ高所に設置します。ポールを高く伸ばせば、上空の見通しがわずかでも改善し、低角度から入射する反射波も受けにくくなります。ただし高くするほどポールが不安定になるため、確実に垂直を保ち安全に作業してください。
• 衛星配置の把握と計画: 測量前にGNSSの可視衛星数や配置(PDOP値)を予測しておき、できるだけ衛星条件の良い時間帯を選んで作業します。専用のアプリやWebサービスで衛星予測情報を確認すれば、「この地域では午後に衛星数が多い」などの傾向がわかります。また、日本では頭上に位置する準天頂衛星システム(QZSS)を活用できる時間帯だと森林下でも上方からの強い信号を得やすいため、有利です。
• 測位モードの工夫: 必要に応じて測定モードを変更することも検討します。リアルタイムのRTKに固執せず、どうしても難しい場所では一旦生データを記録して後処理(PPK:ポストプロセスキネマティック)で解を求める方法もあります。後処理であれば長時間のデータから誤差を打ち消しあわせて精度を向上できる可能性があります。
• 他手法との併用: GNSSに頼りすぎず、必要に応じてトータルステーションや地上レーザースキャナなど他の測量手法も組み合わせましょう。例えば森林内の見通しの良い地点でGNSS基準点を定め、そこから先はトータルステーションで細部を測る、といったハイブリッドな手法も精度確保には有効です。
これらの対策を講じることで、樹木下でもできる限り安定した測位を得ることが可能になります。ただし、どれだけ注意しても極端に視界の悪い森林ではGNSS測位自体が成立しない場合もありえます。その際は無理をせず、ポイントを移動させるか測量計画自体を見直すことも検討してください。
マルチGNSSや最新技術の活用
近年、GNSS測位の技術革新によって、森林のような厳しい環境でも測位を助けてくれる新しいソリューションが登場しています。その一つがマルチGNSS対応機器の活用です。従来のGPSのみを使う測位では衛星可視数が限られていましたが、マルチGNSSでは複数の衛星システム(GPSだけでなくGLONASSやGalileo、BeiDou、QZSSなど)を同時に利用できます。その結果、天空に見えている衛星の総数が飛躍的に増加し、森林や谷間でもなんとか十分な衛星を捕捉できる可能性が高まります。実際、「GPS単独では衛星数が足りず解が出なかった場所で、マルチGNSSにしたら安定してFixを維持できた」という事例も増えてきています。
また、複数周波数に対応した受信機も有利です。L1だけでなくL2やL5帯(日本のQZSSではL6帯のCLAS信号も含む)を受信できるGNSS端末なら、電離層遅延の補正精度が上がり初期化時間の短縮にもつながります。複数周波数で観測すれば電波干渉やマルチパスの影響を周波数間で比較して検出・除去しやすくなるため、結果的に測位精度の安定化に寄与します。
加えて、日本国内で利用できる最新の補強サービスにも触れておきましょう。国土地理院が提供する電子基準点ネットワークを利用したネットワーク型RTK(VRS方式など)は、現場に自前の基準局を設置せずに高精度測位を行える便利な仕組みです。移動局(ローバー)の近傍に仮想的な基準点を設定して補正情報を配信するため、広いエリアを移動しても精度が大きく低下しません。通信環境がある場所であれば、日本全国どこでもセンチメートル級の測位が可能です。実際、国土地理院のGNSS連続観測システム(約1300か所の電子基準点ネットワーク)により、日本全国で公共座標(世界測地系)の即時取得が可能となっています。また、携帯電話キャリアや測量サービス各社も同様のネットワーク型RTK補正サービスを提供しており、現在ではこれが高精度測位の主流となりつつあります。一方、山間部など通信圏外の地域でも、準天頂衛星「みちびき」から配信されるセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)を利用すれば、通信なしでRTKに近い精度の補正情報を得ることができます。これら最新サービスを活用することで、森林内のような条件でも位置精度を維持できる可能性が広がっています。
LRTKで実現する簡易RTK測量
上記のような技術を組み合わせ、最近では誰でも手軽にRTK測量を行えるオールインワン・システムも登場しています。その代表例がLRTKです。LRTKはスマートフォンと小型高精度GNSS受信機を組み合わせたシステムで、専門的な知識がなくても現場で即座にセンチ級測位が可能になるよう設計されています。従来は高額で扱いの難しい専用機器が必要だったRTK測量も、LRTKならスマホに専用デバイスを装着しアプリを起動するだけで開始できます。ネットワーク型RTK(VRS)に対応しており、煩雑な基地局設営も不要です。
さらにLRTKはマルチGNSS・マルチ周波数に対応しており、森林の中でもできる限り多くの衛星を捉えて精度を確保できるよう工夫されています。仮に携帯通信が届かない山奥でも、LRTK Proシリーズなら日本の衛星補強信号CLASを直接受信して測位を続行できるため、通信インフラが無い環境下でもバックアップが効く設計です。これにより、従来は測量を諦めていたような厳しい環境下でも、一貫した高精度測位が期待できます。
現場の使い勝手も重視されており、LRTKデバイスはバッテリー内蔵で携行しやすく、現場利用にも耐える堅牢設計です。スマホ画面で衛星受信状況や測位結果をリアルタイムに確認しながら、そのまま測量ポールを持って歩き回 って測点を記録するといった作業も一人でこなせます。樹木下でのRTK測量に苦労している方でも、LRTKを活用すれば作業効率と精度向上が期待できるでしょう。 実際に、LRTKを導入して一人測量やインフラ点検業務の効率化に成功している事例も増えてきています。最新技術を積極的に取り入れて、森林測量のハードルを下げてみてはいかがでしょうか。
最後に、樹木下でのRTK測量に関してよくある質問とその回答をまとめます。
FAQ
• Q: 雨や霧などの悪天候下でもRTK測量できますか?
A: できますが精度に影響する場合があります。 雨天や濃霧といった条件では、衛星信号が水分によって減衰・散乱されやすく、測位精度が低下する恐れがあります。特に樹木が濡れている状況では樹冠による電波減衰が一層大きくなります。そのため、できれば降雨時の測量は避け、どうしても作業が必要な場合は普段以上に慎重な測定が求められます。例えば、雨が弱まるのを待ってから観測したり、通常より長めに観測を行って平均を取るなど、誤差を抑える工夫をすると良いでしょう。
• Q: 樹木が茂る場所でもRTK測位で本当に数センチの精度が出せますか?
A: 条件が整えば可能です。 樹冠の隙間から十分な数の衛星をとらえ、強い信号が確保できれば森林内でもcm級の精度で測位できる場合があります。実際、やや疎らな樹林地で上空条件の良いときを選べば、誤差1~2cm程度で測位できた事例も報告されています。ただし、森の密度や衛星配置によっては固定解が得られないことも多いため、過信は禁物です。できるだけ多くの衛星を受信できる機材(マルチGNSS対応受信機)を使い、測量計画も工夫する必要があります。
• Q: マルチパスの影響を受けているかどうか現場で判断できますか?
A: いくつかの兆候から推測できます。 例えば、据え置いたローバーのRTK解が数cm以上にフラフラ揺れたり、衛星の信号強度(SNR)は高いのに解がなかなかFixしない場合、マルチパスの可能性があります。また、特定の方向にある衛星だけでResidual(残差)や位相ノイズが大きいときも疑わしいです。対策として、その場で少しアンテナ位置を移動してみたり、反射源になりそうな物体を確認してみると良いでしょう。状況が改善すればマルチパスが原因だったと判断できます。
• Q: 森林内でRTK測量がうまくいかないときの代替策はありますか?
A: あります。 まずはRTKのネットワークが使えるならVRS方式などでなるべく基線長の影響を減らすことが重要です。それでも難しい場合、PPK(後処理)による解析を試みたり、一時的に開けた場所まで出て測位してから結果を既知点として利用する方法もあります。どうしてもGNSSが使えなければ、トータルステーションで測り繋ぐのが確実です。例えば、林縁の開けた場所でRTKによる基準点測位を行い、そこから森林内の目的地点までトータルステーションで測り繋ぐという方法も現実的です。必要に応じて複数の手法を併用し、最終的に目的の点の座標を求める柔軟性が求められます。
• Q: LRTKは森林の中で本当に使えますか? A: 他のGNSS機器と比べても遜色なく使えます。 LRTKはマルチGNSS・多周波対応で、通常の高性能GNSS受信機に匹敵する仕様を備えています。実際に森林内で利用する際も、受信衛星数の多さと初期化の速さで威力を発揮します。ただし、完全に空が見えないような極端な密林ではどんな機材でも測位は困難です。LRTKも万能ではありませんが、携帯性と補正サービス対応の良さから、森林調査において「持っていて損のない」ツールであることは確かです。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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