目次
• 通信圏外の測量で直面する課題
• オフラインRTK「LRTK」の仕組みと特長
• 土木・建設現場での活用: 1人1台で現場測量が変わる
• 災害対応での活用: 通信インフラが無い現場で威力を発揮
• 山間部の林業・農業での活用: 通信不要で境界測量も容易に
• まとめ: LRTKによる簡易測量が現場を変える
• よくある質問 (FAQ)
携帯電話の電波が届かない山間部の現場や、大規模災害で通信インフラが寸断された地域での測量は、従来の方法では大きな困難を伴いました。高精度なGNSS測位「RTK」は通常、基地局からの補正情報を通信で受信する必要がありますが、通信圏外ではそれが叶わず精度を出せません。また、トータルステーションなど光学機器による測量も、山林や瓦礫の中では視通の確保が難しく、大きな手間と時間がかかっていました。しかし近年、新しい技術である「LRTK」が登場したことで、基地局も通信も不要でセンチメートル級の測位がどこでも可能になりつつあります。本記事では、通信圏外の現場で直面する課題とLRTKによる解決策、そして各分野での活用例について詳しく解説します。土木施工から災害対応、林業・農業 での測量まで幅広い現場に役立つ内容です。ぜひ最後までお読みください。
通信圏外の測量で直面する課題
山間部の工事現場や離島、携帯通信圏外の地域で行う測量には、従来の手法では次のような課題がありました。
• 視通確保の困難: トータルステーション等の光学測量では、測点間で直線的な視通(見通し)が必要です。しかし山岳地帯や森林では地形や樹木に遮られて視通を確保しづらく、測線上の障害物を取り除いたり中継点を設けたりする手間がかかります。
• RTK補正が受信できない: 高精度なGNSS測量法であるRTK方式は、基地局からの補正データを無線や携帯回線で受信する前提です。ところが山奥や圏外の現場ではリアルタイム補正が受け取れず、GNSS受信機を使っても数メートル程度の誤差しか得られなくなってしまいます。
• 基地局機材・人員の負担: インターネットや携帯通信が使えない環境でRTK測量を行うには、自前で基準局となるGNSS機器を設置し無線通信する方法があります。しかしその場合、大型三脚やバッテリーを含む基地局一式を山中まで運搬・設営する必要があり、作業者への負担が非常に大きくなります。
• 作業時間と精度の限界: 山間部では移動に時間がかかり、一日で測れる範囲が限られます。通信が確保できない状況では高精度測位を諦めて巻尺やコンパスによる手作業測量に頼らざるを得ず、効率が低下するとともにヒューマンエラーも増えがちです。その結果、後日改めて測り直す二度手間が発生するケースも少なくありません。
オフラインRTK「LRTK」の仕組みと特長
上記のような課題を解決するために登場したのが、LRTKと呼ばれる新しい高精度測位技術です。LRTKはリアルタイムキネマティック (RTK) を応用したGNSS測位方式ですが、通常必要だった基地局からの補正データをインターネット経由で受信せずとも、衛星信号だけでセンチ級の測位を実現できます。その鍵となるの が、日本の準天頂衛星システム「みちびき」が提供するCLAS(センチメータ級測位補強サービス)です。LRTK対応の受信機は、このCLAS信号を直接受信して国土地理院の電子基準点網(GEONET)から生成された補正情報を取得できるため、通信インフラが無い現場でもリアルタイムに高精度測位が可能になります。
技術的に言えば、LRTKは「PPP-RTK」と呼ばれる測位方式を活用しています。全国各地の電子基準点で観測された衛星軌道誤差や大気圏の影響による誤差情報を集約し、それをみちびき衛星経由で送信することで、受信機側で測位に補正を適用します。CLASの補強情報は衛星から降ってくるため、日本国内であれば山間部や離島・海上までどこでも均一にセンチメートル級の精度を得られる点が画期的です。しかも衛星からの補強信号は無料で利用できるため、対応する受信機さえ用意すれば後述するような通信料やサービス利用料もかかりません。
LRTK受信機自体は非常に小型・軽量で、現場での携帯性に優れています。例えばスマートフォンやタブレットに装着できるポケットサイズのデバイスが提供されており、アンテナとバッテリーを内蔵して重量はわずか100~200g程度しかありません。空が見える場所であれば基地局も通信回線も一切不要で、その場で数センチの誤差に収まる測位が行えます。また、GPSやGLONASS、みちびきなどマルチGNSSや複数周波数帯に対応しており、森林や山間部で一部衛星の視界が遮られる環境でも安定して精度を維持できるよう設計されています。要するにLRTKは、「ネット圏外でも使えるRTK」を実現した革新的な技術なのです。
LRTK高精度測位の主な特長をまとめると次の通りです:
• 衛星補強による高精度GNSS: 複数の測位衛星から得た信号に、準天頂衛星みちびきのCLAS補強情報を適用し、単独測位では数メートルあった誤差をリアルタイムで数センチまで低減します。
• 通信インフラ不要でオフライン運用: 補正情報は衛星から直接届くため、携帯電話網が圏外の山中や災害時でも補正データを受信できます。インターネット接続や基地局機材が不要になり、通信網が遮断された状況下でも安定した高精度測量が行えます。
• 小型・軽量で持ち運び自在: 手のひらに収まるデバイスをスマホに装着するだけで使えるため、大がかりな三脚やポールを持ち歩く必要がありません。防塵・防水性能も備えており、険しい山道での長距離移動でも携行が容易です。必要に応じて一脚やポールに取り付けて使用することも可能です。
• 長時間稼働の内蔵バッテリー: 省電力設計によりデバイス単体で丸一日稼働できる持久力があります。朝から夕方まで充電なしで連続測量できるため、電源確保が難しい長時間の現地作業でも安心です。
土木・建設現場での活用: 1人1台で現場測量が変わる
LRTKは、土木・建設分野の現場作業にも大きな変化をもたらします。これまでセンチ級測位機器は高価で専門の測量技術者が扱うものでしたが、ポケットサイズでリーズナブルなLRTKデバイスなら「1人1台」の携行が現実的です。しかも補正サービスへの加入が不要なため、複数台を現場に配備してもランニングコストを気に せず運用できます。施工管理担当者や作業員が各自スマホにLRTKを装着しておけば、必要なときにすぐ自分で測量や位置出しが可能になります。
例えば、基礎の位置出し(墨出し)や出来形の確認を行う際、従来は測量班を待ったり重機を停止して計測する必要がありました。LRTKを使えば、現場のスタッフがその場で瞬時に座標を測定し、図面上の設計位置と照合したり、追加の測点を取得したりできます。測位データはスマホのアプリからクラウドへ即座にアップロードできるため、現場とオフィス間で測定結果をすぐに共有できる点も魅力です。これにより手戻りの防止や迅速な意思決定が可能となり、現場の生産性が飛躍的に向上します。
また、スマホと連携したLRTKは写真撮影やAR機能とも組み合わせることができます。高精度な位置情報付きの現場写真を撮影したり、図面データを現地でAR表示して工事箇所を確認したりと、ひとつの端末で万能な測量ツールとして活用できるのも特長です。LRTKにより、建設現場の測量作業は「いつでも・誰でも・すぐに」行えるものへと変わりつつあります。
災害対応での活用: 通信インフラが無い現場で威力を発揮
大規模災害の現場では、被災状況の把握や復旧計画のための測量が急務ですが、同時に通信インフラが寸断されている場合が多くあります。従来であればリアルタイムの高精度測位は諦め、被害範囲を手作業で記録して後日解析するしかありませんでした。しかしLRTKがあれば、通信ネットワークが利用できない災害現場においても即座にセンチ級の測量が可能です。
たとえば地震や土砂災害の直後、現地の状況を調査する際に、LRTK受信機を装着したスマホ一台を持って行けば、崩壊地形や流出した構造物の位置をその場で正確に記録できます。基地局を設営したり大がかりな測量機材を運ぶ必要がないため、余震など危険な状況下でも機動的に測量が行えます。実際に近年の被災地調査でもLRTKは活用されており、電波が圏外となった地域でも重要な測位データを現場から即時に取得・共有するのに貢献しました。
災害対応においては「早さ」と「正確さ」が求められますが、LRTKはその両方を支援します。クラウド連携機能により、測った地点のデータを現場から直接関係機関と共有できるため、復旧計画の立案や被害状況の評価がスピーディーに行えます。通信インフラが途絶した環境下でも確実に位置情報を取得できるLRTKは、災害対応の現場で心強いツールとなるでしょう。
山間部の林業・農業での活用: 通信不要で境界測量も容易に
森林や山間の農地など、これまで測量が困難だったフィールドでもLRTKは威力を発揮します。山林における境界確認や、段々畑の造成計画のための地形測量など、従来は人力に頼っていた作業も、LRTKがあれば効率的に実施できます。
たとえば山林内の土地境界標を測定する場合、以前は視通を確保するために藪を切り開いたり隣接地主と日程調整して立会測量を行ったりと、大きな手間がかかりました。LRTKを使えば各境界点に行ってボタンを押すだけで、その場で正確な世界座標値を取得できます。測定した座標値はあらかじめ設定した平面直角座標系や標高系に自動変換して記録できるため、調査後の図面作成や登記手続きもスムーズです。現地で双方が同じ測位結果を確認できるので、境界立会の合意形成も容易になるでしょう。さらに、国有林と民有地の境界査定など行政と民間の協議でも、LRTKでリアルタイムに測定値を示しながら位置を確認できるため、認識のずれを減らし円滑な合意形成に寄与します。
また、広大な山林を測線で横断する測量でも、LRTKなら途切れることなく連続して点を取得できます。測量範囲が通信エリアや地形条件に制約されないため、「ここから先は精度が出ない」という諦めが不要です。さらに携行機材が極端に少なくて済むため、山奥への長時間の踏査でも作業者の負担が軽減され、安全性も高まります。重い機材を担いで険しい斜面を移動するリスクが減り、短時間で作業を終えられることで、天候悪化や日没のリスクも低減できます。
このように、通信が届かない山間地域の林業・農業分野でも、LRTKは測量作業の効率と精度を飛躍的に向上させています。
まとめ: LRTKによる簡易測量が現場を変える
通信インフラに頼らずにセンチメートル精度を実現できるLRTK技術は、土木・ 建設から防災、森林管理に至るまで幅広い現場で画期的なソリューションとなっています。従来は困難だった「圏外での高精度測位」が現実のものとなり、スマホと小さな受信機さえあれば誰でもどこでも測量ができる時代が始まりました。LRTKによる簡易測量は、作業効率と成果精度を飛躍的に高めるだけでなく、現地作業の安全性向上や人手不足の解消にも貢献します。また、LRTKは国土交通省が推進するi-Construction(建設現場のICT活用)にも資する技術であり、建設業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環としても注目されています。こうした最新技術の活用が、現場の生産性向上や品質管理の高度化にも繋がるでしょう。
これからの測量業務において、たとえネット圏外であっても妥協のない精度で測定を完了できることは大きな強みです。LRTKのような基地局レスの高精度測位を活用すれば、現場作業の常識が変わり、より迅速で確実な測量スタイルが定着していくでしょう。最先端のLRTK技術を現場に取り入れて、いつでもどこでもセンチ級の測位を実現し、業務の次のステージへと進化させてみませんか。
よくある質問 (FAQ)
Q: LRTKとは何ですか?従来のRTK測位と何が違うのですか? A: LRTKは、基地局からの補正データを必要としない新しいRTK方式の高精度GNSS測位技術です。通常のRTKは近くに基準局を置くかネットワーク経由で補正情報を受け取りますが、LRTKは準天頂衛星みちびきのCLAS信号を利用して補正を行うため、基地局やインターネット接続がなくてもセンチメートル級の測位が可能になります。
Q: LRTKの利用にインターネット接続や有料の補正サービス契約は必要ですか? A: いいえ、不要です。LRTKは衛星から直接補正情報を取得する仕組みのため、現場でモバイル通信回線に繋ぐ必要がありません。また、CLASによる補強情報は無料で提供されているので、従来のように高額な測位サービスに加入しなくても追加コストなく高精度測位を利用できます。
Q: 実際どの程度の精度が得られるのでしょうか? A: 条件の良い環境であれば、水平位置で誤差数センチメート ル以内、高さ方向でも数センチから数十センチ程度の精度が得られます。一般的なRTK方式と同等の精度水準で、従来の単独測位(数メートルの誤差)とは一線を画します。ただし衛星信号を使う都合上、空が開けた場所ほど精度が安定する点は他のGNSS測位と同様です。
Q: LRTKを使うにはどんな機材が必要ですか?スマートフォンで利用できますか? A: LRTKを利用するには、CLAS対応の小型GNSS受信機(LRTKデバイス)とスマートフォンまたはタブレットが必要です。スマホ用の専用アタッチメントに受信機を取り付け、無線で接続して使用します。受信機にはアンテナとバッテリーが内蔵されているため、特別な電源装置や大掛かりな三脚等は不要です。専用アプリをスマホにインストールすれば、測位の開始やデータ記録・共有も直感的に行えます。
Q: 森林や山間部など衛星視界が悪い場所でも本当に測位できますか? A: 衛星の見通しが一部遮られる環境でも、マルチGNSS対応かつ複数周波数を受信できるLRTKなら比較的安定して測位できます。樹木が茂った林内や谷間でも、頭上にある程度の空 が開けていればセンチ級精度で位置を特定可能です。ただし極端に衛星信号が届かない深い森林や崖下ではさすがに精度が低下する場合があります。そのような状況でも、従来の光学測量のように長距離の直線視通を確保する必要はないため、空が見えるポイントに移動しながら測ることでカバーできます。結果として、従来は難しかった山岳地域での測量もLRTKなら実用的な精度でこなせるようになります。
Q: デバイスのバッテリーはどのくらい持ちますか? A: LRTK受信機は省電力で設計されており、フル充電でおおよそ8時間以上連続稼働します。通常の作業日であれば朝から夕方まで充電なしで使用可能です。長時間の山林調査でも途中で電源が切れる心配が少なく、予備バッテリーを大量に持ち歩く負担も減らせます。
Q: 測位開始からセンチ級の精度を得るまで時間がかかりますか? A: 初期の測位精度収束にはわずかな時間を要しますが、マルチ周波数対応のおかげで比較的早く高精度が得られます。条件が良ければ、受信機の電源投入後おおよそ数十秒~1分程度で固定解(フロートからFix)に到達し、センチメートル級の精度が出始めます。一度高精度の解が得られれば、その後は移動しながらでも安定してセンチ級測位を継続できます。
Q: LRTKは日本国外でも利用できますか? A: LRTKは日本の準天頂衛星システム「みちびき」から配信されるCLAS補強情報を利用しています。そのため基本的に日本国内での利用を想定した技術です。国内であれば北海道から沖縄・離島までほぼ全域でセンチ級測位が可能ですが、海外では現状みちびきのCLAS信号を受信できないためご利用いただけません。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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