舗装オーバーレイは、既設舗装をすべて撤去せず、上から新しい舗装層を重ねて走行性や排水性、耐久性を回復させる方法です。現場では「どのくらいの厚さで重ねるか」が大きな判断になります。薄すぎると既設のわだち掘れや不陸を十分に補正できず、早期のひび割れや段差再発につながるおそれがあります。一方で、厚くしすぎると縁石、側溝、マンホール、出入口、橋梁取付部などとの高さ関係が崩れ、排水不良やすり付け不足を招くことがあります。
そこで重要になるのが、RTK測量で取得した横断方向の標高データをもとに、現況断面を正しく読み取ることです。RTK断面図を活用すれば、路面の高低差、横断勾配、側溝や構造物との取り合い、切削量と上乗せ厚の関係を視覚的に整理しやすくなります。ただし、RTK断面図は作れば自動的に最適厚が決まるものではありません。測点の取り方、基準高さの扱い、既設舗装の状態、施工後の納まりまで含めて確認することで、初めて実務に使える判断材料になります。
目次
• RTK断面図が舗装オーバーレイ厚の判断に役立つ理由
• 確認1 現況路面の不陸とわだち掘れを断面で把握する
• 確認2 計画高と既設構造物の高さ関係を確認する
• 確認3 横断勾配と排水方向を崩さない厚さを検討する
• 確認4 切削量とオーバーレイ厚の組み合わせを整理する
• 確認5 施工後のすり付け区間と段差リスクを確認する
• RTK断面図を現場運用で活かすための記録方法
• まとめ
RTK断面図が舗装オーバーレイ厚の判断に役立つ理由
舗装オーバーレイ厚を検討するとき、単に平均的な舗装厚だけを見て判断すると、現場の問題を見落とすことがあります。道路や構内舗装の路面は、見た目には平らに見えても、実際には車輪走行位置の沈下、路肩側の下がり、補修跡の盛り上がり、マンホール周辺の段差、側溝際の沈み込みなど、さまざまな不陸を持っています。これらを平面的な写真や目視だけで判断すると、どこを基準に厚さを決めるべきかが曖昧になります。
RTK断面図は、横断方向に取得した標高点をもとに現況の断面形状を表すため、路面の高低差を把握しやすいのが特徴です。道路中心、車輪走行位置、路肩、側溝天端、既設構造物の天端などを同じ断面上で確認できれば、オーバーレイ後にどの部分が高くなりすぎるのか、逆にどの部分で厚さが不足しやすいのかを具体的に検討できます。
特に、舗装オーバーレイでは既設面の上に一定厚を加えるだけでは済まない場面が多くあります。現況路面にわだち掘れがある場合、低い部分を埋めるだけなら比較的厚くなり、高い部分では既設構造物との取り合いが厳しくなることがあります。橋梁部や建物出入口、既設側溝、排水桝、縁石、舗装端部などがある場合は、仕上がり高の自由度が限られるため、断面図で前後左右の納まりを見ながら厚さを決める必要があります。
RTK断面図の利点は、現況を数値と形状の両方で確認できる点にあります。現場担当者、設計担当者、施工担当者が同じ断面を見ながら話せるため、「この部分は薄層で補修するのか」「ここは切削してから重ねるのか」「排水勾配をどちらに逃がすのか」といった判断を共有しやすくなります。舗装厚の決定は設計条件や材料、交通条件、管理基準にも左右されますが、RTK断面図はその前提となる現況把握の精度を高めるための有効な資料になります。
ただし、RTK測量にも注意点があります。衛星受信環境が悪い場所、建物や樹木が近い場所、橋梁下や壁際などでは測位が不安定になることがあります。また、断面の測点間隔が粗すぎると、局所的な段差や凹みを拾いきれないことがあります。そのため、RTK断面図を使う際は、測定条件や取得点の密度を意識し、必要に応じて補足測量や現地確認を組み合わせることが大切です。
確認1 現況路面の不陸とわだち掘れを断面で把握する
舗装オーバーレイ厚を決める最初の確認は、現況路面の不陸とわだち掘れを正しく把握することです。既設舗装は、長年の交通荷重、排水不良、路盤の弱点、過去の補修履歴などによって、横断方向にも縦断方向にも微妙な変形が生じます。特に車両が繰り返し通る場所では、タイヤ位置だけが沈み、中央部や路肩側が相対的に高く残ることがあります。この状態を見落として平均的な 厚さでオーバーレイすると、仕上がり面にも不自然な起伏が残りやすくなります。
RTK断面図では、道路中心線付近、左右の車輪走行位置、路肩部、側溝際などの高さを同じ断面上で比較します。わだち掘れがある場合は、左右の低い部分と高い部分の差を見て、どこまで修正する必要があるかを判断します。低い部分に合わせて全面を厚くすると、既設構造物との取り合いで問題が出ることがあります。逆に高い部分に合わせて薄く仕上げると、低い部分の補正が不十分になり、走行性や排水性が改善しない可能性があります。
このため、現況断面を見るときは、単に最大高低差だけを見るのではなく、どの位置に不陸が集中しているかを確認することが重要です。車輪走行位置の沈下なのか、舗装端部の沈下なのか、横断勾配全体の崩れなのかによって、必要な対策は変わります。部分的な凹みであれば事前補修やレベリング層で調整する考え方がありますが、広い範囲で路面形状が崩れている場合は、切削や不良部の補修を含めて検討した方がよいことがあります。
RTK断面図を作成する際は、横断方向の測点を少なすぎないようにすることが大切です。中心、左右の車輪走行位置、路肩だけでは、局所的な凹凸を十分に表せない場合があります。特に、舗装のひび割れが集中する位置、補修跡、マンホール周辺、出入口付近、排水桝の周辺などは、高さ変化が急になりやすいため、必要に応じて追加点を取得します。断面図上で滑らかに見えていても、測点が少ないだけで実際の不陸を見落としている可能性があるためです。
また、現況路面の高さは、降雨後や清掃前の状態にも影響されます。泥、砂利、堆積物、草、落ち葉などが測点に乗っていると、実際の舗装面より高く測ってしまうことがあります。反対に、ひび割れや穴の底を測ってしまうと、周辺の代表高さとは異なる値になることがあります。舗装オーバーレイ厚の検討に使う点は、現況舗装面として代表性があるかを現場で確認しながら取得する必要があります。
不陸とわだち掘れの確認で大切なのは、オーバーレイだけで解決できる変形かどうかを見極めることです。表面的な凹凸であれば、厚さ調整で改善できる場合があります。しかし、路盤の支持力不足や排水不良が原因で沈下している場合、上から 舗装を重ねても再び変形するおそれがあります。RTK断面図で同じ位置を時期を変えて比較できれば、沈下が進行している箇所を見つける手がかりにもなります。厚さの検討と同時に、既設舗装の劣化原因を疑う視点を持つことが、長持ちする補修につながります。
確認2 計画高と既設構造物の高さ関係を確認する
舗装オーバーレイ厚を決めるうえで、既設構造物との高さ関係は非常に重要です。道路や敷地内舗装には、側溝、縁石、集水桝、マンホール、橋梁伸縮部、建物出入口、門扉、既設舗装端部など、仕上がり高に影響する構造物が多くあります。オーバーレイによって舗装面が上がると、これらの構造物より路面が高くなったり、逆に排水施設に水が入りにくくなったりすることがあります。
RTK断面図では、既設舗装面だけでなく、関連する構造物の天端や縁の高さも取得しておくと判断しやすくなります。例えば、側溝天端に対して舗装仕上がりが高くなりすぎると、雨水が側溝へ流れず、路肩や車輪走行位置に水が残ることがあります。マンホール蓋や集水桝の高さが仕上がり面より低すぎると、車 両走行時の衝撃や水たまりの原因になります。反対に、蓋が高く残ると段差や騒音、除雪や清掃時の支障につながることがあります。
建物出入口や民地乗入れ部がある場合は、さらに慎重な確認が必要です。道路側の舗装面を上げることで、出入口の勾配が急になったり、シャッター下端や門扉の開閉に影響したりする可能性があります。特に、既設建物や既設床の高さは容易に変えられないため、舗装側の計画高をその制約内に収める必要があります。RTK断面図に出入口の基準となる高さを入れておけば、オーバーレイ厚を増やせる範囲と、すり付けが必要な範囲を早い段階で把握できます。
橋梁やボックスカルバート、既設コンクリート舗装との接続部でも、高さ関係の確認は欠かせません。構造物側は沈下や切削がしにくいことが多く、舗装面だけを上げると段差が発生しやすくなります。段差を避けるためには、オーバーレイ厚を抑える、接続部を切削する、すり付け延長を確保するなどの調整が必要です。RTK断面図で構造物前後の高さを比較しておくことで、施工後に急な勾配変化が生じないかを検討できます。
既設構造物との取り合いでは、単一断面だけでは判断しきれないこともあります。側溝や縁石は縦断方向に高さが変わるため、ある断面では問題がなくても、別の断面では路面が高くなりすぎることがあります。マンホールや桝も点在しているため、周辺断面を複数取得し、縦断方向の連続性も見る必要があります。舗装オーバーレイ厚は一定に見えても、現場の制約によって区間ごとに調整が必要になることがあります。
また、既設構造物の高さを測るときは、どの位置を測ったのかを明確にしておくことが大切です。側溝天端の内側なのか外側なのか、蓋の中央なのか端部なのか、縁石の上面なのか車道側の角なのかによって、解釈が変わります。写真と測点名をセットで記録しておけば、後から断面図を見たときに誤解が生じにくくなります。舗装オーバーレイ厚の判断は数センチ単位の差が問題になることもあるため、基準にした高さの意味を残しておくことが重要です。

